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折々のおちぼ拾い

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書籍、雑誌、新聞等々からキラリと光ることば・文章を見つけて、感想を書いていきます。
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記事一覧

折々のおちぼ拾いNO.17:ヒトラーとYouTube

ヒトラー著「わが闘争」の巻頭言の中の言葉。 『人を説得しうるのは、書かれたことばによるよりも、話された言葉によるものであり、この世の偉大な運動はいずれも、偉大な文筆家にではなく、偉大な演説家にその進展のおかげをこうむっている、ということを私は知っている。』(平野一郎・将積茂訳) ヒトラーは、この言葉通りに実践し、政治的な力を得て、第2次世界大戦に突入した。 ホロコーストを始め、人の所業とは思われないことを行った。 実際には、ヒトラーに洗脳されたごく普通の市民が実行していった

折々のおちぼ拾いNO.16: テロ

『テロの本質は、犯行が連続するであろうと人々に思わせる点にあります。・・・国家や社会に持続的な恐怖を与えるのです。・・・恐怖にとらわれた国家や社会はしばしば過剰反応を起こし、監視や自粛などの規制を続ける中で疲弊したり自滅したりしていく。それがテロリストの狙いです。』 宮坂直史(国際政治学者)、朝日新聞2022年7月13日(水)朝刊 先日突然起こった安倍元首相の銃撃事件は、まだその実態が分からないままです。 我々市民は、どう捕らえてよいか分からない状態だと思います。 この事

折々のおちぼ拾いNO.15 : 映画『ひまわり』を見る

今のウクライナ戦争のニュース報道の一部の引用。『侵攻してきたロシアの若い兵士に歩みより,老婆は穏やかな声でこう言っていた。「息子よ,あなたはここで何をしているのか?ほら,ひまわりの種をあげる。あなたの死んだ所で花が咲くでしょう」』(原田宗典,図書,2022年6月号p.2) ウクライナの戦争はいつ終わるか見当もつかず,続いている。そして,日々,命が奪われている。歴史を振り返っても戦争の最大の被害者は一般庶民である。21世紀の現在,相変わらず,おぞましい戦争が繰り返されている。

自然災害から身を守るための素振りを!!

『避難にはつきものの、いわゆる「空振り」について述べておきましょう。避難したけれど、結果的には大きな災害は起きず、避難しなくてもよかったのではないか。このように思うことはたしかにあります。こうしたことを私たちはふつう「空振り」と言います。 しかし、私は、「空振り」ではなく、むしろ「素振り」、つまり、よい練習の機会だったととらえるべきだと思っています。』 https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/433556.html 京都大学防災研究所

今の日本のわれわれ国民は”阿Q"かも

『抵抗しつつ受容することの大事さ、個人の主体性を説いた魯迅文学は、特に九〇年代以後、グローバリゼーションが必至であると説かれている現代東アジアにおいて、輝きをいっそう増しているといえよう。』:藤井 省三. 魯迅-東アジアを生きる文学 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.397-399). Kindle 版. 『大江健三郎、村上春樹らも戦後日本の中産階級を中心とする「市民社会」や、エリート・サラリーマンを核とするポストモダン社会に対し、「阿Q」

人は死ぬ!

『人は死ぬ。せいぜい一〇〇歳で死ぬ。われわれはそれゆえ、いくら熱心に学習しても、多くのことについて中途半端で、よくわからないまま消えていく。』:辻田 真佐憲. 超空気支配社会 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.2747-2748). Kindle 版. あたりまえの事ではあるが、このことを普段われわれは気にしていない。 しかし、72歳の自分にとってはきわめて深刻な真実である。 この歳になっても、まだまだいろいろな事が出来ると思っている。

今でも軍歌は歌われている?!

