インストラクショナルデザイン学習記録⑧

鈴木克明先生著の「教材設計マニュアル:独学を支援するために」を中心にインストラクショナルデザイン(ID)の学習をしようと思います。
数学は独学で学べる部分が多いので、教材の力だけでどこまでできるのか知りたいと思ったからです。また、youtubeを活用した動画教材の開発をしており、そのクオリティを上げるためにIDの勉強が不可欠だと思ったので、今回の学習にいたりました。
また、このnoteは「教材設計マニュアル」をまさに独学で学習した際のレポートでもあります。引用はありますが、ほとんどすべて自分のことばでまとめていきます。
【感想】は最後に。それ以外は、私のための学習記録です。


【教材の出来具合をチェックする】

これまでのノウハウ(9教授事象、チャンク、階層分析、3つのテストなどなど)をもとに教材を作成したら、その出来具合をチェックしましょう。
教材には長所も短所も存在します。その長所・短所を理解したうえで作成し、作成されたものが本当に学習者目線で良いものにするために綿密なチェックをします。

私は数学の教師なので、「数学のプリント教材の長所・短所」と「教材のチェック方法(形成的評価の7つ道具)」を書いていきます。

数学のプリント教材の長所・短所
形勢的評価の7つ道具

【数学のプリント教材の長所・短所】

私は授業でよくプリントを作成し、宿題にしたり授業であつかったりします。合計すると1回の授業で1種類以上のプリントを作成しているきがします。「小テスト」と「問題演習」をプリントにすることが多いです。多くの数学の先生も同じだと思います。つまり、数学の学習とプリント教材は非常に相性がいいのだと思われます。

【長所】
・つくるのが手軽
・つかうのが手軽
・直接書き込める
・何枚も印刷できるので、気軽に何回も出来る
・少ない枚数で済む(数学は問題文が短いので)

【短所】
・解答を見ようと思えば見れてしまう
・解答をつけないと独学が厳しい
・色彩が乏しい(モチベーション低下)
・解答をみただけでは分からないことも多い


長所は長所で問題ないので、短所について考えていきます。
特に、「答えをつけるかつけないか」は教師の中でも意見が分かれるところだと思います。
えをつけないと分からなくなった時、手詰まりで思考がストップしてしまう。
答えをつけると答えに頼る癖がついてしまう。

どちらの言い分もわかります。これは、答えをつけることで得られる技能と答えがないことで得られる技能は別なので、意見が食い違って見えるのだと思います。
答えをつけることで、「発想(創造)」する力の育成が弱くなります。一方で数学の定石や基本事項の中には、独りで考えて発想するには無理があるものが多いです。
三角比を知らないと三角形の面積を求めることができないということです。

「答えつき教材」は主に定石や基本事項の「インプット」を目的としています。
「答えなし教材」は知っている知識をもとにあらたな解法を思いつく「アウトプット(創造)」を目的としています。
つまり、どちらの教材も目的に応じて使い訳が必要だということですね。

注意点を一つ上げておきます。それは、「答えつき教材」による「インプット」は決して暗記ではないということです。数学全般、暗記を目的としていません。論理を構築することを目的にしている(と私は思う)のです。
別の言い方をすると、数学のインプットは言語情報(暗記)ではなく、認知技能(論理)であるということです。
論理構築の仕方をたくさんの演習で学び、「答えなし教材」で自分で論理を構築する(創造する)。これが数学を学習するうえで気を付けなくてはいけません。

「数学は暗記だ」と言っている教師の本当の心情は、「論理構築の仕方を覚えよ」ということだと思いましょう。

【形成的評価の7つ道具】

教材の出来具合をステップを踏んで確かめる方法を形成的評価といいます。7つのステップを紹介します。

①教材そのもの
教材は必ずしも完成してから評価を行うわけではありません。完成する前に手直しを前提として行う評価と、完成してから行う評価があります。
私は前者を推奨します。なぜなら、Plan-Do-Seeを繰り返すことでより、質の高い教材に仕上がるからです。Seeに当たる評価を行って、もう一度Planに戻る。そのようなサイクルを繰り返すことで、学習者のための教材になるとおもいます。「作りっぱなし」「手直ししない」はやはりよくないでしょう。

