貨幣とは
みなさん、MMT(Modern Monetary Theory)ってご存知でしょうか。
日本でも2019年頃から有名になってきた貨幣理論で、これまでの貨幣論・経済学の根本を揺るがす考え方なので経済学における地動説と言われています。
今までの学説と大きく異なることから、経済学者の中にはこの理論に拒否反応を示し、批判的な態度をとる方もいらっしゃいます。一般人の中でもMMTに批判的な人も多いです。
しかし、MMTに批判的な人は実はMMTの理論をあまり知らなかったりします。巷に溢れている間違ったMMT理論を聞いてそれは違うと言っている人が多いように思います。藁人形論法です。
確かにMMTに拒否反応を示す人が多く、まだメジャーな学術となり得ていない理由は多くあると思います。
今回は、MMTの理論の中でも特に受け入れ難いものとされている「信用貨幣論」について考察してみました。
これまでのみなさんの貨幣に対する印象・理解を覆す内容かもしれません。
お読みいただけると幸いです。
1. 「信用貨幣論」とは?
MMTによって唱えられている貨幣論は「信用貨幣論」と言います。正確に言うと「国定信用貨幣論」です。
まず、これまでの主流な貨幣理論であった「商品貨幣論」とは何が異なるのかを説明します。
定義としては次の通りです。
主流派経済学者たちは一斉にMMTに反対していて、「国定信用貨幣論」を認めません。
私たちが普段何気なく使っている「貨幣」の定義についての話です。
身近な貨幣なのに何でこんなに話がまとまらず何時になっても結論が出ないのでしょうか。
議論を難しくている理由に「主要通貨(米ドルや日本円)の発祥時点では金兌換制だった」ということがあると思います。
金兌換性がこれまでの世界の主流であり、その当時から人間はみんな貨幣を利用していて、その名残で現在も貨幣を利用しているので、「貨幣」とは何なのか?という本質的なことが分かりにくくなっていると思います。
具体的な話をすると、こうなります。
では、どのようにすれば問題の本質が見えてくるでしょうか。
2. 思考実験①「遠い惑星でゼロから貨幣経済を作るとしたら?」
現実の世界において、「主要通貨(米ドルや日本円)の発祥時点では金兌換制だった」ということがこの議論を分かりにくくしているのだとしたら、いくつかの思考実験をすることでこの論点がクリアになると思います。
遠い惑星で人間と同程度の知能を持った生物の存在が確認されたとします。米ドル・ユーロ・日本円の札束を渡された場合にどの通貨を使用するか、という思考実験をしてみましょう。
一つのシナリオとして下記のようになるのではないでしょうか。
いちいち米ドルや日本円で取引したとしてもそれらで直接税金を収めるのは手間がかかりすぎる(あるいは、納税のためにユーロに交換しようとしても相手が応じてくれなかったりするリスクがある)ため、ユーロを使うはずです。
思考実験をした結果、このようなシナリオになるということに納得性があるとしたら、これが、国定信用貨幣論(貨幣とは、「政府が納税の手段として一方的に強制しているもの」である)の根拠ではないでしょうか。
地球人の営みについて何も知らない生物たちにとっては、米ドル・ユーロ・日本円はどれも単なる紙切れに過ぎず、どれも価値を持たないのに、
政府がユーロで税金を回収するとするからこそ、急にユーロが価値を持ち始め、みんなこぞって欲しがるようになり、ユーロを決済手段とした経済が始まるのです。
3. 思考実験②「日本政府が米ドルで税金を徴収し始めたら?」
次の思考実験です。
明日から急に、日本政府が米ドルで税金を徴収し始めたらどうなるでしょうか。こんなシナリオになるのだろうと私は思います。
こんな感じのストーリーになるでしょう。
これまでの流れでなんとなく日本円を利用していた日本人だが、税金の徴収方法が米ドルに変わったら、いきなり米ドルを利用するようになってしまうのです。
4. まとめ(2つの思考実験からわかること)
以上、2つの思考実験を実施してみました。
思考実験①では、「税制が何もない状態」に「とある通貨での徴収方法しか認めない税制」を導入することで「徴収方法として定められた通貨が経済活動に利用されるようになる」というシナリオを描きました。
思考実験②では、「税金徴収がとある通貨で実施されている」という状況において「税金徴収方法を別の通貨にする」変更を加えたことで、「人々が利用する通貨がその『別の通貨』に切り替わる」というシナリオを描きました。
もちろん、上記の2つのストーリーはあくまでも思考実験であり、私がこうなるだろうと思い描いたシナリオにすぎないため、本当にこうなるかどうかは証明できません。
ただし、上記のように考えられることから、MMTの「信用貨幣論」が一定程度正しそう、ということは少なくともわかっていただけたのではないでしょうか。
他にもMMTはこれまでの経済学の学説を覆す色々な学説があります。
それらについては他の記事で紹介していきたいと思います。
本記事はここまでです。
お読みいただき、ありがとうございました。
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