第一回NTR小説フェスタ講評記事

大賞は草森ゆきさんの『極光』!

一行目からぶちかませ。

さて、2023年10月23日~2023年11月26日にかけてカクヨム上にて開催された自主企画「第一回NTR小説フェスタ」の講評及び結果を発表いたします。

本企画は、寝取られの秋に相応しいNTR小説を募集するという趣旨で開催された祭りです。
一か月という短い期間にもかかわらず、39作品ものNTRをテーマにした小説が集まりました。奇祭。ご参加いただいた方、参加作品を読んでくださった方、本当にありがとうございました。

その力作・怪作揃いの39作品の中から、主催者である私、姫路りしゅうが独断で大賞、金賞、銀賞の3作品を選出致しました。
前から順に「NTR KING」「NTR QUEEN」「NTR JACK」の称号を授与します。
本noteでは、受賞作の発表と受賞者コメント、参加作品の全講評に加え、座談会と総評を行います。少し長くなりますが、お付き合いいただきますと幸いです。
ということでさっそく受賞作の発表

■受賞作品の発表


NTR大賞小説大賞:極光/草森ゆきさん

あなたこそが、NTR KINGです。おめでとうございます!!!!
以下、草森ゆきさんの受賞コメント

 知人が過去の恋愛失敗談を話してくれたことがある。彼女を寝取られてしまったそうで、私は思い付く限りの慰めを口にした。返事はこうだった。 「屈辱を感じないと抜けなくなった」  絶句する私には目もくれず、彼は解脱の表情を浮かべていた。悟りし者の佇まいであったが、悟りを使用する方向を間違えたのだと哀れに思った。時には涙を滲ませながら一物を握ると話す彼の声は明るかった。  それから十年は経ち、今日という日がやって来た。
 彼はまだ屈辱で抜いているだろうか。悟りを使い込み、白濁液に変化させているのだろうか。
 月日の間に私も悟り、間男という属性の素質を手に入れた。それを存分に生かせたことが受賞の決め手だったように思う。
 大賞ありがとうございます、大変名誉に思……いはするけど複雑〜〜〜〜〜!!!!大賞受賞した人を散々イジろうと思ってたんだよね実は〜〜〜〜〜〜〜!!!!!
 それはさておき、いつでも寝取るので呼んでください。
 間男磨いて待ってます。

んなもん磨くな! 本当におめでとうございます。

では続いて金賞の発表。

NTR大賞小説金賞:顔が好きだから/南沼さん

あなたが、NTR QUEENです。おめでとうございます!!!!
以下、南沼さんの受賞コメント

NTR QUEENの称号を頂戴しました! やったぜ!ありがとうございます!
祭りだ~~~おれも混ぜろ~~~のアッパーテンションで参加した本企画にて金賞の誉れを頂戴したことは望外の喜びです。
登場人物全員カスにしたのが良かったのかもしれません。
企画、講評されたりしゅうさんも参加された皆さんも、お疲れ様でした!

あんなカスしか出てこない小説を書かれた方とは思えないほど真摯なコメント。こちらこそお疲れさまでした!おめでとうございます!!

では最後に銀賞の発表

NTR大賞小説銀賞:とびきりのファイティングポーズで別れ話を/君足巳足@kimiteraryさん

あなたがNTR JACKです。おめでとうございます!!!!
以下、君足巳足さんの受賞コメント

銀賞(NTR JACK?)をいただけるとのことで。まさかあの300文字NTRパンチで賞がもらえるとはコスパが良すぎてウケますね。気づけば各所で銀賞ばかり貰っているのでそろそろシルバーコレクターを自称してもいいのかもしれない。蔑称では? まあNTR JACKも蔑称かもしれないしいいか。

せっかくだからNTR JACKっぽいこと言うと、爽やかに終わったかのように思える自作の彼女も、門を叩いたボクシングジムで彼氏のことも復讐パンチももうどうでもいっかとなるような出会いがあったりするとえっちで素敵だなあとか作者は思っています。人生万事塞翁が馬。楽しいフェスタをありがとうございました。

とてもえっちだと思います。素敵。

ってわけで、NTR KING/QUEEN/JACKの発表でした。誇っていいよ。
ちなみに主催である私がNTR ACEです。

受賞されたみなさま、本当におめでとうございました!!!!


■全作品講評

やっていきます。敬称略で失礼します。

1.NTRRTA/惟風

 史上最速のNTR。惟風さんのNTRRTAです、ご参加ありがとうございます。
 本企画のトップバッター! 下限文字数の100文字ぴったりでNTRを描いているのですが、まずはタイトルが好きです。企画トップバッター参戦というメタ的なリアルタイムアタック、たった100文字でNTRを完遂するという意味でのリアルタイムアタック。さらにNTRRTAって「寝取られた!」とも読めるんですよね。意味が多重にかかっていて最高。まあ、本作主人公には「寝取られた!」なんていう権利、ありませんが。
 寝取り寝取られは、築かれていた関係性が一気にひっくり返るという面で一種のどんでん返しです。だからたった100文字で寝取るだけでも難易度が高いよなと思っていましたが、本作は特殊設定を絡めてとてもスマートにどんでん返しを行っていました。
 キーワードは「魔女みたい」。
 魔女みたいに苛烈な性格というワードチョイスが天才的です。このたった11文字で、なんとなく「明るくてハキハキしてる」「好き嫌いをはっきり言う」「優柔不断じゃなくて判断行動が早い」「Sっ気が強い」あたりが想像できます。(あとなんとなくショートヘアな気がしました)この性格なら惚れても仕方ないなという説得力もありますし、正直飽きて浮気した理由もわかってしまいます。
 NTRを描く上で重要な「双方の愛の描写」と「取られる理由」の説得力を「魔女みたいに苛烈な性格」のみで表現しているその"引き算"がすごく好きでした。
 そしてその魔女みたいがオチの部分で効果的に生きてくる。美しい100文字。(恍惚)

 100文字ということで、いわゆる「意味がわかると怖い話」のような読み味というか、一回読んだだけだと理解しきれなかった部分が正直あったのですが、本作品は何度でも読み返せる文章量であり、むしろ"1周読んだだけだと理解しきれない"くらいの脳への引っ掛かりがあることで一層印象に残る作品となっていたので、意味強感がプラスに働いている印象を受けました。そこまで意図通りかはわかりませんが、文字数と脳への引っかかり具合のバランスは是非参考にしてみてください。

 私、頭思春期なので悪魔がどんなセックスをするのか興味津々です。悪魔的に気持ちよくしてくれるんでしょうね多分。そりゃ腹いせに一夜を共にもするか。たぶん肉体的には悪魔のほうがいいのでしょう。その意味で本作は間違いなく寝取られ。そんな魔女と主人公は今後どんな関係性になるのでしょうか。この魔女はたぶん簡単には別れさせてくれなくて、主人公は長い時間かけて酷い目にあっていくんだろうなぁと考えさせられます。や、もう何度目になるので言われ飽きたかと思うんですがたった100文字でこの後の話まで想起させるの凄すぎる!

 そんなわけで、魔女みたいな女と一夜を共に過ごしたくなる(本当か?)小説でした。ありがとうございました。

2.とびきりのファイティングポーズで別れ話を/君足巳足@kimiterary

 こんなにも爽やかな気持ちにさせてくれる寝取られがあっていいのか。君足巳足@kimiteraryさんのとびきりのファイティングポーズで別れ話をです、ご参加ありがとうございます。
 寝取られというテーマの性質上どうしてもバッドエンドやざまぁ系が多くなると予想していたので、二本目からこんな異色な寝取られ小説が来てとても驚きました。
 まず「見てしまった。」という書き出しが好きです。見てしまったんです。何を? 本テーマで見てしまったと言えばNTRしかないでしょう。その予想通り、彼氏が女と腕を絡めてラブホから出てきます。ここの倒置法はじまりがとても気持ちよく脳にフックをかけてくれて、すいすいと読ませる語りとなっていました。その次のブロックも倒置的な文章になっていて、主人公の女性のテンパり方が伝わってきます。「頭が真っ白になった」という結果を、句読点と倒置法を多用してぐちゃぐちゃの脳内をそのまま見せることで伝えるところが超好きです。
 あと先にタイトルの「ファイティングポーズ」という単語を見ているから「真っ白に燃え尽きていた」ところで某ジョーを思い出してフフってなりました。(ここも何気に倒置的な表現ですね。灰の状態から立ち上がってジムに通う。美しい)
 
 女性が目にするジムの看板は、私たちだって現実世界で普段絶対目にしていて、それでも全然気に留めたことがありません。きっと彼女もこの瞬間までそうだったでしょう。開幕寝取られで同情を引き、倒置法と句読点の多用で読み手と彼女の脳内をリンクさせる。そのタイミングで普段気にも留めないけど絶対見たことのあるジムの看板を出してくる。そりゃあわたしたち全員「うおおおお!」ってなります。きっとジムの看板はじまりだとここまでノせられていなかったでしょう。情報開示まで一切無駄がない。
 気付いた時にはもう彼女は走り出していて、わたしたちは彼女を応援しています。入場を取り消しているところも「本気」を感じて大好き。そうなんですよね。こういうのは時間を置いちゃ駄目で、勢いで扉を叩かないといけない。

 そして彼女はとびきりのファイティングポーズで別れ話をする。
 寝取られは、敗北の物語です。自分より魅力的な誰かに最愛の人を取られる物語です。だから彼女は戦わないといけない。灰から、敗北から、立ち上がらないといけない。そしてここまで決意した彼女なら、きっと勝利をおさめるでしょう。彼氏に、間女に、自分に。いや、本当に無駄がない。無駄がない300文字過ぎる。
 彼女の勝利を応援したくなる、超絶鮮やかで爽やかな小説でした。ありがとうございました。

3.sink/尾八原ジュージ

 誰が寝取ったのか、誰が怪異だったのか。尾八原ジュージさんのsinkです、ご参加ありがとうございます。

 まず、一行目を読んだ私の感想を書きますね。
「オレが募集したの寝取られ小説なんですけど~~」
 次に、最後まで読んだ私の感想を書きますね。
「寝取られ小説だ!!!!!!!!」

 どういうこと~~~~!!!!!

 では講評をはじめます。よろしくお願いします。
 私の持論に、短編小説は冒頭でどれだけ掴めるか、そしてその冒頭からどこまで遠くに行けるかが重要、というものがあります。勢いのある冒頭でぐっと心を掴んだ後、遠くまで運んでほしいんですね。予想できなかった冒頭から、予想できないようなラストに繋がる作品が好きだし面白いと思っています。その持論に沿って言うと、この作品は最高でした。ありがとうございます。
 まず「引っ越し先で幽霊を見る。」寝取られ小説を募集しているのにこのツカミ、どう考えても脳に引っ掛かります。そして幽霊は謎の巡回ルートを通ってシンクの下に入っていく。どういう意図なんだろう……そう思って読み進めると主人公がシンクの下に入っちゃった! この外し方! 最高でした。
 ホラー作品は(ジュージさんにホラーを説くこと自体が一種のホラーなのですが)取捨選択がシビアに求められるジャンルだと思っています。たぶん、ミステリみたいに《《全部解決》》したら全然怖くなくて、不可解のまま残す部分が必要です。この作品は、女幽霊の全てをバッサリ切っていて、その切り方がとても好きでした。
 何もわからないけどとりあえずシンク下が大切だったことだけがわかる。なんだか女幽霊が可哀想で、ちょっとだけ可愛く見えてすら来ます。この時点で私は「寝取られやんけ~~~~~!」となりました。居場所の寝取り。
 その後主人公は食事も排泄も必要ない幽霊のような存在になってしまいます。個人的には、ここで主人公に「幽霊になってしまった」とまで言わせなくてもいいんじゃないかな(理解は恐怖感を削いでしまうので)とも思ったのですが、ここで一言も説明がないとさすがに不可解すぎるかな……とも思いました。ホラーの取捨選択、難しい……。
 幽霊に居場所が奪われる、というのは時々聞く怪談ですが、この作品はまず主人公が寝取っているのが凄まじいです。そんな主人公だから「主人公可哀想」という気持ちになりませんでした。
 並行して、序盤はわりと「なんでシンク下?」など、主人公の人間味が見えていたのですが、幽霊化してからは淡々とした語り口に変わっていきます。
 その、主人公可哀想感のなさと、淡々とした語り口が天才的なマリアージュを起こして、独特の読後感、不気味なホラー映画を観終わった後のような感覚に陥りました。めちゃくちゃ面白かったです。
 たった333文字でツカミ、ホラー、寝取り、寝取られ、不気味な後味を残していく、良さが凝縮された作品でした。ありがとうございました。

4.あたしにはなかった/惣山沙樹

 やるせなさを下品でコーデして叫べ! 惣山沙樹さんのあたしにはなかったです、ご参加ありがとうございます。
 この作品の肝でありめちゃくちゃ面白いポイントは間違いなく連呼の部分なのではやくそこに触れたいのですが、私の講評スタイルが前から順番に触れていく感じですのでまず冒頭から。まずは心情と映像のバランス感覚がとてもとれていたと感じました。普段の行動ルートを回想しながら「まあラブホ行ってもいいんだけどな」と言うことで、二人の関係性と、主人公の"受け身でありながらも彼氏もセックスも想っている"感じが伝わってきました。寝取られは如何に関係性を壊すかなので、まず壊れるほどの関係性が築かれていることを描写する必要があります。本作は冒頭たった数行でそれを表しており、さらに「カフェラテとブレンドコーヒー」という具体的な品名を出すことで一気に読み手を喫茶店の中に誘ってくれました。ここで強く喫茶店をイメージできたことで、終盤の連呼シーンが映える(映像として頭に浮かんでくる)ので、とても好きな冒頭でした。
 その後「謝らなあかんことがある」→「好きな人ができた」→「セックスまでした」→「男」と段階的に情報を開示していったところが最高で、NTRフェスタなのでセックスくらいまでは予想していたのですが、「男」で私も「男!?!?」と新鮮な驚き方をしてしまいました。
 この驚かせ方をさせたらもう勝ちですよね。読む手が止まりません。めちゃくちゃ面白いです。
 その後は主人公の独擅場。喫茶店でひたすら男性器を連呼。ワードチョイスがいいですよね。「ち◯こ」でも「ちん◯ん」でもなく、「◯んぽ」。もう面白いもん。喫茶店でブチギレた女性が「ち◯ぽ」連呼してるだけでまず面白いし、彼女の怒りの正当性がわかるからある種の共感もできます。自分の中のもやもやした怒りを叫んで発散していると思うと、悲しみすら伝わってきます。いや、最終的に三人称まで「ちん◯」になるの良すぎました。
 一番笑ったのは「俺挿れる側やったもん」ですね。言い訳するとこそこじゃねえだろ!!!!!!!!!!

