{構成・脚本?} 現(うつつ)と「せい」のD・D・D(ダイレクト・ダイブ・データ)(第1稿)案1

脚本

登場人物
・ 大月霞(オオヅキカスミ)
・ 大月紗奈(オオヅキサナ)
・ 高美沢晃希(タカミザワコウキ)
・ 近江瑠璃華(オウミルリカ)
・ 明城聡介(アカギソウスケ)
・ 天園清澄(アマゾノシズ)
・ ニュースキャスター(以下:NC)

◯高校の教室内(昼)
人の話し声やセミの鳴き声が聞こえる。

教室の後方の机の周りに集まる霞、晃希、瑠璃華、聡介、清澄。
スマホを見つめる霞。
霞  「それにしても、最近ニュースでもスキャンのことばっかりだね」
頭の後ろで腕を組んで椅子の背にもたれかかる晃希。
晃希 「そうだな。聞かない日はないってくらいに、スキャンスキャンうるさくてかなわねぇよ」
瑠璃華「何、あれの話?」
晃希 「そうそ。最初は面白かったけどさ、そう毎日聞かされるとウンザリだよな。計画通り進んでんならいいじゃねぇかって感じだよ」
ため息をつく聡介。
聡介 「はぁ。計画通り進んでいても、報告は必要でしょう?ただでさえ大きな、国家レベルのプロジェクトなんですから」
清澄 「国家レベル・・・。凄く、大きい・・・」
瑠璃華「んー。そうは言ってもさ、私たちのところはまだまだなのよね?その、スキャンってやつ?」
メガネを少し手で持ち上げる聡介
聡介 「そうですね・・・。『日本電子情報化計画』の主格とも言える国土の3Dスキャン。それが計画通り進んでいるのであれば、この辺り一帯は数ヶ月後の予定ですね。つまり、まだまだ先の話ですよ」
瑠璃華「ふーん、そっか」
スマホから顔を上げる霞。
霞  「でもすごいよね。日本全土を電子化しちゃうだなんて」
聡介 「それも日本の3Dスキャンの精度が格段に上がった、その現れでしょうね」
左右に首を振る晃希。
晃希 「3Dスキャナねー。詳しいことは俺にはさっぱりだぜ。勉強したら頭が沸騰しそうだ。なぁ清澄?」
目を開いて驚いた表情の清澄。
清澄 「・・・頭、沸騰するの・・・?」
瑠璃華「例えよ、例え。本当に沸騰なんてしないわよ。あ、でも晃希ならー、本当に沸騰するかもねー」
眉を寄せる清澄。
清澄 「うむむ・・・、言葉って、難しいね・・・」
晃希 「おい瑠璃華、それってどういう意味だよ」
瑠璃華を睨む晃希。
霞  「ちょ、ちょっと二人共・・・!」
霞の肩に手を置く聡介。
聡介 「霞、いつものことだ。放っておいてもいつか終わるさ」
聡介の方を向く瑠璃華と晃希。
瑠璃華「ちょっと聡介、その言い方は酷くない?」
晃希 「そうだぜ聡介、それじゃまるで俺らが馬鹿みたいじゃねぇか」
ため息をつく聡介。
聡介 「・・・ほらな?言った通りだ」
霞  「あ、あはは・・・」

◯砂利道(夕方)
ひぐらしの声、車の通る音が聞こえる

霞の持ったスマホから聴こえてくるニュースキャスターの声。
NC  「次のニュースです。日本政府が進めている『日本電子情報化計画』ですが、全国スキャンは滞りなく進められているようです。昨日(さくじつ)、当初の計画通りに四国地方全土のスキャンを終え、沖縄・九州同様、無事電子化を終えたと政府から正式に発表されました。現在、スキャナは本州スキャンの最終調整が進められており、実際にスキャンが始まるのは二週間後に予定されています。問題がなければ、当初政府が提出した予定通りに行われるようです。本州スキャンは約二年掛りの大規模な計画で、各地域ごとに大まかに分けられて進めるようですが、政府関係者の話では「計画は予定通りに進行している。何も異常などが起こらない場合は、以前通達した日時に合わせてスキャンが実施される」とのことです。二週間後に行われるのは中国地方、その後近畿、中部、関東、東北という順にスキャンが進んでいく予定です」

道を歩く霞と紗奈。 スマホを見つめる霞
霞  「ふーん、全国スキャンは滞りなく、ね」
霞のスマホを覗き込む紗奈。
紗奈 「何見てるの、お兄ちゃん」
霞  「ん?何見てるって、ただのニュースだよ?今日晃希君たちとも話したけど、最近あの話題で持ちきりだね」
紗奈 「あの話題?」
少し考えるような仕草をする紗奈。
紗奈 「うーん・・・。なんだっけ、日本の電子化とか言ってる話のこと?」
霞  「そうそう、そんな話。理論とか原理は僕には分からないけど、聡介君がいろいろ知ってて今日も話してくれたんだ」
紗奈 「あー、聡介君って頭いいもんね。そういえば確か町長さんの息子だったような」
霞  「あ、そうだったっけ?それにしてもあんなに覚えられるなんて、やっぱり頭がいいって違うなー。成績だっていつも学年上位だし・・・」
スマホを消す霞

◯大月家の前(夕方)
ドアを開ける霞。
家に入る霞と紗奈。

◯大月家の玄関(夕方)
紗奈 「ただいまー」
靴を脱いで上がる紗凪
霞  「おかえりー、紗奈」
固まる紗奈。
頬を赤らめ少し霞を睨む紗奈。
紗奈 「な、なんでお兄ちゃんが返事するのよ! それに名前まで呼んじゃって・・・!」
紗奈の方は気にせず靴を脱いで上がる霞。
霞  「いいでしょ?今家には僕と紗奈しかいないんだし。挨拶は大事だよ?」
紗奈 「だ、だったら名前まで言う必要ないんじゃない?」
霞  「ん?「紗奈」って呼んじゃダメかな」
霞から顔を背ける紗奈。
紗奈 「そ、そういう話じゃないのよ!全く・・・は、恥ずかしいんだから」
大股で歩いて行ってしまう紗奈。
霞  「ん?」
首をかしげる霞。

◯大月家のリビング(夕方)
テーブルに置かれている二つのグラス。
ソファーに座ってくつろいでいる霞と紗奈。
紗奈 「それにしてもお兄ちゃん含め、みんな同じ高校行くなんて。小さい頃からずーっと一緒だよね」
霞  「まぁこんな田舎には高校なんて一箇所しかないし、みんな町を出る気は無かったからじゃない?そういう紗奈も一緒の高校だよね」
紗奈 「私は、別に・・・」
霞から顔を背ける紗奈。
しばらく静かな室内。

紗奈 「ねぇお兄ちゃん、そういえばさ・・・」
紗奈の言葉を遮るほどの轟音。
地響きとゴウンゴウンという、工場で聞こえてきそうな大きな機械の動く音が続く。

驚いた表情で立ち上がる紗奈。
紗奈 「ちょっと何!?」
窓辺に歩いて行き外を確認する紗奈
紗奈 「・・・え?何よあれ・・・」
霞  「どうしたの?それに今の音は・・・」
霞の手を取って窓際に連れてくる紗奈
紗奈 「そんな事言ってないで、お兄ちゃんも見てよ!ほらあっち、西の方・・・!」
窓の外に夕日を背に受けて遠くにそびえ立っている、巨大な3Dスキャナの黒いシルエット。
窓の外から目が離せない霞。
霞  「え・・・?あれは、巨大スキャナ?なんでもうこんなところに・・・」
慌てている紗奈
紗奈 「そういう話じゃないでしょ!?私たちが帰ってくる時は、あんな影無かったじゃない・・・!」
霞  「た、確かに・・・。でも、それならどうやって・・・」

室内に響く電話の音。 急いで電話を取る紗奈。
紗奈 「もしもし?」
受話器越しに聞こえる晃希の息を切らしている声。
晃希 『紗奈か!?ってことはもう家に着いたのか。霞も一緒か?』
紗奈 「晃希君?うん、一緒に家にいる。それよりそんなに息切らしてどうしたの?」
晃希 『さっきの音聞いただろ?あれが見えてから外の様子が何かおかしい気がする。空気が張り詰めてるっていうか。何がって具体的には分かんねぇけど、とりあえずあの機械はヤバイ気がする・・・!』
ぎゅっと受話器を握りしめる紗奈。
紗奈 「晃希君は今どこなの?」
晃希 「俺?俺はまだ帰り途中だった。でも今はゆっくり帰ってるような状況じゃねぇ気がするな・・・。霞はそこにいるのか?」
紗奈 「いるよ。電話変わる?」
晃希 「そうだな、頼む」
紗奈 「分かった。はい、お兄ちゃん」
受話器を霞に渡す紗奈。
紗奈から受話器を受け取る霞。
霞  「もしもし、晃希?」
晃希 「あぁ」
霞  「晃希君、帰り途中だって?他のみんなは?」
晃希 「そういえば瑠璃華と清澄が、今日は買い物行くとか言ってたような・・・。聡介はいつも通り帰ったはずだが。やっぱ他の三人とも一緒にいるか、せめて連絡したほうがいいと思うんだ」
頷く霞。
霞  「確かにそうかもね。それじゃぁどうする?」
晃希 「俺はあいつらが行くって言ってたところに向かってみる。霞と紗奈ちゃんも多分こっち来てくれれば会えると思う。瑠璃華たちが向かったのはいつもの大きなショッピングセンターURIO(ウリオ)だ」
霞  「分かった。それなら僕たちも向かうね」
不安そうな表情で霞の手を握る紗奈。
紗奈 「え、何処に向かうの?」
霞  「URIOに瑠璃華さんと清澄さんもいるらしい。みんなと合流するならその場所がいいだろうって」
紗奈 「そういうことなら、分かった。すぐ準備するね!」
晃希 「さすが、相変わらずできる妹だな。聡介には俺から連絡しとくから、とりあえず二人はこっちに向かってくれ」
霞  「分かった」
晃希 「じゃあまた後でな!」
電話を切る霞。
紗奈 「お兄ちゃんも早く準備して行くよ」
霞  「わ、分かってるって」
リビングから駆け出す霞。

