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スプートニクの恋人

書き留めておきたいことができたのは、この本がとてもおもしろかったから。

村上春樹の「スプートニクの恋人」

この本との出会いは、とにかくたくさん本を読んでいる知り合いの方からオススメされたことだった。村上春樹は有名だしどこかで読んでおきたいなと思いながらもこれまで手が伸びなかった作家の一人。

タイトルから内容はまったく想像できなかったけど、とりあえず読んでみることにした。

10日くらいかけて読んでしまったが、結果的に、私はこの本に登場する主に3人の人物たちがとても好きになった。みんな個性的で、それぞれ違った魅力があって。

小説家を目指す22歳の「すみれ」。
すみれがの初恋の人「ミュウ」。(またこの人が17歳年上で既婚者の女性ていう…笑)
すみれの友達であって彼女のことが好きな25歳の「ぼく」。
物語は「ぼく」の視点で進んでいく。

登場人物の魅力さることながら、一番強烈に好きになったのは村上春樹の描写や物事の表現の仕方!

すみれが「元気?」と聞いたとき、ぼくは
「元気だよ。春先のモルダウ河みたいに」
と応えた。

春先のモルダウ河 みたい??

春先のモルダウ河がどんなものか見たことがないからここは想像するしかないわけで、穏やかで豊かできらきらしているのかなぁというイメージをとりあえず添えて、はっきりとした正解のわからない後ろ髪を引かれるような気持ちのまま続きを読む。

他にも、
ー彼女(すみれ)の声はジャン・リュック・ゴダールの古い白黒映画の台詞みたいに、ぼくの意識のフレームの外から聞こえてきた。ー

とか。

「ジャン・リュック・ゴダールの古い白黒映画の台詞みたいに」と言われても、てんでわからない。調べたらその輪郭はクリアになるのだろうけど、そのたびにいちいち立ち止まって調べていたんじゃその世界からいちいち切り離されて全然物語に浸れないので、なんとなく自分の知る限りの白黒映画から連想するしかない。


思い返して文字にするとちょっと読むのが煩わしかったように見えるかもしれないけど、全然逆。この感覚が自分にとってはとても未知数で幻想的で自由で開放的で、楽しかった。

物語全体を通してずっとこの表現や描写は続くものだから、3人の人物像はおそらく見た目以上に深みをまして魅力的に見えているし、イメージの中ではこの本の中の世界がとても鮮やかな映像になって見えていた。

「ぼく」は途中から突然異国の地に赴くことになるのだけど、その旅の途中の彼の心理的描写や到着した先の国の風景、そこに息づいている人々の様子、吹いている風の匂いや湿度、空の色、海の色、海水や砂浜の感触まで、イメージさせてしまう。

その章を読んでから寝たからか、その夜は自分が弾丸海外旅行に行く夢を鮮明にみてしまうほどだった。

ここまでの表現ができるって、言葉を操れるってすごいなと心底感動した。

他にも登場人物がそれぞれ恋をする心理的描写があるのだけど、自分がしてきた(感じてきた)恋愛観とは違う恋愛観を体感できるのもすごくおもしろかった。

とりとめもない内容だけど、読み終えてから数日してもまだ興奮が冷めないくらい久しぶりに「良い本読んだなぁー(ため息)」と思えるものだったので、これは書き留めておかねばということで。。

しばらく村上春樹、ハマりそう。




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