 短編コメディなのでツッコむのも無粋ですが、結局翼は何が良かったんですかね。その男だから添い遂げたいのか、全般的に男のほうがよかったのか…… 一応本作はNTRフェスなので、そこの理由が明言化されている方がNTRポイントが高かったかもしれません。でも本来短編コメディにNTRポイントは不要なので、これが最高だと思いました。

 最後少しだけほろ苦く終わるのも最高です。ひとしきり笑ったあと、ほろ苦く締める。カフェラテを残してストゼロを煽るところも、恋の夢から覚めてた感じがして好きです。この子、ほんまに次の恋愛行けるんかな……
 余談ですが私、昔恋人に「俺が男とヤってたとしたら受けと攻めどっちがマシ?」って聞いたら「攻め」と言われました。や、まあ付き合ってるのに他の人とヤるなって話ですが。
 基本コメディなのに心の叫びが伝わってくる色んな感情を味わえる作品でして。ありがとうございました。

5.みんなみんな大好きだよ/灰崎千尋

 激ヤバヒロイン、最高。灰崎千尋さんのみんなみんな大好きだよです、ご参加ありがとうございます。

 このヒロインと真摯に向き合って成り立ちから今まで書ききった時点で勝ちです。おめでとうございます。そんなことを思う小説でした。
 "みんなの中で最初に「好き」って言ってくれたから。"
 短編小説で重要なことのひとつに「はやいうちから物語の方向性を示す」があると想っているのですが、その観点でこのどう考えても不穏に転がっていくことがわかる一文目は天才的です。主人公のズレも感じられますし。
 そしてその後すぐに「からかってキスする」ところで、恋を知らない女の子ではなく倫理観のおかしい子だということが判明します。そこまでの流れが明快かつ爆速で、凄まじいツカミでした。
 明快かつ爆速なのはツカミだけではありません。タイキ。お前誰だよタイキ。そう言いたくなるタイキですが、そう思わせることが既に灰崎さんの手のひらの上だったでしょう。本作においてネームド男性キャラは全てモブです。当て馬です。唐突に出てきたタイキがそれを教えてくれました。マジでツカミから本作の方向性を示すまでのスピードが速すぎてめちゃくちゃわかりやすくて読みやすい作品でした。

 タイキの「いっぱい好きな方が、いっぱい気持ちいいんだよ」という発言が主人公の生き方を方向づけてしまい、それを言い出したタイキよりもえっち♡の上手いトモさんになびいてしまうところはまさしく寝取られでした。
 そして、マヒトさんを寝取って終わる。主人公を軸に色んな寝取り寝取られが見れてとても楽しかったです。彼女持ちが頭ぽんぽんするなー!
 ここから先は個人的な意見なのですが、本作品は、負けていった男たちを描かないことで逆に惨めさが際立っていると思いました。取られた側の心情が描かれることの多いNTRジャンルですが、描かないという描き方に痺れます。最高。
 強いて言えば(これも個人的意見ですが、)因果応報を受けたのがタイキだけだったので、「タイキ可哀想」という印象が強く残りました。下手したら「主人公ヤバ」よりも「タイキ可哀想…」が勝ったので、そこはユウくんやトモさんももう少しだけ可哀想度を高めても良かったかもしれません。でも話が間延びするからそんなことないかも。トモさんだけ勝ち逃げしてるんだよな……。(でもそりゃエッチで目の奥チカチカさせるクラスの先輩なら勝ち逃げもするか)

 主催好みの女が暴れる話だし、一人の女の成長譚、寝取られ小説としてとてもまとまった作品でした。ありがとうございました。

6.極光/草森ゆき

 そこから見える光は、どんな風に目を焼くの。草森ゆきさんの極光です、ご参加ありがとうございます。
 じゃあ、行こうか。

 はじまり方、天才すぎる。
「君が得て、よろこび、失い、底に沈む話」というのはまさに寝取られの基本ストーリーであり、本作品は序章の時点でフェスタに相応しい作品だということをわからせてくれます。最高のスタートでした。
 そのまま1では君と愛花の馴れ初めとラブリーデイが描かれて言って、NTR小説に必要不可欠な「取られるに足る関係性」が構築されていきます。でも、もうおかしいんですよね。「俺」、誰なん?
 本人たちしか知らないような恥ずかしい夜の話までが、第三者の口から語られてしまう。NTR前のラブリーパートを描きながらも、《《本作はNTR作品なんだぞ》》、ということを並行して表現してくるその構成に震えました。すごい。しかもこの時点からいくつか布石が置かれていて、愛花の「意外と体力ないんだねー」なんかは「現時点ではギリギリ可愛いの方に天秤が傾いてるけどこれ同棲とかし始めたらすぐ不満点に変わるやつや」っていうことが読み手にありありと伝わってきます。
 あるよね。最初は可愛いポイントだったはずなのに(なんならそこで付き合うと決めたまであるのに)だんだん「いやそこが無理」ってなってくるやつ。
 馴れ初めパートといい、2の間男との会話といい、質感がめちゃくちゃリアルなんですよね。それが本作の最大の魅力だと思います。男の不満言ってくる女の子マジであんな感じだもんな。「いるんですけどね」(苦笑気味)
 男側の重さの質感もリアルでした。これ絶対刺さるやつおるやろと思ったら本当にTLで何人か轢き殺してて草森くん生えました。さすがは親友だぜ。
「おれはちゃんと連絡するし会う時間も」
 このセリフの破壊力よ。これ。この何気ないセリフ。何気ないセリフなんだけどもうここに君の悪いところが全部が詰まってるのよね。セックスも下手だしね!

 3の君へのネタバラシパートは本当に痛快で、君の怒りがだんだん萎んでいくサマは見ていて気持ちよかったです。そこから流れるようなクローゼットシチュ。NTRの王道。敗北した男が惨めに射精しているのを、その視点で描かず敢えて事後だけ映すことでいっそう惨めさ虚無さが演出されていました。とても好き。
 まあ(これはいい意味とも言えますが)終盤の展開は性癖が加速しすぎていて作家性を知らないとちょっと置いて行かれたかもしれません。。もう2、3行ほど男男感を馴染ませる文章が刺さっていてもよかったかもしれません。
 でもNTRにとって女性はサブキャラで本質は男男であるという草くんの結論はひとつの答えだと思いました。君と俺はこのあとどうなっていくんでしょう。
 NTRにめちゃくちゃ真摯に向き合っていて、王道を踏みながら展開や描写でぐいぐい読ませてきて、きっちり性癖も書ききる。とんでもない作品でした。ありがとうございました。

7.NTRデリバリー/こむらさき

 ド王道のNTR小説! かと思いきや? こむらさきさんのNTRデリバリーです、ご参加ありがとうございます。
 「いえーい、オタクくん見てるぅー?」
 一行目でいきなり「来たな!」とめちゃくちゃ笑顔になりました。NTRといえばNTRビデオレター。NTRビデオレターといえば「いえーい、オタクくん見てるぅー?」です。だからド王道なチャラ男くんNTRオタク敗北モノが来るのかなあと思って読み進めていくと、物語が思わぬ方向に転がっていきました。予想外の角度から殴られてとても気持ちよかったです。
 情報の出し方がとても丁寧でわかりやすく、まず「情けなく屈服ぴゅっぴゅしちゃえ♡」で違和感を覚えさせ、そのあとすぐ、主人公→オタクくんの重い愛を明かすことで、スッと設定が入ってきました。緩急がすごい。「いえーい」ではじまった作品にこんな切ない気持ちにさせられるとは全く思ってなかったです。
 性交渉を断られるたびに、自分が穢れていると思ってしまう主人公の気持ちはとてもよくわかり、それが悲痛に伝わってくる分、ある種ギャグとして受け取られてもおかしくない「嬢と一緒にNTRビデオレターを撮る」というツカミが、どこか美しい心の底からの叫びのように見えました。ほんまか? いや、でも本当になんか高尚な儀式のように思えたんですよ。。
 ただ私にはあまりプラトニックなお付き合いというのがわからないので、本当にオタクくんが何を思っていたのかが全くわからず、そこが少し気になってしまいました。ただ、オタクくんの心境を描いても冗長になるだけですし、本作は主人公が独りよがりに自身に決着をつける話なので、オタクくんの思いを全く描かずよくわからない存在としてバッサリ切る取捨選択の妙が、ラストのLINEブロックの説得力に繋がっているような気もしました。
 嬢がノリノリで楽しそうなのもすごくいいですね。ノリノリで既読が付いたことを教えてくれる嬢の存在が、本作をただ重い話にしない清涼剤として働いていて、重い話なのに最後まで軽い気持ちで読むことができました。(軽い気持ちで読めるのに重い気持ちにさせられてしまうからすさまじい小説だと思いました)
 主人公にはぜひ幸せになってほしいですね。オタクくんは……まあいいか。
 NTRビデオレターあるあるという爆速のツカミから入り、緩急と清涼剤を織り交ぜながら最後まで読ませ、読んでしまうと重い感情になれる濃度の濃い1000文字の作品でした。ありがとうございました。

8.飼っている/秋永真琴

 まだ寝取られてない……まだ。秋永真琴さんの飼っているです、ご参加ありがとうございます。
 なによりも青春の味がとっても美味しかったです。文章からあの頃/あの場所の香りがしました。
 冒頭からいきなり「むしろ、暗かった」と言うある種王道を外したような山田麻耶の紹介だったのですが、確かにあの頃は光っている子よりも少し陰のある子に惹かれたこともありました。フェスタ作品は結構大人の関係(肉体的というより精神的にも)が多く集まっている企画なのですが、この一文で一気に青春小説を読む脳へと書き換わって、すごくパワーのある一文に感じました。主人公がサラッと他の子とお付き合いしているのもいいですね。主人公はNTRにありがちなうじうじした子ではなく、ちゃんと異性との付き合いもできるいわゆる”陽”側の男の子なんですよと描写したうえで、でも山田麻耶に心を持っていることがわかり、一瞬で主人公がどんな子なのか把握できます。彼の”陽”としての一面は留まることを知らず、ゴールデンウイークにはもう抱いてしまいます。すごい。
 言ってしまえば結構なプレイボーイ気質の彼ですが、ずっと山田麻耶に思いを馳せていたところや、抱いた時にしっかりめちゃくちゃ興奮しているところなど、主人公を親しみやすい存在にする要素がいたるところに散りばめられていてとても読みやすかったです。
 そして出てくる川辺。
 主人公は美術には縁のない存在だったので、突然出てきた才能人に嫉妬してしまう気持ちがもの凄く苦しかったです。自分が触れない部分で通じ合っている山田麻耶と川辺。好意が裏返って怒りを覚えるところも、川辺に圧をかけに行くところも、感情の導線がもの凄くわかりやすくて、とても自然に主人公に共感していました。
 本作はまだ寝取られ切っていないですし、どちらかというと山田麻耶という計算高い女性に振り回される作品ですので、NTRポイントが高いかと言われればそこまで高いわけではないのですが、それでも山田麻耶が会わないほうがいいか提案するところはめちゃくちゃ寝取られ筋が刺激されました。まだ寝てないだろうし、この後川辺と山田麻耶が寝るかと言われれば怪しいです。でも、NTRセンサーが「寝取られや!」って言っています。私なんか変なこと言ってない?
 飼っているというタイトルが本当に素敵で、主人公は自分が山田麻耶を落とした惚れさせたと思っていたでしょうが、実は完全に手のひらの上で踊っていて、飼われていたのは自分(と恐らく川辺も飼われていますね)だということがわかるその構造がとても鮮やかでした。
 やべ~女ですが、困ったことに私は山田麻耶みたいなタイプが好みですので、主人公に「やめとけ」というのは控えます。でも幸せになってほしいな。彼らはきっともうしばらくだけ恋人のフリをして、破綻するでしょう。その日が少しだけ怖くなるありのままの青春作品でした。ありがとうございました。

9.雪まみれ/金沢出流

 リフレインが印象的な真っ白な世界のNTR。金沢出流さんの雪まみれです、ご参加ありがとうございます。
 繰り返し出てくる”雪”。その真っ白で綺麗な新雪のイメージと、彼女が風俗業に従事していることを知らない彼の重ね合わせがとても綺麗でした。私は本来文章を読んでいてもあまり映像が浮かんでこないタイプなのですが、これだけリズミカルに繰り返されるとばっちりと大雪の中人を待っている主人公の様子が浮かんできます。
 本フェスタのテーマはNTRなので、一度目の「彼は知らない」の部分で、「お、来るぞ来るぞ」と思わせておいて、記録的な積雪であったという状況を描写をするタメ感が好きです。まだ焦らす。何も知らない主人公と新雪、その上に何も知らない読み手まで重ねるために、一回タメる。このテンポロスがとても気持ちよくて、そのまま場所や雪の情報がどんどんぶち込まれてくる読書体験がめちゃくちゃ楽しかったです。
 全体的に美しくてテンポの気持ちがいい文章だったのですが、時々一文がかなり長くなっていて、ほんの少しだけ読んでいて気になる部分がありました。文章が長いことが問題というより、読んでいて息継ぎの部分がないと、目が滑ってしまう可能性があるなあという意図です。息継ぎが気持ちよくハマれば文章はどれだけ長くても究極問題ないと思っています。ただ、本作品の魅力は短い文章がばんばん繰り返されて回っていくところだと感じましたので、多少の緩急は必要ですが、文章のテンポ感は気にしてみるといいかもしれません。
(これは個人的な意見なので参考にしていただく程度でいいですしもちろん参考にしなくても構いません)
 ラストの部分、最後まで男が気付かないまま待っている余韻がとても好きです。雪解けが楽しいのはもちろん、この豪雪すらも楽しんでいる。その無邪気さがとても愛おしい。しかし、この雪が解けた時、彼はきっと絶望し、嘆くでしょう。何も知らない彼と綺麗な雪は重なっていますが、真実を知ってしまった彼と解けた雪はきっと重ならない。その対比が美しくて、程よい余韻を残していきました。
 これはXを拝見した感じ実話っぽいのですが、彼は雪が解けた後どうなってしまったのでしょうか。主人公のこれからを応援したくなるような作品でした。ありがとうございました。

