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【予備試験】学部2年の勉強と法曹コースについて(前半)

はじめに

 夏休みも終わり、Aセメスターに入ろうとする頃。何か新しい目標に向けてチャレンジしたい、大学の授業にも慣れてようやく時間ができた、などの理由で、司法試験予備試験の勉強を開始される方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 この記事では、学部1年が終わる3月から勉強を開始した私が、学部2年の3月までどのような道のりを経て、膨大な範囲を1年間で勉強したかについて、お話しします。一般的なスケジュールよりも、やや過密なものであるとご理解ください。
 なお、選択科目が予備試験に含まれていなかった年度ですので、選択科目については記事内容に含まれていません

私の情報と、特に読んでもらいたい人

 とはいえ、「この人の言っていることはホントに信用できるのか!?ナニモンだ此奴名を名乗れ!?」と思う読者の方々もいることでしょう。初めに、できるだけ簡潔に自分の情報を。
 本記事執筆時現在、私は東大法学部3年で、予備試験初受験で短答式試験に合格し、論文式試験の結果を待っている状態です。つまり、司法試験合格者でもなければ予備試験合格者でもありません。
 (2021.11.5追記:有難いことに、予備試験最終合格を果たすことができました。この記事自体は、論文式試験の結果を待っていた時に執筆しました。)
 ですので、この記事も、皆さんへのアドバイスというより、“こういう人もいるんだ”くらいの感覚で読んでいただけると幸いです。

 私は、予備試験の受験を志す東大生、特に「法曹コースも考えているので大学の勉強も頑張りたいな」と思っている人の孤独感を少しでも解消し、こういう輩もいるんだと思って奮起してもらいたい、と筆をとりました。(勉強の進捗状況など)情報の格差が結果にあらわれてしまいがちな世界ですので、東大の情報格差解消に取り組むUT-BASEの活動としても打って付けだと思い、記事にすることとしました。

 そのため、特にまだ予備の勉強を開始していない東大の1年生や、初学者で他の人の状況も知りたいという2年生に、ぜひ読んでもらいたいです。

学部1年3月(春休み) 

 私はもともと、学部1年の夏休みには漠然と法曹になるのもいいな、司法試験を受けてみようかなとは思っていました。でも勉強にはお金もかかるし、とても大きな人生の選択なので、すぐに決断はできませんでした。現役弁護士の方の主催するゼミに参加したり、「法Ⅱ」等を履修したりして、その決心がつくまで待っていたのです。
 このようにして、法学を中心に据えたいと思った学部1年生の最後に、予備校の門を叩き、冒険(!?)が幕を開けました。まず初めは、2年間で全ての講座を聞き終わるコースを申し込みました(これはすぐに変更することになります、後述)。

 最初は刑法のインプットから勉強を始めました。インプットは、基礎講義の消化に時間を費やしました。(これは完全に自説ですが)予備校では、憲法や民法から最初に始まることが一般的ですが、実は刑法を勉強の最初に持ってくると取り組みやすいと思っています。東大でも刑法第1部の授業は人気になりがちで、それはもちろん先生方のお人柄や授業への熱意の賜物なのですが、それに加えて、刑法総論が法律初学者に向いているからではないかというのが私の感想です。刑法総論は、他の法分野に類のない大きな幹があって、木の全体像が早期に見えてくる傾向にあります。また、学説対立間での論理的な一貫性が特に重んじられるため、法学の重要な基礎力が身に付く分野であると思います。

 とにかく春休みは、刑法のインプットをひと段落させることがメインテーマで、1日3コマ(1コマの受講に60分くらいかかるイメージ)を毎日受講していました。他には、他の法分野の概論的な講座も受講していました。

学部2年4月

 さて新年度、2年生の生活が始まります。しかし、この時すでにコロナ禍です。900番教室で行われる大講義の授業はもちろんオンライン。大学への入構も制限され、一気に家で過ごす自分の時間が出来ました(もちろん、大学の課題等やご家庭の事情など、そう単純には行かなかった方々も多くいらっしゃったことだろうと思います)。
 ただでさえ、文科系の2Sは履修が比較的少なめ。私は「このタイミングにインプット講座を終わらせられるのでは(なお、予備校によっては全500時間程度かかります)」と思い始め、早々に1年コースに切り替えます。個人差はあれど、時間のある2Sで一気に勉強をすすめるというのは、一つの大きな戦略だと思います。

