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【バーチャルいいゲーマー 四国鈍行編】

 香川県は四国71番『弥谷寺(いやだにじ)』。ここから先、巡礼は一時、矢継ぎ早の様相になる。というのも、次の72番『曼荼羅寺』、73番『出釈迦寺』まで、比較的短いスパンで札所が置かれており、一気に打つ(巡礼する)ことができるのである。

 札所も八十八ヶ所あれば様々な形態のところがあり、中には駐車場から本堂まで、ずいぶんと険しい道のりを強いられることもある。しかしながら特に劣悪な往来環境の札所は、手厚い道路工事やロープウェイ、ケーブルカーといった交通手段が設置されるなどして手が加えられ、かなり改善されている。この弥谷寺も、そうした寺院の一つだ。
 駐車場から本堂までの間に、石段が540段。肉体修行の道場といった感じの本寺院。しかしながら御仏の慈悲。なんと400段目の辺りまではマイクロバスが運行するようになっており、一足飛びに本堂へと近づくことがができる。……まあ、そこから140段(しかも、このあたりが特に険くなっている)は、どうあがいても自分の足で登らねばならないんだけど。


 ある日の15時半、そんな寺院に到着した。
 四国遍路の巡礼は、納経所の営業時間にその予定を掌握されている。7時から17時。この時間の範囲でなければ、納経所で御朱印を頂戴することはできない。そのため、お遍路さんの一日は自然と、7時ちょうどに最初の寺院で参拝を済ませて納経所へ立ち寄り、17時までにできる限りの寺院を打つ……という段取りに落ち着くのである。

 さて、15時半である。私は弥谷寺の駐車場で息を整えていた。ここまでキツめの上りを、自転車と共に這い上がってきた。前述の通り、73番までは比較的近いから、17時に間に合うかもしれない。目の前に立ちはだかる、540段の石段を勘定に入れなければ……。


「頑張れば73番まで打てる……。」


 そんな風に思ったのが運の付き。マイクロバスを待つ時間と乗車賃をケチったことで、もはや逃げ道は完全に遮断された。540段をゴム草履で駆け上がり、スピード納経で再び540段を駆け下る。
 そのまま一つ先の札所である、72番・曼荼羅寺へ向かい、山門に駆け込んだのが、16時20分。続いて73番。ちょっとした、今までの旅程を思えば、本当にちょっとした山の上にあった。空腹。疲労。焦燥感。そこを、はっきりと死ぬ思いで這い上がった。そうして出釈迦寺に到着したのが、16時40分……。


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▲行き倒れそうになりながら登った73番『出釈迦寺』の階段。


 もともと運動ができない体に思いっきり無理をさせたせいで、足腰はもちろん、頭からつま先まですべてガタガタ。それが振る舞いに現れていたのだろう。73番の御朱印を頂戴したところ、あわれに思った納経所の人が飲み物でも買ってくださいと、納経代を200円キャッシュバックしてくれた。四国の人はやさしい。
 17時の間近、丘の上に位置し、気持ちの良い風が吹き抜ける出釈迦寺。
お恵みの200円で購入した飲み物は、染みわたるような美味しさで、朝、ホテルで頂いたおにぎりは頭がクラクラするほどの空腹に…………と思ったけど、人齧りしたらメチャ苦手な梅干しが入ってて吐き出しちゃった。本気の空腹ならなんでもウマイというのはウソだと思った。ホテルのおばちゃん、ごめんなさい……。


 と、そのような無理をしたために、全身の疲労は、あえなく後日へ持ち越された。結果、この後数日にわたって体が上手く動かず、ほうほうのていで旅路を進むはめになったのだった。無理ってコワイ、改めてそう思った。

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