政治家の「不倫スキャンダル」について
「政治家の不倫」はそれが利益誘導や公費の不正使用を伴う場合はもちろん、権力濫用等ハラスメントに当たる場合には政治的責任が生じる。また、相手を性の対象としてのみ扱い人格を尊重していると認められない場合には(相手の了解に関わらず)批判されてしかるべきであるし、ジェンダー意識の観点等から議員としての適性が問われてよい。さらに、「家族思い」といったイメージを積極的に打ち出していた等があれば「有権者を騙した」などと責められても仕方がない。
他方で、配偶者など家族に対する責任は基本的には本人たちの間の問題で公に云々することではないが、配偶者・家族であることを理由としてあるいはその信頼関係を利用して政治活動に従事させる等している場合には、政治家のあり様として批判を受けることは当然だろう。
ただし、政治家、芸能人の不倫が第三者から責められる際に、家族規範や道徳的な家族像が持ち出されることは問題で、あくまでも当人と不倫相手や配偶者・家族との関係の実質に即して考えられるべきもの。
一方で、今回SNS等で湧いている玉木擁護もそうだが、不倫の正当化の仕方であったり、「ハニトラ」説や陰謀論の類であったりには辟易するし、そこにしばしば性差別意識・ミソジニーであったり男の性欲の本質化・自然化であったりが現れることは問題。
「不倫スキャンダル」があると相手女性の側が不必要に叩かれたり責任を取らされたりするのも、(もちろん、不当に利得していた等の事情があれば別だが)基本的におかしいし、ミソジニーが現れる。男性の妻、家族との関係では加害者たり得る(不法行為責任が問われ得る)としても、当の男性との関係では、ましてや社会との関係では加害者ではない。
不倫スキャンダルはただ興味本位で報じることは有害で、配偶者・家族も「不倫相手」も傷つけ、不利益を生じさせる。ハラスメント・加害がある、利益誘導・圧力等の不正がある等私的事柄と片付けられない事情があるか、報じることに公共性、公益性があるかを慎重に判断すべき。玉木のことも、報じられたことで妻・家族の傷は深まるし、不倫相手も実名が出され活動にも生活にも支障が生じる。
政治家であれ芸能人であれ「不倫スキャンダル」が出た時には、基本的には、家族規範や道徳的な家族像がせり出してくることにまず気持ち悪さを覚えるが、同時にそれが男性であれば「この人は女性をどう見ているのだろう」ということは気になる。不倫相手に対してという面でも妻に対してという面でも。
しっかし、何かあるとすぐ「ハニートラップ」って、まず問うべきは男の側の行動と意識だろうに。だいたい、今回の玉木のことは少なくとも2年前に遡る話で、ハニートラップだ、陰謀論だ出る幕もない。地元で噂になってて週刊誌がマークして、そうでなくとも注目度が上がってどうせバレただろう行動。
「男はそういうもの」って擁護も全くおかしい。夫婦関係も不倫関係もそこに権力関係等の非対称性や人格毀損がないかがまず問題。