自己紹介 未婚で子どもを産んだ理由

幼なじみが20歳で結婚、出産したと聞いた。
(早すぎない?)
抽象的な社会のモノサシを振りかざして、心のどこかでバカにした。
そんな私が妊娠したのは21歳の冬。
特大ブーメランもいいところだ。

『自分の子供を育ててみたい』 21歳の春、そんなことを思った。
『次、付き合う人と結婚しよう』本気でそう思って周りに公言した。
『結婚して心を安定させたい』 これが本心だった。

私は『結婚』に、迷子になった人生の出口になって欲しかったのだと思う。

学生時代は「退屈な学校」「掛け持ちのバイト」「居心地の悪い家」。
面白くない日々に毎日【助けて】と悲鳴をあげていた。
(自分とは何か?)
終わりの見えない自分探し。
(子供でも産んでしまえば世界は変わるか?)
今思えばふざけたことを、真剣に考えていた。

思い切って大学を辞めた。
右も左も分からないまま社会に飛び込み、年上の彼氏を作った。
大好きだった。楽しかった。私はずっと笑顔で、幸せだった。
ただ、付き合ってすぐ上手くいかなくなった。
くっついては離れを繰り返し、『結婚』が迷路の入り口になった頃、妊娠した。

検査薬が陽性になったあの日。一生忘れない。忘れたくない。
(嬉しい。赤ちゃんがお腹にいる。私はもう1人じゃない!)
嬉しくて幸せだった。
飛び上がって喜ぶ彼の顔を想像したけど、
「産まないって選択はないの?」

それはつまり、そういうこと?

寒い冬、暗い雪道をひとり泣きながら帰った。
怒って、不安で、苦しかった。辛かった。
これはいわゆるマタニティブルー?
いや、早すぎるでしょ。全部あの一言のせいだ、

私は疲れていた。
「束縛」「上手くいかない人間関係」「孤立」「上手くいかない仕事」
頼れる人も愚痴を聞いてくれる人もいない。
面白おかしく笑って話したいのに、唯一の彼も側に居ない。
淋しくて壊れた。
涙が止まらなかった。

「結婚して一緒に子供を育てよう。」
ある日、彼が父親になる心構えをした。
土下座して謝ったあの日とはまるで違う、本当の言葉だと感じた。
私は真剣な彼の目を見て(怖い)と思った。口を塞いでしまった。
(結婚したくない!)
本心だった。
(子供は産みたいけど結婚はしたくない。喜んで欲しかった。あなたと育てたくはない。)
複雑だった。

ボロボロの私を置いて飲みに出かけていた。
私以外と子供の話をされることは許せなかった。まずは私と喜んで欲しかった。
彼は車の中で怒鳴って、荒い運転で帰って、ポストにお金を投函してきた。
赤ちゃんを守りたい。赤ちゃんを奪われたくないと大泣きする私を、彼は理解してくれなかった。

「不安にさせてごめんね。今からそっち行っていい?」
あの日、そんな言葉が欲しかった。
電話越しに取り乱した私を心配して欲しかった。
心の不安定にに気付いて欲しかった。
でも彼は不機嫌になって、何も言わなかった。

『次、付き合う人と結婚するんです!心の平穏が欲しいんです。』

出会って間もない頃、そんなことを言ったっけ。

『俺と結婚しよう。子供を作ろう。』
そう言って抱きしめてくれた彼は、私の居場所にはならなかった。

「うざい!嫌い!!」
泣いて、怒って取り乱した春、彼は何の連絡も残さずに消えた。
私の世界には彼しか居なかったから、その後は泣いてばかりいる抜け殻になってしまった。恋しかったわけではない。ただ、もう何のために生きているのかが分からなくなった。
(もう、死んでしまってもいい)そんなことを考えていた。

お腹が大きくなって、もうすぐ赤ちゃんが産まれる。
ひとりになった私を支えてくれたのは、実家の家族だった。
私を温かく包んでくれたのは、むかし居心地の悪かった場所だった。

両親や姉がこんなにも頼れる存在であることを知らなかった。
この子を授からなければ、私は実家を捨てたままだった。

私にとって結婚は、迷路の出口にはなれなかった。
まだ迷っている。
ただ、これから『助けて』と叫ぶのは私ではなく赤ちゃんに譲りたい。
迷路の出口を教えてもらうのは私ではなく、この命に教えてやりたい。

これが、未婚で子どもを産んだ私の全てだ。

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