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俺たちの見たかったものはこれだったろう?

ホロライブのノンストップストーリーを見た。ネット配信アーカイブで。だいぶ前のことになるけど。

その時の感情を一言で表すと、「俺たちの見たかったものはこれだったろう?」

色んなアイドルを見てきたつもりだけど、最近のアイドルでここまでの正統派はいなかったんじゃないか。

現代アイドルは、アイドルの成長物語を楽しむものだと思っている。これはゾンビランドサガでも言及されていたが、アイドルと一緒にオタクも階段を登っていくこと、この共通の体験に重きが置かれている。最初から完璧なアイドルは求められていない(と言うと言い過ぎかもしれないが、"アイドル"としては明らかに求められていない。そのジャンルは例えば声優など別にあると僕は考えている)。

数年前まではこの役割は地下アイドルにあった。だけど、地下アイドルは余程のことがない限りずっと地下のままであることを多くのオタクは悟り、地下オタなる存在も数を減らしていく一方だったように思う(今の地下オタは地下アイドルに夢を見ていないし地下アイドル自身も夢を見ていないけどそれはまた別の話)。僕もここ数年は年に一度わーすた(以前の投稿参照)しか行っていないくらい、現場に行くのはやめてしまった。

vtuberの歴史は浅いが、流れが速い。僕も詳しい歴史は知らないし、そういうのは他のオタクに任せればいいと思っている。ただ、ここ一年のホロライブについては体感的に分かることもあった。それが2019年秋以降のリスナーの急激な増加と、そこからノンストップストーリーまで続く大きな流れだ。

僕がホロライブを見始めたのは2019年5月くらいだったと記憶している。ころさんがデビューしたかくらいの時だったはず。湊あくあちゃんがきっかけだった。あの頃は登録者数10万人もやっとなくらい、言ってしまえば弱小事務所であった。

アイドル系の事務所ではみなさんご存知アイドル部がトップを走っており、他の追随を許さないレベルだった。あの頃のオタクにホロライブを勧めても見てくれなかったと思う。それくらい強い箱だったし、リアルイベントも開催するなど積極的だった。

今でも客層はいまいち分からないけど、当時のアイドル部に求められていたもの、それが成長物語だったことは明らかだった。リアルでの箱単体イベントの開催と成功、その後の拡大をオタクの大部分が夢見ていた。そういう空気だった。でも、度重なる不祥事と事務所の体質によって衰退の一途を辿ってしまった(この辺は検索してください)。

アイドル部にできなかったことを、オタクはホロライブに求めたのも明らかだった(実際、アイドル系の事務所は他に存在しないと言ってもいいと思う)。ホロライブにとってはタイミングが良かっただけだと思うけど、ずっと単独イベントを開催するために動いていたようだった。自社音楽レーベル立ち上げや、フブキちゃんの単独イベントなど、ノンストップストーリーへの布石とも取れるイベントも開催してきており、また客数拡大のためのスマホゲーコラボなども行って準備をしてきた。配信者それぞれで配信業の目的は違うだろうけど、箱としては概ね向いている方向(すなわちアイドル=ライブ)も揃っていた。そして念願だった"全員での"単独イベントの開催と成功。本人たちも嬉しかっただろうが、それ以上にオタクが嬉しかったんだと思う。

この流れはまさにアイドルの物語そのものだった。イベント名をノンストップストーリーと名付けたのもセンスがある。色んなオタクがいるから、みんな思い思いに見ていたと思うけど、僕はこのように思った。みんなが夢見て、見ることができなかった景色を、ホロライブのみんなが見せてくれた。俺たちはこれが見たかったんだ、と。

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