教材は、途中でかまわない。しかし、部品(チャンク)はすべて揃えましょう。ここでは、事前テストから事後テストまですべての部品がそろっているかをチェックします。

②前提テスト
この教材に進んでもよいかを確認するためのテストです。学校でいうと入学テストや進級テストです。
数学で言うと、「三角関数の教材」の前提テストは、「1次関数」などになるでしょう。ポイントは、前提テストをクリアできない場合、その教材に進んではいけない、というところです。

③事前テスト
この教材を使う前の状態を把握するためのテストです。これは事後テストとセットになります。事前テストは合格できなくてかまいません。むしろ、事前テストに合格するということは、学習者はこの教材で得られることはすでに身に着けている、ということになります。
事前テストに合格する人は、この教材を使用せず、次の教材に進む必要があります。

④事後テスト
教材をすべて終え、本当に身についたかどうかを確認するテストです。
教材のゴールにあたります。事後テストに合格できない学習者が居た場合、教材の中身に問題がある、と言ってもいいでしょう。

⑤アンケート用紙または質問用紙
教材について学習者の意見を聞きましょう。そのためのアンケートが備わっているか確認してください。

⑥観察プラン
教材を使用している学習者を観察しましょう。つきっきりで観察しますが、独学でやらせます。観察者は、「学習者がこの教材をつかってスムーズに学習をすすめられるか」を観ます。
よって、つきっきりで観てはいるものの、口をだしてはいけません。

⑦経過時間記録用紙
予想通りの時間で学習がすすんでいるかチェックしてください。
1チャンク1時間以内です。
また、スタートからゴールまでどのくらいかかるのかチェックしてください。余りにも長い場合、チャンクを分ける必要があります。


【感想ー定期テストで赤点をとってしまうのは誰の責任か?】

学校の定期テストで赤点をとる生徒がいる。。。赤点が多すぎると学校として対策をとらなければいけないでしょう。責任の所在はどこでしょうか?
「生徒」、「教師」、「テスト」など。

その状況により、責任の所在はさまざまだと思いますが、私は「学校のシステム」に問題があることが多いと考えています。

そのシステムとは、「赤点をとるとわかっている生徒を進級(または入学)させている」というシステムです。

前述のように入学テストは、「前提テスト」の役割です。入学者がたくさんほしいからと言って、この前提テストの合格点を甘くすることはあるでしょう。しかし、前提テストの基準をさげたのに、ゴールである「事後テスト」の基準はそのまま。あるいは、事後テストとしての期末、中間テストの基準は統一感がない場合もあります。(教員の裁量の部分もある)

もうひとつ、「赤点をとるとわかっている生徒を進級させている」現象の原因は、進級させてあげたい、という想いです。
これは親にも教員にもあります。落としたくて落としているのではありません。しかし、学習者中心で考えると、「身についていないのに進級できた」ことになります。さらに、見についていない状態で次の学年に進むことで、「より困難な課題」に直面します。前学年で身に着けたはずの知識や技能がないので「より困難な課題」を解決する能力がそもそもない。
これは、かなり苦痛です。

マスタリーラーニングを発想を思い出したいです。
「すべての学習者は必要な時間さえ与えれば、かならず内容を身に着けることができる」んです。
赤点をとってしまったにもかかわらず、次の内容に進んではいけません。なぜなら、その生徒にとって必要な時間が与えられずにことが進んでいってしまっているんですから。

留年に対する考え方はもっとしなやかにならないものでしょうか。
友達と一緒に進級したい気持ちも大いにわかります。しかし、学習が中心。自分にとって、この内容を学ぶのに2年はかかるんだと腹をくくってもいいような気がします。


留年すると学費の問題があります。留年したら学費が少額ですむ制度はないものでしょうか?
そのような未来の学校を妄想しています。
「自分は、他の友達より学習に時間がかかる。それでもいい。出来なかったことをもう一度やりなおそう」という発想はとてもいいと思います。
マスターしてから次にすすむ。その発想が自然になるといいと思いました。


→学習記録⑨




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?