◯ショッピングセンター(夕方)
少し騒々しいショッピングセンター内。
地響きとゴウンゴウンという、工場で聞こえてきそうな大きな機械の動く音が続く。

窓から外を見つつ遠くを指差す清澄。
清澄 「ねぇ、瑠璃華。あれ、何?」
瑠璃華「ん?」
清澄の指差した方を見る瑠璃華。
夕日を背に受けて遠くにそびえ立っている、巨大3Dスキャナの黒いシルエットが見える。

窓の外を見つめる瑠璃華。
瑠璃華「え?何あれ」
清澄 「・・・スキャンは、予定だと、まだ先って、今日、聡介が言ってたよね・・・?」
瑠璃華「じゃあ、なんであれがここにあんのよ・・・!」
清澄 「普通じゃ、ないよね?」
窓から目を離す瑠璃華。
瑠璃華「当たり前よ!一応誰かに連絡を・・・」
顔を上げる瑠璃華。
瑠璃華の視線の先、走ってくる晃希。
息を切らした晃希が二人の前まで来る。
晃希 「おいっ、瑠璃華!清澄!良かった、二人共まだここにいたか。ところで霞と紗奈ちゃん見たか?」
清澄 「・・・晃希君。霞?見てない、けど・・・。あっ」
あたりを見回し、駆けてくる紗奈と霞を見つけて指をさす清澄。
息を切らして三人の元に駆けてくる霞と紗奈。
紗奈 「晃希君・・・!」
霞  「お、お待たせ・・・」
清澄 「霞君に紗奈ちゃん・・・。そんなに、慌てて来るなんて。どうしたの?」
霞  「ちょっと、なんかやばそうだから、みんなで集まろうって、晃希が」
晃希の方を見る霞。
晃希に食ってかかる瑠璃華。
瑠璃華「ちょっとあれ。どうなってんのよ!」
瑠璃華に反論する晃希。
晃希 「俺が知るか!でもあれ、ゆっくりだが確実に動いてやがる・・・!」
紗奈 「それじゃあ、スキャンが始まって・・・」
晃希 「そこまでは分かんねぇけど、さっきからネット回線も繋がらねぇし、何が起きてんのかさっぱりだぜ」

小さな声で晃希に聞く清澄
清澄 「・・・ところで、聡介は?」
瑠璃華「聡介は!?」
みんなから目をそらす晃希。
晃希 「さっきから電話とかしてんだけど、あいつ連絡取れねぇんだ。もしかしたらネット回線と同じようにあいつの電話が圏外なのかもしれねぇけど・・・。一体何してんだよ、聡介・・・」
―― 瑠璃子、思い出して少し怯えたように
瑠璃華「ねぇ、そういえば聡介の家って、確かあっちの方じゃ・・・」
―― 瑠璃華の言葉でみんながスキャナの方を向いたことが分かるように、セリフを言い終えたあとに少し効果音を大きくする。
―― 清澄、心配そうな感じで
清澄 「何も、ないといいけど・・・」
―― 清澄のセリフが言い終わってから、一瞬、霞のセリフの時だけ効果音等を無音に
霞  「一体、この街に何が起きているの・・・?」
―― 再び音が戻ってきたところで、晃希の切羽詰まったような声で
晃希 「とりあえずあいつの家に行ってみよう」
―― 少し不安そうな声で瑠璃華は言う
瑠璃華「でも入れ違いになったりしない?」
晃希 「大丈夫だろ。ここに来れる道っつったら大通りと脇道の二本くらいしかねぇし、 それこそ入れ違いになる方が難しいくらいだろ」
瑠璃華「そう言われればそうだけど」
―― 人を落ち着けさせるような、少し落ち着いた感じの雰囲気で清澄が言う
清澄 「瑠璃華・・・大丈夫、きっと。聡介は、頭いいから」
―― 清澄の言葉に瑠璃華少し冷静になった感じで
瑠璃華「そうね。ここでモタモタしてる方がダメかもね」
晃希 「よし。それじゃぁ二手に別れて行くとするか。俺は清澄と行く。瑠璃華は霞と紗 奈と一緒に行ってくれ」
―― 少し不思議そうな感じで晃希に問いかける清澄
清澄 「私・・・晃希、一緒?」
瑠璃華「まぁ仕方ないわね。あんたの言うことに従うのも尺だけど、そうも言ってられな いし」
晃希 「それじゃぁ俺たちは大通りの方から向かう。聡介ん家の前で待ち合わせってこと で」
―― 晃希のセリフ後、二人分の足音が少しづつ小さくなっていく
―― 焦りを意識して抑えているような感じの瑠璃華の声で
瑠璃華「全く、あんなに突っ走っちゃって。さて、私たちも行こっか」
―― 心配で不安そうな霞の声
霞  「うん。聡介君、家にいるといいんだけど」
瑠璃華「大丈夫よ。もしいなくったって見つければいいだけでしょ?」
―― 三人分の足音が少しづつ小さくなっていく。
―― 足音が聞こえなくなる頃合で効果音も一度フェードアウトさせ、無音の状態を作る

―― 再び効果音がフェードイン
―― 晃希と清澄のシーン
―― 大通りなので街の人が通りで話しているガヤガヤした感じの効果音を入れる
―― 晃希、少し不安そうな声で
晃希 「あれ、確実にこっちに向かってきてるよな」
清澄 「うん、そうだと思う。でも、さっきよりも・・・」
晃希 「あぁ、動きが早くなってる」
―― どんどん二人とスキャナの距離が縮まっているため、機械音も少しづつ大きくしていく
―― 周り(効果音)の声にも少しづつ焦ったような感情が篭っているといい
清澄 「あれ、あの機械、もう聡介の家、通過してる・・・?」
晃希 「あの位置、確かにもう町の中を進んでる・・・。スキャンが始まってんのか?そ れとも動いてるだけなのか?」
―― 緊張であまり話さなくなり無言になるため、効果音のみが聞こえるのが数秒
―― 数秒してから、少し怯えの混じったような声の清澄
清澄 「ねえ、あの光・・・」
―― この時点で効果音もだいぶ大きく存在感があるといいかもしれない
晃希 「あの機械のスキャナ部分に出てる光・・・あれは俺でも、見たことあるぜ・・・。 スキャンしてる光だ!!」
―― 慌て気味の清澄
清澄 「こっちに、向かってきてる・・・」
晃希 「とりあえずどっか室内に・・・、走るぞ!」
―― 走り出す二人の足音
―― どんどん近づいてさらに大きくなる機械音、逆に雑踏の音は小さくしていいです
―― 清澄に向かって叫ぶ晃希
晃希 「こっちだ!」
清澄 「スーパー?」
―― 自動ドアの開閉音でスーパーの中に入ったことを表す
―― さっきまで聞こえなかった店の中の人々の不安や心配そうな会話
―― 一人の男性が心配そうに声をかけてくる
男A 「な、なぁ君たち。外では何が起きているんだ?」
晃希 「俺も分かんないです。今はただ、スキャナが動いているってことしか・・・」
―― スーパーの中の人の会話から聞こえてきた一部的な感じで
主婦 「スキャンが今日なんて聞いてないわ」
学生男「おいどうなってんだよ」
学生女「何かの練習?」
―― それを聞いて、そこの人たちにも状況の理解している人がいないことに歯がゆそうな晃希のつぶやく声
晃希 「やっぱ、誰も分かんねぇか・・・」
―― 少し不安そうな声で清澄が言う
清澄 「ねぇ、あれ・・・」
―― 清澄のセリフ後、音の原因のスキャナが目の前に迫っている状況のため、効果音をさらに大きく、大きめの声で話さないと聞こえないくらいに。それに合わせてセリフも少し声を大きく出している感じが伝わるように
―― (少しなら、声のタイミングで効果音の音量を下げるのはアリだと思います)
―― 清澄、心配そうな声で
清澄 「だ、大丈夫かな?」
―― 晃希、清澄を元気づけるような感じで。
晃希 「大丈夫だ。スキャンは表面的なもんだから・・・」
清澄 「霞君たちは?」
―― 晃希、最初は力強いが、最後は自分に言い聞かせる感じに
晃希 「あいつならきっと大丈夫さ。そのために瑠璃華を一緒に行かせたんだから。きっ と大丈夫・・・」
―― セリフ後、効果音は徐々に大きくなっていき、一度ピークを迎え、その後また少しずつ小さくなる。
―― 効果音で機械が頭上を通り過ぎていったのが分かるように。
―― 清澄、少し驚いたような感じで
清澄 「無事、だ・・・」
晃希 「ほら、俺の言った通りだ。大丈夫さ」
清澄 「うん、そうだね」
晃希 「それじゃさっさと聡介ん家行こうぜ」
清澄 「うん。・・・あれ?」
―― セリフの後、パンパンと服を叩くような音。
―― 晃希、少し心配したような口調で
晃希 「どうした?」
清澄 「携帯、無い・・・」
―― 晃希は驚いた様子で。清澄は不安そうで悲しそうな様子で
晃希 「え、もしかしてどっかに落としたか?」
清澄 「わ、分かんない・・・」
―― 晃希、元気づけるように
晃希 「とりあえずここを出よう。一旦来た道を戻れば見つかるかも・・・」
―― 前のセリフの後数歩足音がして止まる。足音が消えたところで次のセリフ
―― 晃希、安心した様子で。踏み出して携帯を取ろうとする状況なので、足元の擦れる音(ジャリッという音等)でそれを表せればいいかと
晃希 「おっ!これ清澄の携帯じゃね?良かった、こんな近くにあったじゃねぇか」
―― 晃希のセリフの直後、バチッと大きな火花が散ったような(放電したような)音
―― 晃希、驚きと苦悶の混ざったような感じで。清澄、焦ったように
晃希 「痛っ!クソッ!あぁぁ・・・っ!」
清澄 「晃希君・・・!!」
―― 静かに駆け寄る足音と、その後一瞬息を呑む清澄
清澄 「な、なにこれ、左手が・・・ひび割れて、ズレてる・・・?」
―― 晃希、自嘲気味に
晃希 「言葉の、通りだな・・・」
―― 清澄、晃希の様子を伺うように、心配した様子で聞く
清澄 「大丈夫?まだ、痛い?」
晃希 「いや、もう痛みはないんだが・・・。感覚が何もないんだ・・・」
―― セリフの後に少しも間を空けて
晃希 「あれは持っていけねぇ。スキャンされちまったモノにも、もう触れないほうがい いかもしれない。とにかく今は聡介の家に急ごう・・・!」
―― 清澄、少し躊躇った感じで
清澄 「う、うん・・・」
―― セリフの後、足音。
―― 足音が少し聞こえたところで、携帯の着信音が鳴る。
―― 晃希、最初はただ目にしたものを読んでいる感じだが、誰からの着信かを知って驚いたような言い方に
晃希 「着信?発信者は・・・美佳(ミカ)?美佳って、お前の母さんの名前じゃ・・・」
―― 清澄、驚いたように
清澄 「え?お母さん・・・?」
―― 清澄のセリフの直後に焦ったような晃希の声で
晃希 「清澄、触んな!」
―― 清澄、驚いて我に返る感じ
清澄 「!」
晃希 「触っちゃマズイ・・・。今は、とりあえず聡介の家に行こう・・・」
―― 清澄、少し落ち込んだ暗い感じで
清澄 「・・・うん」
―― セリフの後、二人の足音が遠ざかっていくのが分かるように徐々に小さくしていく
―― それに合わせて効果音も徐々にフェードアウトして一度消し、無音に