10.あほんだら/るつぺる

 情を抱いた掃除屋の無情なラスト。るつぺるさんのあほんだらです、ご参加ありがとうございます。

 「浮気されたんです」というNTR小説らしい一文目からはじまる本作。男と男がアホな掛け合いをする楽し気な冒頭から一気に朔くんの正体を開示して、血の匂いを漂わせる手法はとても引き込まれるものでした。正体がバレた殺し屋と、それでもなおアホな会話を続けている一般人。このツカミ部分だけで二人の複雑な信頼関係が見えてきたのがすごい好きでした。
 ただ、ここから二人の立場や関係が捻じれていって無情なラストに辿り着くまで、めちゃくちゃ面白くて息継ぎのタイミングがなかったので、このタイミングで言及させてください。
 本作はNTRポイントが高い作品かと言われればそうではない気がしました。浮気はじまり――アイドルを寝取られたところからはじまる作品なのでNTRがきっかけになった作品ではあるのですが、あくまできっかけにすぎません。NTRの解釈の幅が広い私でもさすがに死別がNTRとは言えないしなあ。。
 以上NTRポイントに関する言及でした。本筋に戻りましょう。
 本作品の特に主役二人の会話劇が好きです。関西弁の地の文や掛け合いが心地よくて、関西弁の語りってちょっと塩梅ミスると結構読みにくくなってしまうと思うのですが、本作はめちゃくちゃするする読めていきました。主役二人だけでなく、朔くんと的場さんとの会話で見えるお互いの仕事人としての信頼関係や、朔くんと美紗都さんとの会話から見える、朔-哲の関係も凄くて、会話だけで関係性を伝えるのが本当にうまい作品だなと思ってました。
 もちろん会話以外の部分でも、例えば次のターゲットが哲と開くところ(ここは物語的にはまあそうかもしれないんですが、情報の開け方、一拍置く感じがとても好きです)や、依頼人が哲だったと開くところ(ここはマジで予想外でした)は構成力の高さが伺えます。すごい作品だった……。

 ラストの叫びも本当に最高で、朔くんならそう叫ぶだろうっていうものがそのままお出しされるからめちゃくちゃ辛かったです。言うよこいつなら「テレビで見たことないぞ」って。なんでそんなやつのためにって。
 体温を逃がさないように抱きかかえて、一人にしないでと懇願する。かつてきっと信頼していた的場さんも、今一番信頼していた哲もいない世界でこれからどう生きていくのか、切ない読後感が胸を打つ作品でした。ありがとうございました。

11.真夜中の秋の夜長のキッチンの/野村ロマネス子

 届かない声、届かない想い、野村ロマネス子さんの真夜中の秋の夜長のキッチンのです、ご参加ありがとうございます。
 
 真夜中の秋の夜長のキッチンの あはれなりけり ひとすじの跡

 天才か?
 作品タイトルと章タイトルで短歌にして、その短歌によって舞台設定となんとなく切ない涙系の物語なんだろうと教えてくれるオシャレさ。すごく好きです。
 短編小説は一瞬でも読み手に「ん?」と思わせたら世界に入れないまま終わってしまうと思っています。だからこうやって端的に状況を教えてくれるのはとても効果的だと感じました。
 冒頭で飛び出る「足元に乗せていた頭」「前脚」という単語から本作が人間目線ではないことがわかって、「そうきたか!」となりました。NTR作品には基本的に三人の人間が必要です。でも三人の人間を短編で出すと、キャラクタが舞台装置になってしまったり、キャラが先行してお話がまとまらなかったりという課題がありそうです。本作はそこを「猫に語らせる」というアクロバティックかつ鮮やかな天才手法で解決していて、マジですげえ! となりました。
 さらにすげえ! となったのが、本作の女性ってほとんどセリフも心理描写もないんですよね。ただケーキを焼いている。女性にはベラベラ喋らせない。
 「ケーキを焼いているときは大体何かがある」情報だけ置いておいて、もうあとはケーキを焼かすだけ。そして猫に喋らせる。この配置によって、①もちろん主人公に何かがあったことはわかり②間接的に主人公の心情もなんとなく伝わり③猫から主人公への気持ちまで描ける、という1500文字とは思えない感情の詰め込みに成功しています。すごすぎる。NTR作品って性質上絶対どこかに悪人が出てきちゃうと思うんですよ。でも本作は猫目線で描くことで、その悪人の匂いがしない。いるにはいるんですが、見えない。だから純粋に猫と瑞希ちゃんを応援できる。NTRテーマでこんなきれいなお話になるんだ。

 ピンクパーカーの子って誰なんでしょうね。

 同じ匂いがする、や、テーブルの下でこっそり手を繋いでいたこと、は猫だから気付けるポイントっていう感じがしていいですね。でも、テーブルの下で手を繋いでいたらさすがにわかる気もするので、もう一つくらい猫だからわかるポイントがあれば、膝叩き度が増していたかもしれません。

 ピンクパーカーの子って私か?

 最後の「アタシが居るじゃない」という段落もとても好きです。きっと瑞希ちゃんは猫を大切に飼っていて、猫に依存している部分もあると思います。でも、人間の男にしか求められない部分もある。瑞希の気持ちは男に届かなかった。そして猫の気持ちも瑞希に届かない。そのすれ違いというか、種差みたいなのが切ない余韻を残してくれて、とても心地のいい読後感の残る作品でした。ありがとうございました。

12.君を盗る/外清内ダク

 それでもきっと俺はまだ君を想っていて。外清内ダクさんの君を盗る、です。ご参加ありがとうございます。
 のっけから行為描写の本作品ですが、別れた後のセックスに対するスタンスだけで、本作の二人がどんなキャラクタなのか掴めるようにもなっている、かなり世界に入り込みやすい冒頭でした。男側は「爛れている」と感じている=この関係はよくはないと思っていて、それが序盤の感情の山場である「似てるんなら、俺でもいいんじゃない?」という言えなかった言葉に説得力を持たせています。主人公がどこまで自覚していたかはわかりませんが、きっと半年に一度だけセックスをする女性のことが、まだ好きだったんでしょうね。別れているとはいえそんな状態で、そんな彼女が他の男と結婚する。NTRポイント高得点です。おめでとうございます。めちゃくちゃ真摯にNTRと向き合った作品だ……。
 別れた後も寝ていた男と結婚が決まってからも連絡を取る女性、なんなんでしょうね。これが男性なら、言っちゃあれですがワンチャン狙いみたいな原動力がありそうです。でもこの女性はきっとそんなことなさそうだし、不思議です。(これは、作品の意図がわからないという意味ではなく、「マジでこういう人いますよね、どういう意図なんでしょう」という共感の不思議です。)
 そういったリアルにいそうな質感がめちゃくちゃ丁寧に描かれていて、どこか私小説っぽさを感じ、いっそう作品に引き込まれていきます。
 主人公が「不倫は駄目だ」と強い一線を引いているのも好きです。応援したくなる。小説は主人公を応援させたら勝ちだと私は思っています。その観点で言うと本作主人公は(少なくとも中盤までは)とても共感・応援のできるいい主人公だと思いました。
 その倫理観が一線を越えてしまう終盤ですが、いやこれはもう仕方ないって。”君”から誘ってますもん。主人公の行動と感情がひたすら羅列される部分は、スピード感があり、迫力が伝わりました。めちゃくちゃ好き。
 ただ、ここの部分は、もう少し「君が何を考えているのか」あるいは「君が何を考えているのか全然わからない」と言った表現が足されると、尖りが抑えられていいかもしれないと考えました。終盤の”君”、現実にいそうな質感のままマジで暴れまわるから、さすがに旦那不在時に家に誘ったのは一種のホラー作品の怪異のように思えてしまいました。怖すぎる。
 でもそんな”君”も赤ちゃんのことは大切にしていて、主人公もそれに気が付いて、結局その部分は触れない。赤ちゃんを見て我に返り、逃げるように帰るという落とし方はとても綺麗で、NTRにありがちな放り投げエンドではないところがすごく好きでした。締め方も詩的で大好きです。それでもまだ数年しか経っていなくて、きっと主人公はこれからも”君”に振り回されるかもしれない。そんな未来も少しだけ残しながら終わる感じがとてもやるせなくて、いいNTR作品でした。ありがとうございました。

13.寝取りすぎた男/獅子吼れお/ライオンマスク

 スケールはデカければデカいほうがいい。獅子吼れお/ライオンマスクさんの寝取りすぎた男です、ご参加ありがとうございます。

 一行目から勝利を確信しましたね。おもしろすぎる。なんだ「寝取りすぎた。」って。そう思って惹かれていると次々と設定が公開されていきます。ラノベタイトルを宣伝することでどんな冒険だったか伝えるの、メタがうまく回ってる感じしてめちゃくちゃ好きです。こう、早い段階から「これはゲラゲラ笑うアホコメディです」と教えてくれると読み手としても読みやすく、安心してゲラゲラ笑うことができました。
 でもNTRR(ネトラレジスタンス)の台頭と壊滅により一気に話が動きます。なんだよNTRR(ネトラレジスタンス)って。これ、ツッコミとして”なんだよ”と言ってみたものの、「うわーたしかにそうなるわ」と思わせる設定がすごく好き。この「うわーたしかにそうなるわ」についてはこの後の展開で全く同じことを言います。ギャグなんだけど不条理ギャグというほどめちゃくちゃではなく、ちゃんとした理論に基づいて進行していくところが面白さを強固にしていると感じました。

 そうだよね。不老不死絶倫男が全部寝取ったら、世の中寝取られマゾだけになってしまうよね。うわーたしかにそうなるわ。

 そうなります。納得してしまいました。どれだけ変な設定でも読者を納得させることができたら勝ちです。おめでとうございます。
 直後にエロ漫画で男女逆でよく見るパート挟まってめちゃくちゃ笑いました。転生勇者が子種マシーンに堕ちてしまうとは。
 ユキヒロが転生(転移?)してきて、男同士の戦いになっていくところの面白さと納得感も凄かったです。あまりにノドカが舞台装置すぎて怒られそうですが、それでもNTRとは女を挟んだ男同士の関係だという結論を作品内で明示しているところ、NTRポイント高得点です。しいて言えば、ラストのサゲの部分は個人的にはブレーキ踏まれた感じがなくもなかったです。男同士の戦いの勢いのまま終わっても綺麗だったかもしれません。わからない、この辺は好みです。
 私は短編小説で重要なファクターが「ツカミの速さ」と「そのツカミからどこまで遠くに行けるか」だと思っています。その観点で見て、本作はめちゃくちゃ好きです。ツカミも速いし最後は冒頭からは予想できなかったところまで飛んでいく。バカコメディなのに理論的でもある。すごく軽い気持ちで読めてテーマの消化の仕方も大好きな作品でした。ありがとうございました。

14.最大限の幸福を/姫路りしゅう

 最高の寝取りを行う話。姫路りしゅうさんの最大限の幸福をです、ご参加ありがとうございます。
 最高の寝取り師になるまでの物語、っていう入り方、ツッコミどころがとても多くていいですね。多くの人には刺さらないかもしれませんが、寝取り師っていうワードで引っかけられる人はどこかにはいそうです。
 寝取ろうとしたところを影山さんに寝取られるシーンを描写することで、主人公たちの出会いと「寝取り師」の説明をまとめて済ますところは効率よくて短編小説らしいなと思いました。弟子入りパートで本作のキーワードである「最大限の~」を強調しながら、男と男、師弟関係(ある種の親子関係)を掘っていき、「目的」の章でどんでん返すところは王道で面白かったのですが、もう少し師弟関係をしっかり描いてもよかったかもしれません。短編である以上文字数の制約は仕方ないのですが、なんか、オチのために前半パートがあったような匂いを感じました。そりゃあオチのために前半はあるのですが、しっかりと展開を描いていってその匂いを消さないと独り相撲を見せられたような気分になってしまうかもしれません。
 ほら、オリジナルゲームのルールの穴をついて勝たれても「なにが?」ってなりがちじゃないですか。※嘘喰いとジャンケットバンクは除く。
 オチのところは絶望感がありましたし、小さい寝取りと大きい寝取りが交差する感じも気持ちよかったです。NTRというテーマにまっすぐ向き合ってくださったんだなと感じた作品でした。ありがとうございました。

15.鉄恨のイゼルヴロク/帆多 丁

 予想外の角度からのNTR。帆多 丁さんの鉄恨のイゼルヴロクです、ご参加ありがとうございます。
 冒頭部分で正直「これNTRになるんかなあ」って思っちゃったんですけど、めちゃくちゃNTRでした。びっくりした。
 ツカミの部分では、まるで少年漫画のダブル主人公のような二人の関係性が描写されます。シンプルにこの二人がどう話を進めていくのかというヒキと、メタ的ですが「ここからどうNTRに繋がっていくんだろう」というヒキの二つでどんどん続きが気になるツカミでした。
 その後、「指の何本か失った」の段落からは話が一気に加速していって、冒険譚としてめちゃくちゃ面白いです。緩急の付け方というか、加速の仕方がめちゃくちゃうまい! それがなんだってんだ、の心の叫びも痛切で、”お前”に裏切られた(お前は全然裏切ってなんかなくて、本当にただいいやつだったんだと思いますが)結果、闇落ちをしてしまうのもしてしまうのもよくわかりました。
 で、ここから満を持してのNTRパートです!

 なんだお前は。

 なんだお前は。私も全く同じ気持ちです。親友のために生きて、親友に裏切られて、だから親友に立ちはだかったのに、そしてやっと勇者にこっちを向いてもらったのに、知らん誰かに邪魔をされる。こんな悲しいNTRがあるかってんだ。NTRポイント高得点です。
 特に1章ラストの「お前じゃない、お前じゃない、お前じゃないんだよ!!!」のセリフが本当に好きです。きっとコピーにもなっているので、帆多さんも気に入っているセリフなんだと思います。読み手からしても超好きでした。ありがとうございます。
 そのまま2つ目の章に入り、その切なさは加速していきました。たった3行(PC画面)だったのですがとても印象深いページです。主人公は完全に寝取られているのですが、それを認められないまま死んでいく。そして1章で一番印象的だったセリフが繰り返されて物語が締まる。美しい。めちゃくちゃ切ないし、寝取られ小説を読み終わった後の読後感を味わうことができる作品でした。ありがとうございました。

16.NTR/神澤直子

 爆弾は彼女が握っている。神澤直子さんのNTRです、ご参加ありがとうございます。
 今までの私にとってニトログリセリンと言えばNTGだったので、NTRでニトログリセリンと読ませるところでまず「おお」となりました。確かにニトロだわ。
 じゃあそのニトログリセリンをどう使うのかなと思って読み進めると、小瓶(爆薬)を持った物騒な女性とそれを見て驚く男。
 ただマジですみません。私の常識のなさが露呈する部分なんですが、狭心症発作の薬にニトログリセリンを使うことが多いって知らなくてそこで一瞬止まってしまいました……。リアルにこの男の人と同じ「薬ってこと?」って反応をしてしまいました。
 そこは置いといて。
 この男女がNTRにどうかかわるのかなと思ったら、今まさにNTRの最中だったというのが驚きがあって好きです。間女だったんだ。
 ラストの一文が詩的でめちゃくちゃいいですね。私のいないこのベッド。自分が間女であることを自覚していて、きっと本格的に寝取ろうとは思ってないんでしょう。
 もしかすると自分の心臓が弱いことが理由かもしれません。長くない可能性があるから、幸せを奪おうとまでは思わない。でも、少しだけ幸せな気分になる権利はあってもいいだろう。そんな控えめだけど少しわがままな彼女の性格が想像できました。
 また、バレたら爆発するという点でダイナマイトが寝取りのメタファーと言えるかもしれません。起爆のスイッチは彼女が持っている。爆弾は彼女が持っている。今はまだとる気はないけど、主導権は彼女が持っている。
 そんな比喩的な表現を感じました。
 ……すいません、私に文学的な素養がないので、これがどこまで妄想でどこまで意図なのか、あってるのか全然違うのかはわかりません。でも私はそう感じて、だからこそラストの一文がすごく好きでした。
 私のいないベッド。
 私のいない世界。
 彼女は、私のいない世界でも、二人は幸せになるんだろうと思っていたのかもしれませんね。切ない。
 短いながらも色んなことを想像できる作品でした。ありがとうございました。

