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モンスターハンターストーリーズ2~破滅の翼~とはなんだったのか

はじめに

最初にはっきりさせておこう。
この記事はMHS2のシナリオでモヤモヤした部分を吐き出すためのものなのでネガティブな内容が多いしネタバレにも言及しまくる。楽しい話、有用な話は一切ないのでそのつもりでいて欲しい。



さて。

システム面はなかなかよく出来ていた。絆ゲージと相手の行動予測線とを睨めっこしながら手札の切り方を考える戦闘はなかなか面白かった。元がアクションゲームであるモンハンをよくRPGの形に落とし込めていたと思う。

シナリオも途中までは王道RPGという感じだったし、砂漠でレウスが飛翔するシーンはぐっと来た。レウスのことを「どけ!俺はママだぞ!!」の気持ちで見ていたので我が子が初めてたっちをしたようで感慨も一入である。




「その飛翔シーンがピークだったな」になってしまうくらいその後の諸々がよろしくなかった。


説明が足りない

「新世界を望む一派は結局なんだったんだ?」「レウスとアルトゥーラの実際の関係性は?」「破滅の翼とは?」「なぜエナのペンダントがアルトゥーラ特攻に?」
これらの説明は全て放棄されている。状況から推測すること自体は可能だが説明されていないのだからそれで正解だろうと確信できる根拠もない。なんとなくいい感じに終わった風で誤魔化せるレベルではなかった。

一応それぞれの疑問に対する自分の中でのアンサーとしては
・新世界を望む一派……ゼラードを筆頭にした破滅主義者。宗教団体に近い。終末思想の持主はいつの時代にもいるものだよな、とは思うけどそういう連中が武力とコネを持っているの厄介すぎる。
ハンターがライダーに傅くのか?についてはそもそも狩るべきモンスターを新世界の象徴として崇めている時点でまっとうではない。
ただ宗教であるなら奇跡(この場合はアルトゥーラの力や存在)を見せる必要があったと思うのだがどうやって取り込んだのだろう。みんなでエンカウントを期待して大穴をせっせと巡ったのかもしれない。

・レウスとアルトゥーラの関係……シナリオ途中の時点では「世界を滅ぼす力を秘めたアルトゥーラのカウンター存在として破滅の翼を持つレウスが生まれる」だと思っていた。しかし肝心の破滅レウスは凶光化に屈し続けているし、集まったレウスたちもアルトゥーラに蹂躙されるばかりである。
ここから導き出された結論は「破滅レウスはただのアルトゥーラの大好物」「餌であるレウスを誘き出すために凶光化で暴走させているし他のモンスターは流れ弾でいい迷惑してるだけ」という、なんとも残念なものになる。それでいいのか。
餌が自分からやってこられるようにアルトゥーラがレウスに翼を授けたという仮説も立てられなくはない。宿主を水場に誘導する寄生虫みたいだな。

・アルトゥーラ特攻……一応代々伝わるものらしいが本当に説明がない。おそらく過去にアルトゥーラが現れた時に有効だったのだろうが、有効な武器を残すくらいなら何故あの村にアルトゥーラの言い伝えが残っていないのか。

先に手を出すのはいつも人間な件

破滅レウスの言い伝えにしてもカイル父の負傷についても、根拠のない憶測で先に手を出しているのは人間なのに何故かみんな「攻撃(※反撃)してきたレウスこそが邪悪な存在だ」と言う。理不尽極まりない。話し合いができる人間族だっていきなり殴られたら殴り返すだろうに。

その割にモンスターたちがおかしくなる全ての元凶がアルトゥーラだと判明した後も「レウスに悪いことをした、これからは正しい歴史を伝えていかねば」と省みることができた人物はいない。破滅レウスが結局なんだったのか解明できない人間たちに期待するのは酷だったか。それとも所詮モンスターはモンスター、どうせ狩るんだから関係ないということか。

愚かな人間、竜人族たちはきっと次のアルトゥーラが出現する時にもレウスを迫害するのだろう。やっぱり今の世界は一度滅ぼしても良かったかもしれない。


絆の物語?