―― 場面が変わり、霞たちのシーン
―― 機械の音や三人の歩く足音がフェードイン
―― 少し待ってから瑠璃華のセリフ
瑠璃華「脇道使ってこっちに来るなんてないと思うけど」
―― 霞、ハッとした感じで
霞  「ねぇ、二人共。あれ、さっきより早い気がしない?」
紗奈 「ホントに?」
―― 瑠璃華と霞、少し考えながら言うような感じで
瑠璃華「言われてみればそんな気も・・・。それになんか光ってるし・・・」
霞  「あの光・・・やっぱり、町がスキャンされてる・・・?」
―― だんだんと機械音を大きくして、スキャナが三人に迫り来る感じを
―― 三人の声に焦りが感じられるように
霞  「さすがにあの光を生身で浴びたくはないし、どこか入れる場所探さないと・・・」
紗奈 「でもここら辺じゃ入れる建物なんてそうそうないし・・・」
瑠璃華「そうだ、もう少し行けば駄菓子屋ある。・・・走るよ!」
―― 瑠璃華のセリフの後、足音が三人の走っている足音に。
―― どんどん近づいてくる機械の音
瑠璃華「もうすぐ、あそこの駄菓子屋よ!」
―― セリフから少しだけ間を空けて、ガラスの着いた扉(駄菓子屋の横開きの扉)を開けるガラガラという音
瑠璃華「駄菓子屋のおばあちゃん!ちょっとごめん!二人共入って!」
―― 瑠璃華のセリフ後、二人分の走る足音
―― すぐに足音が止まり、勢いよく駄菓子屋の扉を閉めるガラガラ、ピシャンという音
―― 駄菓子屋のおばあちゃん(以後:祖母)が少し驚いたように
祖母 「おや、瑠璃華ちゃん、どうしたんだいそんなに慌てて。それに君たちも」
―― 息を切らしつつ、それでも軽く礼をする感じで
霞  「少しの間だけお邪魔します」
―― 瑠璃華の身構えるような声
瑠璃華「・・・来る!」
―― 機械の音が徐々に大きくなっていき、一度ピークを迎え、その後また少しずつ小さくなる。
―― 効果音で機械が頭上を通り過ぎていったのが分かるように。
―― 瑠璃華、ホッとした感じで
瑠璃華「とりあえず、無事、みたいね・・・」
―― 駄菓子屋のおばあちゃん、慌てた様子で
「い、今のはなんじゃ?凄い音がしてたが」
―― 瑠璃華、駄菓子屋のおばあちゃんを落ち着かせるような感じで言う
瑠璃華「ちょっと、町に変なのが現れて。危ないからおばあちゃんは外に出ないでね?あ と、一応鍵も閉めておいてね?」
―― 瑠璃華の言葉に三人を止めようとするおばあちゃん
祖母 「な、何を言い出すんじゃ。危ないなら三人も」
瑠璃華「大丈夫、私たちは友達のところに向かうから」
駄菓子屋の扉を開ける音。三人が外へ出ていく足音
―― 別れ際に瑠璃華がおばあちゃんに声をかける
瑠璃華「それじゃぁまたねおばあちゃん。ちゃんと扉も窓も閉めとくんだよ?」
―― 駄菓子屋のおばあちゃん、仕方ないといった感じで
祖母 「あぁ、分かったよ。あんたたちも気を付けてね」
―― その言葉の後、三人の歩く足音が聞こえ出す。
―― 霞、つぶやくように
霞  「あの光、やっぱりスキャンがされてたんだ・・・。でも、どうして・・・」
―― 瑠璃華のあっと何かに気付いた声
瑠璃華「あれ?あそこに立ってるの、もしかして清澄のお母さん?」
―― 一人の駆け出す足音。瑠璃華、少し安心したような声色で
瑠璃華「やっぱり、清澄のお母さんだ。美佳さん、大丈夫ですか?さっきのスキャンの時外にいたんじゃ・・・」
―― 話しかけても返事がなく状況が不自然で、瑠璃華は不思議そうな感じでもう一度声をかける。
瑠璃華「美佳さん・・・?」
―― 直後、美佳さんの体が地面に倒れるドサッという音。驚く瑠璃華の声
瑠璃華「美佳さん!・・・え、何これ・・・」
―― 霞もその様子を見て驚いたように。紗奈、驚きと怯えの混じった声にならない声
霞  「何これ・・・、まるで、ひび割れたガラスみたいな・・・」
紗奈 「━━━━っ!」
―― 美佳さんの様子を見た瑠璃華、驚愕と混乱で信じられない物を見た感じの声
瑠璃華「う、嘘・・・。美佳さん?・・・美佳さん!」
―― セリフの後、いきなりバチッと火花の散る音、瑠璃華の驚く声
瑠璃華「うわっ!」
―― 状況は、倒れた美佳さんに触れようとした瑠璃華の手とその体の間に火花が散った、ということ。
―― 霞、驚いた様子。瑠璃華、呆気にとられた様子で
霞 「今、瑠璃華さんの手・・・、一瞬ひび割れたような、ズレたような・・・」
瑠璃華「い、今の何?」
霞  「・・・本当に、スキャンされたってだけなの?」
―― 改めて状況を察した瑠璃華が悲しい声で
瑠璃華「これじゃ、触れることもできない・・・。起こしてあげることもできない・・・!」
―― 霞、暗く沈んだ小さな声でつぶやくように
霞  「・・・行かなきゃ」
―― ジャリッと靴底が道路と擦れる音(瑠璃華が立ち上がったことを表現)
―― 瑠璃華、自分に言い聞かせるような感じで
瑠璃華「これはきっと美佳さんじゃない。きっと大丈夫・・・。だから私たちは行かなきゃ・・・」
―― 言葉の直後、一人分の足音が聞こえだす。
―― それに続いてもう一つが聞こえだした直後、衣擦れの音とギュッと手を握る感じ
―― (瑠璃華に続いて歩きだそうとする霞の手を紗奈が握るという状況)
―― 霞と紗奈の会話中は瑠璃華の足音を消す
―― 霞、少し驚いたように
霞  「え、紗奈?」
―― 紗奈、少し恐怖に震えた小さな声で
紗奈 「す、少しだけ・・・こうさせて・・・」
―― 少しの間を空けて、柔らかい声で
霞  「・・・うん」
―― セリフの後、三人の足音が遠ざかっていくのが分かるように徐々に小さくしていく
―― それに合わせて効果音も徐々にフェードアウトして一度消し、無音に

