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2024年1月の株振り返り

中国市場

明るい話題が全く無く、シャドーバンキングの大手が飛んだり指数はひたすら下落と厳しい状況。金融緩和も行われているものの不動産絡みの負債が大きすぎて立て直せていません。

発表された指標でも人口減少や出生数減少となっており、人口ボーナスの終了と共に経済的な失速が織り込まれるのも仕方ないところがあります。

対米の関係悪化に伴う半導体投資だけは元気。スマホ・EVも国内産がシェアを獲得しており、Apple・Teslaの排除も政策として拡大中。ASMLやNVIDIAを筆頭に半導体セクターの業績を支えていますが、一方で売上の先行計上という面があるのも事実です。

規制適用前に駆け込みで製品を仕入れたり、規制されていないGPUを組み合わせて処理性能を高めたりと予想通りの展開を見せていますが、当然ながら対中規制を強化したいアメリカ・欧州からすれば見逃せるはずもなく。ASML・NVIDIAは政府から苦情を入れられているため、足元を見た値上げ商売も物が売れなくなると流石に終わりとなります。

そんな国内の景気を反映してか、日本株やアメリカ株のETFに大きなプレミアムが乗った状況が続いています。これを理由に日本株が買われているという論説が一時流れましたが、規模で考えればほぼ誤差の範囲に留まるためしばらくするとあっさり無視されるようになりました。

ただ中国人が他国の株を買っているという話自体は間違っておらず、規模制限の厳しいETFではなくファンド経由での資産家からのフローが増えているというべきです。

加えて、中国国内ファンドでは中国株Long+日本株Shortを去年から積み上げているところが多く存在しました。それが年末・年始の又裂きで吹き飛び、結果として中国株の下落と日本株の上昇を加速させたという面があります。指標的な面から見ればこの戦略は間違っていませんでしたが、クオンツが負ける時の典型的なパターンでもありました。

「国家の命運を託すならナスダックに」というのが合言葉になっているという話もありますが、相変わらず中国の投資家は死を恐れずに突撃すると見ればよいのか、40%の手数料を払ってでもキャピタルフライトしたいのか判断に悩むところです。

下がり続ける指数を支えるため中国当局は例を見ない勢いで市場操作を積み上げており、日銀の階層構造金融施策を叩いている人達がこの違法建築に触れないのが不思議なレベルとなっています。

個人投資家の空売り規制に株価を支える多額の現金投入。売り越し規制拡大に指数先物の空売り規制。空売り用株の貸出制限と、僅か1週間程度の間に中国市場における市場の自由性は大きく失われました。

なお、こういった施策を導入した場合、LSをやっているファンドなどがグロスエクスポージャーを落とす必要性に迫られるため、中期的に見れば市場から資金が抜ける展開へと繋がります。

中国株の下落を見てチャイナショックの再来を叫ぶ声もありますが、残念ながら当時とは違って既に大きく下落した後の中国市場にそこまでの力はありません。
指数の影響力は指数の高さと問題の深刻さに比例しますので、今の中国株が存在感を出すためには金融危機を起こす必要があります。

中国国内の消費は未だ耐えていますが、企業業績や資産の失速から遅行することを考えればここからが文字通り正念場となるでしょう。


上海
香港


アメリカ市場

アメリカ株 = Magnificent 7 = テックと半導体なのは変わらず、それどころか傾斜が加速。生成AIへの期待とGPU需要が全てを支えています。

対中政策の一環である国内への工場回帰が投資や景気を支えていますが、一方でこれが見事に頓挫している事実に目が背けられなくなりつつあります。

M7といってもTeslaは値下げラッシュによる競争力低下などに直面しており、株価は2021年頃の水準まで低下しています。TeslaはロボットとAIの会社だという叫び声も聞こえてきますが、EVの成長を加味できなくなった時に許されるバリュエーションとは言い難いのが現実です。

Appleも中国市場での販売減少やアプリ市場の独占が崩され始め、直近3年ほどの業績推移から見ればAppleでなければこのバリュエーションは許されないでしょう。業績を支えてきた値上げも流石に厳しくなっています。Appleに指数が連動しているというよりは、指数に連動しているだけという側面が強くなっています。