おそらく「人とモンスターの絆」を謳いたかったのだと思う。思うのだが話の持っていき方がちぐはぐで本当に?となる。

デデ爺の「破滅の力を無理に押さえ込んでも抑圧された力はいずれどこかから噴出する」という話を受けるのであれば、破滅の力は押さえ込まずに乗りこなすべきだった。破滅の翼を広げつつライダーとの絆で暴走することなく新たな力を発揮するようになる、これでこそ絆の力と言えよう。正直あの黒い翼のレウスに乗れたら興奮した。
実際にはレウスは破滅レウスなんかじゃない!と目をそらし続けながらライダーが暴れるレウスへの恐れを捨てたらなんとなく解消した感じになっている。
しかし実際にはやっぱり解消していなかったんじゃないのか?となるのが話題沸騰間違いなしの寝取りシーンである。

最終決戦直前、ゼラードによるオトモンレウス寝取り事件。

何故このタイミングで?
ゼラードが寝取る必要あったか?しかも「絆技まで使えたぞハハハ、絆チョッロwww」とやたらと煽って来る。

一度離されてから互いの絆を確かめ合い、より深める展開があるのはわかる。しかしぶっちゃけそれは砂漠の飛翔シーンでもうやっている。それをわざわざクライマックス直前にやる意味がわからない。しかも無理やり連れていかれるのではなく今度は絆技まで使うほど心まで奪われたような描写をされる。プレイヤーの脳を破壊したいのか?
親御さんの目の前でまんまとお子さんを寝取られるライダーの気持ちにもなってほしい。

そこまでやられて戻って来たレウスとの絆を確かめ合うこともそれによって何かが強化される描写も特になく、何事もなかったかのようにアルトゥーラ戦へと突入である。
「暴走するゼラードと絆も虚しく操られるレウス」という構図を作るだけなら護りレウスを操る形で良かったのではないか。どうしても護りレウスを最後の餌にしたかったなら、最後の最後に正気を取り戻した護りレウスが我が子をかばったとかでも十分いけたはずである。

「護りレウスはレドとの絆を覚えていたから今まで凶光化に耐えられた」と明言されているのも最悪で、裏を返せばレウスとライダーの絆が浅いからお前のレウスは暴走するのだと突きつけられたようなものになる。中盤ならともかく、終盤も終盤でそのザマではここまでの冒険は全部茶番だったというのか。たぶんそうなんだろう。

あのくだりで筆者が得た感想は「所詮モンスターはモンスター、信用することはできない」になり、絆の物語とはおよそ言えない結論に辿り着いてしまった。冷静に思い返せばケイナのランマルもほいほいと主人公に鞍替えしたので絆の力とはその程度なのかもしれない。

そしてアルトゥーラにとどめを刺すシーン。作り出された絶好のチャンスにライダーとレウス渾身のダブルアクションが光……らない!

……えっ?

どうして手を離してしまったんだ。

絆の物語じゃないのか。

最後の最後に手を離して何が絆だ。

「相棒、私はずっとあなたのそばにいます!(※安全なキャンプ地から)」の声が脳裏をよぎる。やめてくれ。

アルトゥーラを撃退するもライダーとレウスが揃って行方不明、それを健気に待ち続けるエナの構図の方が……まだまとまってないか……?

モンスターハンターストーリーズ2は絆の物語である。たぶん。きっと。おそらく。そうなりたかったんだろう。


レウスのことを振り返ってはならない

作中で人間側から手を出していないのに被害を出した唯一のレウスがオトモンのレウスであり、戦わせるほどレウスが無理をして傷つくと言われ、最終決戦直前にあっさり寝取られ、寝取られたレウスを助けるために護りレウスが犠牲になってアルトゥーラの覚醒を早め(たとしか見えないタイミングで完全覚醒したので、そうじゃないと言うならあの流れは悪手)……。

結果を見ると「あのレウスは牧場に預けておくのが正解だったんじゃないか?」としか言いようがない。ライダーと離されたら破滅モードになって牧場を破壊する?新世界派の襲撃を受けるかも?そうか……。