―― 場面が変わり、聡介宅のシーンに
―― 機械の音等の効果音がフェードイン
―― (機械の音(スキャナの音)はもう遠くになったので少し聞こえる程度に小さく)
―― 少し待ってから晃希のセリフ
晃希 「俺たちの方が、目的地に先に着いたってことか」
―― 清澄、思ったことを聞いた程度の軽い感じで
清澄 「聡介、いるかな?」
晃希 「分かんねぇ・・・。家の方からも何の音沙汰もねぇし・・・」
―― 少し沈黙。その後、清澄が言いづらそうに晃希に聞く
清澄 「霞君たち、大丈夫だよね・・・」
晃希 「あぁ・・・」
―― 一度清澄に答えたあと、小さく独り言のように
晃希 「それにしても、少し遅い気がする・・・、あいつら・・・」
―― 再度沈黙。スキャナの小さな音以外に何も音がない状況で少し待つ
―― 遠くに三人の姿が見えるたことを清澄が発見し、それを晃希に伝えるように
清澄 「あっ、晃希君、あれ・・・」
―― 晃希、少し安心したように
晃希 「ん?・・・ふぅ、やっときたか」
―― 歩いてくる三人の足音を徐々に大きくして止める
―― 二人を見て安堵した感じで瑠璃華のセリフ
瑠璃華「良かった、二人とも無事で・・・」
―― 晃希、自慢げに言う
晃希 「当たり前だろ?俺らの方が心配だったぜ」
―― 三人の様子が変なことに気づいたように、清澄が少し遠慮しがちな感じで聞く
清澄 「ねぇ。何か、あった・・・?」
―― 清澄の質問に一瞬その場が静かになる
―― 霞、誤魔化すように少し自嘲気味に
霞  「ううん、何もないよ。ちょっと疲れただけ」
―― 清澄、何かを察したように
清澄 「・・・そっか」
―― 清澄のセリフの後、少し間を置く
―― 晃希の手を見た瑠璃華、驚いた声で
瑠璃華「それより、晃希その手どうしたの!?もしかしてスキャンに・・・」
―― 晃希、今までそのことを忘れていたかのように気楽な感じで
晃希 「あぁ、これ?俺がスキャンされたわけじゃねぇけど、なんかスキャンされたものを触ったらこうなっちまった」
―― 紗奈、心配そうな声
紗奈 「大丈夫なの?」
―― 晃希、少しでも場の空気が暗くならないように明るめな調子で
晃希 「あぁ、驚いたことにな。痛みも無いし動かせる。ただ感覚も一緒に無くなっちまって凄く変な感じだ」
紗奈 「そうなんだ・・・」
―― 何かを考えるような間
―― 瑠璃華、話題を変えるように切り出す
瑠璃華「それで、聡介は?」
―― 晃希、真面目な感じに戻って
晃希 「一応三人が来てからにしようと思ってたから、まだ確認してない」
―― 霞、心配そうな声で。
霞  「家にいればいいけど・・・。インターホン押してみよっか」
―― インターホンを押そうとする霞に、焦る晃希
晃希 「待て、霞!スキャンされたものに触っちゃ・・・!」
霞  「え?」
―― セリフの直後、ピンポーンと軽い音が鳴る
―― 霞、驚いたような慌てたような様子で
霞  「ど、どうしたの晃希君!?」
―― 晃希、驚きと不思議そうな様子で
晃希 「お前、今スキャンされたものに触れて・・・いや、何も起きてねぇならいい。それより聡介は・・・!」
―― みんなが黙るが、物音がしないし、聡介の声もしない
―― 霞、不安でおどおどしている感じで
霞  「家にいないだけで別の場所にいるとか、そういうことならいいんだけど・・・」
―― 晃希、何かを決心したように
晃希 「悪いな、聡介。こんな時だ、勝手にお邪魔させてもらうぜ」
―― セリフの後、ガチャンッと扉を開ける音
―― それに続いてみんなが家の中に入る足音
―― ここでスキャナの効果音は切って、静かな室内ということが分かるようにする
―― 瑠璃華、呼びかけるように
瑠璃華「聡介?」
―― セリフの後、少しの沈黙。それから次のセリフへ
晃希 「本当にいないのか・・・?」
―― 五人のフローリングを歩く足音
紗奈 「リビングも、さっきまで使っていたようには見えないし・・・」
晃希 「普段なら外に停められてる親父さんの車も無かったし。実は本当にいないのかも しれねぇな」
瑠璃華「町長ならこのスキャンのことだって知ってたかもしれないし、聡介も一緒にどこか行ったのかも?」
―― セリフの後、少し四人分の足音を小さくし、誰か一人の視点で聞いている感じに
―― 霞の心情を表しているように少しエコーを入れて
霞  (あれ、あの扉だけ閉まってる・・・)
―― 数歩足音、そして止まる。
―― 霞、不思議そうな感じで
霞  「ここは・・・?」
―― セリフ後、部屋の扉を開ける音
―― 中を見た霞、少し驚いたように
霞  「・・・聡介、君?」
―― 聡介、驚いたように
聡介 「え、霞?」
―― セリフ後、後の四人が集まってくる足音
―― 晃希、安心したように
晃希 「聡介!無事だったか!」
聡介 「みんな・・・。どうしてここへ・・・」
瑠璃華「どうしてって、あんたを探しに・・・」
―― 瑠璃華の言葉を遮るように聡介のセリフ
聡介「帰るんだ」
―― 驚いた様子の瑠璃華
瑠璃華「え?今なんて・・・」
――聡介、怒ったような声で。晃希と瑠璃華、戸惑ったように
聡介 「みんなは帰るんだ。この家には俺だけで十分だ・・・!」
晃希 「おい聡介、急にどうしたって言うんだ?」
聡介 「いいから、帰ってくれ。そしてもうここには来るな」
瑠璃華「ど、どうして急にそんなこと」
聡介 「・・・言えない」
瑠璃華「言えないって、それじゃぁ納得もできないよ・・・!」
―― 聡介、本気で憤ったような声で
聡介 「言ったら!言ったら君たちまで巻き込むことになってしまう!!君たちがこのま ま帰って、今日のことは知らないと言えば、君たちはきっと逃げられる・・・。 こんなことを任されるのは俺だけで十分なんだ・・・!」
―― 紗奈、聞きづらそうに躊躇いつつ
紗奈 「こ、こんなことって?」
―― 質問に黙る聡介に、もう一度少し強い口調で聞く
紗奈 「こんなことって何なの、聡介君・・・!」
聡介 「言えない。言えるわけない!これを言ってしまえば、もう君たちも関係者になっ てしまう。そうなればどうやったって危険に晒される・・・。だから言えない」
紗奈 「どうして?どうして言えないの!?」
―― 聡介、強い意志の現れか、叫ぶ
聡介 「それは俺が・・・、俺が君たちを助けたいからだ!!」
―― 聡介のその言葉の後、晃希が静かに言う
晃希 「お前、知ってたのか・・・?」
聡介 「え?」
―― 晃希が聡介の胸ぐらをガッと掴み叫ぶ。
晃希 「お前は!!今日こうなることを知ってたのか・・・!?」
―― 慌てた様子で霞が止めに入る
霞  「や、やめなよ、晃希君・・・!」
―― 憤った様子で、晃希は声を荒げる
晃希 「離せよ霞!俺は確かめたいんだ、こいつが今日のこと、知ってたのか知らなかっ たのか・・・!知っていて俺たちを危険な目に合わせたのかどうか!」
―― 瑠璃華、少し怒った様子で。瑠璃華の言葉を遮るように晃希のセリフ。
瑠璃華「晃希!さすがに言い過ぎじゃ・・・」
晃希 「確かめなきゃ分かんねぇだろ!」
―― 晃希の言葉に、聡介が呟くように言う
聡介 「知らなかったんだ・・・。知らなかったんだよ、何が起こるのか」
―― 徐々に衝動に任せるように叫ぶ
聡介 「こんなに危険だと思わなかったんだ。だから、みんなには黙っていようって思っ たんだ・・・!最初から、最初からこうだと知っていたら・・・!みんなにも知 らせるに決まってるだろ!」
―― 聡介の様子を見て、晃希はどこか安心したように胸ぐらを離す
―― 聡介の来ていた服の衣擦れの音を少し入れて、それがわかるように
―― 晃希、どこか安心したような声で
晃希 「そうか。なら良かった」
―― 聡介、まだ少し怒ったような様子で
聡介 「そんなの当たり前だろ。みんなだけでも、助けたいんだから」
晃希 「そこは違うぜ。というより、意識を変えて欲しいな、聡介。お前、俺たちを助け るたいって何様のつもりだよ、ホント。真面目すぎんだよ」
―― 聡介、驚いたように
聡介 「え?」
晃希 「助ける助けないの話じゃねぇだろ?俺たちはみんなで助かるんだよ。そのために ここに来たんだ。それに、もしここが本当に危険なら、尚更お前一人置いてけね ぇよ」
―― 聡介が黙り、少し無音。
―― 後期が自嘲気味に言う
晃希 「俺も自分勝手だけどさ。せめて俺の周りに危機的状況の奴がいたらさ、放ってお けねぇだろ・・・」
聡介 「晃希・・・」
霞  「こ、晃希君・・・」
―― (霞が尊敬の眼差しで晃希を見つめている)
―― 晃希、今更少し恥ずかしくなった様子で
晃希 「や、やめろよ霞。そんな目で見つめんなよ。・・・恥ずかしいから」
―― セリフの直後
清澄 「ねぇ、みんな・・・」
―― セリフの直後、家の外に何台もの車の止まる音
―― 清澄、淡々とした口調で
清澄 「誰か来る・・・」
聡介 「なにか聞こえるか?」
―― 一瞬間を置いて、淡々とした口調のまま言う
清澄 「聞こえたよ、さっき・・・。家から声が聞こえた。・・・この家だ。・・・この家 に残っているのは一人のはずだ。・・・誰か別のやつがいる。・・・捕まえろ」
―― セリフ後、少しの間を空ける
―― 霞、我に返って焦ったように
霞  「・・・逃げなきゃ!」
―― みんなが逃げようとする中、動かない聡介に晃希が言う
晃希 「聡介」
聡介 「・・・」
晃希 「聡介・・・!」
聡介 「・・・この家には、いくつか裏口がある。・・・付いてこい」
―― 聡介の立ち上がり歩き出す音
―― 紗奈と晃希、少し笑顔で
紗奈 「聡介君・・・」
晃希 「そう来なくっちゃな!」
―― 六人、廊下を走る音
―― すぐに扉が強引に開けられる音
―― 晃希の焦った声
晃希 「急げ!」
隊員A「誰かいたぞ!捕えろ!!」
武装した複数の人間の走る音。
晃希 「おいおいおい!穏やかじゃねぇなぁ!」
瑠璃華「嘘、嘘嘘っ!何よあれ!」
聡介 「いいから、こっちだ!」
―― ガチャと扉を開ける音と、みんなが駆け出す音
―― (聡介の誘導に付いてみんな家の外に出る)
霞  「目の前が、森・・・」
―― 晃希、焦った感じで
晃希 「クソッ、町にも逃げ込めねぇかだろうし・・・。仕方ねぇ、森に入るぞ!」
―― 六人の走る足音
―― しばらく草をかき分けて走る足音のみ、その後再び、扉を開ける音が小さく聞こえる
聡介 「奴らが来る・・・」
晃希 「そもそも奴らってなんなんだ?お前が知ってたっていう情報は?」
聡介 「それは、見つからなさそうな場所まで逃げたら、話しますよ」
―― セリフ後、六人の足音が徐々に小さくなり、それに合わせて効果音なども徐々にフェードアウトしていき、無音の少しの間を入れる