18.わたしの飼い主さん/ももも

 ファンシーでデコっても隠し切れないエグみ。もももさんのわたしの飼い主さんです、ご参加ありがとうございます。

「わたしはウサギといっしょなの。」
 この一文でやべ~女がやべ~価値観を展開していくやべ~小説なんだな、とわかったので最高のツカミだったと思います。短編小説は「これはこんな風に読んでください」と早めに方向性を明示したほうがいいと思っていて、その観点で最高のスタートでした。
 今回の女はどんなやべ~女なのかな。そうワクワクしながら読み進めると、ただ女の子が喋っているだけなのに言葉の節々にヤバさがにじみ出てきて、どんどんエグみが増していきました。聞き手のことを飼い主さんと読んだり、サラッと前の飼い主さんの話をしたり。
 こう、セックスが巧いと思っている男が女性目線で下手な話、心が削れるから禁止カードにしません? でも、例えば「そのたびにわたしはわたしに戻っちゃって」など、ワードチョイスによってキャラを深堀していく手法がとても巧かったです。

 ちなみに本作で一番好きなセリフは「みんなの悪いところをぜんぶとって、いいところだけ集めたら完璧なのにな。」です。歌詞だろこれ。曲つけて使いたいもん。

 このあとのお兄ちゃんの話が開いてからはどんでん返しというか、種明かしパートなので、このタイミングでNTRについて語らせてください。
 本作は”結局お兄ちゃんという絶対の存在がいる”や、”ほかにも飼い主さんやパパがいる”という点でNTR作品ではあるのですが、NTRポイントが高いかと言われれば個人的にはそうではありませんでした。NTRは、”取られる”なのでまず十分な信頼関係を築くところからはじまります。でもこの飼い主さんは女の子から見たら寂しさを紛らわす有象無象で、壊れるほどの関係性がまだ築ききれてないかなあと感じました。でもまあNTRポイントなんてあってもしゃーないので、本作のホラーじみたオチの話をします。

 怖すぎ。
 お兄ちゃんが怖いからやめとけって言うところまでは「やべ~女だなあ」「まあそんな兄がいるならそうなるか~」って感じでしたが、飼い主さんぐらいいっぱいいるってところで「??? あ、え、うわあ」ってなりました。エグすぎる。めちゃくちゃ面白かったです。疑問形で締めるのも不気味な余韻が残っていいですね。
 隠し切れないエグみがめちゃくちゃいい作品でした。ありがとうございました。

19.香り/鷹野ツミ

 美しくて王道な百合NTR。鷹野ツミさんの香りです、ご参加ありがとうございます。
 本作は何よりもその構成が美しかったです。三章立てで順序良く、関係のはじまり、積み立て、破壊(寝取られ)が行われていて、めちゃくちゃ王道な寝取られでした。王道というのはいいものだから王道なんだってことを再確認しました。
 関係のはじまりパートはややスロースタート気味なものの(これは本当に個人的な意見なのですが、短編小説はツカミが重要なので、個人的にはもう少しインパクトのある始まりでもいいのかな、と思いました。ただ、本作は静かで美しい雰囲気も魅力の一つですので、あまりはっちゃけても変になりそうです。あと2mmほど(どれくらいだ……)強いツカミになれば美しくて最強の作品になるかも、と感じました)すぐに本作のヒロイン、明里が描写され、本作のキーアイテムである「桃の香りの制汗剤」が登場します。
 この時点では、まだキーアイテムだとはわからなかったのですが、本アイテムのお陰で私の頭が一気に高校生の時の教室に連れていかれました。匂いを感じる文章表現。凄い。
 保健室で話す明里は少しだけ悪女のような口調をしていて、恋愛小説を読んでいる時のドキドキ感と、この作品がどの方向に転がっていくかわからないドキドキ感の両方を味わいました。一種のつり橋効果ですね。めちゃくちゃドキドキしてました。
 2は関係構築パートで、いわゆる繋ぎの回でもあるのですが、景色が浮かんでくる文章だったので退屈せずどんどん読み進められます。そして最後! ここまで1000文字と少しで構築されてきた主人公と明里の関係性が、一気に寝取られて崩壊します。ああ、NTR。王道のNTR。
 明里は嫌がるような声を出しています。だから無理やり襲われているんだ、そう思いました。きっと主人公と同じように。でも表情を見て、そうじゃないことがわかります。ここが本当に好きで、知らず知らずのうちに主人公と感情がシンクロしていたんです。情報の出し方のお陰か、「そんなことないよね」からの「……」という気持ちを味わうことができました。
 そんな明里の痴態を見て少しだけ興奮してしまっているところも、妙にリアルな質感で好きです。NTR。これぞNTR。NTRポイント高得点です!
 ただ、明里が悪女に見えてしまったせいで、もともと本命が養護教諭だった(主人公は遊び)可能性もあり、そうだとすれば少しだけNTRポイントは下がるかもしれません。もしNTRポイントが欲しければ、明確に双方想っていることが確信できる文章を刺して頂いてもよかったかもです。(欲しければ……)
 そして最後、序盤では情景描写に一役買っていた桃の香りの制汗剤が出てきて、明里を想起させて終わる。めちゃくちゃ美しいNTR小説。
 タイトルの「香り」も綺麗で、作品を象徴していて、大好きな作品でした。ありがとうございました。

20.宗次、また明日な/藤田桜

 徐々に寝取られていくお前との明日を信じたい。藤田桜さんの宗次、また明日なです、ご参加ありがとうございます。
 
 まず、全然性の匂いがしない、パブリックイメージのNTRじゃないのにNTRポイントがすごく高くてびっくりしました。凄すぎる。きっとNTRについて沢山考えて、解釈してくれたんだなと思ってとても嬉しいです。
 本作は宗次の顔に痣が出ているホラーテイストの雰囲気ではじまります。痣が出て衰弱していく宗次。病気なのか、何かの呪いなのか。その物語の根幹を描写しながら二人の信頼関係を並行して描く、情報の伝え方がめちゃくちゃ丁寧かつ短くまとまっていて、とてもテンポよく進んでいったのがまず大好きです。そして満を持してのNTR要素の開示。
「毎晩体ん中何かが入ってくる」
 うわ~! って声が出ました。憑依とか入れ替わり系は時々ホラーで見はしますが、これをNTRとして解釈してきたところで「うわ~!」って。
 ハルくんの無力さが伝わってくる1章最終段落の文章のリズムがとても好きです。少し官能的な文章で、長さや読点の打ち方が気持ちよくて、脳内で読んだ際にスラスラと読めた上にいっそうハルくんの気持ちが伝わってきたような気がしました。

 2はもうただのめっちゃホラーです。言葉選びが気持ち悪くて(誉め言葉です)恐怖と嫌悪感からめちゃくちゃ読み耽ってしまいました。気持ち悪いのにどこか綺麗で、続きが読みたくなってしまう文章はとてもテクニカルです。
 だからこそ、ハルくんが水を置いてくれた時の日の光が差したような安心感が際立ちました。際立ちましたが、変にハッピーエンドへの期待を持たせないために、このタイミングで宗次もハルくんの抵抗を脆いと思っていると言わせるところがとても最悪で大好きです。
 一点だけ、これはこの世で私だけな気もするんですが、なんか1読んだタイミングで私「舞台は少し前の時代の日本だ」と思ってしまっていて、だから3がはじまったときに「時間が経ったのかな?」と変な勘違いをしかけました。呪い的な痣、病院に行かないところ、宗次という少し古風(個人の感覚です)あたりでそう勘違いしてしまったのかもしれません。外れ値だと思うのであまり気にしなくてもいいと思いますが、視点が変わるタイミング(ここだと2,3の初め)にハルくんか宗次の名前を明記すると勘違いが減るかもしれません。
 ハルくんの視点で幸せだったころを思い出して、もう変わってしまった宗次を見て悲しくなる直後に、宗次はもう思い出せすらしないっていう話になるのも最悪すぎてこのあたりはマジで心が痛かったです。読み手の感情を操作するのがとても巧み……。
「俺がちゃんと覚えとる」というセリフが何の救いにもなっていないっていうのも辛すぎる。いわゆる「ちょうどいい落としどころ」で落とさず、脆く足掻き続ける話として完結しているので、読後感がとんでもなかったです。辛くて苦しい、微妙に光がさしているように見えるけどその実そんなことはないという終わり方。
 なんとか二人には幸せになってほしいと祈ってしまう作品でした。ありがとうございました。

21.そして、灰へと。

 まだ火はつきてないから、またつく日を心待ちにしてる。おくとりょうさんのそして、灰へと。です、ご参加ありがとうございます。

 官能的な始まり方をする本作。喉が潰れるくらい求めあった二人ですが、彼を自分のモノにできたというセリフで二人の関係が通常の恋人同士ではないことを教えてくれます。もうNTRじゃん! そのままNTRというテーマにぴったりなエロティックな展開が続いていきます。ここの官能パートは読んでる最中「キスされて尻から火照るタイプなんや……」とか「吸う? キスで? いやまあ吸わなくはないけど吸うばっかりなんはなんか不思議な性癖やね」とか少しずつ違和感を覚えていたのですが、恋人(真)の登場によってその違和感が解消されるところがめちゃくちゃ好きでした。こういう叙述的な文章は、あまりに違和感があっても駄目で、でもあまりに違和感がなくても駄目だと思っています。本作は(やや違和感が強い寄りではありましたが)いい感じに脳に引っかかり、謎開示パートで「お〜!」という気持ちになりました。
 そして本作はそこからが本番です。そこが本当に好き。「実はタバコでした!」というオチではなく、「タバコだったから……」とタバコとして話が続いていくところが最高です。燃えて灰になる。火が消える。火がつく。吸う。タバコってすごい恋愛的なアイテムですね……。
 男がめちゃくちゃ彼のことを思っているところも好き。恋人というときにちょっと詰まるところとか超いい。タバコは辞めないし都合悪くなったらキスするしの彼はちょっとクズ寄りで、二人のバランスがめちゃくちゃよかったです。
 本筋ではないので戯言として受け取っていただきたいんですが、私はNTRに必要なのは双方矢印の愛情だと思ってます。本作だと彼とタバコの間の愛情。タバコは言わずもがなですが、彼→タバコはもう少し強い思いが描写されてると、NTRポイントがさらに高くなったかもしれません。現状だとどうしてもNTRというより叶わぬ恋に見えてしまった部分があり……。
 ですが、叶わぬ恋としてはラストの文章がめちゃくちゃ好きで、タバコなので彼はきっとまた吸うんですよ。それはわかってる。わかってるからその時を待つ。火はまだ尽きてないんですね。タイトルの回収が美しい!
 あとこれ、そして灰へとって、そして肺へとってこと!? うますぎる……。
 叙述の使い方と官能的な文章、そして最後に残る一抹の切なさがとてもいい作品でした。ありがとうございました。

22.Continue.../只野夢窮

 血は争えず、命は続く。只野夢窮さんのContinue...です、ご参加ありがとうございます。
 本作に漂う絶望感や悲壮感がとっても好きなので、内容には後で触れるとして、最初にNTR小説としての講評を行います。本作はNTRを起点にして、寝取られた女性の半生を描いていく物語となっています。
 人の女を寝取るような男は、寝取られた男についていくような女は、という観点で話が進んでいくので、たしかにNTR小説ではあるのですが、NTRは起点に過ぎなかったので(正直この女性なら浮気してなくても幸せを掴めてなかったとすら思ってしまいます)個人的NTRポイントはそこまで高くありません。
 ですが、その内容はめちゃくちゃ読ませる内容となっておりました。大好きです。
 NTRって取られた人間以外の二人は基本的に加害者なんですよね。本作はそこをしっかりテーマに据えて、取る男はもちろんクズなのですが、語り手に若干コメディチックに男を罵倒させることで、語り手の性格の悪さもきちんと伝える手法がとても過ぎてました。そもそもワードチョイスがいい。避妊もできない男に〜とか、人妻相手に避妊しない男が〜とか。語り手に男のクズを描かせつつ、語り内容で女のクズを描く。うますぎる。
 そして娘が妊娠しますが、ここで語り手が何も言えないところもね、たしかに言える立場ではないかもしれませんが、そこで言えないところが、世界を諦めているようなところがこの語り手の悪いところだぞ、というのを象徴するようなエピソードで、キャラが一貫していて好きでした。

 長男と次男はまだ救いがあるんでしょうか。特に長男はわんちゃんあるのでは? でもきっとふたりとも人生の節目節目で両親のことを思い出すんでしょう。生物学的には違うのでしょうが、私はそれこそまさしく遺伝子だと思いました。
 本作を締めている言葉のように、遺伝子をばら撒くのは生物的に正しいでしょう。正しいですが、本作を読んでいると、それが本当に正しいのかわからなくもなってきますね。少なくとも現代社会で、親をやろうとしない人の遺伝子を残すことがどこまで正しいのか。
 なんでここまで考えてんだNTRフェスタだぞ!!! と思ったけどまあNTRと言えば無責任と性行為だもんな。思考する必要はあるのかもしれません。
 ちょっと小道にそれましたが、読み手にここまで考えさせるほど、めちゃくちゃパワーがある小説だと感じました。ありがとうございました。

23.顔が好きだから/南沼

 三人寄れば色んな感情。南沼さんの顔が好きだからです、ご参加ありがとうございます。

 1000文字足らずの文章でこんなに衝撃的な展開が続いてラストはゲラゲラ笑える作品があったでしょうか。めちゃくちゃ面白かったです。順番に前から見ていきましょう。
 まずはヤバ女、綾乃の語り。NTRフェスタに相応しい最低の一行目からはじまります。どうやら綾乃は俊己くんとえっちしちゃったみたいだけど、それは別に好みだからとか言い寄られたからではなさそうです。陽南の彼氏のよがり顔が好きってのはね、略奪に性的興奮を覚える終わってる女ってことだと思うので本当に最悪だー! と思って読んでいたら「ごめんね陽南」からはじまったはずなのに数百文字後に「嫌いかな、キモいんだけど。」って一瞬で手のひら返しまでする始末。マジで最悪に振り切っててめちゃくちゃ好きです。

