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【予備試験】学部2年の勉強と法曹コースについて(後半)

はじめに

 夏休みも終わり、Aセメスターに入ろうとする頃。何か新しい目標に向けてチャレンジしたい、大学の授業にも慣れてようやく時間ができた、などの理由で、司法試験予備試験の勉強を開始される方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 この記事では、学部1年が終わる3月から勉強を開始した私が、学部2年の3月までどのような道のりを経て、膨大な範囲を1年間で勉強したかについて、お話しします。一般的なスケジュールよりも、やや過密なものであるとご理解ください。
 なお、選択科目が予備試験に含まれていなかった年度ですので、選択科目については記事内容に含まれていません

学部2年6月〜10月

 さて、前半の記事では学部2年の5月までどのようなスケジュールで勉強を進めてきたか、ご紹介いたしました。この記事では、その続きの模様をお届けしたいと思います。
 とはいっても、ここまでくれば後は単純ですね。アウトプット講座の配信日にスケジューリングしてもらって、それに無心でついていくだけですから。平日・祝日関係なく6〜9コマ(1コマ60分が目安)が基本でした。どのような順番で法分野を学習したかは、下図をご参照ください。

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 ここで一点だけ付言しておくと、私は予備試験の論文の過去問を後回しにしていました(註1)。一つには「難しいからどうせ解けないし...」という消極的な理由もなかったわけではありませんが、それよりも、とても忙しかったからという点が大きいです。行政法と商法のインプットをしながら、民訴と刑法のアウトプットをするみたいなこともあったので、ややもすれば息が詰まってしまうような、「勉強生活100マンゴーサラダ」状態です。そのような中で過去問を70分かけて実際に書くのは、はっきり言って無理でした。他方で、過去問は最初はきちんと手で全部答案を書いてみるべきだと思っていたので、答案構成にとどめて適当に解説を聞くこともしたくなかった。そこで、最初のうちは、過去問の解説はあえてスキップして、アウトプット講座の復習をする段階になってから過去問を引っ張りだして解くようにしました

 東大での2Aの学修についても記しますと、私は「憲民刑+政治学」に加えて、経済学基礎と国際政治を履修しました。特に経済学基礎は、基本概念を精確に理解しつつ基本的な計算ができるようになると(当座はそこが大変なのですが)一気に身につけやすいです。他は、国際法をとるなり国際政治をとるなりお任せです。東大ローでは国際法の発展的な授業がいくつかあるので、先に国際法を履修しておきたいというのもあり得る選択ですね。3年はできれば実定法科目に打ち込みたいので、政治系経済系は卒業要件と照らし合わせて、自分の可処分時間と相談しつつ履修すべし!ということです。

学部2年11月〜1月末

 11月にもなると、“大学の定期試験”がモソっと脳内のオフトンから起き出してくる頃です。特に東大法学部2年の試験は、2S〜2Aの試験が1月末にどっとくるので大変です。忘れていた(ことにしていた)試験勉強も、しっかり取り組まねばヤバいのではないか、という焦りもあるでしょう。

 私の場合、予備試験については、この頃にインプットを(実務基礎も含めて)全て終えて、具体的なアウトプット講座についても行政法と商法を残して終了していました。そこで、これらの復習をしつつ、予備試験の論文過去問も解き始めました。また、短答式の過去問についても、1日10数問ずつ解き始めました(繰り返しますが選択科目は考慮していません)。このように、かつての怒涛の「受講期」から、徐々に「復習期」「実践期」へとフェーズを移していきました。
 他方で、大学の定期試験の勉強もしなきゃなと思い、特に実定法系でない科目については、年内から多くの時間を復習にあてていました。ちなみに法学部の定期試験は、実定法系も含めて超重たいです。オンライン試験で持ち込みも可能であっても、その分問題点の把握のスピードや答案における論理的一貫性、個々人の情報処理能力など総合的な面において、相対的に浮上する必要があります。

