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STEAL LIKE AN ARTIST

STEAL LIKE AN ARTISTという本がある。邦訳もある(ただし電子版は英語版しかない)。

著者のオースティン・クレオンは、「Newspaper Blackout」という、新聞を黒塗りして残った文字で文章を紡ぐというアートで一時話題になった人物(らしい)。面白い試みだと思う。

https://newspaperblackout.comより

この本の主題は、タイトルの通り「STEAL LIKE AN ARTIST」。
つまり「アーティスト達のように盗め(アートとは盗むことである)」と論じられている。

現在は画像生成AI絡みで「人の作品を盗むな」という怒りが巻き起こっている真っ最中なので、「盗む」というのは、今となってはちょっと不穏当なワードかもしれない(原著は2012年刊行)。

ただ、内容としては良い本だった。重要なのは「アーティストのように」という部分だ。アーティストはどのように「盗んで」いるのだろう? それはなぜただの剽窃にならず、独創的な、時には魔術的な魅力を持つ作品に昇華されるのだろう? そこにはどんな技術があるのだろうか。そういうことが書かれている。

自分の創作、自分のセンス、自分の中から生まれるアイデア……。自分自分自分、とオリジナリティにこだわって行き詰まっている人には、本書が良い処方箋になると思う。

また、「人の作品を見て吸収しようとしてはいるけど、表層的な真似しか出来ず困っている」という人にとっても参考になるはず。ちなみに、オースティン・クレオンはアナログ作業をおすすめしている。デジタルガジェットを一つも置かない作業台を作り、そこで創造せよ、と。ここが、単なる剽窃とクリエイティブな模倣を分ける鍵かも。

裏表紙の目次。

関連して、昔小耳に挟んだ話。

ある著名なイラストレーターがライブドローイングをする企画があって、それに知人が招待された時のこと。そのイラストレーターは、その場で美しい女性のフルカラーイラストを描きあげた。何も見ずに? いや、そうではなかった。

そのイラストレーターは、スマホのカメラロールに大量の資料写真を入れていた。そのカメラロールをみて、ポーズや構図、ファッション、色合いや陰影についてのインスピレーションを得ながら、スピーディーに絵を描き上げていたのだった。

STEAL LIKE AN ARTISTの中では、こういう資料のことを「swipe file」と呼んでいた。スクラップ・ブックみたいなもので、自分のインスピレーションのために意識的に作り上げたファイルだ。

他にも色々示唆的なことが書いてある。平易な文章なので英語版で買ってもいいかも。オススメです。


kindleにて、創作についての思考をまとめた個人出版本を出しています。kindle unlimitedに入っていればどれも無料で読むことができますので、気になった方はぜひ読んでいただければ幸いです。


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