性的同意年齢と子どもの権利・自由

性交同意年齢や年齢差要件についてのいちゃもんで無茶苦茶なのは、中学生が先生を陥れるためにキス等したら先生が処罰されるみたいな話。そんなことは他の罪の虚偽告訴と同じ話だし、痴漢(強制わいせつ)でもよく騒いでいて同意年齢固有みたいな話ですらない。年齢差を小さくしたり要件をなくしたりしたら同級生や年の近い相手が刑務所だ少年院だの話も、それは事情次第だし、そもそもカップルで真摯な合意があるならどっちが加害者、被害者なのってところからになるよね。妊娠を言えなくなるもそもそも相手が処罰云々以前に悩む話で、固有の論点ではない。

ここは刑法改正に関わらずワンストップ支援センター等の相談支援機関の充実、それこそ若年被害女性等事業等を通じた多様な主体によるアウトリーチや相談の促進、相談先となり得る学校等の適切な対応のための研修・啓発等の充実など、相談支援体制・態勢の強化が不可欠。

大前提として、刑法改正案も修正要求も、中学生に性行為をしない義務を課すという性道徳の観点ではなく、性知識の不足や力関係などにより性的同意の条件が基本的に整わない中学生の身体的・精神的・性的健康と安全を守るという権利の観点。成人のように「愚行権」の結果を自己責任としない意味もある。

性的関係には非対称性が持ち込まれやすく、そこに乗じた性暴力が現行法では十分に裁かれないから今般改正で不同意性交等罪が導入される。ただ、成人というか16歳以上の場合は、ちゃんと同意したのであれば後悔しても「愚行権」的に引き受けなさいということになる(もちろん、福祉・保健等は別として)。16歳以上だから十分な性知識を持っているとは限らないし、むしろまともな性教育の不在と情報の偏りで誤った知識のままということの方が多い。ただ、そこは不同意性交等の要件に該当しない限りは刑法で介入するところではないという整理。だからこその性教育だし経口中絶薬等の利用しやすさもそう。

多少まともな反対・批判は、同意年齢ではなく性教育でやることと付け加えるが、2000年代のバックラッシュ、バッシングで性教育は後退させられ大きく遅れているし、そもそも中学生は性行為しない前提になっている(「歯止め規定」)。性教育が充実し中学生でも判断できる条件が整うのはいつになるのか。

なお、「家庭でちゃんと教育すればいい」という意見も見られるが、そうやって家庭教育・家庭責任に押し込めることはさらに別の問題を生じさせるもので論外だし(承知の通り「家庭教育」は統一教会含む保守派が推進の運動をしている)、それこそ保守派の性道徳、純潔教育的価値観と結びつくもの。

法務省「性犯罪の罰則に関する検討会」を起点にしても2014年から議論していて(リンクはその論点案)、今はその2ターン目。同意年齢引上げは例えば子ども買春・子どもポルノ禁止法の与党PTでも論点になったし、国連の勧告等も受けてきたし、50年前の改正刑法草案以来の課題。
https://www.moj.go.jp/content/001128042.pdf

同意年齢の問題は、何か目に付く動きがあるたびに吹き上がる。「淫行条例」問題もそうだし、90年代の「ブルセラ」「援助交際」問題もそうで「子どもの性的自己決定(権)」ということも言われた。ただ、そういう者たちが性教育やリプロで論陣を張ったり取り組んできたりしたかと言えばほとんどないだろう。論理的には以上のような話になるのだが、何かあると吹き上がる強い声には、女子中高生への性的幻想を保持しておきたい欲望、あるいは、中高生男子の性的妄想を保持しておきたい欲望が見えるような気がするんだよね。

刑法の不同意性交等罪と青少年健全育成条例を同列に扱ってる奴がいて…。立法趣旨、保護法益が違うのよね。子どもの権利、性的自由の観点からすれば、健全育成を目的とする条例で子どもとの性行為や「有害図書」を規制するのは問題が多くて、ただ、法律の不備を条例が補ってきた面があるので厄介。

子ども買春も条例で処罰はされていたが子どもの健全育成ではなく子どもの権利を目的とした法律が必要だということで立法された(もちろん出発点は国外犯の問題だったが)。子どもポルノは条例では「有害図書」として子どもに見せない、売らないということでしかなかった。27年前の子ども買春・子どもポルノ禁止法案の自社さ協議で社さは優越的地位を利用した子どもとの性行為も処罰対象とすべきと主張した。これも条例の「淫行」処罰規定の対象だったが、子どもの権利、性的自由の保護を目的とした法規定が必要との認識だった。

一方に道徳的見地から子どもの性を抑制・管理したい保守派らがいて、他方に子どもの権利・自由を隠れ蓑に子どもの性を食い物にしたい者がいる。条例は基本的に前者の目的に発しながらも後者に対する規定も設けられてきたから議論が混乱する。典型的には石原都政下の「非実在青少年」問題。

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