マガジンのカバー画像

美術・アート・文化系の記事

12
実際に訪れた美術展の感想や調べたことなどについて書いた記事をまとめました^ ^
運営しているクリエイター

記事一覧

マティスと小夜啼鳥のバレエ・リュス 国立新美術館「マティス 自由なフォルム」展後記

東京都港区の国立新美術館で2024年5月27日まで開催中の企画展「マティス 自由なフォルム」に行ってきました! この企画展は後期の切り紙絵を中心とした内容。 絵画や彫刻作品ももちろんですが、大型の壁面装飾や日本初公開の切り紙絵、マティスが実際に使用していた家具やパレット(上に残っている絵の具が色鮮やかで美しい!)、そして彼の集大成となるヴァンスのロザリオ礼拝堂の再現など見どころが多く、とても充実した展示です。 中でも私が特に感動したのは礼拝堂の司祭服でした。 マティスは礼

買って良かったモノ・本・漫画2023

この記事を書き始めたのは12月29日、夜の9時。2023年の年の瀬です。 大掃除もひとまず終わり、お正月に必要なものもあらかた用意し、新年まで少し余裕ができたので、今年最後の記事に着手しました。 「今年最後の〜」というと大仰ですが、タイトル通り2023年に買って良かったものを紹介する記事ですので、気楽に読んでいただければ幸いです。 買って良かったモノ POKETLEさんの120mlの水筒 外出中にちょっと喉が渇いたとき、いつもペットボトルを買っていたのですが、嵩張るし、お

キャロットケーキはいつからスパイス入りになったのか? ー 十字軍まで遡るお菓子とスパイスの関係 ー

近頃カフェやケーキ屋さんでよく、キャロットケーキを見かけるようになりました! 刻んだにんじんとスパイスでしっとりまとめられた大人の風味の生地と、トップに施された甘くて爽やかなクリームチーズのフロスティングが豪華さを感じさせてくれる、贅沢な味わいのケーキです。 キャロットケーキと言えばたいていこの形なのですが、なぜにんじんのケーキにスパイスが入っているのか不思議に思いまして…。 軽い気持ちで調べてみたけど中々答えが見つからない。そこでもう少し大きな括りでケーキとスパイスの歴史

ディズニーは『リトル・マーメイド』からブロードウェイの手法を取り入れた!? ② ディズニー・ルネッサンス期の映画はそれまでの作品と何が違うのか

先月観に行った、ディズニー・オン・クラシック2023。 今年はディズニー創立100周年ということで、これまでの映像や音楽を楽しみながら100年の歩みを振り返るプログラムが用意されていました。 そこで、1989年の『リトル・マーメイド』に始まるディズニー・ルネッサンス期の作品について、司会の方から「ディズニーは、長編アニメにブロードウェイの手法を取り入れた」という説明があり… 「ブロードウェイの手法」とは何のことで、『リトル・マーメイド』以降の作品はそれまでの作品と何が違うの

ディズニーは『リトル・マーメイド』からブロードウェイの手法を取り入れた!? ① 「ディズニー・オン・クラシック 〜まほうの夜の音楽会2023」で100年の歩みを振り返る

もう1ヶ月ほど前になってしまいましたが、9月中頃、ディズニー・オン・クラシック2023に行ってきました!! …と言っても元々予定していたわけではなく、その日急に行けなくなってしまった友人の代わりに飛び入りで行かせてもらったのです。 ディズニーには、テーマパークや映画を通じて親しんではきたけれど特に詳しいわけではなく…このコンサートも単に「ディズニーの音楽がオーケストラで聴ける」くらいのイメージでいました。 ところが実際に行ってみると想像とは全く違う! オーケストラ音楽に、

【読書案内】ブルームーンから連想して…絵本『つきのオペラ』とジャック・プレヴェールとイーラの猫

暦上、2023年8月31日は満月なのですが、この日の月は「スーパーブルームーン」なのだそう。 2023年8月には、2日と31日の2回満月が訪れるそうで、この2度目の満月はブルームーンと呼ばれます。 一方スーパームーンとは、月が地球に一番近づいたときに出る満月のこと。 つまり8月31日は、最も大きく明るい月が見られる日ということで…少し凌ぎやすくなった夏の終わりに、夜空を眺めるのもいいかもしれません。 太古の昔から夜空を照らしてきた月は、人間の想像力をかき立てるものでもあり