せめて最後に誰かが「破滅の翼を持つレウスでなければアルトゥーラは倒せなかっただろう……」とでも言ってくれればレウスの立つ瀬はある。しかし破滅レウスとアルトゥーラの関係は一切説明されないので「懐いてくるのでかわいい以外にこのレウスを連れ歩く必要、あったのか?」という疑念が残る羽目になっている。


「やりたい」を優先しすぎていないか

「こういうシーンをやったらエモい」「この台詞は入れたい」。そういう意図は感じる。創作においてそういうシーンは熱が入るしモチベーションとしても大事だ、それは否定しない。
しかし普通はその大一番に納得感を持たせて際立たせるための足場をしっかり固めていくものである。紆余曲折あった仲間やかつての敵なんかが「ここは俺に任せて先に行け!」と言うから盛り上がるのであって、ぽっと出のNPCが同じセリフを言っても「誰?」としかならない。

例えばカイルの「一狩り行こうぜ!」。モンハンの代表的な台詞だ、言わせたくなるのもわかる。
しかしカイルのスタンスは「モンスターを狩るのはハンターの仕事だ」だったはずである。かなり好意的に解釈すれば否定的だったライダーのことを同格のハンターとして認めてくれた、になるのかもしれないがライダーはライダーである。ハンター同士の合言葉にいきなり組み込まれることには違和感がある。
リヴェルトがカイルに今度一狩り行こうやと振りを入れていたらマシになっていただろうか。いや、そこまで仕事熱心な男でもなさそうだ。

例えばエナのペンダントがアルトゥーラに有効だとカイルが気付くシーン。カイルがちょっと気球を気にする演出が入る程度で、ペンダントに関する前振りは一切なかった。「共鳴している→勘だが有効なはずだ!」はさすがにカイルの勘が良すぎる。そんな勘の良さがあるならもっと早く色んな真相に気付いて欲しかった
アルトゥーラの触手とのエンカウントは既にあったのだから、その時に「エナの方に触手が向かいかけるも、ペンダントが光ったのを受けて触手が距離を取る」くらいの伏線はあっても良かったのではないか。共鳴しているだけだったら正直「ペンダントはかつて欠けたアルトゥーラの一部であり、取り込むことで完全復活する」という展開も考えられる。有効であると予想できるだけの根拠は欲しかった。

気球の絵に気付くのがカイルというのもおかしな話だ。祭りの気球なら地元住人の主人公の方がよほど見慣れているはずだ。主人公がしゃべれない以上、ナビルーかカイルくらいしか閃けないのもわからなくはないが相対的に全く気付けなかった主人公が道化にされている感は否めない。そもそも「祭りの気球のモデルが実はアルトゥーラだった」以上の情報はなかったと思うのだが。
「ペンダントは元々マハナ村に魔を退けるお守りとして伝わるものだった」「そのペンダントをレドが友好の証としてエナに贈った」という前提でもあれば、「マハナ村ではかつての脅威の姿を気球の形で後世に残しつつ、対抗策も大事に取ってあった」と今よりは多少納得できる形になるのだが……。

気球とペンダントのくだりは唐突すぎて「このままだとGMの脳内当てに失敗してグッドエンドフラグを逃しそうだったので慌ててPCたちに解決策を閃くかどうかの判定をさせてカイルだけ辛うじて成功した」という苦い一幕に見えて仕方がなかった。

やりたいシーンを繋ぎ合わせただけで説得力がない。進行役が贔屓のNPCを活躍させたりやりたいことをやるばかりでプレイヤーを置いていったりするスタイルのことをTRPG界隈では吟遊GMという蔑称で呼ぶ。

もしかしたら「いきなりだけどクライマックスシーンだけ書いてくれ、モンハン要素や決め台詞もりもりのなんかアガる感じで!」と無茶振りをされたシナリオライターがいたのかもしれない。そのくらい展開に無理を感じる。


これは誰の物語だったのか

これは誰の物語だったのだろう。
少年少女が主人公のRPGといえば冒険や出会いを通じて主人公の成長を描くのが王道だ。最初は孫だ孫だと言われていたが大冒険を経て先代をも超えたと認められる。実にオーソドックスな展開と言える。