 視点変わって陽南。ここで「三者三葉」というコピーを思い出しますね。「♀♀♂」というサブタイトルも効いてきます。
 視点の切り替えは読者をこんがらがせる危険性があるので、下手に多用するのは良くないテクニックですが、本作はコピーやサブタイで布石を置きつつ、文章の温度感を一気に変えることでこんがらがりを防いでおり、テクニカルだなあと思いました。
「正直キモいんだけど。」という語りのオチと、「また寝取られたかぁ。」の新章がはじまった感じがすごい。これはこの後の「お願いだからさ」と「仲直りした感じ?」にも言えます。文章の温度変化で章の切り替えを表現するの、自分で言ってて怖くなってきたな。。凄すぎます。

 陽南は陽南で綾乃に負の感情を抱えていて、二人が嫌いあってるのがとてもよかったです。男を介した女女の関係ともいえる。でもこの直後、そんな感情は一気に流されていきました。

 俊己が面白すぎる。渦中にいるのに二人の感情を全然くみ取れてない男の子だなあとか思ってたら「ワンチャン3P」とか言い出して声出して笑ってしまいました。カス過ぎる。その後二人の女性を分析しているのも最悪すぎて笑いました。
 俊己くんが強すぎて若干NTRから遠くなってしまった感じもなくはないですが、序盤二人はしっかり寝取った人と寝取られた人をやっており、確かなNTR小説イズムを感じます。なによりめちゃくちゃ笑ったので私の負けです。最高。しかもただの女好きのカスかと思ったら男のケツに腕突っ込んで楽しむようなマジモンだったことが明かされて本作が終わります。構成うますぎ。これのせいで「仲直りした感じ?」も鈍感系主人公じゃなくてマジで人の気持ちがわかんない奴に見えてきました。講評の関係上何度か読み返したのですが、何回読んでも面白い作品でした。大翔くん逃げてくれ。ありがとうございました。

24.アイツの葬式/ラーさん

 正妻の最後の意地。ラーさん(さん)のアイツの葬式です、ご参加ありがとうございます。

 200文字とは思えない満足感でした。セリフや地の文に関係性を仕込むのがとてもテクニカルで、短い文字数で読みやすいのに色んな情報が読み取れるようになっていると感じました。
「あなたのお名前、何度も夫の寝言に聞きました」「妬けました」
 もうこのたった二文だけで、彼女の抱えていた想いがめちゃくちゃ伝わってきて辛くすらなりました。自分が正妻なのに、別の男の名前が寝言に出てくる。それでも看取るまで一緒にいたのはなぜだったのか。シンプルな答えがすぐに返ってくるのもストレスがなくて読みやすかったです。情報の出し方が気持ちいい。今欲しい情報がきちんと今帰ってくるので、計算された読みやすさだなと感じました。

 本作の山場である正妻の復讐が語られる部分も、端的な言葉の中に動機やなにをやったかが詰まっていて、倒置法で「私の名を」が来るところにめちゃくちゃ痺れました。
 NTRは人間関係の物語ですので、もう少し分量が多く、それぞれのキャラの深掘りがされていたら、もっとオチの部分のダメージや感じ方が大きくなっていたかもしれません。それはそれで読みたいなと思いました。ですが何度も言っているように本作は情報の圧縮と展開がうますぎて、全然キャラに感情移入できていないのに正妻には「がんばったな」と言いたくなりましたし、主人公と一緒に重い気持ちになることができました。

 最後の一文も綺麗に締まっていて、かつ読み手をほろ苦い気持ちにさせるのでとても好きです。
 二人からこんなに大きな愛を受けておきながら先立っていくのは、二人からしたら罪深いことでしょうし、そんな罪深い彼に、最期自分の名前を呼ばれなかった主人公は、きっと事あるごとに彼のことを思い出してしまうのでしょう。
 辛すぎる。
 亡くなった男を挟んだ男女のお話で、とても読みやすく面白い作品でした。ありがとうございました。

25.ハイリスク、ノーリターン/秋乃晃

 行動力のあるバカが引き起こすちょっとした事件。秋乃晃のハイリスク、ノーリターンです、ご参加ありがとうございます。
 
 主人公が地の文でツッコミをするので、必然主人公と会話をしている人物が物語をどんどん振り回していく、というのが冒頭からわかりやすくて大変読みやすい設計でした。冒頭数行でその位置づけをはっきりさせた後すぐに「チョコ塗ったら受ける」(まあ男性なら一度は考えるでしょう)(何考えてんねん)という”バカな行動”を持ってきてくれるので安心感がありました。
 秋乃さんの作品、最近気が付いたのですがライトノベルの文体にノベルゲームの魂が乗っかってる気がします。ノベルゲームは小説以上に主人公を応援させ、主人公に共感させてなんぼなジャンルなので、それの採用によって主人公の魅力が引き立つような構成になっていると思いました。ノベルゲームはビジュアルがあってこその部分も大きいので、完コピしてしまうと今何が起きているのかわかりにくくなってしまう可能性があるので、そのあたりのバランス感覚を大切にして(ノベゲ出身の身としては)ハイブリッドな文章スタイルの究極系を目指していってほしいです。
 それではNTRの話へ。
 チョコエピソードを通してバカな友人の魅力が十二分に伝わったところで、別の大学へ行き、いよいよNTRメッセージです。男二人の関係性を描いてからのNTRというのは現状フェスタにほとんどなく、無二の輝きを放っています。そう、NTRは男女の関係先行型が多い。まあ寝て取られるのでそりゃそうと言えばそうなのですが。
 本作は男男を描いたからこそ、「本当に寝取ったのか?」「アイツならやりかねないか?」「友情はどうなるんだ?」という文脈でワクワクできるので、こういった描き方もアリかー! となりました。
 ブチギレた主人公、おめかしした彼女、逃げたアイツ。話はどんどん不穏になっていって、これぞ修羅場! という雰囲気作りがとてもよかったです。
 結果的にNTRではないというオチだったので、NTRポイント自体は高得点ではないのですが、それでもNTRの可能性を軸にした緊迫感の演出がとても面白かったです。ただ主人公、屋外で振り向きざまに殴りにかかったところは「お前そこまで暴力的な人間だったのか!?」という気持ちになりました。殴ってしまいそうだ、みたいな心情を差してもよかったのかもしれません。びっくりしました。
 弁明パートというか謎解きパートは、チョコ事件を起こした九らしいっちゃらしい動機で納得感がありました。納得感:謎解きに一番重要。
 彼女の「会ってみたくなって」も気持ち凄くわかる。会ってみたいもんな。

 このあと、なんとなく主人公と九は腐れ縁が続きそうな感じしますけど、彼女とはどうなるんでしょうね。NTR疑惑からはじまるダブルデートで、主人公の気持ちがわかりやすくて読みやすい作品でした。ありがとうございました。

 あとキャッチコピー、日記パロってくれて嬉しかったぜ

26.爪痕に塗り薬/黒本聖南

 傷ついた背中を見ることは、もう一生ない。黒本聖南さんの爪痕に塗り薬です、ご参加ありがとうございます。
 兄の背中に薬を塗る弟のお話。背中の怪我か何かかなと思っていたら弟が行為中に背中を傷つけていたということがすぐに明かされて、NTRに重要な”取られる前の二人の関係性の描写”が爆速でこなされていてよかったです。何よりも「眠る前の兄との行為を容赦なく思い出させる。」という表現がとても好き。背中に爪を立てるような行為を直接的なワードで描かない技巧が最高でした。
 
 場面が飛んで、弟は別の男と寝ています。「えっ?」と思ったらどうやら弟が自ら望んだ関係のよう。「えっ?」もう一回思いました。あんなに思い合ってたじゃん。
 新しい男はやや強引で、でもそれが受け身な主人公との相性がいい気もします。私結構この男好きですね。。自分が手を出すことを自覚していたし君も知ってただろう、というテンション、大好き。
 綺麗な背中を見ることで、この新しい男は背中を傷つけさせないというのがわかる部分が詩的で素敵です。傷をつける暇がなかった=主人公は傷つけたかった=いっそ兄のことなんて全部忘れさせてくれたらいいのに。そんな主人公の気持ちまで推察してしまったのは深読みのしすぎでしょうか。
 
 ただ、これは個人的な気持ちなのですが、後半で主人公の動機が明かされるまで主人公がいったい何を考えているのかが少しわかりづらくて、どこに矢印が向いているのかもう少しだけ(もちろん、明らかに描写しきってしまうのは違うというのはわかります)書いてもよかったかもしれません。それか、揺れてる、という気持ちを明示するか。私はあまり恋愛小説が得意じゃないので、少しだけもにょっとしながら読んでしまいました。間違えた言うてるわりに積極的だなあと。主人公を動機不明の人物にしてしまうと一人称の良さが少しだけ減ってしまうかもしれません。わかりません、個人的な感覚です。
 その主人公の動機、おそらく自暴自棄になったのでしょうそれが明かされるところは溜めただけあって「ああ」となりました。
 最初、主人公が寝取られている小説だと思って読んでいたのですが、兄が寝取られていたんですね。(寝ていたかどうかはわかりませんが)
 私は異性愛者なので想像することしかできませんが、兄弟の壁を越えて同性同士で繋がっていたはずの兄が、普通に異性と楽しそうに過ごしていたことを知った主人公の気持ちはきっと最悪だったんでしょう。そりゃ別の男にも走るかもしれません。
 自暴自棄になって別の男のところに行ったのに、結局兄の背中を思い出して終わる、すごく切ない終わり方も好きな作品でした。ありがとうございました。

27.ナンバーワンの秘密/ぽぽ

 てめえ!!!! と一緒に叫びたくなる小説。ぽぽさんのナンバーワンの秘密です、ご参加ありがとうございます。

 二行目から爆速すぎてもうめちゃくちゃ引き込まれました。「風俗って大丈夫?」大丈夫なわけねえだろ。いや、大丈夫な人ももちろんいると思いますが、「俺達付き合いましょう」とかいう初々しいセリフの次に出てくるセリフはそれじゃないでくれ。短編小説はいかに早く読み手の心を掴むかが重要なので、本作はその観点で最強です。そこから、主人公が風俗を知らない箱入りであること、彼氏がだいぶ適当でだいぶ悪いやつなこと、主人公がめちゃくちゃいい子(だけどまあ常識は薄い子)ってのが簡単な会話と一緒に空いていきます。ここの情報の圧縮感もとても好きで、短い中でいろんなものを感じることができました。
「ぴんさろ」
 私は初々しい女子高生やってるので「ぴんさろ」というものがよくわからないのですが、まあ箱入り娘がいきなり聞いたら吐きますね。キレますね。このあたりの主人公の感情の導線もとってもわかりやすくて、するすると読めます。全力で指名するっていう主人公のボケ(本人は本気)もちょうどいい緩急になっていて、小説のリズムがとても気持ちいいです。
 無事(無事?)ピンサロ嬢になった彼女ですが、「あいつ、私を指名しなかった!!!」マジで笑いました。笑っていいところですよね? 主人公の怒りがもの凄いわかるんですが、めちゃくちゃ真剣だからこそ笑える、いわゆるシュールな笑いを誘われました。テクニカル。むかつく! の繰り返しもテンポがよくていいですね。最後彼氏に別れると突き付けて、タイトル回収をするラストもとても鮮やかでした。講評なのでどこか改善点などあればお伝えしようと思っていたのですが、短く鮮やかにまとまっていて、主人公の怒りが伝わってくるのにコミカルで笑える、とても気持ちがいい作品だったので、ここをこう、みたいなのがあまり見つかりませんでした。強いて言えばピンサロ嬢デビューを果たしたっていう情報の開示はあと3,4行早くてもよかったかもしれません。
 本作は第三者の介入によって関係が壊れているわけではないので、NTRポイントが高得点というわけではないのですが、ある種爽やかな読後感は、暗くなりがちなNTR小説フェスタの中で異色を放っていて、とっても楽しかったです。彼女にはその行動力を持ってどうか幸せになってほしい、そんなことを想う作品でした。ありがとうございました。

28.ネトリトラレ/きょうじゅ

 タイトルに偽りなく、取って取られて。きょうじゅさんのネトリトラレです、ご参加ありがとうございます。
 恋人が元カレにレイプされたという衝撃的なメッセージからはじまる本作。どんよりしたお話が展開されるんだろうと思っていたら、語り口調がすごく軽快で、すいすいと読ませる文章でした。ちょっと斜めに構えた主人公が軽快にXに関する補足をし始めたところから、もうだいぶ主人公のことが好きです。(短編小説は主人公を好きにさせたら勝ちだと思っているので、その観点で本作はもう勝ってます)
 彼の勢いは止まらなくて、二回目にあった時の浮気相手となっていたことがわかるシーンは作風によっては重く苦しい展開になりそうですが、「俺はそんなことをした覚えはないので」とか「さすがに分かる。」がギリギリ話を明るくしてくれます。
 ここで主人公のことを好きになれたからこそ、ラストまで主人公サイドで物語を楽しめたのかもしれません。いや、この話はさすがに普通に読んでても最後まで主人公サイドか。元カレが絶対的な悪すぎますからね。元カレが絶対的な悪だからこそ、彼女がそっちに行くのが(理由が明かされるまで)意味わかんなすぎてよかったです。
 理由も、単純明快にして、全く違う人種なんだなとわからせてくれる感じが最高でした。きっと彼女は最初の「殴る男とはわかれた方がいい」というアドバイスもそんなにピンときていなかったのかもしれませんね。首絞めはまだ一般的な気がしますが殴るはちょっと……。
 断られ続けてモヤモヤを抱えていたところに、暴力の化身ともいえる元カレにレイプされたのなら(全然共感はできませんが)そっちに行ってもおかしくない。そういう意味では彼女の行動原理もものすごくわかりやすく描写されていて読みやすかったです。やっぱりキャラクタの感情と行動がわかりやすく結びついている作品は読みやすい。
 さて本作のNTRポイントですが、かなり高いと言えるんじゃないでしょうか。きちんと寝取られている。なんなら一度は寝取ってますからね。両方の味が楽しめる小説でした。きちんとキャラクタの関係性が掴めて、ちゃんとお付き合いしている関係だったところが、決定的な価値観の相違と第三者(元カレ)の介入によって壊れてしまう。NTRポイント高得点です!

