見出し画像

認めたら負け?危険運転致死傷罪

危険運転致死傷罪。あおり行為や幅寄せ行為による人身事故や、酒運転・暴走行為・スピード違反などの危険運転車で人身事故などを起こした場合、通常の事故の場合よりも思い罰則が科せられる・・・・webmasterはそう思っていたのだが、実際には違うらしい。


法律用語は文章が難しいので、今回は結論を先に書く。

   酔っ払って運転して人を殺した場合

1.「ベロベロに酔っていて運転できる状態ではなかった」と自白するか立証できた場合は、「法定刑の重い危険運転致死傷罪」

2.1の自白(故意性)を得られないか立証できなかった場合でも、アルコールの影響で事故が起きたことを立証できれば「法定刑の軽い危険運転致死傷罪」

3.酔っ払い運転の事実があっても、アルコールの影響で事故が起きたことを立証できなければ「危険運転致死傷罪」ではなく、「過失運転致死傷罪」や「酒気帯び運転罪」


これを口語に訳すとこうなる。


「おー、久しぶり。お前が電話くれるなんてめずらしいな。えっ、酔っ払い運転して事故った?人身?即死?おい、よく聞け。警察には素直に飲酒の事実を認めて謝るんだ。でも絶対に酔っ払い運転を認めるんじゃないぞ。『酒は飲んだが正常運転できた』と言い張れ。うまくいけば罪が軽くなる」



これを読んで興味を持たれた方は全文をどうぞ。




以下は、とある弁護士事務所のサイト で見つけたもの(一部抜粋)。うーん、警察や検察に対する供述内容によって危険運転致死傷罪か過失致死傷罪かが変わるとは・・・


--------------------------------------------------------------------------------------

 ~万が一危険運転致死罪を犯してしまったら~

       逮捕されてしまった段階

 まず,検察に送致される前の段階においては,危険運転致死傷罪に該当しないことを主張することが重要となります。
 危険運転致死傷罪でなく,過失致死傷罪などで送検される場合,危険運転致死傷罪と比べて軽い罰則が規定されています。
 しかし,危険運転致死傷罪に該当しないことを主張するためには,的確な証拠を収集したり,適切な主張を行ったりする必要があります。


       検察に送致され勾留されてしまった段階

 勾留とは,刑事訴訟法208条に規定されており,最長で20日間となりうるの長期の拘束のことを言います。
 検察に送致された場合には,通常不起訴処分を目指すことになりますが,平成28年の危険運転致死傷罪の起訴率が83.5%であり,起訴猶予率が3.3%であることから,起訴される可能性が非常に高いといえます。
 しかし,被害の程度が軽微であり,前科・前歴がない場合には,被害者との和解成立,反省の態度を示すことで起訴猶予・不起訴処分となる可能性も考えられます。


       起訴される可能性が高い場合

 起訴されてしまった場合には,執行猶予を目指すことになります。
 危険運転致死傷罪の場合,被害の程度・被害者との和解成立・反省の態度を示すことで,執行猶予となる可能性が十分考えられます。
 また,過失致死傷罪などで起訴される場合には刑罰が軽減されるため,危険運転致死傷罪に該当しないことを主張することも考えられます。
 このように,危険運転致死傷罪で逮捕されてしまった場合には,自分の置かれている状況を冷静に把握して,適切な対応を慎重に判断する必要があります。また,被害の程度によっては,被害者との示談交渉を迅速に行うことで,その後の手続が大きく変わる可能性が十分に考えられます。


       まとめ

 危険運転致死傷罪は,その性質上,誰でも巻き込まれてしまう危険性があり,対応を誤ると長期の懲役刑という重い処分を受ける可能性が有ります。ですが,以上の通り,危険運転致死傷罪で逮捕されてしまった場合には,ケースに応じて適切な対応をすること等で,負担を少なくすることができる可能性があります。

---------------------------------------------------------------------------------------

勘違いしてはいけない。この弁護士事務所が「危険運転致死傷罪」を否定しているわけではない。あくまでも法の専門家として、依頼人がこの罪に問われたときの対処法をわかりやすく説明しているだけなのである。それはわかっている。わかってはいるのだが、どうもしっくりこない。

ここの法律事務所のサイトには、以下のように書かれている。

-------------------------------------------------------------------------------------

飲酒・薬物による危険運転致死傷の要件は次の3つ。

① アルコールや薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させたこと

② ①によって人を負傷・死亡させたこと

③ ①について認識していること

危険運転致死傷罪は故意犯なので、③「アルコールや薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を運転したこと」を認識している必要があります。

--------------------------------------------------------------------------------------

警察や検察は③の立証なんて出来るのだろうか?飲酒運転で人身事故を起こした人物が

「確かに酒は飲んだが、どんなに酔っ払っていても運転できる。免許を取ってから30年以上、いつも飲酒運転していたが過去に事故を起こしたことは一度もない。今回はたまたま被害者が飛び出してきてブレーキが間に合わなかっただけ」

と頑なに「正常な運転が可能であった」と言い張り、客観的事実からこの主張が崩せなかった場合、検察は罪状を「危険運転致死傷罪」ではなく「過失致死傷罪」に切り替えて起訴するしかないのだろうか?



