女性議員増加へのハードルとケア負担

政治活動・選挙運動・議会活動は男性仕様、男性標準で女性に対してはまだまだ幾許かの「配慮」止まりで、結局は女性本人の「頑張り」や「工夫」あるいは恵まれた環境(親族の支えとか資産とか)に左右される。同僚議員、政党含む関係者、支持者、有権者もまだ「男性標準」を当然視し求める。そして、それは女性へのケア負担の偏り、性別役割分業意識といった日常生活、社会生活における問題と地続きだし、だからまず市町村議員に女性がなるのも継続するのも大変で、だから都道府県議会、そして国会に女性を送り込む基盤がなかなかできない。一本釣りや風頼みではそうそう増えない。

地盤の弱い新人議員一般にも言えることであるけど、女性新人議員にとって再選のハードルは非常に高くて、惨敗したり出馬を断念したりは珍しくない。国会を見ればわかるが、世襲、組織内や資産持ち、バリキャリなど恵まれた条件・環境にある女性が再選を重ねやすい。シングルや子育て後も少なくない。

妻が多く担っている家事・育児・介護はパーツ毎に細切れにできず、一続きの流れとしてある。もちろん、マルチタスクが常態だとか自分でコントロールできないタイミングの制約の下での時間配分とかもあるし、夫には見えていない、気づいていないケアがそこかしこに入っている。

だから、「せっかく手伝ったのに怒られた」とか「外部サービスや時短家電を提案したら機嫌が悪くなった」とかは夫の方がパーツでしか見ていなくて、妻からしたら却って手数が増える、流れがぶった切られる、組み直さないとならない等々があるから。夫から見た「効率」が効率的とは限らない。あるいは、特定の家事、例えば料理や掃除について夫が不満を言う場合でも、そこにそれ以上手を掛けると全体のバランスが崩れたり、他の優先事項で致命的な問題が起こってしまったりしかねないということは少なくない。「これぐらいすぐできるでしょ」ということではない。

もちろん、ギリギリのバランスでこなしているが故に気持ちに余裕がなくなり、見直しや改善ができない悪循環にも陥り得るのだが、本当はそのずっと手前で夫との分担の見直しなどがされていなければならなかった。負担を免れているだけでなく気づかずケアもされている夫こそそこで妻を責めやすい。

政治は昼も夜もないし、会議・会合であれ、行事であれ、支持者・有権者への訪問であれ本人が顔を出す、本人と顔を合わせることが重要視され、「自由な」男性であっても時間管理・配分が難しい。例えば、世襲とかでなければ国会で熱心に仕事をしている議員ほど選挙に弱いようなこともある。その議会であっても、夜に会合や打ち合わせがあることは多いし、党を代表して出席してくれ、挨拶してくれということもある。そういう会合等に出ないと大事な話から外されたり、党の仕事をやってくれないと不満がでたりするし、もちろん人的つながりを深めたり「味方」を作れなかったりする。

そういう政治に全身でコミットできる女性は少ないし、「両立」のためには政治生活についても日常生活についても大幅な調整が必要になる。しばしば気力・体力勝負のアクロバティックなことになる。「子どもは預けられる」というようなパーツの問題ではなく、それで却って調整事項が増えたりもする。

だから、女性候補者を発掘して優遇すればいいという単純な話ではない。今の女性候補者発掘・擁立の仕方では頭打ちで、先の統一地方選の維新のように瞬間最大風速で女性議員が増えるようなことにしかならない。政治・選挙のあり方、家庭や社会のあり方の両面で変わらなければ持続的に増えることはない。

ちなみに、選挙に出るかで男性が悩むのは収入や生活の安定、キャリアの継続性といったことがよく出るが、女性の場合は「両立ができるか」、「子どもへの影響はどうか」(あるいは「妊娠・出産をどうするか」)で悩むことが多いだろう。「パートナーの理解が得られるか」も男女で意味合いが違う。

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