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矛か、盾か

その昔、中国のある商人が、
「この矛はどんな盾でも突き破ることができる」と言った。

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そして、その商人は別の場所で、
「この盾はどんな矛でも通さない」と言った。

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その話を両方とも聞いていた客人は、その商人に、
「その矛で、その盾を貫いたらどうなるのか」と尋ねた。

商人は、その問いに答えられず、うなだれたと言う。

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これが「矛盾」という言葉の由来である。

では、「攻撃力の高い矛」「守備力の高い盾」があって、そのいずれかを選ぶようなシチュエーションがあったら、どちらを選ぶだろうか。

攻撃力守備力、どちらが重要か・・・

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私は、「守備力の高い盾」を選ぶ。

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なぜなら、致命的なケガを負うことなく、戦い続けることができれば、いつか勝機が訪れると思うからだ。

それは、トレーニングで履くシューズなら、
「スピードが出るシューズ」よりも、「ケガをしないシューズ」であって、

サッカーであれば、
「強いストライカー」よりも、「鉄壁のゴールキーパー」であって、

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ドラクエで仲間にするなら、
「攻撃力の高いキラーマシン」よりも、「回避率の高いはぐれメタル」ということになるし、

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飲食店を営むなら、
「美味しい料理を出す」よりも、「食中毒を出さない」ということになる。

攻撃力が高いのは、たしかに魅力だと思う。
どんな競技でも、攻撃力と言うのは注目を浴びやすい。

それは、短距離走の圧倒的なスプリント力だったり、長距離走の鋭いラストスパートのキレだったり、格闘技の一撃必殺技だったり、野球のバッターの打率だったり、フィギュアスケートの華麗なる4回転ジャンプだったりする。

ただ、圧倒的な攻撃力を持っているにもかかわらず、終わってみたら負けていたということは、少なくない。

世の中には、「攻撃は最大の防御」という言葉もあるけれど、それでも守備が下手だったら、勝ち続けることは難しい。

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特に、マラソンという競技をやっているとそう思う。

マラソンは距離が長いこともあって、走っている途中で、暑ければ熱中症に、寒ければ低体温症になることもあるし、痙攣を起こすことや、足裏にマメができてしまうこともある。

そして、そんなことがレース中に起きれば、それが致命傷となって、途中でリタイアせざるを得なくなることもある。

ゆえに、マラソンにおいては、ラストスパートの鋭さはそれほど意味を持たない。

それよりも、一定のペースを守って走り続けられることの方が重要だと思う。

マラソンに限らず、「ケガをしない」ということは重要なことだ。

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どんな競技でも、ケガが原因で引退した選手というのは少なくないだろう。

ランナーにとって必要な資質は「走り続けても疲れないこと」であり、「苦しくても苦しくてもそれに耐える精神力」「足が痛いのを我慢して走り抜く根性」ではない。

身体にダメージが少なければ、トレーニングも多く積めるし、パフォーマンスだって優れる。

ただ、「疲れにくい」とか「体に負担をかけない」というのは、高等テクニックであるにもかかわらず、目に見えるものではないので評価されにくい側面がある。

車を運転する際の、ブレーキング技術に近いものなのかもしれない。

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それよりも、スピードやパワーの方が目で見てすぐに分かるし、数字(タイム)にも表れるので評価されやすい。

「守備力」と言うのは、「攻撃力」に比べて地味で目立たないけれど、本当に重要なものだと思う。

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野球でもサッカーでも、失点が少ないチームというのは強い。

それは、戦う2つのチームのうち、得点が多いチームが勝つというルールだからというのが大きいと思う。

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つまり、1対0でも1つの勝ちになるし、100対0でも同じ1勝なのだ。

たくさん打って多くの得点を取ることはもちろん大事だけれど、より多くの勝ちを取るためには、失点を少なくする方が勝ちやすいのかもしれない。

なお、現在のプロ野球のセ・リーグでは、巨人が1位にいる(8/26現在)。

個人の成績はどうなのかと見てみると、打者の打率を見てみても、上位10位までに巨人の選手は1人もいない。21位に岡本選手が入っているくらいで、その次は23位に丸選手、28位に坂本選手といったところだ。

その一方で、投手が1試合に何点取られるかを表す防御率は、菅野選手がトップにいて、チームとしても3.41でトップである。
チームの失点も189点で、2位のDeNAには30点近い差をつけている。

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守備力が勝つことに繋がっている一例だと思う。

走ることにおいても、ケガをしないランナーというのは、それだけで可能性がある。

もし「速く走れるようになるためには、故障は仕方ない」なんて言う人がいたら、そっとその人から離れることを勧めたいと思う。

身体を痛めつけるトレーニングが、強いランナーを作るなんてことはない。

特に、身体が成長している段階の中学生、高校生には、「限界を超えろ」とか「気合いだ」という指導者たちの言葉をうまくスルーして、「ケガをしない強くなる身体の使い方」を身に付けて欲しい。

「健康」「安全」は、どんなことよりも重要だし、土台となるもの。

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「いのちだいじに」をモットーにやっていきたい。

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