2021年7月2日追加>


ここのサイト によれば、どうやら危険運転致死傷罪にも種類があるらしい。以下はその要約。


-------------------------------------------------------------------------------

危険運転致死傷罪は「自動車運転死傷行為等処罰法」という法律の第2条と第3条に規定されていて、第2条は8つの危険運転行為を規定し、それらの行為によって人を負傷させたら15年以下の懲役、人を死亡させたら1年以上の有期懲役と定めている。

この8つの中にアルコールに関する規定もあり、第2条1号は「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為」を危険運転行為としている。

「正常な運転が困難な状態」とは、アルコールの酔いの影響により、現実に、前をしっかり見て運転することやハンドル、ブレーキの操作が難しい状態となっていること。

同法2条1号の危険運転致死傷罪が成立するためには、運転者に自己が「正常な運転が困難な状態」であることの認識(故意)が必要。運転者に正常な運転が困難な状態であることの認識があってはじめて成立する。

ただ、運転者のこうした認識を刑事裁判において検察官が立証するのは困難な場合が想定され、処罰してしかるべき危険な飲酒運転行為を処罰できなくなる可能性がある。

そこで、同法3条1項は、「アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」での死傷事故についても、適用の対象としている。

これにより人を負傷させたら12年以下の懲役、人を死亡させたら15年以下の懲役。


第2条1号の危険運転致死傷罪は、運転者に正常な運転が困難な状態であることの認識があってはじめて成立し、検察官がこのことを立証できなければ有罪とならない。

第3条1項の危険運転致死傷罪は、運転手に酒気帯び運転罪に該当する程度のアルコールを飲んで運転するという認識があれば成立する。

第3条の危険運転致死傷罪は、第2条1号の危険運転致死傷罪と比較すると、運転手が自らの行為の具体的危険性を認識していない点で非難の程度が低いことから、法定刑が軽くなっている。


危険運転致死傷罪が成立するかどうかは、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態となり死傷の結果が発生したかどうかを客観的に判断。それが認められなければ、危険運転致死傷罪は成立せず、過失運転致死傷罪や酒気帯び運転罪などを検討することになる。

アルコールの影響により正常な運転が困難な状態となり死傷の結果が発生したことが客観的に認められるならば、運転手に「正常な運転が困難な状態」であるとの認識があったか(立証できるか)を判断。

運転手にそうした認識があれば(立証できる)ならば同法2条1号の危険運転致死傷罪が、運転手にそうした認識がなければ(立証できない)ならば同法3条の危険運転致死傷罪が成立する。


------------------------------------------------------------------------------

法律用語は文章が難しい。この要約をさらに要約すると、

   酔っ払って運転して人を殺した場合

1.「ベロベロに酔っていて運転できる状態ではなかった」と自白するか検察が立証できた場合は、法定刑の重い「危険運転致死傷罪(人を負傷させたら15年以下の懲役・人を死亡させたら1年以上の有期懲役)」

2.1の自白(故意性)を得られないか検察が立証できなかった場合でもアルコールの影響で事故が起きたことを立証できれば法定刑の軽い「危険運転致死傷罪(人を負傷させたら12年以下の懲役・人を死亡させたら15年以下の懲役)」

3.酔っ払い運転の事実があっても、検察が「飲酒していなければ事故は起きなかった」ことを立証できなければ危険運転致死傷罪は成立しない。過失運転致死傷罪や酒気帯び運転罪などが適用される。


冒頭に記した

「おー、久しぶり。お前が電話くれるなんてめずらしいな。えっ、酔っ払い運転して事故った?人身?即死?おい、よく聞け。警察には素直に飲酒の事実を認めて謝るんだ。でも絶対に酔っ払い運転を認めるんじゃないぞ。『酒は飲んだが正常運転できた』と言い張れ。うまくいけば罪が軽くなる」

はコントやドラマのセリフではない。法律に基づいた、的確なアドバイスなのである。何でもかんでも厳罰に処せとは言わないが・・・・なんか納得がいかない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?