Rapidusは成功するのか?

日本の半導体復権を掲げてRapidusがスタートしました。最先端の2nmノードプロセスでファウンドリービジネスを展開するとのこと。業界の中の人としては、先行きが気になるところです。

半導体敗戦などネガティブな言論で名高いY氏など、業界のエキスパートはおおむね「うまくいくはずがない!」というご意見ですね。理由は簡単に言うと、「日本のロジックプロセスは40nmノードどまり。数え方によるが、Rapidusの狙う2nmノードは6~7世代先のもの。こんなものが一足飛びにできるわけがない」ということ。2005年頃に同じコンセプトで検討して、採算が合わないとの結論になり断念したこともありました(誰も覚えていない?)。

さすがにこの程度は中心になる皆さまは先刻ご承知のようで、IBMとIMECから技術供与を受けることになっています。どちらも先端技術の研究開発を行っており、2nmノードプロセス技術は保有している…と思います(学会に出してたはず)。

この2社から供与された技術を新ラインに移植することから始めるわけですが、

  1. 学会発表できるレベルのプロセスを構築すること

  2. そのプロセスでCPUなどを作って動作させること

  3. そのCPUを生産してビジネスとして成立させること

の間にはそれぞれ大きなギャップがあります。供与してもらえるのはおそらく1だけか、よくても2までですので、3をどうするか?が問題です。3は膨大な量のノウハウで、日本の半導体デバイスメーカーが持っている知見では全く足りません。これをどう補うのかが課題です。またいずれは補えるとしても、TSMCはじめライバル勢は年々進化し続けますので、いつになってもキャッチアップできない事態になる可能性は高いでしょう。

このあたりはいろんな方がご指摘されていて詰まらないので、ポジティブな要因をいくつか。

1990~2010年代はグローバル化が加速しましたが、ここにきて米中対立など逆流する流れが目立ってきました。先端プロセスは現在台湾TSMCの一人勝ちになりつつありますが、国内に同等の技術を保有したいと日本政府が思っているらしいこと。

日本に先端プロセスを誘致してなんか作るもんがあるのか?という問題があります。2nmノードプロセス、というのは技術的には非常に高度ですが、単なるモノの作り方でもありますので、それで何を作るの?という問いに対する答えが無ければ意味を成しません。

で、政府は何を作りたいのか、ですが…
防衛省・自衛隊:次期戦闘機の開発について (mod.go.jp)
これですかね。

たしかにこれにあるようなネットワーク戦をこなすためには高度なCPUが必須でしょう。また現在の台湾情勢を考えると、このCPUを台湾だけに依存するのはリスクが高い。国内に誘致する動機は十分ありそうです。また最前線の無人機は消耗品でバンバン落とされるような使い方になるでしょうから、ひとたびことが起これば短期間に大量に製造することが求められます。

最初は何で千歳に?と思いましたが、これを考えると台湾から遠いところに製造拠点を置く理由も納得がいきます(単に誘致合戦の結果かもしれませんが)。

潜在的な重要性を考えると失敗はできない、というより少々の批判覚悟で補助金を投入すると思われます。戦闘機の方はおおむね10年後を目途に開発するそうですので、その時期までは持つのでは?というのが私の見立てです。

というわけで、Rapidusは隠れ軍需企業としてそれなりに成功するのでは?と思っています。無意味な戦争の心配などせず、次期戦闘機用のCPUを台湾で作ってもらえる状況が続けば良いと思いますが、そうなるとRapidusの重要性は…?ちょっと複雑な心境ではあります。

これが邪推で、主に日本国内の民生需要でRapidusが大いに儲けてくださることを祈ります。

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