『ネジ』の話

「日本の技術力の中心はネジだ」という人がいました。その発言をした時はジャーナリストで、今は参議院の議員をしています。

機械いじりが好きな人や、その関連の仕事をしている人なら分かると思いますが、ネジには「規格」というものがあります。日本では主に、M(メートル)ネジが使われています。ヤード・ポンド法が使われているアメリカではUNC、UNF(インチ)ネジが使われています。他にも、NPT(アメリカ管用テーパーネジ)、Rc(管用テーパーネジ)、G(管用並行ネジ)なんかも取り扱われています。ですので、海外製の工業製品を取り付けようとしたら、ネジ規格か合わなかった、なんて事もよくあるようです。

このネジというものは、それぞれの規格で長径とネジ山の間隔(ピッチ)または山の数が定められています。例えば、『M6✕1.0』という表記であれば、『長径6mmで、ネジ山の間隔が1.0mmのメートルネジ』となります。『Rc1/8』であれば『長径1/8インチで28山の管用テーパーネジ』となります。

まぁ、こんな感じで細かく定められているわけですから、製造する方は大変なわけですね。
ネジ穴の長径が0.05mm大きいだけでもガタガタになってしまいますし、ピッチが0.05mmズレればもう入らなくなります。製品の精度が出なければ、テストデータの精度も出せなくなりますから、性能のいい製品は作れなくなります。
航空機や新幹線のように、巨大かつ高い精度が求められる工業製品にも大量のネジが使われています。仮にその一つでも不良品であれば、予期せぬトラブルを招きかねず、その蓄積が重大な事故に繋がる可能性もあります。
あの小さなネジの中には、実は、極めて高度な技術と膨大なノウハウ、そしてそれらを厳格に守り実行し続けた絶え間ぬ企業努力が詰まっているのです。

高精度の寸分違わないネジを量産出来る。この、一見当たり前のような加工ができる国は、意外と少ないのです。

近年、中国が日本を飛び越えて世界的な工業大国として名を馳せていますが、その中国の工業製品にも、日本製の高精度なネジが使われています。特に、高速鉄道のような、常に細かい振動にさらされる分野では、日本のネジとボルト無しには成立しない程とも言われています。

「神は細部に宿る」と言う格言は、フランスの作家ギュスターヴ・フローベルの言葉と言われていますが、この格言には「神の所業は目に見えない所にまで及んでいる」との捉え方と同時に「いかに些細な手抜きや綻びであっても、その物は完璧ではなくなる」という警告に近いニュアンスも含まれています。例えるなら、どんなにオシャレで顔とスタイルが良くても、靴がボロボロなだけで台無し、みたいな感じでしょうか。
翻せばその格言は、日本の技術立国としての躍進の原点といえます。精度の高いネジを作り続けた結果、日本は世界トップレベルに性能の良い製品が作れるまでに成長を遂げました。手を抜かず細部に神を宿し続ければ、その先の成功は必然、という事ですね。

以上が、冒頭で触れた「日本の技術力の中心はネジだ」と言われる所以であります。


ネジに限らず、一見当たり前だと思っていた事が、実はとても重要で、かつ高度な技術力と努力の結晶である、といった例は多くありますね。

例えばスポーツ選手。華やかなプレーの影には常人には及びもつかない過酷な練習の積み重ねがあるものです。
例えばモデル。誰もが憧れるスタイルは、一朝一夕のものでは無く、普段からのストイックな生活とトレーニングの先にあります。

『日本のネジ』とかけまして
『人気youtuber』と解きます。

その心は

『どちらもキカク(規格、企画)を外しません』

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