ミッフィーを生んだディック・ブルーナの魅力 ーミッフィーの誕生日を祝して

6月21日はミッフィーの誕生日。 ミッフィーは1955年、オランダの絵本『ちいさなうさこちゃん』から誕生したので2023年には68歳を迎えます。 ミッフィーファンの方はたくさんいらっしゃると思いますが、何を隠そう私もそのひとり。 というわけで、私も誕生日を祝して、ミッフィーの魅力をご紹介したいと思います…! ミッフィーの作者、ディック・ブルーナは1927年、オランダのユトレヒトに生まれました。 いくつかの出版社に勤務しグラフィック・デザイナーとして仕事をする傍ら、1953

マティスとモデルを務めた女性たち マティス展後期④ ただ「奴隷のように」ポーズに従う

妻が去ってしまってからも、画家として、ひとりの人間として、多くの女性たちに支えられていたマティス。彼女たちにとってマティスはどのような人物だったのでしょうか。 【マティスの妻アメリーについて書いた記事はこちら】 【マティスに関するほかの記事はこちら】 女性たちから見たマティス ー ジャクリーヌ・デュエムとリディア・デレクトルスカヤ 1938年、第二次世界大戦大戦の影が迫る頃、マティスはホテル=レジーナに居を移し、そこにアトリエを構えます。このときマティスは69歳。 の

マティスとモデルを務めた女性たち マティス展後期③ 妻アメリーの苦しみ

現在、上野東京都美術館で大回顧展開催中のマティス。 前回までの記事では、マティス展で印象的だった作品や、光や色、快適さをもとめ鮮やかな作品を生み出していったマティスの生涯について紹介しました。 当初はそれで終わりにしようと思っていたのですが、記事を書くためにいろいろ調べている中で、複数の女性たちがマティスの芸術家としての在り方に重要な役割を果たしていたことが見え、とても興味深くて…。 せっかくなので、助手やモデルを務めたマティスの周囲の女性たちを、2度に分けてご紹介したい

「エドワード・ゴーリーを巡る旅」 展感想 彼の愛したバレエと絵本の紹介も

先日、渋谷区立松濤美術館で行われている展覧会、「エドワード・ゴーリーを巡る旅」に行ってきました! 正直エドワード・ゴーリーについて事前知識はほとんどなく、書店で本を数冊手にとったことがある程度だったのですが…そんな私でもすごく楽しめたので絵本と合わせてご紹介したいと思います。 エドワード・ゴーリー(Edward Gorey)は1925年、アメリカのシカゴで生まれた絵本作家で、細かなタッチを幾つも重ねたモノクロームのペン画とリズムある文章、そしてナンセンスで救いようのない世

光と色をもとめたマティスの生涯 マティス展後記② 色鮮やかなアトリエとロザリオ礼拝堂

北フランスの「灰色の地」で育ち、47歳でようやく自身の桃源郷ともいえる温かく色鮮やかなニースに辿り着いたマティス。戦争にもみまわれた晩年はどのように過ごしたのでしょうか。 晩年のマティス ー 戦争から逃げそこねて もともとあまり体の丈夫でなかったマティスは、1931年から約3年かけて大型パネル作品である『ダンス』を完成させた後、疲労のためか、しばらく寡作の時期が続きます。この後、1937年に入院したマティスは、翌年からホテル=レジーナに居を移し、そこにアトリエを構えました

光と色をもとめたマティスの生涯 マティス展後記① “灰色の地“からニースへ

先日、上野の東京都美術館で開催されているマティス展に行ってきました。 「色彩の魔術師」という異名をもつマティス。 今回のマティス展は大回顧展というだけあって最初期の作品から晩年のロザリオ礼拝堂まで網羅されており、年を追うごとに作品がより大胆で鮮やかになっていく様子がうかがえました。 中でも、1905年に「野獣派」として議論を呼んだフォービスム作品が、第一次世界大戦中の苦しい探究の時代をへて、1920年代に鮮やかな室内画として開花する様が印象的です。 ところで、この華やか