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コロナ終焉への道のり(空想物語)

★完全空想物語です。実在の国家・組織・人物等とは一切関係ありません。


ー以前公開していたモノの再編版ですー


20XX年。新型のコンピューター・ウイルスが世界中に蔓延した。

「中国の武漢にある軍関係の研究施設が、サイバー攻撃を目的として作成した可能性が高い」

と米国の研究機関が発表したため、人々は2019年に発生したコロナ・パンデミック(covid19)になぞらえて「コロナウイルス」と呼ぶようになった。

世界各国がウイルス対策に一丸となり、各研究機関が情報共有をしたおかげで以下のことがわかっている。


■構造が特殊なため、既存のウイルス対策ソフトでは対応できない

■ネット経由やUSBメモリー・SDカードといった記憶デバイスだけではなく、テレビやラジオなどの音声を通じて感染する

■音声にウイルスデータが埋め込まれており、その音声を拾ったAIスピーカー・スマートフォンが感染する事例が報告されている

■ウイルスの潜伏期間は数日から10日ほどとされているが、感染しても症状が出ないケースがある

■症状は感染した機器によってさまざま。意味のないスプールを繰り返して機器が高温になる場合もあれば、HDDクラッシュを起こす場合もある。テレビが突然ON/OFFを繰り返したり、視聴中にザッピングを繰り返したり勝手に有料チャンネルにアクセスする例もあり。スマホやPCが不特定多数のサイトに対してDDoS攻撃を繰り返す事例も報告されている



ウイルス感染した電子機器は初期化すれば元に戻るが、組み込まれている初期化プログラム自体がウイルス汚染されている可能性がある。コロナウイルス以前に作られたROM媒体のデータを使用すれば一時的には問題は解消されるが、ワクチンソフトが存在しないので再汚染の可能性は排除できない。

このような前代未聞の危機に、世界各国の対応は様々であった。

中国はネットを完全遮断し、感染した機器を「没収」という形で完全隔離した。同時に「デジタル・ロックダウン」を行い、電子機器の使用を完全停止した。抵抗する国民は「武力」で排除した。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の進む欧米諸国も、同じようにデジタル・ロックダウンに徹した。ネット接続なしでは政治・経済のみならず国民の生活が成り立たない状況であったが、

「ウイルス感染による被害額の方がダメージが大きい」

との判断からである。早期にロックダウンを敢行し、ウイルスの蔓延防止に成功した国としては台湾やNZなどがあるが、成功例は数少ない。

中にはスウェーデンのようにウイルスとの共存を選択した国も存在する。スウェーデンは「長期戦略」を掲げて国民の自主性を尊重し、緩やかな規制にとどめた。

共存とロックダウン。どちらの被害額が大きいかは後に検証が必要であろう。

日本ではどうか。政府は「ロックダウン」という強権発動を回避し、「お願いベース」でのデジタル機器の使用停止を促した。インターネットの使用停止を「お願い」し、デジタル機器に頼らない「手書き事務・手書き作業」を推奨した。

全国民に一律10万円を支給し、デジタル機器の使用停止に協力する企業に対しては様々な一時支援金・給付金を用意した。

一番の感染源とされる「ネット事業者」に関しては1日あたり最大4万円の協力金を支給した。ネット事業者には「YouTuber やブログを主たる生業とする人」も含まれ、コロナ太りをする人も多数存在したが日本政府は「迅速なる救済」を目的としてこれを良しとした。

デジタル機器使用者を糾弾する「デジタル機器警察」なる言葉も生まれた。

「ネットには接続していない。スタンドアローンだ。感染していない」

としてPCを使い続ける人がいれば、弾圧した。

「USBメモリー経由で感染していないと証明できるのか?そのPCにはWiFi や Bluetooth といった通信機能がついている。無自覚のうちに他者に感染させている危険性がある」



国民の意見は多岐に渡り、混乱が広がった。

「どうして休業しないの。休業補償があるでしょ?」

「ネットを使わなければ仕事にならない。1日4万円程度では家賃すらまかなえない」

「ネット通販業者です。紙のカタログ販売を導入するにしても電話回線は大丈夫なのでしょうか?エッセンシャルワーカーである NTT は今のところ稼動してますが、昔みたいに交換手が手作業で回線接続をしている訳じゃないでしょ?うちのネット回線を利用した受注システムと NTT の電話回線で、どちらが先にダウンするリスクが高い?」