―― シーンが変わって辺りが暗くなった頃
晃希 「とりあえず、あいつらの足音は聞こえねぇな」
―― 霞、息が切れた様子で
霞  「はぁ、はぁ・・・。逃げ切った・・・?」
紗奈 「とりあえずは、かな」
晃希 「それじゃあ、聡介。話して貰えねぇか?あいつらはなんなのか。お前は何を知っ てて、なんであいつらは俺たちを追ってくるのか」
―― セリフの後、少し間を空けてから聡介が話し出す
聡介 「彼らは数年前秘密裏に作られた日本の特殊部隊、通称GSF(ジーエスエフ)だ」
晃希 「特殊警察部隊?SATみたいなもんか?」
聡介 「いや、あれはSATよりも軍部隊に近いんだ。『日本電子情報化計画』が進められる に際して、その安全を守るという名目でできた『政府特殊部隊』。だけどその主な 活動は、さっきみたいな活動で、実際に計画に支障をきたすような存在を消す役 目を担っている」
瑠璃華「それじゃぁ、あいつらは私たちも狙ってたの?」
聡介 「恐らく、俺から情報を貰ったと考えていたんだと思う」
―― 清澄、淡々とした口調で
清澄 「もう、聞いてしまった。本当に、逃げられない・・・」
晃希 「こ、怖い言い方するなよ清澄。それで、あいつらは何を隠したくてお前を?」
聡介 「それは・・・、すまない。なんとなくしか。詳しいことまでは分からないんだ」
瑠璃華「分からない?」
―― 聡介は何かを思い出すように話し始める
聡介 「あぁ。本当は町長である父が、国から何かの支持を受けていたのは知っている。 だが父はそのことに関して教えてくれなかった。ただ時々、父が持っていた資料 を見たんだ。分からない業界用語がたくさん並んでいたが、なんとなく、父はス キャンに反対なんだと悟った」
―― 晃希、驚いたように
晃希 「町長がスキャンに反対だなんて意外だな」
聡介 「あぁ。俺もそう思って聞いてみた。だがいつも、父は何も教えてくれなかった。 だけど、今日になって父は言った。「俺はここにはいられない。もう少しで『あれ』 が完成する。それまでは、政府に捕まるわけにはいかない」そして、こうも言っ た。「だから今は、お前に頼みたい。この家にいてくれ。絶対に助けるから」と」
瑠璃華「じゃぁ、聡介はお父さんに頼まれて家にいたの?じゃぁ『あれ』って何?」
聡介 「『あれ』について、父は教えてくれなかった。だけど「人を救えるもの」とは言っ てた」
瑠璃華「そっか、「人を救えるもの」か・・・」
晃希 「じゃぁ、俺たちまで一緒に狙われる理由もそれか?」
―― 聡介、それを否定するように言う
聡介 「それを知ったっていうことも理由かも知れない。だけど多分あいつらがみんなを 狙う理由はそこじゃない。もっと知られたくないことがあるんだと思う」
瑠璃華「もっと、知られたくないこと?」
聡介 「あぁ。もっと根本的な問題。あんなイレギュラーな状況を見た人を残しておくわ けにはいかないって所だろ。万が一この町の外でそんな話が出たら、計画が頓挫 するだろうし、政府が問い詰められることは間違いないから」
―― 聡介の言葉に、晃希は焦った様子で
晃希 「てことは、町の人も危ねぇんじゃねえのか!?」
―― 聡介、冷静に言う
聡介 「すぐには何もないと思う。今この町は普通の電波が届かないように孤立させられ ている。だから何も起こさなければ今すぐに町の人たちが危ないってことはない と思う。ただ、どこかにそういう話が漏れたらマズイかもしれないけれど」
晃希 「じゃぁ俺らが逃げ切っても、目にした事実を話すこともできねぇってことか」
聡介 「多分。逃げた人間への人質となるだろうね」
―― みんな沈黙
―― 紗奈、誰にともなくつぶやくように
紗奈 「これから、私たちはどうする?」
晃希 「町に戻ったって俺たちは捕まりに行くようなもんなんだろ?だったら町の外に逃 げるしかねぇじゃねぇか」
聡介 「だが、多分町への主要な道は封鎖されていると思うし、そこを通るなら捕まるの 覚悟になる」
―― 晃希、苦笑して言う
晃希 「そりゃ嫌だな・・・」
―― セリフの直後、清澄が近くにだけ聞こえるような小さな声で
清澄 「静かに・・・みんな。もう、まずいかも・・・。あいつら来てるの、足音、聞こ える・・・」
―― 足音には清澄しか気づいてないので、効果音にGSF隊員の足音は入れなくていいです。
―― 不思議そうな、それでいて不安そうな晃希
晃希 「そんな、何も聞こえねぇが・・・」
瑠璃華「でも今、月の反射で光ったのがもしかして・・・」
―― 霞も気づき、息を呑む
晃希 「言われなきゃ分からないけど、確かに坂の下に影が見える・・・」
―― 晃希、舌打ち。してやられたという感じで
晃希 「電気つけてねぇのかよ・・・。どうする、このままじゃ捕まっちまうぞ・・・!」
―― 霞、何かを決意したように言う
霞  「・・・それは、ダメだ」
―― 次の霞のセリフが強調されるように前後に少し間を持たせて
霞  「・・・この丘を越えよう」
―― 晃希、霞のセリフに驚きを隠せない感じで
晃希 「お前、何言って・・・」
―― 霞のセリフは、声色や性格が変わらない程度に、決意の強さが伝わるような感じで
霞  「みんなで助かるためには、そうするしかない」
晃希 「夜の森だぞ?」
霞  「危険なのは分かってる。でも、捕まらずに町から抜け出すにはこれしかない・・・!」
瑠璃華「でも・・・」
霞  「みんな覚えてるよね。ここは何度も遊んだ僕らの庭。地の利はある。僕は、それで逃げ切れる可能性にかけたい・・・!」
―― セリフの後、少し間を空ける
―― 晃希と瑠璃華、少し呆れながらも共感した感じ
―― 聡介と清澄と紗奈、その提案に納得したように。
晃希 「ったく。お前にそんな事言われるとは」
瑠璃華「そうね。ちょっとビクビクしすぎてたかもね」
聡介 「提案は突拍子も無いですが、今はそうも言ってはいられませんからね」
清澄 「うん・・・いいと思う・・・」
紗奈 「私も、お兄ちゃんに付いてくよ」
―― 五人のセリフの後、少しだけ間を空けて
霞  「行こう。みんなで・・・!」
―― セリフ後、音を全てフェードアウト
―― シーンの変わり目であることを出すために、無音の時間を少し作る。

 終盤(Chapter.3)

