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pohjora

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usuperaのショートショートを溜めていきます。
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#ショートショート

ドントデストロイ。

「壊すとまた叱られるよ」 キュウロクの注意なんて聞かずにヨンロクはテーブルにひょいと上がり、 あれやこれやのものを動かした。 「ぼくは壊してるわけじゃない。動かしてみてるだけだよ」 「だからそれで壊したり散らかして怒られてるでしょ」 「壊れるってなにさ。主観の問題だね。  そもそも怒るあの人がおかしい。君もそう思わにゃいか」 「いやいやいや、ねこの理屈なんて通じませんよ」 「お、あれに飛びついたらどうなるだろう」 「やめときなよー」 「気になるなー。飛びついたらどうなる

マントのくろねこ。

小さいのが現れたので、 もうそんな時期が来たのかと思った。 ヒトマダムたちは どっかの汚いねことの間にできた子よと 噂ができて嬉しそうだ。 しかし、わたしは知っているのだ。 あれは子ではなくて、 小さなマントのくろねこなのだ。 マントのくろねこは、この世の音の後始末をしている。 あのマントの内では、世界の音は畳まれて、 時間が乱反射しているらしい。 そもそも音をそのままにしておくと、 ヒトマダムがもっとパワーをもってしまうそうだ。 想像するだけで生きた心地もない話

すばらしい船。

すばらしい船を目の前にトリノ博士は言った。 「すばらしい船が完成だ。これは何しろ速い。ここに光が届く前に、君はその光を見ることができる。それくらい速い。そういう設計だもの」 トリノ博士の助手はパタパタと拍手し、にじむ涙をぬぐった。 タコはボーッとしている! 「さぁ、すばらしい船で旅に出よう。すばらしい旅だ」 博士と助手は今日を祝日とすることに決め、この日のために用意しておいた数々の生活用品を船に積み込んだ。タコはボーッとしている! 「忘れ物があるかないかしっかりチ