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第15話 お母さんと一緒♡

ローカルテレビCM。


「この街の美味しいものはビッグビッグビッグビッグオーシャン」

ローカル放送で流れるビッグオーシャンのCMは良く出来ていて耳に残る。

当たりの広告代理店だったんだな、ビッグオーシャンは。

ビッグシップが中央フードガーデンの審査に合格出来たのは、ビッグオーシャングループに入っているからだ。

ローカル飲食チェーンであるビッグオーシャングループは、レストランや居酒屋、フレンチレストラン、イタリアンレストラン、ラーメン店、焼肉店など実に幅広く展開している。

ビッグオーシャングループからビッグシップにはシェフが配属され、そのすべてを取り仕切っていた。

私自身、そのシェフと実際に会って話したこともあるがデザートまで手掛けることの出来る腕の良いシェフであったし、サービス心も素晴らしい人間性だった。

そのシェフがビッグシップのお惣菜なんかを手掛けるわけだから、中央フードガーデンの審査にあっさり合格するわけだ。

ここまで聞けば、A型就労支援施設であるビッグシップの工賃はさぞ高いのだろうと思われそうだが、ここに工賃の世界の闇があった。

きちんと調べたわけではないが、ビッグシップの工賃は高くないと聞いていた。

田舎猿の直属の部下の妻はビッグシップで調理師として勤務していた。

直属の部下はいつかこう言っていた。

「双子園もビッグシップもやっていることはめちゃくちゃですよ」

双子園に務める自身、そして、ビッグシップに務めるその妻。確かに内情は良く知っているだろう。

しかし、お前はどうなんだ?夫婦で勤務先に感謝がないわけだし、そもそもお前もダメだから私はお前が勤務するB型就労支援施設のサポート依頼にお前の直属の上司である田舎猿に呼ばれているんだ。

就労支援施設の職員と関わると本当にイラつくことが多かったが、近年はそれにも慣れた。理解も出来る。

しかし、私が理解するのと職員がイラつくことをすることは完全に別問題だ。

たぶん、所作や動作が健常者より劣る障がい者の方々といっしょにいると、自分が偉いと勘違いしてくるのだろう。

そして、社会貢献業にいるというポジションが感謝を欠落させ、勘違いを産むのだろう。

一般社会で「感謝」「御礼」が必須な場面があり、それを欠くと非常識だと判断されマイナスを招くことがあるが、私が知る就労支援施設ではそれが王道になってしまっていた。

ウサギも全く同じだ。

実際、私自身も多くの就労支援施設に品物などを贈ったことがあるが「ありがとうございました」という連絡が来たことは1度しかなかった。

たった1度の連絡は双子園の理事長からだった。連絡は直々に来たので驚いたことを思い出した。

就労支援施設の多くは物をもらって当たり前、やってもらって当たり前。これを心得ていないと工賃向上の仕事は進まない。

誰よりも自分が偉いと思っていた田舎猿がいつか社会に向かって吐き捨てるように言っていたのを思い出した。

「どんなにたいへんか、やってみろ!ってーの」

トップの田舎猿がそんなんだから、部下はもっと不平不満を吐き捨てる。やがて部下は田舎猿のことも「出来もしねぇのに口ばかりで!」とやる。

いいねぇ、固定給をもらえる無能な働き者達は。

工賃の流れには闇があるビッグシップではあったが、確実に売上実績は出していたし、双子園も長きに渡り健全な運営を継続している。

しかし、無能な働き者達にはそれが見えない。

彼もそうだったのだろうか?

ビッグオーシャングループにはあるキーマンが存在していた。

どの組織でも色々ある。

その色々を私は田舎猿から聞いていたが詳細は忘れた。いや、人生のいつからかそういうことを事細かに記憶しない機能が備わっていた。

だからいつも「色々あった」という言葉だけでまとめていた。

キーマンは田舎猿の元上司だった。

色々あって元上司は双子園からビッグシップに移ったということだった。

つまり、ビッグシップには田舎猿の元上司と現在の部下の妻が勤務していることになる。

双子園の理事長も含め、それぞれがそれぞれに不平不満を持つ。それを因縁と言っても良い筈だ。

実は陽陽の店のお惣菜やお弁当の納品を検討した時、私の頭の中にはビッグシップも浮かんではいたが、双子園の理事長と敵対に近い関係であったことを知っていた為、あえて候補から外していた。ウサギにもその旨を伝えていた。

「ウチは双子園さんと連携している関係で、ビッグシップさんに頼むのは筋が違うと思ってポパイ園さんにお願いした次第です」

「まあ、そうですよね。私も先生との関係から色々聞いていますのでカメさんの判断は理解出来ます」

ウサギよ、本当に聞いていただけだったんだな。

中央フードガーデンでのもう一つの異様。

ビッグシップでのお金の遣い方でウサギに違和感を感じたことは紛れもない事実だ。

しかし、それを越えるウサギの異様を私は目の当たりにしていた。その時はあまり何も感じなかったが、後にこう思った。

「ウサギというあの女、クソだ」

嫌いという稚拙ではない。それは遅ればせの悪魔認定だ。ビジネスジャッジという言い方をしても良いかもしれない。

「ウサギさんは行かれたことあります?ビッグシップ?」

「はいはいはいはい。知ってます!」

ビッグシップに到着したウサギははっきりとこう言った。

「あー、モリさ~ん」

それはモリさんという人間に向けられた言葉ではなく、完全なるウサギのマウンティングだった。

言い換えれば「私、モリさんの件とモリさんの事、知ってま~す」だ。

それをビッグシップの店内でアピールする必要があるだろうか?

モリさんという名前は双子園の理事長が二度と見聞きしたくないと思しき実名だ。

ビッグシップで商品を買い込んだウサギは「この人モリさんであることを私、知っています」とアピールしているのに、そのモリさんにレジを打ってもらっている。

つまり、ウサギとモリさんに面識はない。

だとしたら、何故ウサギはモリさんの顔がわかるのだろう。

おそらく、ウサギの旦那がモリさんの写真を見せながら双子園とビッグシップの因縁の話をしたからだろう。

ポパイ園の現理事長、それこそがウサギの旦那だった。

夫婦そろって下品だ。

「これがモリさんで、理事長とこういうことがあってさあ」とやっていたウサギ夫婦がトップを務めるポパイ園のホームページにリンクされたSNSには理事長がポパイ園の創設者である母親といっしょに登場していた。

私はその画像を見て笑っていた。

「お母さんといっしょ、ですか」と。





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