―― 場面が変わり、走って逃げる六人とそれを追う隊員
―― 状況の分かる効果音(六人の走る足音、隊員の走る時に揺れる装備の音、走る六人の荒い息遣い、草が揺れる音など)がフェードインして始まる
―― 六人のセリフも走っている間は息が上がった感じで
―― 晃希、イライラした様子で
晃希 「クソッ!あいつらいつまで追ってきやがる・・・!」
瑠璃華「こっち!」
聡介 「これは、穴ですか」
瑠璃華「入って!」
―― 瑠璃華の後に段差を飛び降りて着地する音
―― 少し間を空けてから複数人の足音が横に通り過ぎていったように
―― その後、無線のノイズと内容が聞き取れない程度に誰か隊員の声
晃希 「清澄、聞こえたか?」
清澄 「うん・・・・こちら03(オースリー)、地点B-3(ビースリー)にて目標をロスト。 近辺の捜索を開始する。・・・だったと、思う」
晃希 「さすが清澄・・・!」
清澄 「瑠璃華、これから、どうする?」
―― 瑠璃華、確かな確証を持ったことを言っているので自信のある感じで。ただし少し小さい声で言う
瑠璃華「この穴、何のためか知らないけどしばらく続いてるから。地上を移動するよりは 安全な気がするし、ここを進もう」
―― 屈んで歩いているのが分かるように、足音に少し地面をするような音を加えて
―― 晃希、少し心配するように
晃希 「お前、服汚れちまってるじゃねぇか」
―― 瑠璃華、気にしていない様子で
瑠璃華「そんなの、気にしてらんないでしょ?というか服の汚れ気にする私なんて想像できないくせに」
―― 晃希、苦笑混じりに
晃希 「ま、昔と変わんねぇな」
―― 紗奈、何かに気づいたように
紗奈 「あそこ、明かりが見える」
瑠璃華「うん、もうちょっとで出口ね」
―― 清澄、冷静な声で
清澄 「・・・、後方、来る・・・」
―― 紗奈の驚く声
紗奈 「えっ!」
聡介 「急げ・・・!」
―― 足音を姿勢を屈めたまま走っているものに
―― 効果音のみが少し続いたあと、解放されたというような瑠璃華の声
瑠璃華「出れた!」
―― そのセリフの直後、はっきりと聞こえる大きさで
隊員F「こちら05(オーファイブ)、目標確認」
―― 瑠璃華と晃希、血の気が引いた感じの声で
瑠璃華「嘘・・・!」
晃希 「どうした・・・って嘘だろ。銃かよ・・・!」
隊員F「複数の目標と遭遇、捕獲任務に移る」
―― バチバチと火花が散るような音
霞  「何か、帯電してる・・・?」
清澄 「あの光、晃希が、携帯に触った時と、同じ・・・」
―― 隊員F、感情の起伏もなく、淡々と
隊員F「捕獲を実行」
―― セリフの後、バチッと一際大きく火花が散るような音。
―― 直後に瑠璃華が叫ぶ
瑠璃華「みんな伏せて!」
―― セリフの直後、バチッと一際大きな放電するような音
―― 聡介、うろたえる声
聡介 「眩しくて見えない・・!」
―― 直撃したのは瑠璃華。その時の声
瑠璃華「きゃっ・・・!」
―― そのまま衝撃で飛ばされて地面に落ちる音
―― 瑠璃華のうめき声
瑠璃華「うっ!」
―― 晃希、焦る声
晃希 「瑠璃華!」
―― 晃希の駆け出す足音
―― 地面を体が這いずるような音
―― 無理して体を動かすことで痛みに苦悶する瑠璃華の声。痛みで呼吸も乱れた様子で
瑠璃華「うっ・・・!くぅっ!・・・はぁ、はぁ」
―― 晃希の叫ぶ声
晃希 「大丈夫か、瑠璃華!?」
―― 痛みに耐えて平気そうに言おうとしている感じで
瑠璃華「こ、このくらい、平気・・・。っ!」
晃希 「無理すんじゃねえ!」
瑠璃華「でも、このままじゃ・・・!」
―― 複数の人が駆けてきている足音
―― さっきの銃から聞こえたバチバチと火花の散るような音がもう一度聞こえ出す
―― それを聞いた上で、迷いのない声で
晃希 「霞、聡介、手を貸せ!連れてくぞ・・・!」
聡介 「分かった」
霞  「うん!」
―― 再び走り出す六人。
―― 足音の一つだけ足を引きずるような、バランスの悪いものに
―― 隊員F、抑揚も慈悲もない感じで
隊員F「逃げても無駄だ。どうせ捕まる」
―― 後方からまたバチッと一際大きな音
―― それの直後に草むらをガサガサと漁るような音
―― 清澄、誰かに語るように
清澄 「スキャナの、あの光と同じ、なら・・・。きっと木の棒でも・・・」
―― 打たれた弾丸、それにめがけて今拾った木の棒を投げつける清澄
清澄 「これで、どうだ・・・えいっ!」
―― 何かが空を切って飛んでいく音
―― 直後、光が瑠璃華に当たった時と同じような音が響く
――(状況としては、放たれた閃光が木の棒に当たり、音と光が木の棒にまとわりつく様に放たれ、そして何事も無かったかのように消える)
―― その様子を目にした霞、驚いた声で
霞  「木の棒でも盾になるの・・・!」
晃希 「いいから走るぞ!」
―― 六人の走る足音に少しずつ隊員たちの足音や装備の音が混ざり始めて、次第に大きくなっていく(徐々に六人と隊員たちの距離が縮まっていることの表現)
―― 瑠璃華、悲痛な声で。それに対抗するように晃希は叫ぶ
瑠璃華「このままじゃ、みんなまで・・・!」
晃希 「諦めんなよ瑠璃華!お前らしくもない!」
―― 晃希に同意するように、聡介が力強い声で
聡介 「そうです。どこか休める場所さえあれば、傷は無いしこれなら治せるかも知れない・・・」
晃希 「その言葉、本当だな、聡介」
―― 聡介、確信を持った声色で
聡介 「はい」
―― 聡介の言葉を聞いて、晃希に気合いが入った感じで
晃希 「よしっ、それならこっちだ!」
―― 霞、晃希の言葉に何か気づいたように
霞  「もしかして、晃希君あの場所に・・・?」
―― 次の霞のセリフの間だけ周りの効果音等を少し小さく
―― セリフ自体にもエコーをかけて、次のセリフが心理描写だと分かるよに
霞  (さっき聡介君が言った条件に合いそうなのは、ここら辺だといくつかあるけど。 でもなんだか、今みたいな時はあの場所以外に行くような気がする。大丈夫、き っとあの場所に行くって、信じる・・・!)
―― 効果音等を元の音量に戻して一瞬間を空けて、一人ズサッと森の中足を止める音
―― 霞、意を決したように普段にはない強い声で叫ぶ
霞  「みんなは先に行って!」
―― 晃希、驚きの声があがる
晃希 「おい霞、お前!」
霞  「後で追いつくから!絶対に!!」
――その声を信じることにした晃希、小さくだけど強く言う
晃希 「絶対来いよ・・・!」
―― 五人の足音を徐々に小さく(走り去っていくのが分かるように)
―― 逆に隊員の足音は徐々に大きく(さらに隊員との距離が縮まったことが分かるように)
―― 隊員の一人が自信有りげに言う
隊員C「一人は観念したか」
―― 霞、怯えに少し声が震えつつも一言
霞  「誰も、観念したりするか・・・!」
―― セリフの直後、霞の走り出す音
―― 隊員の一人が迅速に指示を出す声が徐々に遠ざかっていく
隊員B「お前たち二人で先に逃げた方を追え。残りの俺たち三人で今の奴を追う。油断するなよ」
―― 霞のセリフを心理描写と分かるようにエコーをかけて
―― 霞、なんとか勇気を振り絞っている感じで
霞  (こっちに三人、あっちに二人・・・。怖いけど、僕もなんとかしなきゃ・・・!)
―― セリフが終わってから少しずつ効果音をフェードアウト
―― 効果音が小さくなっていく途中から霞の心理描写、祈る感じで
霞  (逃げ切ってね、みんな・・・)
―― 効果音が消えて無音になてから少し間を開ける。