『日露戦争では、一転して中国人を同胞視する軍歌があらわれた。・・・・ロシア人は「蛮族」と呼ばれ、一方でその侵略を被った「清人」は自分たちと同じ「金色の民」(黄色人種)というわけだ。 』 (辻田真佐憲:超空気支配社会.文春新書1316, 2021. 6/18) この本を読んでいて、日露戦争時に作られた軍歌の中に「金色の民」という言葉が出てきたのにひっかかりました。 私の遠い記憶の中からふっと顔をだしてきたのです。 我の母校松本深志高校の応援歌でした。 ネットで検索すると、Yo

大衆の反逆

『大衆とは,文明の便益を享受しながら,その文明を可能にしたものについて問わない人々であった.それはまさに現代人の自画像である.』(宇野重規:福島の哲学者とオルテガ:図書2020年10月号) 最近出版された岩波文庫「大衆の反逆」(オルテガ)の訳者佐々木孝について書かれた短い文章の一部.日本で近年頻発する未曾有の自然災害は,世界的な地球温暖化が原因である可能性が高い.そして,その気候変動をもたらしているのが人類である.この事実を現代人は真剣にかんがえなければ,日本人どころか人類

折々のおちぼ拾いNO.9 :音楽は不要不急?

『平時において人々が,「文化」とおもっているものの多く,そして同じく平時において(大なり小なり蔑みをもって)「風俗(娯楽,遊興,芸術など)のレッテルを貼っているものの多くが,文化人類学的にいえばどちらも同じ「聖」の領域にルーツををもっているのである.』岡田暁生「音楽の危機-<第九>が歌えなくなった日」 平時において勝手にランキングしていたものが,コロナ禍のもとではいっしょくたに不要不急にされてしまった.クラシックのコンサートもパチンコも同一に扱われることになったというのは,

フクシマは終熄した??

『フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも及ぼすことはありません。』(第125回オリンピック委員会における安倍晋三首相によるプレゼンテーションでの発言:2013年9月7日) コロナウィルスの蔓延のために東京オリンピックの開催が危ぶまれ始めている。しかし、9年前の東日本大震災での福島第一原発事故については忘れられているのではないか。トリチウムを含んだ冷却水の海洋投

哲学と地球科学との融合

『哲学は私たちが生きる場を「世界」と呼び、地球から宇宙という万物へ、現在から過去や未来へという対象の広がりも手に入れる。』(山内志朗,中島隆博,納富信留. 世界哲学史1 ──古代I 知恵から愛知へ (Japanese Edition) (Kindle の位置No.99-101). Kindle 版. ) これはビッグヒストリーの考え方である。哲学と地球科学との融合。人間をシームレスに考えて行くという点で、現代的だと思う。

ローカリズムへの転換

『人工減少・地球温暖化加速時代の大地動乱に対しては、大都市・大企業中心から地方・住民・地場産業中心へ、グローバリズムからローカリズムへ、社会そのものを大転換しなければならない。』(石橋克彦, 2020,世界3月号、93p.) 現状は、これとは反対の方向に突き進んでいる。今こそローカリズムへの転換をなさなければ、日本は破滅に向かうとういう著者の主張は、かなり現実味があると思う。

デモクラシーの本質

 『反対者を受け入れ、敵対者と共に統治するのがデモクラシーです。国民的な和解なくして、デモクラシーは成り立たないんです。反対者との「気まずい共生」こそがデモクラシーの本質なんです。』 http://blog.tatsuru.com/2020/01/07_0942.html  内田樹氏のブログから 安倍政権のもとで日本のデモクラシーが崩壊しているという文章の中から。今、様々な局面でトップダウンということが叫ばれ、ここで内田氏が言っているようなことが崩壊していることを日々感じてい

恐ろしい新しい搾取

『ビッグデータを利用するアルゴリズムがデジタル独裁政権を打ち立て、あらゆる権力がごく少数のエリートの手に集中する一方、大半の人は搾取ではなく、それよりもはるかに悪いもの、すなわち無用化に苦しむことになるかもしれない。』(ユヴァル・ノア・ハラリ. 21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.136-138). Kindle 版. ) 資本家による労働者の搾取という図式では理解できない状況がうまれつつ