実際にヒロインのエナを筆頭にみんなずっとレドレド言っている。正直あまり面白くはないが演出としてはわかる。偉大な先達に対して主人公はまだ何も成し遂げられていない駆け出しだという実情もある。ずっと比べられるのも優秀な身内を持つ者の宿命だろう。

そんな主人公がようやくただのレドの孫じゃなくなるのは世界の危機を救った後だ。

……まぁそういうこともあるだろうが。世界を救うまでしないと超えられないほどレドという男は本当に偉大だったのだろうか?
みんなレドの話をしてはいるが、具体的な実績として数えられるのは「閉鎖的だったルトゥ村の住人の心を開いた」くらいのものである。心証がマイナスのところからそこまで持っていった功績は確かに大きいとは思うが、別にライダーである必要はないエピソードも多い。おつかいついでの狩りなら主人公も散々やらされている。
ずっと大穴を調べていたというわりに大穴についての調査記録の一つも残していないのである。イヴェルカーナのメモはやたら分割して残していたのに。そして大穴について得られた情報といえば「レドがずっと調査していたという状況」と「穴はモンスターと関係がありそう」くらいのものである。何を調査していたのだろう。

そんなレドに対してプレイヤーが握る唯一の接点が「主人公は幼少期に飛び立つレドの背中を見送った」。これだけである。
もっとあらかじめレドに感情移入させてもらわないと、レドの活躍話も「どこにいっても無限に他の男の話をされるな……」と上滑りしてしまう。レドの足跡を辿る旅にするならするで、もっと主人公とレドの接点を増やして好感の持てる身内感を出して欲しかったところである。それとも家にほとんど寄り付かない冴えないお父さんが実は職場だとすごい人だったんだと判明する流れでもやりたかったのだろうか。

最終的に主人公がレドを超えられたのかどうかも微妙な演出である。
最終決戦で主人公が手をのばす中、後は任せろと言わんばかりにレドの背中が遠のいて消えていく。
良い感じ風に演出しているが、その構図は冒頭の回想シーンと同じではないか。なぞった演出をしつつそこからの進歩を見せるなら価値があるが、原点と同じ場所にいるのであればそれは成長の物語とは言えない。
レドと対比して成長を描くのであれば、主人公はレドより前に立つべきだ。レウスの手を離さずにまっすぐ突っ込んでいく主人公の背中を「それでいい、お前はオトモンとの絆を信じて進むんだ」と言わんばかりにレドが見送りながら消えていく。そんな演出を期待していたが、結局主人公は最後までレドの背中を見続ける羽目になっていた。概念前作主人公にここまで出しゃばられすぎては現主人公の立場はない。

道中で出会うNPCたちも実力が伴っていないのでいまいち説得力に欠ける。いや実績はあるのだろうしステータスは高い。高いが、戦闘中の動きが「高いステータスにものを言わせて立ち回りが雑」の印象が強くなってよろしくない。
初見のモンスターだって一回手を見れば行動パターンが変わるまでは何が来るかだいたいわかる。しかしライダーもハンターも適当な行動を取り続けるしオトモンが負ける手を出そうとしても完全放置である。シュヴァルは君が無茶をし続けるからレイアが傷ついているのがわからないのだろうか。
観察眼もない、オトモンに適切な指示を出すこともできない、相手の手に対して広く待てるような遺伝子組み換えもしない。そんな適当ライダーやハンターたちが年の功顔で「もっとモンスターの声を聞け」「無茶をするとオトモンが傷つくぞ」と言ってきても「鏡を見ろ」で一蹴したくなる。

結局レドのようにモンスターの声を聞こえるようにはなっていない。オトモンとの絆を育んだかと思えば最後の最後に寝取られる。カイルにお膳立てされてトドメだけは刺したものの、肝心のオトモンとの手は最後の最後に離してしまう。それでも一応世界は救ったからお前ももう立派なライダーだと認められました!

あまりの道化ぶりに自分なら恥ずかしすぎて舞台から飛び降りているところである。もう許して欲しい。


モンスターハンターストーリーズ2~破滅の翼~。ノリと勢いだけでは誤魔化しきれないものがあることをよくわからせてくれる物語だった。

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