―― シーンが変わり、逃げる晃希たちのシーンに
―― まず効果音(走る足音、草の音、走って上がった息の音)がフェードイン
―― 晃希、今の状況を確認するように
晃希 「霞が追っ手数人引きつけてくれた。あとは残り二人か・・・。行ける!」
―― 一人その場で足を止める音
―― 晃希、追っ手に気づかれないように少し小さめの声で
晃希 「清澄、聡介、瑠璃華を頼む・・・!」
―― 聡介、晃希の行動に驚く
聡介 「晃希!?」
―― だんだんと大きくなる隊員たちの足音と装備の音
―― それに対するように三人の足音が少しずつ離れていく
―― 隊員C、少し煽る感じ。隊員F、淡々とした感じ
隊員C「やっと観念したか。あの少年がいうほどにもなかったな」
隊員F「大人に手間かけさせないでくれるかな」
―― 二人の隊員の歩く音が近づいてくる
隊員F「お前はあいつらを追え」
隊員C「了解」
―― 隊員Cのセリフの後、走り出そうとする音が聞こえたところで、晃希のセリフ
―― 晃希、ボソッと小さく
晃希 「・・・行かせねぇよ」
隊員C「何!?」
―― ガッと何かを蹴る音に続けて、ズサーと人が地面に転ぶ音
―― 隊員F、淡々とした声の中に少し苛立ちを含ませて
隊員F「おい少年、自分が今どうするべきか、頭を使え」
―― 晃希、あっけらかんとした様子で
晃希 「いやー、俺頭悪いんで」
―― セリフの直後、ドスッという殴る音。隊員Fの呻き声
隊員F「うっ・・・!」
―― 続いてガッという蹴る音と、ガシャンという機械が地面に落ちる音
――(目の前の隊員の銃を持っていた手に蹴りを入れ、その後落ちた銃を拾う晃希)
晃希 「へー。この銃、硬い割に意外と軽いんだな」
―― 隊員F、少し痛みを堪える感じで
隊員F「貴様っ・・・!」
―― 晃希、何かを思い出したように言う
晃希 「そういや、てめぇ瑠璃華を打った奴だよなぁ・・・」
―― セリフの直後、ゴッと銃の柄で隊員Fの頭を殴る鈍い音
隊員F「がっ・・・」
―― セリフと共に一人が地面に倒れる音
―― 隊員C、苛立ちを隠せない様子で
隊員C「クソ!油断させやがって。わざと囮になったってか?」
晃希 「そうだよ、その通りだ。勝手に油断したのはそっちだろ?」
―― セリフの直後、もう一度ゴッと鈍い音がして、人が倒れる音
―― (起き上がろうとする隊員Cの頭を銃の柄で殴り気絶させた状況)
―― 晃希、少し明るい声で
晃希 「ま、頭悪くたって、今必要なのは力っしょ?」
―― 草を掻き分ける音と一緒に清澄のセリフ
清澄 「こ、晃希君・・・!無事・・・?」
―― 晃希、いつものように元気な感じで
晃希 「無事じゃなきゃこうも話せねぇだろ?とにかく今は先を急ぐぞ!」
―― 聡介、不思議そうに
聡介 「でも、霞たちとはぐれたままだが」
―― 晃希、自信の有る堂々とした感じで
晃希 「大丈夫さ。霞はきっと分かってるさ。あいつなら、きっとあの場所に来てくれる!」
―― そう意気込んだ晃希に、清澄、何かを思い出したという感じで
清澄 「ところで、・・・紗奈ちゃん、は?」
―― 晃希、清澄の言葉に焦った様子で
晃希 「え?・・・そういえば、いない!!」
―― 焦る晃希の様子を見た瑠璃華、少し元気が無いながらも少し笑う
瑠璃華「ふふっ、晃希焦っちゃって・・・」
晃希 「何言ってんだ!俺は真剣に」
瑠璃華「紗奈ちゃんは、大丈夫・・・」
―― 瑠璃華の言葉に一瞬止まってから聞き返す
晃希 「え?どうして」
瑠璃華「あの子も、きっとあの場所にくるわよ・・・。霞と一緒にね」
―― 効果音で風が草を揺らす音を流し、それがフェードアウトすることでシーンの移動を表現
―― 無音になってから少し間を空ける

―― シーンが変わって逃げる霞のシーン
―― 効果音(走る足音、逃げる霞の息遣いなど)からフェードイン
―― 霞、焦った感じの独り言
霞  「晃希君なら、きっとあの場所に来てくれる・・・!でも、その前に追っ手をなん とかしなきゃ・・・!」
―― 足音の大きさ変わらず、霞、さらに慌てた様子で
霞  「こっちに行けば、あいつらにはかなり走り辛いはず・・・!」
―― それからしばらく足音
―― 最初は変わらないものの、徐々に隊員たちの足音と装備の音が小さくなっていくに
―― 霞、少し喜んでいるように。最後だけ不意を突かれて驚く感じで
霞  「やった!距離が離れて・・・ってうわっ!」
―― セリフの直後、思いっきり斜面を落ちた音(ザザーッ、ガラガラ、ドサッ、など)
―― (目の前に現れた急な坂に足を滑らせ派手に転がり落ちた霞)
―― 霞、痛みに耐えながら呻くように
霞  「痛ってて・・・でも、行かなきゃ・・・うっ!」
―― 苦悶の声とドサッと再び地面に倒れる音
―― 霞、驚きと焦りの混ざった声で
霞  「足に力が・・・。嘘っ、血が・・・!」
―― 霞のセリフの直後、ザクッと数人が地面を踏みしめる音
―― 霞の声にさらに焦りが混じる
霞  「嘘、もうあそこまで・・・!早く!うぅっ・・・。逃げなきゃ・・・!」
―― ズルズルと体を這わせてでも進もうとする音
―― 這う音が鳴り始めてすぐに人が着地した音
―― 霞の声が少しずつ泣きそうな声に
霞  「う、うそ・・・」
―― 霞の声に関係なく、隊員の足音が鳴り始める
―― 霞、焦りと緊張と恐怖で、うまく言葉を紡げない泣きそうな様子で
霞  「あ、あっ、あぅぁ・・・」
―― 隊員B、感情のない低い声で
隊員B「目標を捕獲」
―― 隊員Bの言葉を遮る(声に被るくらいでもいいです)くらいのタイミングで、紗奈の叫び声
紗奈 「お兄ちゃんに、触るなあああ!!」
―― 直後、大きな石で殴られる鈍い音(ヘルメットに日々が入る音、バイザーが割れる音など)と、人が飛ばされて地面に倒れるズシャーッという音
―― 隊員D、焦ったように
隊員D「何!!増援!?グホァッ!」
―― 隊員Dも紗奈に殴られる
―― 大きな石で殴られた鈍い音と人の倒れるズサァという音
―― 隊員E、驚きとどこか恐怖を含んだ声で、少し叫び気味に
隊員E「な、なんなんだよ・・・!」
―― セリフ後、ジリジリと後ずさるような音
―― その音をかき消すように、ドンッと強く地を踏みしめる音
―― (残った隊員Eと霞の間に立ちふさがる紗奈)
―― 紗奈、大声で叫ぶ
紗奈 「お兄ちゃんに触れていいのは、私だけなんだからあ!!」
―― 叫ぶのと同時に、ブンッと思いっきり投げた石が風を切る音
―― そして、ドスッと石が人にぶつかった鈍い音
―― 隊員Eの苦しそうな呻き声
隊員E「うっ・・・!」
―― セリフの後、ドサッと人が地面に倒れる音
―― そのまま少し無音の間をつくる
―― 少しして、霞、ハッと我に返って戸惑ったように
霞  「あ・・・。え?な、なに?え・・・?」
―― 慌てる霞に対して、紗奈は冷静に
紗奈 「お兄ちゃん、心配かけさせないでよ」
霞  「え?さ、紗奈?どうして・・・」
―― 紗奈、少し動揺したように
紗奈 「あっ・・・、べ、別に心配だったからとかそういうんじゃないけど、ただ・・・」
―― セリフの最後に被るくらいで、霞のスンスンと鼻をすする音
―― 紗奈、一瞬言葉が止まり、不思議そうに
紗奈 「・・・え?ちょ、ちょっとお兄ちゃんどうしたの!?」
―― 霞、安心から涙声に
霞  「紗奈ぁ・・・。紗奈ぁ・・・!」
紗奈 「ちょっと!あぁもう、なんで泣くかなぁ・・・。全く、どっちが年上よ、もう。よしよし、泣かないの」
―― セリフ内「よしよし、泣かないの」の部分で頭を撫でているような効果音
―― セリフが終わった直後、ガシャンという機械音
―― 紗奈、慌てたように
紗奈 「何!?」
―― 紗奈が振り返る(体勢を変える)ザクッという地面を踏む音
―― その直後、バチバチッという火花の散るような音
―― 隊員D、少し喜んだ感じで
隊員D「目標、捕獲・・・」
紗奈 「やばっ!よけられない・・・!」
―― 銃弾の放たれるバチッという一際大きな音
―― その音の直後
霞  「紗奈・・・!」
―― 霞の声の後、バチッと放電するような瑠璃華に当たった時と同じ音
―― (縦断が紗奈に当たる直前に、霞が自分の手でそれを防いだ)
―― 霞、ちょっと苦しそうに
霞  「痛っ!」
―― 紗奈、凄く焦った様子で
紗奈 「お兄ちゃん!手が、手が・・・。ひ、ひび入ってる!ズレちゃってる・・・!!」
―― だが次の瞬間、バチバチという音が消える
―― (手に入ったひびのような線も、手のズレも、何もなかったかのように元に戻った)
―― 紗奈、混乱したような様子。隊員Dは驚きに満ちた様子で
紗奈 「あ、え?な、何もない・・・?あれ?お兄ちゃん、大丈夫なの?あれ??」
隊員D「嘘だろ・・・まさか、反電子体質・・・!」
―― 隊員のセリフで何かを思い出したように歩き出す紗奈。その足音が鳴る
―― 数歩で足音は止まり、紗奈、怒りを露わにして
紗奈 「あんた・・・お兄ちゃんに、何すんのよ!!」
―― ドゴッと鈍く物凄い音がして、機械が地面に落ちる音がする
―― (紗奈の足が地面にうつ伏せだった隊員の頭を思いっきり踏みつけて気絶させた)
―― 霞、まだ涙声だけど、少し唖然とした様子で
霞  「さ、紗奈。さすがだね・・・」
―― 紗奈は何事も無かったかのように言う
―― 紗奈のセリフの途中(※)から全ての音をフェードアウトしていき、セリフが終わるくらいに聞こえなくなって無音になる感じで
紗奈 「さ、お兄ちゃん行こっ?早くみんなのところ行かなきゃね。みんなきっと待ってるから。立てる?(※)・・・って何これ!酷い傷じゃない!!せめて応急手当しないと・・・」
―― 無音になって少しの間を空ける。