現状アメリカ株を支えているのは利下げ・NVIDIA・Microsoftであり、それを猛追するAMDと言えます。

Intelは楽観的な計画を立てて失敗していますがいつも通りであるため、決算で-10%超の下落を見せても市場は大きな動揺を見せませんでした。この点からしても、Intelの存在はさほど重要視されていません。
AMDはGPU関係が好調な一方で他のセグメントが期待以下となっており、手放しで喜べる状況ではありません。

同じように決算で下落している半導体会社は増えており、NVIDIAに連動して上昇してきた指数も限界が見え始めています。指数は先導株以外が積み重なって支えられているものであるため、NVIDIAに期待される数字は日増しに高まっています。

NVIDIAはMicrosoftなどが大量にGPUを購入していることもあり、今年一杯業績は好調と見込まれています。
ただ、AMDなどの競合製品による代替や駆け込みでの値上げの限界、対中向けの機能制限製品の受取拒否などの問題がありますので、想定外の目が出た時のダウンサイドにどう備えるかが投資家としての力量を示すことになりまそうです。

1月の決算ではMicrosoftは足元好調ではあるが今後の成長がいまいちという状況で、Alphabetは業績失速を織り込む展開になっています。

ChatGPTのようなサービスが拡大した場合、調べ物をする時に検索エンジンであれこれサイトを開くというプロセスが丸ごと奪われます。
AlphabetからすればGoogleというドル箱を荒らされることになるため、生成AIの競争には負けるわけにはいきません。しかし、勝ったとしても今の市場の置き換えになる部分が大きいため業績への貢献はどうしても小さくなります。

M7を除けばS&PのEPSは減少という話もあり、去年11月頃からの金利低下を発端としたモメンタムが今の株価を支えている面も大きくあります。このあたりの動きはファクター面からすれば割と素直に動いていると言えます。

逆に言えばモメンタムが機能しすぎて移動平均線だけ見ておけば何とかなるという話でもあり、近年のクオンツが勢力を拡大している期間によく見る展開でもあります。
一方でこういったクオンツ主導のモメンタムは突如反転することが多く、裁量投資家の人からすると謎のタイミングでモメンタムが変わったりするためそろそろ警戒が必要になる頃でしょう。

また肝心のパウエル議長ですが、市場の下落に関してかなり忌避的に振る舞っているように見受けられます。
利上げの可能性はまだある利下げしないと言い続けながら裏で市場を支えるような施策を導入したりと、日頃色々言われている日銀以上に金利操作以外の方法で細かく手を入れています。

アメリカは前イエレン議長の頃からQTに失敗し続けています。パウエル議長が市場の下落回避を優先してこの水準でQTのペースを落とすのであれば、引き続きアメリカ株は下落したら買うが正解になるでしょう。


1 Month
6 Months


日本市場

年初から大幅上昇と、アメリカに次いでこの世の春を謳歌しています。

マイナス金利解除に伴う金融セクターの見直しや、今まで慣習的な圧力によって遮られてきた値上げの実現。政府主導による賃上げへの圧力。家族を人質に取られたとしか考えられない日本取引所によるPBR・資本コストへの積極的な働きかけといった要因がありますので、アベノミクスでも払拭できなかったJapan discountが遂に消えつつあります。

なお、2024年年初の上昇はNISAやそれに伴う個人投資家の投資拡大という話もありますが、アジア系機関投資家の多くが中国株を売って日本株を買っていることが主な要因です。

外国人投資家としてまとめられることが多い彼らですが、2022年まではひたすら日本株を売っていたためさほど日本株を保有しておらず、2023年に買い上がった分を含めてもまだ足りないという状況がこの上昇を後押ししました。

日本の個人投資家は株を売っているためこの上昇の恩恵がないという話はありますが、先に日本株を抱えていたのは日本の個人投資家ですので利確を責められるのは少々おかしな話でもあります。

外国人投資家が高値を買い上がっていることで指数は上昇しているのは事実ですが、これは小型株に機関投資家が流れ込んできた時と同じパターンです。従って、彼らが勝利を宣言するためにはここから更に指数が上昇する必要があります。

なお、この指数の上昇の恩恵を最も受けているファンドと言えば、それは間違いなく日銀と言えるでしょう。

アベノミクス以降で日本株を最も積み上げてきた機関投資家は日銀を置いて他なりません。
買い増した分を全て売り払った腰の座っていない外国人投資家とは違い、積み上げ続けたETFは2022年11月末の時点で簿価約36兆円へと届いています。