「地獄に落ちろ」「わかった」
 この嚙み合ってなさもめちゃくちゃよかった……。まあ別れて正解ですね。別れて正解なんですが、彼女にはいくらかコスト(時間も金も心配する心も)を支払っているので、単純に別れて円満、というわけじゃなく、モヤモヤが残る読後感が大好きです。
 八割実話……………………。
 1000文字ちょっとでタイトル通り寝取り寝取られが体験できる、NTRポイントの高い作品でした。ありがとうございました。

29.罪の双方向性/山本アヒコ

 一番近くでずっと見てくれないほうがよかった。山本アヒコさんの罪の双方向性です、ご参加ありがとうございます。
 爆速のテーマ消化! 一行目から本作がNTRであることを方向付けていて、とてもフェスタらしい出だしでした。しかも、寝取られたことを軸に話が進行していくお話かと思いきや、最後の最後までNTRを描き続けてくださったので、NTRポイントかなり高得点です。奥手すぎて愛想をつかされてしまったという理由も想像しやすく、短い中でまとまったとても良い1st NTRでした。
 そのまま一人飛ばして三人目も寝取られる(二人目も実質寝取られているでしょう)ところで、「ああ、そういう話ね!」とこの先を見せてくれるのもわかりやすくて面白かったです。何度も寝取られるの、本人からしたらたまったもんじゃないと思いますが、めちゃくちゃ勢いがあって面白いコメディでした。
 ただここ、二人目が飛んでいるっていう情報が布石になっているのかギャグの一つなのか微妙にわかりづらかったので、(布石だと思われてしまうと勿体ないし、)がっつりギャグとして擦り倒してもよかったかもしれません。
 結局六度失恋して、その間に悪友は結婚してしまうという対比も決まっていて、いっそう主人公の可哀想な感じが際立ってよかったです。

 そしてラスト。急にギアが上がってめちゃくちゃびっくりしました。
 ここ、話の展開はものすごく好きなんですが、コメディからシリアスに一気に振れたこと、友人が女性だったこと、主人公のずっと抱えていた気持ちの吐露、とめちゃくちゃ面白い要素が立て続けに圧縮されていて、ちょっと急展開みを覚えてしまいました。短い小説なので仕方ない部分はあるかもしれませんが、どこかの情報だけでも先に開けておくともう少し置いていかれた感が薄くなったかもしれません。そもそも急展開みが本当にあるかもわかりませんが……。
 
 主人公の想いの吐露はめちゃくちゃいいですね。確かにそりゃあ全方向に嫉妬するでしょう。半ば無理やり犯しているので主人公の好感度は残念ながら低いのですが、彼の苦悩もわからなくはなかったです。六回(五回)も寝取られた自分の横では美女が円満に結婚している。
 ……ごめんなさい、それでもやっぱり主人公の衝動に共感はできませんね。読み手目線、めちゃくちゃいい子が犯されているように見えますからね。。
 ただ、その感情の書き方がとても鮮やかなので、本作をどうしようもない男のバッドエンドのストーリーと読むとすごく苦しくて面白かったです。彼女ではなく、彼女の男に嫉妬していたところ。それも彼女と付き合っていることではなく「選ばれ続けていること」に嫉妬しているところ。何度も寝取られた彼にしか持ち合わせない感情だったと思います。
 コメディタッチの冒頭からかなり遠くまで来て、重いものを胸に残してくれる作品でした。ありがとうございました。

30.僕の可愛い彼女の生首/真狩海斗

 生首との奇妙な恋と、寝取られ。真狩海斗さんの僕の可愛い彼女の生首です、ご参加ありがとうございます。
 ――――彼女は、細かな肉片となって
 タイトルでなんとなく生首関係なのはわかったんですが、冒頭このセリフで一気に加速する感じがとても好きでした。NTR小説なので、主人公と彼女の恋物語が展開されていくんだろうなあと思って読んでいたのですが、生首になった彼女との恋愛だとわかったときは「そうくるかー!」ってワクワクしました。ここの生首シーンをショッキングに描かず、普通の学園ラブコメライトノベルの質感で書いているのがすごいいいなと思います。ホラーでもなく、淡々とでもなく、ラブコメ感がありました。真狩さんがどう意図して文章を書いたかわかりませんが、私はラブコメっぽくていいなと思ったので参考にしてみてください。
 ここで他の部位を拾わなかったことが後々効いてくるのがめちゃくちゃ好きです。

 キスしかできないね、のところやフラペチーノの下りも完全にラブコメで、ここを読んでいる最中はこれがNTRであることや彼女が生首であることを忘れることができました。この空気作りがとてもテクニカルで、だからこそ直後の幻肢痛での絶望感が際立ったと思います。
 ここで私の読み違いがあったことを告白します。。彼女の生首以外、マジでバラバラになったと思ってしまって、「そんな秘部を触れるほど部位残ってたんだ」っていう気持ちが生じてしまいました。これは私個人の読み違いだと思うのであまり気にしないで頂きたいですが(読み返すと足が残ってる描写もありますし)”細かな肉片となって”っていう表現でそう思ったのかもしれません。。もし参考になれば参考にしてみてください。

 後半はもう王道のエロ漫画展開でめちゃくちゃ好きです。妖艶な描写がとてもいやらしくて、ラストの主人公の気持ちもわかってしまいました。真狩さんは文章での雰囲気作りが本当に巧みで、前半のラブコメ展開からガッツリ雰囲気を変えてきたのが凄く好きです。脳では通じ合っていて、キスもできるのに、結局下半身の快楽に全て持っていかれてしまう。主人公は無力感に苛まれながら興奮することしかできない。
 これぞNTR! 生首と恋をするというちょっと変わり種の設定でしたが、NTRの基本はしっかり抑えているめちゃくちゃよいNTR作品でした。ありがとうございました。

31.禁断の赤い果実/アカバネ

 きっと、その果実に触れてはいけない。アカバネさんの禁断の赤い果実です、ご参加ありがとうございます。
 出会って一分でラブホ! 一話目のヒキが強くて、一気に二話目三話目と読ませていただきました。
 主人公アカバネくんは『何でも屋』で働く男の子。『何でも屋』の設定も、絶妙にあってもおかしくなさそうで、それでいて聞いてワクワクするような過去エピソードが盛り込まれていてとても好きです。確かに親の代わりに謝ってほしいって案件は、言われればありそう! ってなりますし、「こんな依頼をこなすアカバネくんは今回はどんな依頼を引き受けるんだろう」と続きが気になる導入でもありました。私は個人的に短編小説は導入(ツカミ)が命だと思っているので、導入の強い作品大好きです。ありがとうございます。
 個人的には、(これは個人的な意見ですのでほとんど気にしないで下さい)もう少しだけラブホインのところを早めるのもいいかもしれないなとも思いました。
 出会って一分でラブホという強いツカミがあるので、もっと早く掴んでしまってもよかったかもしれません。
 第二話はいよいよリンゴさんが登場し、物語が加速していくのを読みながら感じました。ラブホ内の描写は、なにより緩急の付け方がとても気持ちよかったです。『何でも屋』という職業が話の軸なので、今回の依頼内容をしっかりと提示しなければなりません。ですが、「今回の依頼内容」って結構退屈な説明パートになってしまいがちです。
 本作はそことリンゴさんを絡めることで、怪しいお姉さんの魅力で読者を引っ張っており、説明パートも苦なく読むことができました。シャワーを浴びている間のドキドキタイム説明パートを終わらすの、発明だと思います。特許出願したほうがいいかもしれません。
 「フフッまだ時間あるし、SEXしていく?」これ超好きです。

 結局リンゴさんは鈴木さんをあっさりと落とし、『何でも屋』としての依頼は問題なくこなせました。リンゴさんの妖艶な描写が丁寧だったので、鈴木さんが篭絡されてしまうことに納得感もあり、それを見ることしかできないアカバネくんの辛さもひしひしと伝わってきます。
 本作は結局シていないので、NTRポイントが高いかと言われればそうではないのですが、主人公のむなしさや悲しさの描写が凄くて切ない読後感でした。まあ、NTRポイントなんて別に高くていいことはありませんし。。
 最後のキスがまた憎いですね。大好き。
 アカバネくんは今後、もっと普通で性格の良い女性を見つけてほしいものです。でもしばらく、下手したら一生、彼女のことは心のどこかに居続けるんでしょう、そんなことを思う作品でした。ありがとうございました。

32.ラレシ/立談百景

 寝取られが一般的になった世界での愛の形。立談百景さんのラレシです、ご参加ありがとうございます。
 世界観が力強すぎる。三行目からそう思わせてくれる作品でした。「寝取られ師」ってなに? と思わせた時点でもう勝ちだと思います。
 そしてそのあとすぐに「寝取られ師」とは何か? の説明に入るのですが、ここも「確かに寝取られることこそ真の愛情の証明である」と力強く言われると「た……確かに」となります。もう勝ちです。世界観がめちゃくちゃ引き込まれるので、たった10行程度でなにをやっても続きが気になる状態に持っていかれてしまいました。
 そして本作は、世界観だけじゃありません。イネちゃん。強い世界観に強いキャラクタが乗っかると面白い作品になる。当然の方程式を証明していただいたような気がします。
 フウコとイネちゃんのラブホでのゆるい会話が大好きで、パンツの置き場所などイネちゃんの抜けたところを表現しながらも、「られとからせとか平気な人?」のあたりで世界観の補足までしていくところが、効率よくてとてもテクニカルだと思いました。きっちりお金を貰って、一線を引いているところが魅力的です。
 本作は、寝取られこそが純愛という特殊設定の上にしか成り立たない事件が起きているのに、世界観の開示が丁寧なのですんなり入ってくるところがとても好きです。
 一点だけ、傍点を振るなどで工夫頂いていますが、どうしても「られ」と「らせ」の単語がこんがらがってしまう部分はあったので、しょうがないのですが……ううん、どうするのがいいんでしょう。いっそ「寝取られ」「寝取らせ」と書いてしまったほうがわかりやすかったかもしれません。ちょっと冗長な文章になってしまうかもしれませんが。。
 イトセさんも少ししか出てこないのに印象に残る名脇役ですし、ショージも「倒すべき悪」としてわかりやすく配置されていたので、本当に読みやすかったです。複雑な世界観にはシンプルな人間関係を乗せる。すごく大切なことなのかもしれませんね。
 イネちゃんとフウコが走るところは、緊迫感がありながらもラブホでの会話のような緩さもあり、物語の空気感が壊れないままに緊張が保たれていて、すごく疾走感のある山場でした。全体を通してどんどん話は展開していくのに、世界観と空気感がブレないので、話の展開とキャラクタの魅力にだけ集中できるようになっていると感じます。最後の締めもいいですね。完璧なハッピーエンドではないけど、これから楽しい日々が続くんだろうなという予感を残して明るく終わる。イネちゃんの性格のような読後感でした。朝マック、行けてよかったね。異常な世界観はこう書く、のお手本のような作品でした。ありがとうございました。

33.雨後の彼方/あきかん

 情報が開示されるに連れて切ない背景が浮かび上がる。あきかんさんの雨後の彼方です、ご参加ありがとうございます。
 NTRフェスタということで、昔付き合っていた男とずるずる関係が続いていた系の話かと思いきや、最後の展開でもっと深い家族愛的な愛情が抱えられていたことがわかるという構成がとても好きです。シュンはどういう気持ちで引き取ったのか、そこから育てて、どういう気持ちで出ていった主人公を見送ったのか。
 結婚すると聞いて今どんな気持ちをしているのか。
 予想はできますが、明記しないという表現方法が、とても響く後味を残してくれました。
 最後、少しだけ笑ってくれているのも大好きです。シュンの気持ちを予想すると、どうしても重くて暗い感情も感じ取れてしまうような気もしますが、確かに笑顔は浮かんでいる。作者からその一点だけは心境が開示されることで、前向きな作品になっていると感じました。

 さて、ここで変則的なムーブをします。
 あきかんさんは最初別の作品で挑んでくださいましたが、性描写が過激だったこともあり作品が削除されてしまいました。
 ですが私、もう講評書いちゃっててですね。。。勿体ないし、せっかくなのでその講評も掲載させてください。(だから雨後の彼方の講評は少し短めですがご容赦ください)(あきかんさん以外のこの講評を読んでくださっている方、すみません! もう読めません!)
 2作品でのご参加、本当にありがとうございました!
――――――
夜空に見える半分の月は、

 歪な三人の関係性。あきかんさんの夜空に見える半分の月は、です、ご参加ありがとうございます。
 童貞小説(※二か月ほど前に行われた別のカクヨム自主企画)のネタだってキャプションを見たんですがこれ本当ですか??
 めちゃくちゃエロティックな文章が魅力的で、初稿時点でカクヨム様から警告食らったのもやむなしだなと思う表現力でした。これ、あきかんさんのフルパワーで官能小説を書いたら凄いことになるんじゃないかと思いました。
 で、第一章で男と男の関係性を描いたと思ったら、次は双葉と真白さんの主従関係がはじまります。真白さんから双葉の悲しい一方通行的な関係と、双葉の自身を少し諦めているような感じが好きです。心の声がいいですね。
 で、亮が出てきていよいよ修羅場か!
 と思いきや、第三章では実は真白さんと亮も体の関係があったことが明かされるっていう凄い三角関係の作品でした。構造が面白い。
 構造が面白いんですが、これはNTRポイントが高いかと言われれば少し低いかもしれません。寝て取られての三角関係で、NTRではあるのですが、主催のNTR論はやっぱり関係の構築と破壊なので、そこは価値観が少し違ったと思っていただければと思います。。

 第三章の真白さんと亮の最後の会話劇、めちゃくちゃオシャレでいいですね。
 「見事な半月ですね」
 「月が綺麗ですね」の亜種的なセリフですが、よく聞くコップに水が半分入っているとどう思うか議論を彷彿とさせつつ、本来二人で分けるはずのひとつの月を三人で分けている歪な三人を皮肉っているような気もします。(これは深読みしすぎですかね)(でも三角関係を描いたうえで半月をテーマにしているのなら、たぶんそういうことですよね)(……ちがかったらスルーをお願いします)

 エピローグの部分では三人が歪ながらも一緒に食卓を囲んでおり、自分の痴態すらもネタにして笑っています。歪~~~~! この三人は今後どんな関係性になるんでしょうかね。もうすぐ崩壊する気もするし、案外このままうまくいく気もします。
キャラが生きていて官能的な作品でした。ありがとうございました。
――――――
というわけで、2作品でのご参加ありがとうございました!

