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「マージン率」の公開を ~転売と中抜き~

安く仕入れて高く売る。商売の基本である。これを文字通り実践している「転売屋」はしばしば非難され、「古物営業法」「迷惑防止条例」「チケット不正転売禁止法」等の法律を駆使して排除される。

規模や方式は違うが、「中抜き」という儲け方がある。発注者から高く請負い、下請け業者に安く委託する。安く請け負った業者がさらに安価で再委託する「孫請け」「曾孫請け」も存在するが、その多くはなぜか「転売屋」のように規制されることはない。

「ビル一棟」の建設を請け負ったゼネコンがビル本体、電気設備、内装・・・といった具合に「細分化」して再委託するのはわかるが、A社に「ビル一棟」・B社に「玄関マット1枚」といった程度の「丸投げ」での再委託でも法的には問題ないのだろうか?さすがに「玄関マット1枚」はあり得ないと思うが・・・

この手のテーマで、しばしば話題にあがる人材派遣業界。「1時間あたり2000円」で人材派遣を希望した派遣先に「時給1200円」の人員が派遣される。派遣先は「2000円分の仕事」を期待するが、派遣された人は「1200円しかもらっていない」と言う。派遣会社の言い分は「派遣労働者の社会保険料や研修・教育費、福利厚生費、その他諸経費がかかる」

この3者のジレンマを解決するのは簡単。派遣先が求人依頼する際に「時給1200円の人員を10人お願いします。その場合、一人あたりいくらの別費用(経費)が必要ですか?」とすればいい。「総額で1時間当たり2000円しか出せない。時給はいくらになりますか?」でもいい。

「馬鹿げている」と思われそうだが実はコレ、形を変えて実際に行われている。労働者派遣法で定められた「マージン率を開示する義務」である。

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参考資料(PDF)・・・厚生労働省より


前述の例でいえば、マージン率は40%。マージン率は派遣会社によって変わるが、マージン率が高いからと言って「ボッタくり」と言うわけではない。研修・福利厚生等が手厚ければ必然的にマージン率は上がる。同じマージン率であっても「社会保障なし。交通費支給なし」ならばボッタくりと言われれも仕方がない。

大切なのは「情報の開示」である。すべての情報が共有されていれば労働者は「時給」「マージン率」「社会保障等の条件」を天秤にかけて仕事を選択することが可能になり、多くの「2000円払っている・1200円しか貰っていない問題」は回避できる。それを狙っての「マージン率開示義務」である。

残念な事にこの「開示義務」には罰則がないので、多くの派遣会社は公開義務をきちんと果たしていないのが現実なのだが・・・・


この「マージン率の開示義務」、うまく利用すれば悪徳転売業者や中抜き業者を排除できるような気がする。少なくとも「多額の公費・税金が投入される事業」に関しては、罰則付きの義務化をしても納税者は文句は言わないと思う。

今まで中抜きで大儲けしてきた人達には申し訳ないが、時代は「情報の開示」を求めている。昭和・平成で成功したビジネスモデルであっても、令和では犯罪になるケースもある。すべては法律を作る国会議員次第だが・・・





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