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2022年おすすめ展覧会(メトロポリタン/コレクター福富太郎)ーArtとTalk⑫ー

新年あけましておめでとうございます。宇佐江です。

本年も美術のお話や、猫、旅、その他興味の向くものを書いたり描いたりして毎週月曜皆様にお届けできたらと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

さて、新春初投稿は今年おすすめの展覧会!
昨年末に大阪で観て感動した展示を、大阪の会期は残り僅かなのですがその後、他県への巡回がまだあるようなのでぜひ皆様にもご紹介したいと思います!!

①『メトロポリタン美術館展ー西洋絵画の500年ー』(1/16まで大阪市立美術館)※その後東京に巡回予定

②『コレクター福富太郎の眼』(1/16あべのハルカス美術館)※その後高知、富山、岩手に巡回予定

2本とも熱い展示でした。
それでは参りましょう~。


メトロポリタン美術館展

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大阪市立美術館
天王寺駅から徒歩3分と見込んですぐに辿り着けるだろうと思いましたが、ちょっと迷子になりました。地下鉄の出口から地上に出た途端地図を見ても全く方向が分からず…。(逆方向に戻る感じで遊歩道を歩くと着きました。)土地勘のない方はご注意ください。

大阪市立美術館は、学生の頃の研修で来たかもしれないけれど記憶になく、体感としては初来館。とても立派で重厚感のある、今回の豪華な展示にすごくマッチしているな~と観覧中何度も会場を見上げてしまうような建物でした。


圧巻のメトロポリタン・コレクション
展示の内容は、ニューヨークにあるメトロポリタン美術館のコレクションを紹介したもの。映画『オーシャンズ8』で美しき女強盗たちが活躍した“メットガラ”の舞台となった、あの美術館です。(ケイト・ブランシェットが痺れるほどカッコよかったですね……余談)

もとのコレクションが素晴らしくても、企画展として来日したときの満足度には結構波があるものですが(有名な作品は中々借用が難しいですしね…)今回はそんな心配は無用です。
圧巻。
序盤から終盤まで、中だるみせず駆け抜けるような充足感がありました。ラ・トゥールの《女占い師》が出口付近にまさかあるとは思いませんでしたし…。公式HPによると出品点数は65点とのことで、「あれ、そんなに少なかったんだ!」と今知って驚きましたが、それだけ大作が多かったのと、やはり内容がかなり濃かったのだと思います。


個人的にいいな~と思ったポイント
私は古典絵画が好きなので、ルネサンス期をじっくりと魅せてくれた序盤はとくに楽しめました。フラ・アンジェリコとフィリッポ・リッピが同時に見られるだけでわくわく…していたら、ティツィアーノ!おおなんて美しい肌……!!と大興奮。
私はひとりで観ていたので勿論これらは全部心の声ですが、同じスピードで観ていた(奥様とご一緒の)おじさまが、次の作品に移るたびキャプションを確かめて「フェルメール、うん」「ルーベンス、うんうん」みたいに、画家の名を毎回呟いてから鑑賞されているのがなんだか面白く、(知っている作家って、嬉しいもんなあ)とこっそり納得したりしました。

今展では作品解説が非常に丁寧に添えられていて、鑑賞者も皆熱心に熟読されている様子が印象的でした。昔の西洋画は主に宗教や寓意(直接的でなく、描かれたモチーフなどに他の意味や教訓が込められている)を題材にしたものが多いので、説明を読むとより充実した鑑賞になると思います。



少し変わった楽しみ方として、このように時代を追う展示構成の時に注目してみていただきたいのが絵の「硬さ」

ルネサンスの頃って、めちゃくちゃ表現が硬いんです。
「硬いってどういうこと?」
と思われるかもしれませんが、そのものずばり、カタイのです。特に私が好きなのが神殿とか「建物」のカチッとした描写。触るとひんやり冷たいだろうな、ということまで伝わる頑丈な硬質さが、観ていて何故か安心するんです。
写真がなかった時代に、まるで絵の世界が現実であるかのように見せる必要があった「説得力」がその硬さに繋がっているのでしょうか。その感覚は、現代ではかなり失われてしまった「嘘もののリアル」というか……。宇佐江はそういうのがたまりません。

順路を進むうちにその「硬さ」が時代によってほどけたり、柔らかくなったと思ったらまた緊張感に溢れる硬質さが流行ったり(でもそれはルネサンスの頃とはまた違った「硬さ」です)というのも面白い!