「どうして休業補償はネット関連業者だけなの?飲食業を営んでいるけど、食材の仕入れもパソコンが使えないから電話注文で手間がかかる。QR決済やカードが使えないのでおつりの小銭が必要なんだけど、銀行がダウンしているから・・・」

「うちは食材をセントラルキッチン方式で調達しているが、パソコンなしでは工場が稼働できないので・・・」

「政府は手書きで・・・というけれど、うちはほぼ100%リモートワークになっている。社員は100人以上いるがオフィスは20畳ほどの広さしかなく、椅子も机も数人分しかない。休業補償の対象外なので・・・」


マスメディアにおいても意見が割れた。エッセンシャルワーカーを自称するメディアは活動を続け、感染拡大を恐れたメディアは「自主休業」という苦渋の決断を下した。

専門家やコメンテーターなる人々の提言や主張が飛びかい、混乱に輪をかけた。テレビによる音声感染を恐れる人向けに、無声映画を専門に放送するチャンネルも登場した。

独自のウイルス判定ソフトを作成する企業やプログラマーが現れ、町のところどころにウイルス判定SHOP、「パーソナル・コンピューター・リザレクション(復活)センター」(通称PCRセンター)が乱立した。

判定の精度もまちまちで、擬陽性・擬陰性なども入り混じり、中には10年以上も昔のウイルス判定ソフトを持ち出して「予約不要のPCR検査、1台につき3000円、数量無制限」といった詐欺的商法も横行したのだが、未知のコロナウイルスに対しては誰しも無力で、警察・検察も詐欺であることが証明できなかった。


コロナ発生から1年。国の補助金・企業努力の結果、米・英・露・中の民間企業がウイルス対策ソフトの開発に成功。約半年間にわたる国家機関の検証の末、ワクチンが完成する。

ウイルスに対する有効性は50%~90%とバラつきがあるが、世界中の国々がそれらの企業と個別に契約を結び、自国民へのソフトの配布へと急いだ。しかし従来のようにネットによる配信ができない。ソフトの製造時・出荷時にはクリーンであっても、ダウンロードした側の機器がウイルスに感染していれば対策ソフト自体が汚染される可能性がある。

CD-ROMといった読み出し専用の媒体であれば危険性はゼロになるが、そのCD-ROMを製造する工場の機器が感染している可能性がある。完全なる「クリーンルーム」で製造されたCD-ROMでないと意味をなさない。
 
その結果、米・英・露・中の各企業は他国にライセンス生産をさせることなく、完全自社管理下にある「クリーンルーム」にてウイルス対策ソフトを生産することになるのだが、需要に供給が追いつかない。世界中で対策ソフトの取り合いとなる状況が続いている。

米・英・露・中の各社はまず自国民への配布を優先した。国連の事務局長による批判の声もあがったが、経済的に余裕のある国は政治家主導による交渉を繰り返し、優先的に配布を受けるべく約束を取り付けた。中国は世界規模のワクチン外交を行い、その勢力と影響力を拡大していった。


コロナウイルス発生から数えて約2年後の春。日本国内でもウイルス対策ワクチンCD-ROMの配布が始まった。数量は十分ではないが、まずはデジタル・エッセンシャル・ワーカーである「ネット関連」の企業・技術者に優先的に配布された。

ネット経由による感染を恐れ、ソフトの認証には同梱されているパスワードが使用される。開発企業の利益を確保するため、CR-ROM1枚に対してパスワードは5台分のみ付与されている。パスワードの使い回し・不正使用を防ぐためにソフト導入の2週間後、ネット経由でサーバーにアクセスして再認証を受けないとワクチンソフトは無効となってしまう。ネットに接続していない機器に関しては電話による再認証も可能とされた。

日本政府は第二段階として「高齢者を優先的配布対象とする」とした。デジタル弱者である高齢者の感染を防がないと・・・・・


これを書いたのが2021年の4月の終わり。高齢者向けのワクチン接種が始まった頃である。


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