オンライン学習の構想・妄想【前編】

4月27日8:00, 読売新聞で「オンライン学習、国が開発へ」という記事があがっていた。
文科省が正式に「これからオンライン授業をやります。ガイドラインだします、みんなやってください」って出したものではないが、今までの流れからしてメディアで取り上げられ、そのあとに省庁の記者会見などで正式に発表というパターンはあった。オンライン授業に完全にシフトするだろう、と考えてもいいかと思う。

教員になった初年度から主に youtube を使った反転授業をやってきた身としてオンライン授業の課題・改善を考えてみた。

【オンライン授業の課題(前編)】
・ネット環境の整備
・出席、欠席、成績が正式につけられない
・学習の質が担保できない

【オンライン授業の改善(後編)】
・スキルはyoutubeやスタディサプリで
・学習モチベーション維持は担任が行う
・本気で「学び」を多様化する社会に
・文科省の策を待つより現場で進める
・これからの構想・妄想


【ネット環境の整備】

オンライン授業をすでに進めている学校も、これからやる学校もネット環境が大きな壁になる。オンライン授業を導入する段階では「ネット環境ありますか?」とアンケートをすると思う。ネット環境がない家庭はどの学校でもあると思うので、きっとそこに対して手立てをするかと思う。誰が手立てをするかというと、自治体の教育委員会または外部団体である。外部団体というのは、「この期間だけ無料でWifi貸します!PC,タブレット貸します!」と言ってくれている団体のこと。ありがたいことにいろんな企業でそういう話を出してきてくれている。Zoomの有償版がしばらく無料になったこともその一環の話にしてよくて、調べるといろんなところがいろんなことを無償にしてくれている。教育委員会のほうで用意をしてくれるパターンもある。
学校の役割は、ネット環境を整えてくれるところと連携することだと思う。


一方で、アンケートに「ネット環境ありますよ。WifiもPCあります。」と答えた家庭も気を使わなくてはいけない。実際、オンライン授業において「どのくらいの通信速度なのか」がかなり重要だからだ。
オンライン授業というのは、Zoomにしてもハングアウト、Skypeにしてもタイムラグなしで行われている。
あり得るのは、「通信速度が0.2Mbps」で「ネット環境あり」と回答する家庭。この速度でオンライン授業やったら、「Zoomには入れるけど、先生がずっと固まっている。たまにノイズが聞こえるけど、あとは聞こえない」という感じになる。もちろん、内容なんてわからない。
これは実質、オンラインなしと考えた方がよい。
それから、「スマホで授業を視聴します。だけど、キッズ用プランで通信制限バリバリかかってます」という子も現実的な授業は受けられないので、ネット環境なしと考えた方がよい。
正直、こういう家庭のネット環境は、家庭で整えてもらわなきゃいけないと思うけども、幸い今は無償提供がいろいろある。当面は、ありがたいサービスを利用するのがいいかと思う。

どちらにしても、オンライン授業は家庭のネット環境に依存してしまう。各家庭がどんな状態かを把握するのは、学校の役目になってくる。今まではそんなこと気にする必要なんてなかった学校も、このご時世、すぐに気にしなくてはいけない。のちにも書くが、学校の役割が「ネットインフラのチェック」とか「家庭との密な連携」とかいう方向にシフトした方がいいと思う。なぜなら自分の妄想では授業の半分は外部がやってくれるからだ。


【出席、欠席、成績が正式につけられない】

オンライン学習を推進しても現状では、出席や欠席、成績の記録が取れない。自治体によっては、「この期間の学習内容は成績に含めないでください」とお達しがある。
出席、欠席、成績については「指導要録」という公式な記録として取らなければいけないものだ。また、「1年間で何時間授業をうけること」という枠が決まっている。(その必要授業時間は校種によって違う)

現状、これらの公式の記録は取れない。

つまり、「オンライン授業だりぃから受けるのやめよ」っていう生徒は、公式記録ではまったく損にならない。その内容がテストにでて、成績に含まれるわけでもないし、欠席にすらならないからだ。(サボることがむしろプラスになる可能性は今はあまり考えないこととする。)

子どもたちの学習モチベーションの中で現実的なものは、「先生にやれといわれたからやる」とか「お母さんに勉強しろと言われたからやる」というのが主要ではないだろうか。ある程度の強制力があるからやってみるものだ。まぁ、これは賛否両論あるかと思うけども。


オンライン授業やるとしたら、ある程度の強制力が必要だ。いままでは、出席、欠席、成績などが強制力を担っていたが、現状のオンライン授業ではこの強制力が失われている。
つまり、サボっても問題ない仕組みなっている。もちろん、サボった生徒が長い人生をかけてその付けをあとで払うことになる可能性もあるので、自己責任ではある。しかし、目の前の「オンライン授業を成り立たせる」ことにフォーカスした場合、強制力が必要なのは間違いない。


冒頭のリンクでは、成績(テスト)について言及があるから、ここの整備は時間とともに行われるとは思う。


【学習の質が担保できない】

上記のように、学習に強制力がなくなっている。
勉強しなくちゃいけない状態から解放されたら、ゲームしてぼーっとして好きなことして1日が過ぎてしまう子が大量になる。
好きなことができる時間が増えることはいいことだと思うが、長い目でみたとき、大きな不利になる可能性も十分ある。

また、オンライン授業をうまく機能させたとしても、「集中の仕方」や「宿題の取り組み方」が今までと大きくことなる。Zoom授業も慣れればそんなに特別なことではないが、Zoom授業でしっかり学ぶときに必要な学習リテラシーはいままでとは違った方向性だと思う。

さらに、オンライン授業の時間割を組んだとして、それは1日に6時間、7時間確保できるだろうか。
通常通り学校に行っていた場合、6時間は毎日ある。道徳もあるし、体育も総合学習もある。
通常の時間割をオンライン授業でこなすことは、設計上、無理がある。

誤解を恐れずに言うと、オンライン授業をうまく整備したとしても、どんなに学校が頑張っても、学習の質は担保できない。今までの教育観においての学習の質を担保したいとするのならば。つまり、高偏差値をゴールとする教育観のこと。

これは、非常に大事なポイントなのは、「何をもって学習とするのか」ということだ。
自分は、現在の東大に合格できる能力、高偏差値の大学に合格できる能力も十分必要だと思っている。でも、自分が言いたいのは、現在の偏差値ベースで測る能力を、学習と位置付けるならば、オンライン授業でやったとしても伸びませんよ、ということ。オンラインに不慣れな先生の授業をうけるより、youtubeやスタディサプリで自学自習できる素養を培う方が絶対いい。

だから、大事なのは国が主導するにしても「タブレット配りました、ネットインフラ整えました、はいどうぞ」だけでは、結局いろんなことがいまいちになって、「じゃあ何を学習しましょうか?」まで深刻にプランニングしないといけないということだ。
今までリアルの教室でできていたことがオンラインで実現できた、というのはあくまでベースの段階で、次の段階が必要になる。


現状に嘆いても仕方がないけれど、多くの現場では苦労していると思う。
「子どもたちのために何ができるだろうか」を一生懸命考え、いろんな解決策をだしてい学校も多いはず。ネット環境整えるだけでも、多くの方が尽力している。いままでなかったことを短期間でやろうとしているので、本当に多くの現場はめちゃくちゃ大変だと思う。
そして、仮定として「教育が子どもの未来のためのもの」だとしたら、次の段階を構想したプランを実施しなくてはいけないと思う。

(最後まで読んでくれてありがとうございました!後編へ続く!)


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