大滝詠一「君は天然色」

この曲を聴くと、幼い頃後部座席から見た父の運転する後ろ姿を思い出す。

父は運転中、井上陽水の「リバーサイドホテル」と大滝詠一の「君は天然色」をよくかけていた。

幼い頃の認識↓
井上陽水:悲しい方
大滝詠一:楽しい方

井上陽水さんには本当に申し訳ないのだけど、小さな頃はまだ良さがわかっていなくて、「君は天然色」がかかると「楽しいほうだ」と心の中で喜んでいた。

「誰が歌っているんだろう?」
なんだか気の抜けた感じで
でも優しくて好きだなあ。

幼心にそんなことを思っていた。

父は音楽にあまり詳しくはないのだけど、車でかける音楽が良い。

私が知っているレパートリーは以下。

スピッツ
井上陽水
大滝詠一

あとは明るめのクラシック。
(モーツァルトなど)

以上。

20年近くこれらをローテーションし続けている。

「君は天然色」の前奏が大好き。

曲が始まると一気に
頭の中に海が広がる。

何かがはじまりそうな
楽しい予感
わくわくする
期待
ときめき
みずみずしさ
一瞬のかがやき

そんなものを
ふんだんに感じるんだけど
歌が始まると切ない。

歌詞が切ない。
声が切ない。

「君は天然色」

作詞 松本隆
作曲 大滝詠一

くちびるつんと尖らせて
何かたくらむ表情は
別れの気配をポケットに匿していたから
机の端のポラロイド
写真に話しかけてたら
過ぎ去った過去 しゃくだけど今より眩しい

想い出はモノクローム 色を点けてくれ
もう一度そばに来て はなやいで
美しの Color Girl

夜明けまで長電話して
受話器持つ手がしびれたね
耳もとに触れたささやきは今も忘れない

開いた雑誌を顔に乗せ
一人うとうと眠るのさ
今夢まくらに 君と会うトキメキを願う
渚を滑るディンギーで
手を振る君の小指から
流れ出す虹の幻で 空を染めてくれ


ディンギーは風で走るヨットらしい。
歌って言葉の勉強になるよね。

似てる言葉。
「ディンキー」は小さなボディのストラトギターらしい。補足。

2年ほど前だったと思う。

私は親知らずの抜歯で5日程入院していた。

その入院中
夜、何気なく見ていたテレビに「君は天然色」の作詞者 松本隆さんが出演されていた。

たしか大瀧詠一さんの特番。

不思議な感覚だった。
初めて見るのに、懐かしいような。

こちらはずっと前から一方的にあなたの言葉を知っていて、私にとって「父と言えば」の音楽で細胞に染みついている。

だけど、作者の姿は初めて拝見する。

だけど、あなたのかいた詞は心の奥深くまで浸透している。
生涯忘れないであろう旋律や歌声とともに胸に張りついて離れそうにない。

幼い頃から良く知っている。

初めましてなのに
初めましてじゃない。

夜中の病室のベッド
抜歯で腫れた頬でひとりで感慨に浸っていたことを思い出す。

記憶が定かであれば
番組の最後にピアノに置いていた楽譜が落ちて、「大滝さんだ」と出演者が微笑んだ。

私も「大滝さんだ。」と思った。

大滝さんは私を少しも知らないけど、
私はずっとその声を知っていた。

2013年にお亡くなりになったそうで
私が高校生の頃ご存命だったんだと最近知った。

私は大滝さんにとってただの1リスナーにすぎないけど、「こんなに素敵な音楽を作ってくれてありがとうございます。」と一言伝えておきたかった。

私の中で「君は天然色」は父のテーマソングとしてインプットされている。

父は歌は下手だけど、音を外しながらでも、運転中に口ずさみたかったようだ。

これからもずっと「君は天然色」を聴くたびに、父の背中と外れた歌声を思い出すのだと思う。

( 父、ぴんぴん生きてます 笑 )

あなたにも「この曲を聴くと誰を思い出す」とか「お父さんといえばこの曲!」とか、そんな大切な一曲はありますか?

思い出の一曲トーク
してみたいなあ。





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