 ちなみに、この期間は特に自分にとっては躓いた時期でした。他の大学生がそれぞれ充実した生活を送る中で、予備試験に対して集中力を持続させることも難しいですし、過去問演習を通じて自分の苦手や答案上の欠点が露になるにしたがって、「自分に足りないもの」の膨大さに慄いていました。過去問の添削でひどい点数が返ってきたときは、このままで大丈夫なのだろうかと思うことも多々ありました。
 そのなかで私は、大体1日の中でどの時間帯に何をやるかを決めて意思決定のコストを少なくするとともに、午後に必ず散歩に出かけて日光を浴びていました。また、個人的に合わないと思い始めてから、必要なもの以外SNSのアカウントを削除するなどもしました。こうしたことで規則正しい生活と、他人との必要以上の(無意識での)比較を避けることで、何とかメンタルの調子を整えました。さらには、実定法以外の科目の勉強を出来るだけ頻繁に挟むことで、頭の切り替えを図っていたと思います。

学部2年2月〜3月

 さて、そろそろ勉強開始から1年ですね。とんでもない量を1年間で終わらせるのですから、振り返ってみると結構あっという間です。

 最後に、私は実務基礎科目のアウトプット講座を受講しました。本当は、「実務基礎科目は、短答の結果が判明してからにしよう...」と弱気になっていたのですが、すでに学部2年のうちに予備に合格していた友達から、実務は早めにやっておくべきと太鼓判を押されてしまったので、なんとか終わらせました。
 今振り返れば、短答後論文前って、定期試験や答練などで結構忙しいので、大変ありがたい忠言でした。実務基礎科目は民事と刑事あわせると100点にもなりますし、周りの対策が遅れているので少しの勉強でもアドバンテージになります。

 ここまでやってようやく、予備校の講座を全て聞き終えたことになります。2月〜3月は、短答の勉強も本格化してきていたので、並行して実務基礎をやるのにも難儀しましたね。

終わりに

 ということで、ここまで学部2年での履修と並行しつつ予備試験の試験範囲の受講をひとまず終わらせた(身についたとは言ってない!?)記録について、まとめてみました。

 この記事の最初にも述べましたが、このスケジュールは過密ぎみの日程です。この日程をこなすには、1日何時間勉強したかどうかではなくて、むしろ、1日の中で空いている時間は全て法律の勉強にあてるというスタンスで望むことが必要です。したがって、「大学生活の中で得られたはずのもの」を少なからず享受せずに終わってしまうことはあるかもしれません。一年で講座の受講等をなんとしてでも終わらせることが全てではないですし、そもそも法律の勉強に「終わり」はありません

 そのため、私は「大学の勉強と資格試験との両立はこうでなければならない」と言いたいのでは毛頭なくて、様々ある優先順位の中でいかなる取捨選択をいかなる根拠で行うかが重要だと強く考えています。その中であくまで一つの選択肢として、法曹コースを目指すにあたっての経験ベースでここまで執筆してきました。

 ただ、このようなスケジュールを組んでいても、2年時には所属するサークルにおける年に1回の重要な企画で大きな役割を果たすことができました。個人的には、予備校に入り始めたタイミングが早かったとか遅かったとかいった、そのような後悔はありません。大学入学前に焦って予備校に入るなんてことをしていなくても、このような道のりを辿ってなんとかかんとか3年の予備短答合格までに漕ぎつけた人がいることを知っていただければ、私としてもこれ以上の望みはありません。(2021.11.5追記:有難いことに、予備試験最終合格を果たすことができました。この記事自体は、論文式試験の結果を待っていた時に執筆しました。)

 ここまで長文を読んで頂き、本当にありがとうございました。

註釈

註1)ここは賛否両論あるところです。この記事に対して、予備試験合格者からは「私は、最初過去問を解くときは、まだインプットが十分でなくてもとりあえず答案構成だけやってみて、過去問の難易度を知るというやり方をしてました。」とのコメントをいただきました。

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