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正当防衛を考える

大阪市北区の路上で通行人を脅し、手足を縛ったとして・・・・・・会社員(33)を逮捕した。警察発表では歩いていた男性会社員(41)に刃物を突き付けて『騒いだら刺す』と脅迫。道沿いの駐車場に連れ込んで約2万8000円が入った財布などを奪い、手足を粘着テープで縛るなどした疑い。奪ったキャシュカードを使いATMで現金を引き出そうとする様子が防犯カメラで撮影されており・・・

先日の読売新聞で見つけた記事である。今回は被害者に怪我等もなく大事にいたらなかったが、警察にはどうしても訊きたいことがある。

「今回のケースで、被害者側の会社員にはどの程度までの正当防衛が認められるのでしょうか?」

おそらく「個別のケースに対してはお答えできない」として「一般的には相手と同程度の武器を使用した場合は過剰防衛になる可能性がある」といったところであろう。今回のケースでいえば加害者が刃物を使用していたことから「同等」の刃物の使用はダメとなる。

もっとも一般の人は「正当な理由なく刃物の所持を禁止」されているので、現実的なところとして「その場に落ちていた棒切れ」か傘程度であろうか。

それらを使って運よく犯人の刃物を薙ぎ払うことが出来ても、その棒切れ・傘を使って犯人を攻撃してはいけない。犯人がナイフを落とした瞬間に「素手の加害者」VS「凶器を持った被害者」になってしまい、最悪のケースとして加害者と被害者の立場が入れ替わってしまう。

ややこしい話であるが

加害者が「強盗未遂事件の加害者かつ暴行事件の被害者」となり、

被害者が「強盗未遂事件の被害者かつ暴行事件の加害者」ということだ。

実際には暴行事件に関しては(相手の怪我の程度によるが)厳重注意か不起訴処分になるだろうが、それでも納得がいかない。


例えば被害者側が剣道の達人であったり、元特殊部隊隊員や格闘家で素手で犯人を半殺しにした・・・といった場合なら過剰防衛もわかるが、刃物を突き付けられた一般人がパニックになって持っていた傘で相手をケガさせた場合は正当防衛を認めてほしい。

もっとも防犯カメラの映像や目撃証言といった「やり過ぎでない正当防衛」の証明が必要であろうが・・・。

推測であるが、警察側が考える「今回の強盗事件に対する正しい被害者の在り方」は

1.抵抗しない
2.大声で助けを呼ぶ
3.すきを見て走って逃げる
4.すぐに110番を
5.命を最優先に、まずそれを考えてください

 といったところであろう。では問います。

1.抵抗しない ⇒ 今回は抵抗せず、言われるままに財布を渡しました。まさに模範解答です。しかし犯人側に殺されない保証はありませんよね?今回の被害額は3万円弱でしたが、これが数千万円だった場合に犯人が「捕まらなければ遊んで暮らせる。顔を見られたから・・・」と考える可能性はないのですか?

2.大声で助けを呼ぶ ⇒ 運が良ければ助かりますが、犯人は「騒ぐと刺す」と既に言っているのですから刺されます。

3.すきを見て走って逃げる ⇒ 犯人の方が足が遅ければいいのですが・・・

4.すぐに110番を ⇒ どうやって?刃物を手にした犯人に向かって「110番するからちょっと待って」と言う?犯人に気づかれないようにスマホを操作して110番通報することは不可能です。ドラマなどでよくある「夜道を歩く際はOL・女子高生はスマホに110と入力して、ワンタッチで通報できる状態にしておく」を真似しろと?

5.命を最優先に、まずそれを考えてください ⇒ 命は大切です。しかし命の次に大切な全財産が入った財布を奪われそうになった緊急事態時に「これがなくなれば明日から生きていけません。人生終わります。手持ちの傘で抵抗すれば犯人に勝てるかもしれません。刃物を薙ぎ払うことは出来ないけど、傘で相手の頭めがけて全力でバットスイングすれば・・・・あ、でもこれって過剰防衛で僕が加害者になちゃうなぁ。仕方がない。あきらめて全財産渡します。だって命が一番大切だもん。でも全財産失ったら首を吊るしかないなぁ・・・刺されて死ぬのと首を吊るのと、どっちが痛いんだろう?」


まあ 5.は半分冗談にしても、ある程度の過剰防衛は認めていいのではないだろうか?おそらく実際には現場の裁量で認めているのだろうが、それでも「その事実」を公表していないんだから意味はない。

ナイフを突きつけて「殺されたくなかったら全財産出せ」とする犯人に従った被害者に対して

「どうして抵抗しなかったの?相手が持っていたのは小型ナイフでしょ?手元には野球バットがあるじゃないですか」

「でもバットで犯人を怪我させたら僕が加害者に・・・」

「振り回すだけで犯人が逃げたかもしれないし、場合によっては正当防衛が認められる場合も・・・」

「えっ?じゃあ今回の場合、バットで犯人を殴って怪我させていても正当防衛が成り立っていた?」「いや、ケースバイケースで、怪我の程度にもよりますので・・・」

「ということはバットを振り回して犯人が逃げてくれればラッキー、頭に当たって大怪我をさせれば加害者に早変わりでアンラッキー・・・ということですか?」


警察関係者にあらためて訊く。同等もしくはそれ以上の武器を使用して反撃した場合、過剰防衛となる可能性があるのであれば制服警察官は「どのような武器」を想定して拳銃を装備しているのですか?サブマシンガンやアサルトライフル、対人・対物ライフル?PRGといったロケットランチャーですか?

一般人には「正当な理由のない刃物の所持は禁止」「車の中にゴルフクラブを常備しておくのもダメ」として「必要な時にだけ持ち歩いてください。それ以外は没収し、事情聴取を行います」としているんだから警察官だって

「拳銃は原則警察署で保管。制服警官は原則丸腰」

でいいんじゃないの?街中で暴力団員が銃撃戦を始めたら警察署まで取りに行けばいいんじゃないの?


まず隗よりはじめよ、である。


警察官に「死ね」といっているのではない。「一般人への不条理な規則の押し付け」に対する皮肉として言っているのである。刃物を振り回している人間に対して警察官が発砲した場合、

「今回の拳銃使用にあたっては正当な職務執行だと判断しております」

などと申し訳なさそうに記者会見を開いているが、あんなものは逆に堂々と

「ナイフを振り回していて他の通行人に被害がおよぶ危険性があった。言葉による説得・警告・威嚇射撃などで応援部隊が到着するのを待つ手もあったが、警察官本人を含めた被害を最小限におさえるため発砲しました。職務上いっさい問題はありません。自身を含め国民の命と財産を守る、それが我々警察官の使命です」

でいいんじゃないの?


webmasterは全国の警察官をはじめとする「一生懸命・一所懸命に頑張っている人々」を応援します。


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