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矛か、盾か
その昔、中国のある商人が、
「この矛はどんな盾でも突き破ることができる」と言った。
そして、その商人は別の場所で、
「この盾はどんな矛でも通さない」と言った。
その話を両方とも聞いていた客人は、その商人に、
「その矛で、その盾を貫いたらどうなるのか」と尋ねた。
商人は、その問いに答えられず、うなだれたと言う。
これが「矛盾」という言葉の由来である。
では、「攻撃力の高い矛」と「守備力の高い盾」があって、そのいずれかを選ぶようなシチュエーションがあったら、どちらを選ぶだろうか。
攻撃力と守備力、どちらが重要か・・・
私は、「守備力の高い盾」を選ぶ。
なぜなら、致命的なケガを負うことなく、戦い続けることができれば、いつか勝機が訪れると思うからだ。
それは、トレーニングで履くシューズなら、
「スピードが出るシューズ」よりも、「ケガをしないシューズ」であって、
ヴェイパーフライ4%、ただいま2,000km、目標3,000km。しかし、初期の4%で走っている人を見なくなった。 pic.twitter.com/d3Y0biJ0fz
— 牛山純一 / USHIYAMA Junichi (@jun1ushiyama) August 17, 2020
サッカーであれば、
「強いストライカー」よりも、「鉄壁のゴールキーパー」であって、
ドラクエで仲間にするなら、
「攻撃力の高いキラーマシン」よりも、「回避率の高いはぐれメタル」ということになるし、
飲食店を営むなら、
「美味しい料理を出す」よりも、「食中毒を出さない」ということになる。
攻撃力が高いのは、たしかに魅力だと思う。
どんな競技でも、攻撃力と言うのは注目を浴びやすい。
それは、短距離走の圧倒的なスプリント力だったり、長距離走の鋭いラストスパートのキレだったり、格闘技の一撃必殺技だったり、野球のバッターの打率だったり、フィギュアスケートの華麗なる4回転ジャンプだったりする。
ただ、圧倒的な攻撃力を持っているにもかかわらず、終わってみたら負けていたということは、少なくない。
世の中には、「攻撃は最大の防御」という言葉もあるけれど、それでも守備が下手だったら、勝ち続けることは難しい。
特に、マラソンという競技をやっているとそう思う。
マラソンは距離が長いこともあって、走っている途中で、暑ければ熱中症に、寒ければ低体温症になることもあるし、痙攣を起こすことや、足裏にマメができてしまうこともある。
そして、そんなことがレース中に起きれば、それが致命傷となって、途中でリタイアせざるを得なくなることもある。
ゆえに、マラソンにおいては、ラストスパートの鋭さはそれほど意味を持たない。
それよりも、一定のペースを守って走り続けられることの方が重要だと思う。
マラソンに限らず、「ケガをしない」ということは重要なことだ。
どんな競技でも、ケガが原因で引退した選手というのは少なくないだろう。
ランナーにとって必要な資質は「走り続けても疲れないこと」であり、「苦しくても苦しくてもそれに耐える精神力」や「足が痛いのを我慢して走り抜く根性」ではない。
身体にダメージが少なければ、トレーニングも多く積めるし、パフォーマンスだって優れる。
ただ、「疲れにくい」とか「体に負担をかけない」というのは、高等テクニックであるにもかかわらず、目に見えるものではないので評価されにくい側面がある。
車を運転する際の、ブレーキング技術に近いものなのかもしれない。
それよりも、スピードやパワーの方が目で見てすぐに分かるし、数字(タイム)にも表れるので評価されやすい。
「守備力」と言うのは、「攻撃力」に比べて地味で目立たないけれど、本当に重要なものだと思う。
野球でもサッカーでも、失点が少ないチームというのは強い。
それは、戦う2つのチームのうち、得点が多いチームが勝つというルールだからというのが大きいと思う。
つまり、1対0でも1つの勝ちになるし、100対0でも同じ1勝なのだ。
たくさん打って多くの得点を取ることはもちろん大事だけれど、より多くの勝ちを取るためには、失点を少なくする方が勝ちやすいのかもしれない。
なお、現在のプロ野球のセ・リーグでは、巨人が1位にいる(8/26現在)。
個人の成績はどうなのかと見てみると、打者の打率を見てみても、上位10位までに巨人の選手は1人もいない。21位に岡本選手が入っているくらいで、その次は23位に丸選手、28位に坂本選手といったところだ。
その一方で、投手が1試合に何点取られるかを表す防御率は、菅野選手がトップにいて、チームとしても3.41でトップである。
チームの失点も189点で、2位のDeNAには30点近い差をつけている。
守備力が勝つことに繋がっている一例だと思う。
走ることにおいても、ケガをしないランナーというのは、それだけで可能性がある。
もし「速く走れるようになるためには、故障は仕方ない」なんて言う人がいたら、そっとその人から離れることを勧めたいと思う。
身体を痛めつけるトレーニングが、強いランナーを作るなんてことはない。
特に、身体が成長している段階の中学生、高校生には、「限界を超えろ」とか「気合いだ」という指導者たちの言葉をうまくスルーして、「ケガをしない、強くなる身体の使い方」を身に付けて欲しい。
「健康」や「安全」は、どんなことよりも重要だし、土台となるもの。
「いのちだいじに」をモットーにやっていきたい。
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