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「あなたの仕事」を「アーティストの仕事」として知覚する

アーティストの荒川修作と、詩人のマドリン・ギンズの共作に「意味のメカニズム」があります。平面作品のなかに写真やイメージと、言葉が描かれた作品です。

そのなかに「AをBとして知覚せよ」というフレーズがあります。元の英語では「Perceive A as B」という表現です。

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(荒川修作/マドリン・H・ギンズ『意味のメカニズム』p.44)

この絵画に描かれたテキストを読み込み、その後ぼーっとしていると、言葉では捉え難いが、なんだかAがBとして知覚されていくような気もする。体の内側で、言語化されない変化が起こっているような気がする。

「声を出す赤ちゃん」を「お湯が沸くヤカン」として知覚する

この「AをBとして知覚せよ」というフレーズは、さまざまなものに当てはめて考えられます。

たとえば、生後3ヶ月で「おー、あー、うー」と腹の底から声を出すことを楽しんでいる赤ちゃんの姿を友人に送りました。その様子を、友人は「お湯を沸かすヤカン」に喩えました。

その瞬間にぼくは、となりで声を出す赤子の声が熱湯から出る蒸気のように、沸いているようにしか感じられなくなってしまいました。

「声を出す赤ちゃん」を「お湯が沸くヤカン」として知覚する。

全く異なる2つのもののあいだに関係性を見出すことを「類推/アナロジー」と言いますが、荒川修作+マドリン・ギンズによるインストラクションのポイントはAとBの類似点を言語的に見つけてるのではなく、AをBとして「知覚する」ところにあります。

「ワークショップデザイン」を「彫刻」として知覚する

たとえば、ぼくはワークショップを設計する仕事をよくしています。そして、その仕事を「彫刻」として知覚しています。

とくに、ワークショップの進行表=タイムテーブルをつくっていくときです。まず、彫刻の土台と骨格をつくるように、大まかな進行をつくる。その彫刻のテーマを浮き彫りにするように、細かい進行表をつくり、セリフなどを書き込んでいく。粘土や木材に向き合って彫塑するように、時間や出来事を彫塑するのです。

こんなふうに感じながら仕事をしていると、実際にさまざまな彫刻作品を見たときに、それが作られたプロセスもふくめて感銘を受けます。「なんとすさまじい仕事なのか!それに比べて自分の彫刻(=ワークショッププログラム)はまだまだ足りない…!」と感じ、より面白い仕事をしたくなるのです。

「あなたの仕事」を「アーティストの仕事」として知覚する

こんなふうに、自分の仕事をアーティストの仕事として知覚してみる。そうすることから、仕事へのインスピレーションを生み出していくことができるはずです。あなたの仕事がアート作品をつくることではなかったとしても、です。

この知覚する感性を磨く場として、「アーティスト・トレース」があります。

さまざまなアーティストの手つき、生き方を知り、自分の仕事や生活と見比べていきます。自分の生活・仕事を、アーティストの生活・仕事として知覚してみることを通じて、触発を生み出すことを目指しています。

次回は3/20(土)10:00~12:00開催です。テーマはメキシコの画家フリーダ・カーロの作品と人生です。

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