―― シーンが変わって、霞と紗奈がある場所に着いたシーン
―― 歩いていた二人の足音が止まる
―― 紗奈は不思議そうに。霞は痛みに耐えつつという感じで
紗奈 「ここ?」
霞  「うん。ここだよ、きっと」
紗奈 「って言っても、ここ使われてない元水質管理所よね?」
霞  「うん、まぁね」
―― 錆びた扉を開けるギギーッという音
―― 紗奈、小さな声でやはり不思議そうに
紗奈 「・・・誰もいない?」
霞  「いや、僕たちの秘密基地は、一番上の階だ」
―― 鉄の階段を登るカツンカツンという紗奈の足音と、片足ケンケンで登る少し重い霞の足音
紗奈 「それにしても、どうしてここだと思ったの?」
―― 霞、最初は普通に。セリフ内「それに・・・」だけ少し恥ずかしそうに
霞  「ここらへんで、ちゃんと隠れて休憩できる場所は珍しいし、それに・・・」
紗奈 「それに?」
―― 霞、恥ずかしそうに答える
霞  「昔、僕と晃希君が始めて会った場所だから・・・」
紗奈 「・・・そっか」
―― 二人無言に鳴り、足音だけが響く
―― 何段かそのまま登ったところで、足音が止まる
―― 霞、少し不安そうに
霞  「ここが最上階。多分、ここにいるはず・・・」
―― 鉄の錆びた扉を開ける音
―― 扉の音が止まったところで、晃希が嬉しそうな感じで
晃希 「さすが霞!分かってんな!」
―― 清澄は驚いたように。聡介は冷静に。瑠璃華は笑った様子で。
清澄 「凄い・・・、本当に、来た・・・」
聡介 「おや、ちょうどいいいタイミングですね」
瑠璃華「紗奈ちゃんも、流石だね」
―― 紗奈、感心した様子で
紗奈 「凄い、本当にみんないた・・・」
―― 霞、安堵しきった様子で
霞  「良かった。みんな無事で・・・。それに瑠璃華さんも元気になってるし・・・」
晃希 「ホントだよな。ってかお前の方こそ大丈夫かよ!」
―― 心配して駆け寄ってくる足音。苦笑いの霞。
霞  「ちょっと足切れちゃって。思ったより傷が深かったみたいで・・・」
晃希 「おいおい、本当に大丈夫かよ・・・。一応逃げ切れはしたようで何よりだけどよ」
―― セリフから少し間を空けて、紗奈が不思議そうに言う
紗奈 「あれ?そういえば晃希君の手も治ってる」
―― 晃希、思い出したかのように
晃希 「あぁ、そういえばな。聡介が持ってた薬っぽいやつ使ったら一瞬だったぜ」
―― 聡介、何かを読むように
聡介 「あれは薬というより中和剤です。瑠璃華も晃希も、『電子カブレ』という症状だったから治ったんです。現実世界と電子世界の誤差を中和するものだから中和剤です」
紗奈 「現実世界と電子世界の誤差?」
聡介 「はい。直接の電子化に耐えられずに体に誤差が生じる現象ですね。カブレと言う くらいだから、触れば転移する人もいるし、むしろ何の干渉も受けない人もいる。 まぁ後者は希ですが」
瑠璃華「ま、事情はともあれ、とりあえずみんな無事で良かったよ」
―― セリフの後、清澄、何かを告げるように
清澄 「みんな、朝日、だよ・・・」
―― みんな嬉しそうに
晃希 「夜が開ける。とりあえず、もう暗い中で逃げ回る必要もない」
紗奈 「私たち、逃げ切れたんだね・・・助かったんだね・・・!」
聡介 「とりあえずでも、危機を脱したことに変わりはないね」
―― 晃希、宣言するように元気よく
晃希 「よしっ!日が昇ったら隣町に行こう。そこまで行ければ、今回はとりあえず俺た ちは助かる!」
―― 晃希の言葉に、残りの五人も「うん」と頷く
―― そのまま無音の状態にし、少し間を開ける

―― シーンが変わり、六人が無事に隣町に着いたシーン
―― 町の中の雑踏や六人の足音がフェードイン
―― 晃希と清澄、安心したように
晃希 「無事に、山を降りてこられたな」
清澄 「うん」
晃希 「なんだかこっちは、何も変わりないんだな。気付かなかったのか?」
―― 少し間を空けて町人のセリフ
町人A「あらあら、どうしたのその足!救急車呼ぼうか?」
―― 霞、凄く困った様子で
霞  「あの、いや、ちょっと山で・・・。今から病院行くので・・・、はい・・・」
町人B「本当に大丈夫?病院まで結構遠いぞ?」
霞  「あのっ、はい。大丈夫、です・・・」
町人C「遠慮するなって」
霞  「あのあの、本当に、だ、大丈夫ですから・・・!」
―― 瑠璃華、少し笑い気味に
瑠璃華「目立つっていうのも、大変なものね」
―― 晃希、少し真面目に
晃希 「だがまぁ、確かにその怪我は、なんとかしねぇとな・・・」
霞  「それはそうなんだけどね。それにしても・・・」
―― 霞の言葉を引き継ぐように、紗奈が言う
紗奈 「全く、現実って感じがしないね・・・」
―― 少しの間みんな黙り、効果音のみが聞こえる。
―― 沈黙を破って、清澄、静かな声で問いかける
清澄 「みんな、これから、どうする・・・?」
―― 霞、悩みながら答える
霞  「どうするって言われても・・・。あのことを他の町で話たら、きっと町の人に被 害が行きかねないんだよね・・・。だから、公表するのだって無理だし」
―― 瑠璃華、少し強めの声色、真面目な雰囲気で
瑠璃華「じゃぁ、諦めるの?」
―― 瑠璃華の言葉に、さらに霞は悩みながら答える
霞  「それは・・・やっぱりできないよ。たとえ僕だけになっても、何があったのかは 調べたい・・・!」
瑠璃華「そう・・。そっか・・・」
―― 瑠璃華、少しホッとしたような感じで
瑠璃華「そう言ってくれたら、私と聡介の決断も無駄にはならなさそうだね」
―― 晃希、不安そうな様子で
晃希 「な、なんだよ。決断って・・・」
―― 瑠璃華、躊躇うことなくはっきりと答える
瑠璃華「私、電子の世界に行こうと思ってるの。もちろん、正式な手続きを踏んでね。聡 介も同じ」
晃希 「お前ら、それ、本気なのか?」
瑠璃華「うん」
―― 晃希、狼狽えた様子で
晃希 「でも!それじゃあお前・・・!」
瑠璃華「大丈夫よ。きっと私の意識は残る。だから、電子世界に行けば今よりもっと、別 のヒントがあるかもしれない。それを現実世界に伝えられるってことは、町を救 えるヒントになるかもしれないじゃない?」
晃希 「それなら俺も・・・!」
―― 聡介、晃希を諭すように
聡介 「晃希。お前まで来たら、残った三人、しかも霞はあんな怪我してるんだぞ?」
晃希 「そ、それは・・・」
聡介 「俺は頭脳派だ。電子世界の方が向いてる」
瑠璃華「そして私が、聡介の様子を監視しておくの」
聡介 「瑠璃華が監視って・・・」
―― 聡介のセリフはあえて無視して、瑠璃華は真面目な様子で晃希に言う
瑠璃華「ねぇ、晃希。私はあんたに期待してる。まだ体が少し動かない私に比べたら、あ んたはまだ動ける。紗奈ちゃんも霞も清澄も合わせて、四人ならこの現実世界で も逃げられる気がする。だから、私はみんなのサポートに回るよ」
―― 最後に小さく笑う瑠璃華
―― 考えるように黙っている晃希
―― しばらくして、晃希は決心を付けるよに大声で言う
晃希 「あぁもう好き勝手言いやがって!分かったよ!俺はこっちに残る。だからお前は、あっちでちゃんと仕事しろよ!」
瑠璃華「さすが分かってるね、晃希」
晃希 「当たり前だろ、瑠璃華」
―― 二人がクスリと笑う
―― その後、町の中の雑踏や足音がフェードアウトしていき、音を消す
―― 無音の状態で少し間を空ける

―― シーンが変わり、聡介、瑠璃華との別れのシーン
―― 停まっている電車の音がフェードイン
―― ローカル線の駅のホーム、周りに人は少ないので雑踏は無くていい
―― 電車のプシューという排気音が響く
瑠璃華「正式な手続きは大きな都市の方じゃないと無理みたいだから、ここで一旦お別れかな」
―― 晃希、少し躊躇う感じで
晃希 「・・・そうか」
―― 瑠璃華は普段より一層元気な様子で。聡介も残る四人を気遣う様子で
瑠璃華「それじゃ四人とも、元気で!」
聡介 「四人とも、無理はするなよ」
―― コンクリート製のホームを歩き出す足音
―― 電車の鉄製のステップを登り始めたところで、晃希が最後の言葉を決めて声をかける
晃希 「瑠璃華!!」
―― 瑠璃華、笑顔な感じで返事
瑠璃華「何よ、晃希」
―― 晃希、少し恥ずかしそうに
晃希 「その・・・、元気でいろよ、お前も・・・」
―― 瑠璃華、晃希を元気づけるように
瑠璃華「分かってる!あんたも元気でね、晃希!」
―― セリフから少し間を空けて次のセリフ
霞  「次会った時は、一緒に必ず、町のみんなを守ろうね!」
―― 瑠璃華と聡介、決意に満ちた声で
瑠璃華「もちろん!」
聡介 「あぁ、もちろんだ」
―― (瑠璃華の最後の笑顔。そして、聡介も小さな笑顔を見せる)
―― セリフから少し間を空けて、電車のプルルルルという発射音
―― プシューと扉の閉まり、動き出す列車の音が響く
―― 電車の音が徐々に小さくなっていき、そのまま無音の状態にする

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