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【バーチャルいいゲーマー　四国放浪編】

　みなさんは、「八幡」をご存じだろうか！？

　徳島県阿波市に存在し、旅館、うどん屋、ビジネスホテルが併設されたこの施設。
　一見すると、何の変哲もない施設だが、歩き、あるいは自転車で四国遍路をした方々のなかには、印象深いという方も多いのではなかろうか。

　というのもこの施設、徳島県北部の遍路道に、大量の看板を設置しているのである。
　その数たるや完全なサブリミナルで、徳島から遍路を始めた人々は、もれなく海馬に「八幡」の二文字を刷り込まれ、昼食に、あるいは宿に、この八幡を選択してしまうという寸法だ。蟻地獄みたいな吸引力。

　遍路の道程が徳島の南に向かい始める辺りから、この看板は見られなくなる。しかし、四国を一巡して八十八番「大窪寺」から徳島に戻る道中である。なんと、香川と徳島を南北に分断する分水嶺を駆け下ってすぐの交差点で、再びこの、八幡の看板が出現するのだ。旅のはじめ、徳島で見た飯屋の看板などすっかり忘れていたお遍路さんたちは、ここにきて、失われていた「八幡」の二文字を呼び覚まされ、まんまと足を運んでしまうというわけである！策略！

　……などと、好き勝手に書いておきながら、結局私は、一日でも早く旅程を終えたいという思いから、「八幡」には一度も立ち寄らなかった。
しかし、今でも時々、ふと思い出す。立ち寄りそびれた「八幡」を想い、恋煩いのように、遠い徳島についてぼーっと考えるなどしている。

　サブリミナル、未だに抜けていないみたい……。