34.NTRバトラー奪!/鮎河蛍石

 30分アニメの質感で描かれるぶっ飛んだ世界のNTR。鮎河蛍石さんのNTRバトラー奪!です、ご参加ありがとうございます。
 もしこのフェスタに「ぶっ飛んだ世界観賞」があれば間違いなく大賞候補です。なんですかこれは!
 なんですかこれは! なんですが、この短い文字数でもなんとなく世界観がすんなり入ってくるところが驚きでした。ぶっ飛んだ世界を無理やり飲み込ませる筆力。アバンタイトルパートのスピード感とおバカコメディ感が効いているのでしょう。
 最初のパート、毎週毎週冒頭にやってほしいです。「簒奪者がいた」っていうナレーションを聞いて「お、今週もはじまったな」と思えるような。
 NTRからはじまるところはヒーローもののテンプレに沿っていてとても入りやすいですね。ぶっ飛んだ世界観だけど、主人公の動機は「かつてNTRをされた」っていうシンプルで王道というのがよかったです。

 ただ、NTRバトラーの設定はもう少し丁寧に掘り下げていってもよかったんじゃないかなあと少し思いました。NTR発見即射殺課や、事案Pのところは、面白い字面に確かな納得があるのですごく引き込まれるパワーワードに感じたのですが、NTRバトラーだけは一周目を読んだ時点でちょっとおいていかれてしまいました。(第三話)
 どこか読み落としていたら本当にすみません。なんか、NTRをする人間なんだなあと思っていたら急に異能バトルがはじまった感を覚えてしまいまして。
 そりゃ確かに言われてみれば「即射殺」の許可が出るんだから「人知を越えた異能」を持っていてもおかしくないんですが、、最初に出てきたスキルが奪の折衝者(対人基礎スキル)、その次が識の催眠系だったので「えっNTRバトラーの異能ってそんな超常的なやつもOKだったの」っていう戸惑いが勝ってしまい一つ目の山場である識戦がちょっとついていけなかったような気がしなくもないです。(世界観を理解したうえで読む識戦、めちゃくちゃ熱い)
 
 導入はおバカコメディですが、第二話での二人の関係性の深掘りや、刑事ものっぽい描写が挟まって、バディものとして一気に加速していく流れはとても好きでした。満を持してニチアサっぽい決めゼリフ「オレとバトルファックで勝負だッ!」が出てくるところ、BGM絶対かっこいい。
 そして最後、奪もバトラーだったことに気が付いた弾と対面して終わるところは、バディもののエンディングとして最高でした。
 毎話このノリで書くのはしんどいとは思いますが、設定を固めて、二人の最期を描ききったら狙えると思います、ニチアサ。(ニチアサは無理だろ)
 でもそれくらい基本設定と文章のスピード感、人間関係にワクワクする作品でした。ありがとうございました。

35.プレゼントをあなたに/馬村ありん

 そのプレゼントの中身は結局……。馬村 ありんさんのプレゼントをあなたにです、ご参加ありがとうございます。
 私、本作のオチがめちゃくちゃ好きだったのではやくオチの話をしたいのですが、私は前から順番に講評していくスタイルですので少しだけ我慢します。(でも本当に好きだったので先に少しだけ言及しました)

 一行目からめちゃくちゃパワーを感じました。「僕以外と寝てほしい」という情報開示で爆速によってお題消化をしただけでなく、「奴隷契約」まで付け加えることで、独自世界が展開されています。私は、短編小説は何よりもツカミまでの速さが重要だと思っておりますので、その観点で本作は爆速のスタートが切れていてとても好きでした。
 当たり前ですが本企画はNTRフェスタなので、たくさんのNTR小説が集まってきます。こういう同テーマが集まる企画の中で、一行目から「寝取られ」×「奴隷契約」というなかなかない掛け合わせを開示することで独自性を発揮していくところにとても強さを感じました。
 こう、「ヤッてるときに限って昔の恋人の話を聞いてくる」あたりの質感が最高ですね。「うへぇ……」ってなりましたし、「あー、いるいる」ともなります。寝取られ×奴隷契約というぶっ飛んだテーマではありながらも、キャラクターはギリギリ周りにいてもおかしくない質感で描かれていて、そのバランス感覚が読みやすさに繋がっているのかなと思いました。

 そして妻との馴れ初めや、契約後のもろもろを一通り描いた後、いよいよ七日間がはじまります。ここで2章3章と絶妙に焦らされたおかげで、「本当にヤるの? ヤらないの?」というドキドキ感を私まで抱いていて、いつの間にか主人公とシンクロしていました。全然共感はできないんですが、ドキドキ感は共感しており、主人公がどこか他人とは思えなくなってしまう。その感覚がとても不思議で楽しかったです。
 ただ、ここは仕方のない部分なのですが、5章の主人公の独白はどうしても主人公が遠くに行きすぎてしまったような感じがして、少しだけ置いていかれてしまいました。(妄想がベースという構成上仕方のないことではあるのですが)
 例えば、カクヨムの仕様上限界はありますが、もう少しここの部分で性描写を足すなどして、主人公の動きや気持ちがわかりやすくなれば最後までドキドキ感を共有したまま最後まで走れたかもしれません。

 さて、それでは最後。結局最後、あの七日間でなにがあったのかが伏せられる構成が本当に大好きでした。いわゆるリドルストーリーになっており、その七日間で何があったのか、真実はわからないままになっています。
 こういうストーリーテリングは、モヤッとしたものが残りがちなのですが、本作は「確定させないままがいい」「あの妄想は消したくない」という主人公の願いが見えているので、全然モヤモヤ感がなくてとてもテクニカルでした。妻は主人公を愛している、主人公もそれに気付いている、そこまで開示したうえで七日間だけは伏せる。だからモヤモヤ感がないけど、少し考えさせられて、すごく心に残る作品になっていると感じました。凄い。とても好きな読後感です。最後契約書を破いて「話はここでおしまい」とスパッと切るのも潔くて好きな作品でした。ありがとうございました。

36.「同じ訳ないじゃん笑」/ポテトマト

 リズミカルな言葉から綴られる主人公の裏切り、あるいは成長。ポテトマトさんの「同じ訳ないじゃん笑」です、ご参加ありがとうございます。
 
 現実とゲームの区別がつかない――というか、ゲームが自分のために演技をしてくれているような感覚を持ってしまう主人公の回想からはじまる本作ですが、冒頭の言葉の使い方がとても特徴的で、幻想的な気持ちにさせられました。表現が難しいのですが、文章が幻想的で読んでいると不思議と心地いいふわふわとした感覚になってきて、それがゲームと現実の区別がつかない主人公の曖昧さと似たような気分なのかな、なんて妙なシンクロを感じたりしました。
 性根の腐った(本文より)クミちゃんの登場で、本作はアキちゃんとクミちゃんの歪な友情を描いたものへと展開していきますが、クミちゃんの性格を彼女のセリフベースで描写しつつ、アキちゃんから見た教室の光景を並行して描写していくところがとても印象的でした。一種の情報の圧縮ですね。

 さて、そのクラスメイトの描写の中で「その手の花は、どうしたの?」というセリフが発せられます。
 ここは一気に書ききるべきだと思うので、上のセリフベースでまず最後まで触れますね。
 ※以下、私の勝手な解釈も入ります。全然違う! ということでしたらご容赦ください。。
 演劇の役を貰った主人公は、ここではじめてクラスの中に入っていきます。演劇。アキちゃんはゲームの中を演劇に例えていました。ここで「現実/ゲーム」「クミちゃんと過ごす一歩引いた世界/クラスメイトの輪」という重ね合わせの表現が凄く綺麗だなとまず思います。現実感のないところから現実へ。そしてダリアの花を貰います。ここでようやく、「その手の花は、どうしたの?」の意味が繋がってきました。
 一度は体で繋がったクミちゃんとアキちゃんですが、アキちゃんはクラスの輪に入っていき、そこが存外悪くないことを知る。
 そしていつの間にか、クミちゃんの方をゲームのような質感で見ている。現実味のない世界から、裏切りの花言葉の花を見て「その手の花は、どうしたの?」と問いかけられるというオチは、クミ目線で見ると間違いなく寝取られで、とてもエグイ話だなと感じました。

 これはポテトマトさんが狙って書いているのか、そうでないのかわからないので、そのままの感想として受け取っていただきたいのですが、すみません、一回読んだだけだと構成を理解しきれませんでした。(上の解釈があっているかどうかも実はかなり不安)
 ただそれは悪い意味ではなく、例えば絵画を眺めるときってそうだと思うんです。一回全体を見て、細部を見て、もう一回全体を見ると最初に受け取った感想とは全然違うものを抱く。この作品もそれと同じで、入れ子構造になっている会話と、どこまでが現実でゲームかを曖昧に描いた文体、これらを何度も眺めることで、文字通り読み解いていくことで全体像が明らかになっていく構成はとても美しくて、小説を読んでいてもなかなか体験できない体験でした。
 ……もし、「いやそんな意図はなく、一回で読めるはずですが?」ということでしたら本当にすみません。私の読解力の問題です。

 何度も眺める小説だという前提のもとに読み解いていくと、「内容が曖昧なままでも読み進められるリズミカルな文章」も「何度も繰り返されるキーワード」もとてもいい方向に働いていると思います。
 素の文章がとっても魅力的なので、今回の私の講評を受けて、より目指したい方向へと進んでいってくださったら、まだこの世にないエンタメの道を切り開けるような片鱗を感じる作品でした。ありがとうございました。

37.恋愛小説/ムラサキハルカ

 王道寝取られである、丁寧な関係の構築からの破壊。ムラサキハルカさんの恋愛小説です、ご参加ありがとうございます。
 すごく王道なNTR小説をありがとうございます。しっかりと時間をかけて二人の関係を構築していって、それをめちゃくちゃに壊していくお話で、一万文字で関係の構築から破壊までを行ったその描写力がとてもよかったです。NTRポイントがかなり高い小説だと感じました。
 小説としてみた時には、NTR小説という性質上仕方のない部分が大きいのですが、序盤の部分は少しだけ冗長だったかもしれません。二話目三話目あたりからは優子の魅力がガンガンに出始めるのですが、一話目(なんなら開始数行目)の部分で読者をどう引っ張っていくかというのがあるとよりいいかもしれません。しれませんが、NTRフェスタというテーマ消化としてはめちゃくちゃ高レベルで、とても好きです。
 三話、四話くらいから「安田さんがヤバそう」というのが見えてきますが、主人公目線、読者目線では意外と気持ちのいい大人に見えます。これはNTRフェスタだから安田さんがヤバいとわかったんですが、そうじゃなかったらいい人だって信じてしまうところでした。
 でもそれが七話のラストで一転して八の「心を強く持ってね」で、ついに始まるのか、と期待感が煽られました。
 この、ページを捲ったら優子が一気にとろけているというのは完全にNTR漫画(しかもR18)の文脈で、「小説でこれができるんだ!」ととてもびっくりしました。ただ寝取られて完堕ちさせただけでなく、子どもまで孕ませてしまうという最悪のところまで描ききったところも、容赦がなくて好きです。九話のところなんてもう最悪の気分で読むしかなくて、これぞNTRってずっと心の中で叫んでいました。
 雄太郎くん……最後だいぶ遠くまで行ってしまいましたね。。最後は完全に雄太郎くんに共感はなく、異次元の人を読むような気持ちで読んでいたのですが、ここも雄太郎くんが丁寧に壊されていくので、最初と最後だけ読むときっと「???」となっていたと思うのですが、とてもシームレスに読み進めることができて、人の気持ちの描写が最高に気持ちよかったです。
 R18漫画の文脈で王道のNTRを描ききった怪作でした。ありがとうございました。

38.ハッピーストライク/ラッキーストライク/大村あたる

 両面から描かれる、少しズレただけのふたり。大村あたるさんのハッピーストライク/ラッキーストライクです、ご参加ありがとうございます。
 本作の全体的に漂う退廃的な雰囲気がめちゃくちゃ好みです。田舎に暮らす主人公は、仲間に置いていかれ、それでもささやかな幸せを掴んでいる
 そんな中、もうすぐ子どもが生まれるタイミングで元カノに呼びつけられるというNTRフェスタらしい導入でまずテンションが上がりました。
 先にお伝えしておくと、本作は浮気はしていますが結局寝た後取り切れていない、どうしようもなく一緒になれない二人がテーマだったので、NTRポイント自体はそこまで高くありません。しかし、二人の関係性がとてもよくて、バチバチに決まったセリフもあるので、とても面白い作品でした。
 バチバチに決まったセリフ:「お互い、一番になるタイミングが噛み合わなかった。」
 本作を象徴するセリフですが、好きだった気持ちは否定しないまま一緒になれないことを伝えるこの一言、よすぎます。

 主人公が元カノを抱いている時、元カノは飄々としていてあまり感情は見えません。でも、タバコを吸い始めたシーンで、彼女のちょっとした振る舞いとセリフだけで「これ元カノ、めちゃくちゃ主人公のこと好きなんじゃないか?」と思わせてくるところの描写力がとてもテクニカルでした。最後の別れ際のところでは完全に好きだってことがわかって、本作きっての名ゼリフ「お互い、一番になるタイミングが噛み合わなかった。」が決まります。
 たぶん、元カノはまだ主人公に未練があるって言うのが最初からわかっていたら、このセリフはそこまで聞いてこず、だんだん予想がついて最後の最後でこのセリフに行きつくからここまで心に残ったんだと感じました。情報の開示が巧い。

 二話目は完全に彼女視点、いわゆるB面ですね。A面で恋心が見えたので、彼女の独白も違和感なく、それでいてA面を補完する作りになっているのはすごく好きでした。彼女も主人公と同じように親になるところだったという重ね合わせ。
 個人的には、このテーマをもう少しだけ掘り下げてもよかったのかなとも感じました。どこまでが書きたかったことなのかはわかりませんが、私は「親になる直前の不安」がひとつの大きなテーマかなと感じたので、そうじゃないならもう少し減らして、そうなんだとしたらもう少しガッツリ取り扱ってもよかったかもしれません。
 親になるという、人間にとって最大級に大きい変化を前に、思い出にすがってしまうよく似た二人という構成もいいですね。でも男は前を向いていて、女はまだ少しだけ前を向けない。このあたりの差は、自分が生むかどうかっていう性差もあるんでしょうか。
 この二人はもう会わないのか、案外すぐ会っちゃうのかわかりませんが、(やってることは結構カスなのに)応援したくなる二人でした。ありがとうございました。

39.姉の決めた許嫁/2121

 その問いにしいて答えるのなら『はじめから』。2121さんの姉の決めた許嫁です、ご参加ありがとうございます。
 瞳が綺麗な美夜に恋をした主人公の、恋のはじまりから終わりまでを描いた本作品。関係構築パートが凄く丁寧で、NTRポイントがめちゃくちゃ高いと感じました。私は、NTRとは関係の構築と破壊だと思っていて、本作はそこに真摯に向き合ってくださっていたと思います。
 その王道NTRに、眼球舐めという尖ったポイントをぶっこんできたことで、唯一無二の味がするのが魅力的でした。
 これはNTR小説という性質上仕方のない部分はあるのですが、序盤の展開がややスローに感じた部分がありました。二人の関係をじっくり展開しながら、何度も瞳が綺麗だということを強調し、中盤で眼球舐めを展開する。そしてその構築された関係が破壊されていくという一連の流れは本当に美しいのですが、もう少しだけ、序盤にパワーがあるとより引き込まれる作品になっていたかもしれません。
 さていよいよ大学編。NTRフェスタで大学に入るという時点で、私は「来るぞ……」と構えていたんですが、いったん同棲を挟んでテンポをズラすことでいい感じに焦らされてとてもよかったです。同棲するのにNTRに展開するの? →テニサーは駄目だろ! という感情の行き来。
 ただ、同棲の初夜に咲人くんがさっさと寝ちゃって、美夜が戸惑いながら「え、うん……おやすみ……」というところで「この二人は駄目です」となりましたね……。ここでいったん最後の「どこで間違えたんだろうな。」という問いに答えると、少なくともこの時点で間違えていましたね。(私は、もう最初からこの二人は駄目だったんじゃないかなと思いますけどね。。)

 帰宅した美夜の首元のキスマークを見て最後の展開に入っていくわけですが、美夜の気持ちがわかりながらも、別の男と寝るところまではさすがに美夜がギルティだと思います。そのあとすぐ、ブチギレた咲人くん側に罪が傾いていくので、その意味では罪のバランスは整っているのかもしれません。咲人くんが暴走した最後に、「眼球舐め」すらも他人に取られていることがわかって、全部取られて絶望の中終わる展開はNTRの王道で、最悪の読後感(誉め言葉です)でした。
 繰り返しになりますが、彼らがどこで間違えたのか。もう最初から駄目だったような気がします。咲人は姉に言われて意識しだして、美夜も告白されてから応える。そういう他者きっかけの関係性は、どこかで壊れてしまうのが必然だったのかもしれませんね。
 眼球舐めという細い糸一本で繋がっていた関係性がしっかり壊れる、王道のNTR作品でした。ありがとうございました。

40.私と彼のビデオレター/墨色

 墨色さんの私と彼のビデオレターです、ご参加ありがとうございます。
 企画内容に記載した通り、別のイベントにも参加いただいているみたいですので講評ではなく感想という形で綴らせていただきます。
 導入のビデオレターが送られてきたからビデオレターで返すっていう彼氏のムーブがおもしろかったです。喘ぎ声をふんだんに使った描写は(特に中・下でも触り続けているあたりは)ちょっとギャグっぽく感じもしましたが上のところはしっかりえっちで、NTRだー!! とテンション上がりました。最後はホラー展開に突入して、序盤のエロシーンの「死ぬ死ぬ」が効いてきたところすごく好きです。ありがとうございました!