 そして、憲法と刑事訴訟法のインプットを並行で行いました。これは予備校のオススメにのっかったものです。「講義の内容をイメージしやすいものから」という観点で、前提知識があるこれらの法分野が取り組みやすかったんですね。平日は3コマ、土日祝は6コマをベースに毎日受講していました。

 ここで法学部の2Sの履修バナシもしましょうか。憲民刑はもちろんのこと、法社会学はとっておいた方がいいです。法学部1,2類の卒業要件には「選択必修科目(基礎法学)」から4単位という要件があって、法曹コースのいわゆる"学部3年+院2年”を目指す人も、これを満たさないといけません(早期卒業要件に絡みます)。
 そして基礎法学の履修って意外と大変なんです。2Aの日本近代法史は2単位ですし、3Sの基礎法学は、だいたい法曹コースの必須科目と時間が被って履修が難しい!そうなると選択肢は自ずと絞られてきます。だから早めに単位取得しておきましょうということですね。

 あとはあまり知られていないことですが、法学部の早期卒業予定者認定要件には駒場の前期教養の成績が絡んできます法学部早期卒業制度規則2条2項⑶)。GPAが3.2以上であることが要件(2019年12月5日教授会決定に基づく)なので、1Aまでの成績でこれを満たさない可能性がある方は追い出しを検討するなど、ご注意ください。GPAの算出方法は法学部の便覧をご参照ください。

学部2年5月

 1ヶ月ごとに項目立てしてたら記事が長引きそうですが、最初の3ヶ月がとても重要なのでどうかご勘弁を...。

 私は2Sで宇野ゼミというゼミを取っていまして。そこで、法学部進学希望者の進学相談会に参加したんですね。そこで「約1年で予備試験に合格しました!」っていう方とお話する機会に巡り合いました。今まで予備1年合格なんてできるわけがないと思っていたけれど(最近は多くの予備校が1年合格を掲げていますが、その時の自分には響いてはいませんでした)、実際に経験者のお話を聞くことで具体的なイメージをもつことができたわけです。
 その方は、予備校でアウトプット講座(註1)の講座配信日にあわせて、その予習として、当該法分野のインプット講座(註2)を受けたと教えてくださりました。通常は1年目に全科目のインプット講座の受講を終えた後、2年目に全科目のアウトプット講座の受講へと移るものですが、いっぺんにインプット+アウトプットをこなしてしまおうということです(詳しくは下の図をご覧ください)。単純な私は、すぐ仰せの通りに計画をせっせと練り、実際に憲法と刑訴法で、これを達成します。

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 その時は特に多忙で、平日・祝日関係なく、1日6~9コマを目安に消化していました。大学の授業の多くで(コロナ禍のため)録画配信があり、予定が組みやすかったのも大きいですね。予備校の復習はどうしていたのかというと、講座の途中で組み込まれている答練(註3)をペースメーカーにして、その答練を受ける時には該当分野のテキストを読み直したり、論文問題を解き直したりしていました。
 まともな答案が書けるようになるまでは時間がかかるとは思いますが、私は①最低限の予習として講義で扱う問題の答案構成は行うこと、②講義をうけたその日のうちに、問題以外何も見ずに、一から法的議論を再現できるか復習すること、の2点を徹底して行うことで、比較的早くから論文問題に取り組むことへの恐怖心は除去できました。

つづく

 記事が長くなってしまったので、続きの話は後半の記事でさせていただければと思います。もしよろしければ、こちらもご覧ください!
https://note.com/ut_base/n/ne752513ca289

註釈

註1)アウトプット講座:短文事例問題を中心に、論文対策を行う講座。通常の2年コースでは2年目に始まる。
註2)インプット講座:初学者向けに、法律知識を一方的に講義する講座。通常の2年コースでは1年目に始まる。
註3)答練:答案練習会の略。予備校が開催する模擬試験のようなイメージ。予備試験の”模試”は答練よりも詳しく成績が出るもので、回数も少ない。

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