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夜中のトイレの交差点

ところで。聞くのもアレは話ではありますが、
夜中のトイレは点灯しますか、暗闇でいたしますか。
カギはかけますか、心もドアも開けっぱなしでしょうか。

私はと言えば、そもそも気持ちよく眠り続けたいのに尿意で起こされ、
しぶしぶトイレに行くというのに、明るかったらたまりません。

眠りの国はスムーズに再入国ができない時もあるし、よって暗闇一択。
サッとすまして、パッと出たいからドアは半開き。
全開はどことなく気が引けるのです。

祖父母と寝ていた頃だから、小学校に上がる前。
夜中のトイレはほぼ一回。
行かずに朝を迎えた時は、偉業を成し遂げた気持ちになり、
嬉しかったのを覚えています。

震度4の地震でもいっこう起きず、母には「三年寝太郎」と言われ、
とにかく寝るのが好きだから、いかに睡眠を妨げずにトイレをすますか
を子どもなりに必死で考えていたあの頃。

部屋を出て短い廊下を突き当って左にあるトイレへの動線を頭に叩き込み、ほとんど目を開けなくても行って帰ってこられる域に達していました。

ある夜。いつものごとく半眼とすり足でトイレに行き、ドアを開け、
便座に腰を掛けると、なんとなくいつもと違う。

ヒヤッとツルっとした便器の触感じゃない。

「あっ」という声がして

寝ぼけた私がじっと座っていたら、便座がもぞり動くのです。

便座だと思っていたものは、おばあちゃんの痩せた太もも。

私も「あっ」と小さく叫び、また半眼とすり足で布団に戻りました。


祖母は「もったいない」の人で、お金はもちろん電気や水の使い方にことのほかうるさかったのです。

無灯火は当然もったいないからだとして、無施錠は、余計な動きを省くためなのか……。
ともあれ、睡眠至上主義の私と節約上等の祖母は、異なる立場ではあるけれど「無灯火・無施錠トイレ」をするなかま(?)だったのです。

その後も数度トイレで重なることがあり、あまり驚かなくなった頃、
私の太ももに祖母が座ったまま用を足せる域に達したこともお伝えしておきますね。

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