家族法制の見直しに関する中間試案に関する意見(パブコメ、2023年2月)


第2(父母の離婚後等の親権者に関する規律の見直し)について

〇乙案(現行の単独親権を維持)とすべきである。原則的であれ選択的であれ共同親権を導入すれば、DV(精神的DVを当然に含む)や児童虐待(面前DV、心理的虐待を当然に含む)のケースやこれらに準ずるケースへの共同親権適用を完全に排除することは困難であるし、離婚前も後も被害者に多大な負担を課すことになる。離婚前の権力関係や畏怖が合意/同意に利用される懸念も排除できない。共同親権が適用されることにより当該の被害者や子どもに深刻な影響や現実的な危害が及ぼされる恐れがある。

〇単独親権を維持する場合に、3(3)で参照される同(2)アに、そこにおいて言及される同(注2)及び同(2)イに示されるような、親権者・監護者の他方親との事前の協議又は事後の通知等を義務化又は原則化したり民法766条に例示したりすることは不要であり不適切である。他方親との協議や通知は同条の監護に関する事項として離婚に至る事情等に即して任意に取り決め得るものであり、規範性や誘導性を付与すべきではない。

〇最優先事は、関係行政機関と家裁において、DV・児童虐待の実態、そのメカニズムやパターン、被害者及び加害者の心理、特に加害者の認識・思考・言動のパターンなどについて十全な理解を定着させ、適切な判断・対応を確保することである。

〇親権の所在と面会交流や養育費の問題とは無関係であるにも関わらず、また親権の所在と親としての責任感・義務感とは無関係であるにも関わらず(法律上実親子関係も扶養義務も消滅することがないことはなぜか無視/軽視され)、善意であれ悪意であれ混同した主張や議論が目立つ。子に係る重要事項決定権あるいは「拒否権」を通じた支配・圧迫のリスクが排除できない共同親権は危険であり、適切な面会交流や養育費支払い等の確保については親権の所在とは完全に切り離して民法766条を適切に実効化する措置が講じられるべきである。その際には、家裁等において当事者間の権力関係に敏感であることが必須であり、DV・虐待の被害者及び加害者に係る適切な理解の下に対応がなされるべきである。

〇共同親権を求める当事者(別居親)や支援者らが、「実子連れ去り/誘拐」「虚偽DV」「ビジネス/利権」等と同居親たる相手方(主として母親)や支援者・弁護士などに対して根拠のない非難をし激しく攻撃をしている現状について、上述のDV等の理解に基づき深刻な危機感を持って本件の結論を出すべきである。

第3(父母の離婚後の子の監護に関する事項の定め等に関する規律の見直し)
2(父母の協議離婚の際の定め)について

〇乙案(現行の規律を維持)とすべきである。

〇養育費の取り決めを原則化することは理念的には望ましいが、DV・児童虐待等のケースにおける例外の判断基準を定め現場での適切な運用を確保することは困難であり、この原則が加害者に悪用されたり被害者への圧力となったりすることや、例外化の手続きが被害者への負担となる恐れがある。この懸念は面会交流の取り決めの原則化についても当てはまる。

〇法的な離婚を急がずとも被害者の安全と権利が確保可能な場合もあるが、一刻も早く離婚を成立させ先ず被害者を加害者から切り離し、(少なくとも一定期間は)遮断することが不可欠なケースは少なくない。日本における現状の体制において迅速な離婚を阻害する新たな規律を導入することは不適切であり危険が大きい。被害者と加害者(一方又は双方にその自覚のないケースを含む)の間の修復的な関係再構築や対等な協議が可能な状況づくりには一定の冷却期間を含む長い時間を要するし、それらが不可能な又は不適切である場合もある。加害者側の一方的な要求を受け入れて被害者側に無理を強いることがあってはならない。

〇離婚時の又は離婚後の速やかな取り決めが不可能な又は困難なケースにおいては、被害者又は劣位の立場に置かれた側の安全(心理的安全を含む)を確保することが最優先であり、加害者又は優位な立場にある者(それらの自覚のない者を含む)の要求・要請に基づいて協議や手続きが促されることのないようにすべきである。そのためには、家裁や関係行政機関においてDV・虐待(の可能性)について的確に察知しアセスメントできる能力が不可欠である。

〇面会交流の取り決めにおいては子どもと同居親の意思と事情が十分に勘案されるべきであり、過大な負担を課すものとなってはならない。別居親の要求が実質的にどのような負担を課すものであるかが冷静に評価されるべきであり、自己中心的・主観的になされる過大な又は不当な要求は否定されるべきである。まして、そのような要求に基づき同居親にペナルティが科されるような取り決めは排除されるべきである。

〇加害者プログラムへの参加を面会交流等に係る協議と取り組みの条件とすることが積極的に取り入れられるべきである。

意見全文

P.3――離婚当事者である自分の経験から
P.5――親権を巡る議論の混同を整理すべき
P.8――子どもの心理への理解
P.9――DV・虐待について
P.11――家族観・子ども観について
P.16――「連れ去り」「虚偽DV 」等の主張の問題点
P.17――母親ひとり親について
P.18――DV加害者の特徴
P.21――DV被害者についての理解
P.22――ケアの視点
P.23――別居親の子どもへの関わりの一方向性
P.25――施策の方向性について
P.27――共同親権を巡る議論の構造について
P.28――共同親権に賛成の専門家らの議論について
P.31――加害者などについての専門家の知見について

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