締め

 各作品の講評は以上です。あくまで好みの偏った私による個人的な意見ですので、あまり重く受け止めないで頂けると助かります。

■大賞選考

 それでは次に、大賞の選考を行います。
 大賞、金賞、銀賞の3本を選出していくのですが、私一人で選考するのは荷が重いし、偏りがあると思います。
 ということで、特別ゲストをお呼びしました。以降は私、りしゅうに二人のゲストを加えて、合計三人で選考していきたいと思います!

りしゅう:それでは特別ゲストの二人、簡単に自己紹介をお願いします
姫:やほ~、姫ちゃんです。ふわふわしたヤバめの女の子が大好きなの!
りしゅう:はい姫ちゃんこんばんは
サイコバニー:サイコバニーです。イカれた作品が好きです。ふふ……ぼくみたいなね
りしゅう:なんだこやつは
姫・サバ「よろしくお願いします」

りし:というわけでこの三人で大賞選考やっていきます。じゃ、早速だけどそれぞれ三本ずつ大賞に推したい作品あげていこうか。じゃあまず私から。『極光』『恋愛小説』『僕の可愛い彼女の生首』
姫:『みんなみんな大好きだよ』『プレゼントをあなたに』『顔が好きだから』
サバ:『極光』『顔が好きだから』『ラレシ』
りし:ふむ。それぞれの理由を聞いても?
姫:ヤバい女が癖だから
りし:癖に忠実過ぎる!
姫:真面目に語るとね。NTRって結局人間関係の話なの。人間関係が築かれて壊れるまでの話。りしゅうくんも何度か講評で触れていたと思うけれど、短編でNTR小説を書くのってだいぶ難易度が高いじゃん。しっかり関係の構築をしないと取られたときの絶望感がないし、しっかり取りきらないとNTRを読んだ感じがしない。そしてその積み上げたものをぶっ壊すだけの単調な話で、読者を引っ張らないといけない。そんな高難易度ミッションに対して、あたしがあげた3作品は、ヤバいキャラで読み手を引っ張るっていうアンサーを示してくれたのよね。人間関係を主軸に描くべきテーマだからこそ、人間が強い作品を推したくなる。もちろん他の作品もキャラが強いのはたくさんあった。あった上で、特に印象深いのを選ぶならこの3作品かなと思ったわけ。
りし:姫はキャラクタメインで選考してくれたんだね。サバはどういう基準で見たの?

サバ:一言で言うのは難しいんだけど、凄く遠くまで連れて行ってくれた作品、かなあ。
りし:……?
サバ:例えば極光、オチを切り取ると「隠れて好きな人のセックスを見て抜く男」じゃん。んなやついるわけないよね。いや、そりゃあどこかにはいるかもしれないけど、一般的にね? 顔が好きだからの最後の男もそう。いるわけがない。
りし:そうだね。いないね。どこかにはいるのかな
サバ:そこなんだよ。いるのかな、って思わされたでしょ。なんでかって言うと、極光は丁寧に5000文字以上かけて俺と君(と愛花)の関係を描き切ったからで、顔好きは徐々にヤバいキャラを描写していったから。当たり前の話をするんだけど顔好きの一人目が男だったら「ぶっ飛んだ話やなあ」ってなってたと思う。緻密に丁寧に読み手を運んでくれたから、『いてもおかしくないな』って思わされている。そのテクニカルな情報開示がすごく好きだったんだ。NTR小説って秘匿と開示の物語でもあると思うから、情報開示の巧みな作品は推したくなる
りし:情報開示って聞いて『ラレシ』も納得した。あの作品は、いうなれば初手からあり得ん世界を描いているんだけど、その世界ならそうなるだろうっていう描写がすごく丁寧で、飲み込みやすかった
サバ:そういうこと

姫:で、りしゅうくんの判断基準は?
りし:これぞ王道NTRと感じたものかな。極光、恋愛小説、僕の可愛い彼女の生首。これ三作品ともNTRエロ漫画の展開を小説で書き直している感じがして、とっても良かった
姫:えっち
りし:NTR小説大賞ということで、こういう純粋にNTRポイントの高い作品はやっぱり推したくなっちゃうな
サバ:まあわかる
姫:それなりに割れたけど、大賞はどうしちゃう?
りしゅう:じゃあここからは主催権限で
姫・サバ:はい

りしゅう大賞は、草森ゆきさんの『極光』!

姫:いえーーい
サバ:ひゅー!
りし:わ~~い! 高いNTRポイントと、そこに持っていくまでの情報開示の巧みさ、キャラクタもとても好きだったので、大賞と致します! 草森ゆきさんには『寝取られ大賞』の名誉と『NTR KING』の称号をあげましょう
姫:いいな~~!
サバ:続いて金賞はー?

りしゅう:金賞は、南沼さんの『顔が好きだから』!

サバ:うお~~~~~!!
姫:どひゃ~~~~~
りし:短いながら衝撃を残してくれたところが最高でしたね。『NTR QUEEN』でし!
サバ:ここまでは得票数二だからすんなり納得してるけど、銀賞はどうするの?
りし:…………めちゃくちゃ迷ったんだけどね
姫:迷うよね。怪作揃いだし
りし:上であがってないものを推します
姫・サバ:え!?

りしゅう:銀賞は、君足巳足@kimiteraryさんの『とびきりのファイティングポーズで別れ話を』!

姫:わ〜〜〜〜
サバ:パチパチパチパチ

りし:『NTR JACK』の称号をあげます。突然飛び出てきてびっくりしたと思うので詳細を説明しますね。読んで! 以上です
サバ:それは納得行かないよ!
りし:仕方ないにゃあ。説明しますね。本作はきっちり寝取られてるんです。NTR小説なんです。なのに見て、この読後感。こんな気持のいい作品はないよ。本企画、色んな人が色んなNTRの可能性を見せてくれましたが、NTR×爽やかで書ききってくださったこの作品を、銀賞とします。NTR大賞を取る作品ではないのですが、銀賞あたりには居てほしい作品でした
姫:わかるわかる
サバ:確かにNTR小説とは思えないとんでもない読書体験だったね。それでいてNTRだ

りし:以上で大賞選考を終わります。受賞された方がた、本当におめでとうございました!!!

■座談会

りし:ほいじゃあここからは他の作品とか全体的な傾向の話、総評でもしよっか

※ここから先、いわゆる「くぅ~」を延々とやってます。ご注意を。もう大事なことは言ってません。

姫:りしゅうくんの言うNTRポイントって結局なんだったの?
りし:これは独自定義なんだけど、『壊れてほしくなくなる関係が構築できている、そしてそれを壊している』の鮮やかさだね。私はNTRのことを関係の構築と破壊って思ってるからさ。受賞作品意外だと、『恋愛小説』とか『香り』あたりがめちゃくちゃ丁寧に関係の構築と破壊が描写されていてNTRポイントが高かったですね。『飼っている』の関係構築パートも大好き。
サバ:それでいくと帆多丁さんの『鉄恨のイゼルヴロク』もだね
りし:それ。
姫:イゼルヴログと、藤田桜さんの『宗次、また明日な』、尾八原ジュージさんの『sink』とポテトマトさんの『「同じ訳ないじゃん笑」』は、性的な作品じゃないのに確かにNTR小説だったから本当に凄いと思った
サバ:わかる。NTRの可能性が広がったよね。ホラーでNTRをやってくださったジュージさんと桜さん、本当に好き。

姫:そういえばりしゅうくんの作品を読んだときに思ったんだけど、りしゅうくんってNTRのこと「男×男」だと思ってる節ない?
りし:正解! 女性を挟んだ男と男の関係だって思って書いてたね。他で言うと『極光』『寝取りすぎた男』あたりがそうかも。
サバ:寝取りすぎた男、爆笑しちゃった。『あたしにはなかった』と『ハイリスク、ノーリターン』も爆笑した。
りし:ち〇ちんが好きなだけじゃないのそれ。

姫:コメディ枠とはちょっとズレるけど、『とびきりのファイティングポーズで別れ話を』と『ナンバーワンの秘密』は読後感爽やかで大好き。
りし:NTRとは思えない爽やかさだったよね。あと姫が好きなのは『みんなみんな大好きだよ』でしょ
姫:ヤバい女が癖なので。『禁断の赤い果実』のリンゴさんとか、『私の飼い主さん』の主人公とか。
りし:『私の飼い主さん』を書いたもももさん、参加後にNTRをもう一回自分の中でかみ砕いて、企画とは別枠でNTR小説書いてくれたんだよね。本当に嬉しい。
サバ:スペースで言ってたね
姫:なんでりしゅうくんのスペースっていつも大変なことになってるの?
りし:殺すぞ
姫:ふえ~ん

サバ:短い文字数でNTRをキメてくれた方々も凄まじかったよね。爆速で提出してくださった100文字NTRの『NTRRTA』をはじめとして、『とびきりのファイティングポーズで別れ話を』『sink』『雪まみれ』『NTR』『アイツの葬式』あたり。
りし:小説を引き算で書ける人、本当に尊敬します。上記のどの作品も「情報不足感」が全くなくて、短いからこその面白さってのが詰まってましたからね。

姫:情報でいくと、独自世界観組。凄すぎる。
りし:『ラレシ』と『NTRバトラー奪!』かな。こんなぶっ飛んだ世界なのにちゃんとテーマはNTRだったしどうなってるん。
サバ:『真夜中の秋の夜長のキッチンの』と『そして、灰へと。』も独自世界観というか、舞台設定で度肝抜いてきた感じがある。
りし:情報開示がめっちゃ気持ちよかったやつだ。叙述っぽいやつで行けば『雨後の彼方』の情報開示も凄い気持ちよかった。

サバ:ここまで来たら色んなNTR整理してみよっか。NTRが起点となって話が動く系はツカミが爆速で凄く楽しかったね。
姫:『あほんだら』『ネトリトラレ』『Continue…』『罪の双方向性』あたりね。変則的だけど『NTRデリバリー』もそうか。
りし:5作品ともめちゃくちゃ重い気持ちになる作品じゃないですか……
姫:ほんとだ。いや、そもそもNTR小説なんだから重い気持ちになるのは当たり前でしょう。。

サバ:あとは主人公が浮気しているやつ=とる側のやつと、取られる側のやつか。
りし:なんか気分重くなってきたな
姫:例えば『君を盗る』はやってしまった感にライトが当たっていて、『ハッピーストライク/ラッキーストライク』はやってる上で、二人の気持ちの違いにライトを当てている。人によってどこにライトを当てるか、どう描くかに多様性があるのが本当に面白い企画だったね。

サバ:確かに。取られる側でも『姉の決めた許嫁』は王道の取られ方に真摯に向き合っていて、『プレゼントをあなたに』では敢えて取られる女性、『爪痕に塗り薬』は取られてしまったことの後悔が描かれていて、取られる人にライトを当てる中でもこんなに幅があるのか! ってびっくりしちゃった。

りし:とかグダグダ喋ってたらもう5万字に届きそうだよ。そろそろ終わらないとさすがに冗長すぎる気がしてきた。
姫:そうね。
サバ:…………い。
りし:ん?
サバ:終わりたくない!!!!!!
姫:急に大声出さないで。
サバ:や、まさかNTRフェスタがこんなに楽しい企画になると思ってなかったからさ。
りし:ぶっちゃけ身内が3人くらい書いてくれて終わる企画だと思ってた。
姫:みんなNTR好きだったんだね。
りし:楽しかった楽しかった。まあ、それでも祭りは終わるものよ。ほいじゃあ最後に何か一言ずつ貰っていいかな。

姫:たくさんのヤバキャラクターに出会えて楽しかったです。ありがとうございました。

サイコバニー:イカれた話がたくさん読めて楽しかったよ。あと親友の草くんは大賞受賞おめでとう。

りし:はい、二人も選考に付き合ってくれてありがとうございました。じゃあみなさん、よいNTRを!


■最後に

 改めて、ご参加いただいたみなさま、参加作品を読んでいただいたみなさま。姫路りしゅうのくだらないポストやグダグダスペースに付き合ってくださっているみなさま。本当にありがとうございました。
 今回NTR小説を書きたかったけど間に合わなかった/日程が合わなかった方々、NTRに目覚めてもう一本書きたいなあってなっている方々。書いてください。気付いたら読みに行きます。

 読みに行きますで思い出した。
 せっかくだからNTR ACEである私の小説も改めて宣伝しちゃいますね。

こいつがNTR小説です。

https://kakuyomu.jp/works/16817330655974966128

あとこいつ、NTRじゃなくてガチの純愛なんですが、純愛×デスゲーム(オリジナルギャンブル)を描いた長編小説です。気に入っているのでぜひ読んでみてください。

NTRではないんですが失恋ソングを昔作っていたので、エンディングテーマとして起用しておきます。

 宣伝、止まらないのでこれくらいにして。


 みなさん、本当にありがとうございました!!!!!!!!
 これにてNTRフェスタはおしまいだ。ですが、他にもいろんな企画や遊びを適当に開催すると思いますので、ぜひこれからも仲良くしてください!!

 またね~。


第一回NTR小説フェスタ
企画:姫路りしゅう( @risyu_princess_ )
Special Thanks:姫さん サイコバニーさん

 and you


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