平均単価は日経平均で言えば19900円前後となっており、単純計算で含み益約80%と文字通り兆単位で儲かっています。2023年以降はほとんどETFを買っていないため、外国人投資家が買い上がるほど日銀が儲かるという状況です。

1月日銀会合の主な意見では、「2%目標の安定的な実現が見通せるならETFやREITの買入はやめるのが当然」という話が出ていました。
既にETF買入れはほぼ行われていないため、ETF売却の話に及ばないのであれば指数の下落といった影響は考えられず、ETF買入れによるバリュエーションの底支えも既に十分な影響力を発揮しています。

ETF買入れを終了させても日経平均が継続的に上昇するのであれば、前黒田日銀総裁は歴史上最も資産運用が巧みであった中央銀行総裁として名を残すことになるでしょう。

一方、日本株の懸念と言えば半導体になります。
現在の日本は米中対立の恩恵を最も受けている立場であり、戦略物資である半導体確保のためかつてない厚遇を得ています。

「隣国で戦争が起きると儲かる」というのはよく聞く話ですが、今の日本は開戦前夜特需とも言える状況であり、熊本の話を聞くと文字通りバブルや成金が誕生しています。

しかし、アメリカの半導体株に引っ張られて上昇してきた日本株ですが、足元の決算が出てきたことで夢を見続けるのが難しくなってきています。
加えて、アメリカの半導体が下落を始めるようであれば間違いなく巻き込まれますので、2月のNVIDIA決算に向けて祈りを捧げるファンドマネージャーが増える見込みです。

グロース株の復権を期待する声が聞こえていますが、参考までに申し上げますと、アメリカ株の中小型指標とされるRussell 2000は2022年の下落からはずっとレンジに留まり大型に追従できておらず、直近の上昇も金利低下局面になってからようやくといった状況になっています。

加えて、日銀はマイナス金利を前倒しで3月解除する含みを持たせつつ、賃上げ始動によるインフレ安定化を目指している節があります。金利低下は景気が崩壊する日まで来ないと考えるべきでしょう。

何も考えないのであれば、日経4:トピ6くらいの割合でひたすらETFを積み上げるのが正解になりそうです。


日経


全体

モメンタムがかなり強化されており、日本の小型株でよく見る光景が広がっています。

これはクオンツの増加だけではなくパッシブ傾倒の影響もあります。インデックス投資家が隠れアクティブ投資家になっているというレポートやニュースが出てくる日も遠くないかもしれません。

あとはアノマリーが驚くほど激しくなっています。そこまで動くの?というくらいよく動きます。
機械学習メインでやっているところが加速させている印象ですが、参入者がある程度増えるまでの間はこのような動きが続くでしょう。
そういう意味では、積立NISAのような機械的な運用が主流になる市場で何が起きるのかという実験を目の当たりにしているとも言えます。

一方で日々の値動きに関して言えば、驚くほどニュースを反映した動きが増えています。
日本市場で言えばマイナス金利解除や半導体関連のニュースが流れれば株価はそれに沿った動きを見せています。バリュエーションという考えが死んだことに目をつぶれば市場は効率的になりました。

一方で、株を持ち越したら昨日と逆の動きをするのに怒ってマウスを壊す投資家や、株価がGDなのを見てショートしたらそこから右肩上がりのリバが来てディスプレイを殴る投資家が増えているのも事実です。
目をつぶってひたすら指数を買うか、モメンタムとニュースを両方踏まえて値動きを予想しないと損をする難易度高めの地合いと言えますし、逆にニュースが出てからでも十分間に合う楽な地合いとも言えます。

ただ、日中・イブにおける各資産の相関が低下しているためやり辛く、今までの経験を捨てて短期的なカーブフィッティングに注力する必要があります。まるでクオンツのようですね。

アメリカの景気がさほど悪化せずに金利低下局面を迎えていることを考えれば、この指数の強さや動きにおかしな点はありません。崩壊のきっかけがあるとすれば、インフレの再加速かM7の業績が死に始めた時でしょう。
しかし、現時点でそのような材料は乏しく、指数が15%ほど下がるような展開はあまり期待できないのも事実です。

ところで、「オルカンだけ買うのは危ない。もっと投資先を分散すべき」という論説を一時期見かけましたが、アメリカ株が下がれば全部下がるので投資先を分散する意味はあまりありません。
分散に選択肢があるとすればM7を買うか、M7に劣後するS&P500またはNASDAQを買うかの2択です。

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