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便利だけど不便?~クレジットカード~

クレジットカードは便利だ。大手クレジット会社のモノを1枚持っていれば、通販を始め大抵のところで使用できる。ところがクレジットカードを「お得」に使おうとすると、途端に不便になる。

クレカには「自社カード」と「提携カード」の2種類がある。例えばVISAカードを申し込もうと思い、VISAのサイトを訪れても「自社カード」は申し込めない。必ず「提携会社」のサイトに飛ばされる。MASTERカードの場合も同じである。

アメリカンエクスプレス(アメックス)やJCBなら自社カードを申し込める。提携カードの選択も可能である。

自社カードであろうが提携カードであろうが、利用者にとって本質的な部分の違いはない。1000円の品物を買えば指定の銀行口座から1000円が引き落とされるだけ。年会費等が必要な場合もあるが、手数料は0円。すべて店側の負担である。

加盟店の業種や売り上げ額によって変わるが、仮にカード手数料を10%とする。あなたが1000円の買い物をした場合、そのお店は100円をクレカ会社に支払う。

ここまでは周知の事実だが、この先はあまり知られていないのでは?

もしこのカードが「カード会社が直接発行したカード(自社カード)」であれば100円は丸々カード会社の収入になるが、「提携会社Bが発行したカード(提携カード)」であればカード会社はBに手数料を払わなければならない。この手数料が5%であれば、あなたが支払った1000円のうち、カード会社が50円、提携会社Bが50円を手にするのである。

勘違いしてはいけない。あなたが「提携会社Bが発行したカード」を使って買い物をした場合、そのお店がB以外のファストフードやガソリンスタンド、百貨店、近所のスーパー、ホームセンター・・・・など、どこで使っても「提携会社B」に手数料が転がり込むのである。

だからどのお店も「提携会社B」になりたがる。提携会社になるにはカード会社の審査が厳しいが、提携会社になってしまえばあとは「会員カード」と称する「提携クレカ」を客に勧めるだけ。

「カードの年会費無料です」「会員カード払いでガソリン2円引きですよ」「カード払いでポイント2倍」といった具合に、どこにいっても店員が必ず「カード加入」を勧誘する理由がこれである。

酷い店になると「加入すれば3000円キャッシュバック」といった具合に自店の商品よりも「会員カード」をすすめてくる。

当選と言えば当然か。店の商品を頑張って売ってもせいぜい数千円~数万円の利益にしかならないが、客に「会員カード」を発行し、その客がそのカードを使って別の店で買い物さえしてくれれば「眠っていてもお金が転がり込む」のだから。

もしその客がお金持ちで、カードの年間使用額が数千万~数億だとすれば・・・・

とはいえ「眠っていてもお金が転がり込む」状態になるのは簡単ではない。「提携会社B」になり、「会員カード」を増やす。ここまでは決して難しくない。が、問題はその先。どうやってその「会員カード付のクレカ」を他店で使ってもらうか、だ。

例えば家電ショップの場合であれば、「会員カードのお支払いでポイント5倍」とすれば自店ではカードを使ってもらえるが「ガソリンスタンド」や「ホームセンター」といった他店では使ってもらえない。それらのお店でも「会員カード」を発行し、「会員カードでリッター2円引き」「会員カードでポイント5倍」といった同等のサービスをしているからである。

こうなるとあとはパイの奪い合い。「当店以外でのカード利用分も2%ポイント還元」「当店以外のご利用でも、総額の3%をポイント進呈」「ならばうちは4%還元」といった具合にサービス内容は過激化し、過当競争に陥ってしまう。考え得る最終形態は、「全額還元。利益は自前の商品売り上げで」となる。


利便性を求めて年間使用金額の一番多い店の会員カード・ポイント還元率の高い1枚に限定するのか、頻繁に訪れるショップすべての会員カードを作ってレジで「えーと、この店のカードは・・・」といってパンパンに膨れたお財布を広げるのか。決めるのはあなただが、便利なはずのクレジットカードがなぜか不便になっているように感じるのはwebmasterだけではないと思う。

自分の使った分が原資となり、他人に還元される。
他人の使った分が原資となり、自分に還元される。

経済とはそうやって回っていくものだが、なんかしっくりこない。







(蛇足)

ここまで聞くとカード会社は「自社カード」だけを発行し、提携会社の取り分をなくせば店側の負担する手数料を半分にできる・・・と思いがちだが、自社カードを出しているアメックスの手数料は他社に比べて高いとされ、年会費も他社の多くが無料なのに対して原則有料である。

アメックスのターゲット層が高額所得者であり、所有者に対してさまざまな高級サービスを無料で提供しているといった事情もあるが、会員獲得のためのコストを提携会社が負担している(=カード会社の負担が少ない)という背景もある。



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