画集では似た雰囲気に見えて、実物は全くタッチが異なるカラヴァッジョとラ・トゥールの見比べも今展では楽しめます。肉眼で観るカラヴァッジョは狂気の沙汰と思えるほど壮絶です。
語り出したら本当にきりなく続いてしまいますが、西洋美術の主軸を余すことなく網羅した素晴らしい展示でした。まさに教科書に出てくるような画家のオンパレードなので、初めての美術館という方にもおすすめです。


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(休憩)


コレクター福富太郎の眼


あべのハルカス美術館
大阪市立美術館から歩いて行ける、あべのハルカス。こちらも初めて訪れますが、先ほどと違って超高層ビルが非常に目立つので、道がわからずとも辿り着けました。
美術館にはシャトルエレベーターで16階まで上がります。


コレクター福富太郎とは
昭和時代、全国に44店舗ものキャバレーを展開し「キャバレー王」の異名をとった実業家。鏑木清方を手はじめに美術コレクターとしても名を馳せたほか、執筆活動などにより幅広い世代へ美術作品の魅力や愉しみ方を紹介する活動にも大きな力を注いだ。(展覧会チラシより一部抜粋)


情感。言語不要の美の魅力
この展示、観たい。

私がそう思ったのは、勤め先の岐阜県美術館の女子更衣室にて、同僚のロッカーに貼られていた企画展のチラシを目にした時でした。(※私たちには、自分が興味ある展示のチラシを取っておいてロッカーに貼るという習性があります。)
メインビジュアルになっていた北野恒富の《道行》という、なんとも怪しい魅力が紙から滲み出るような作品にすっかり心を奪われてしまったのです。

都会的でスマートな会場入り口を抜けると、濃厚な昭和の色気漂う作品たちに出迎えられて、超高層の建物にいることを忘れてすうっとその雰囲気に入ってゆけます。

ジャンルでいうといわゆる「美人画」が多いですが、楚々としたイメージに留まらない妖艶さを醸し出す女性たちが、お軸の中から微笑みかけます。淡い色彩の中でそこだけくっきり鮮やかな、着物の赤や藍の色にさえ艶を感じてどぎまぎしてしまうほど。
さすがはキャバレー王の審美眼に選ばれた女性たちです。

観たかった《道行》の前では、しばらくうろうろしてしまい、絵から離れられませんでした。

メトロポリタン美術館展のあとに、ここに来たというのが私にとってまた対極の鑑賞体験を味わえました。
キャプションでの説明など、ある程度は知識を持って観た方がより作品を楽しめた前者に対して、福富太郎さんのコレクションの作品は、どれも言葉の説明はひとつも要らないほどに絵、そのものが強烈な「情感」を放っていました。
《道行》は男女の心中がテーマの作品ですが、絶望を宿した女性の瞳と乾いた男性の瞳を見ただけで、手を絡め合うふたりの悲壮がこちらにまで響いてくるようでした。

言葉は不要と思うくらいなので長く語るのは野暮、と私も長い説明は控えますが、あべのハルカス美術館さんの構成はとても見やすくてわかりやすかったです。
また、キャプションの内容も絵自体の解説より、福富太郎さんとその作品の出会いや秘話など、展覧会のコンセプトに沿った内容になっているのもとても楽しめました。

この展示は、私以外の岐阜県美の監視員や学芸員さんも絶賛されていた展示なので、どこかの巡回でもし機会があればぜひともおすすめします!!

展覧会のあと、興奮冷めやらぬまま私は岐阜でお世話になったある学芸員さんにメールを打ちました。

今回の《福富太郎の眼》をこれだけ深く楽しめたのは、その学芸員さんが数年前企画された美人画の展示を観ていたお陰で、当時の画家の名をある程度知って観ることができたこと。その時の絵と今回の絵のギャップ(福富さんのコレクションは画家の知らなかった一面を知るような逸品が多かったです)を楽しめて、個人的に二重に感動したという感謝をどうしても伝えたい!と思い御礼を送ったのですが、
そのお返事で、

「美人画は個人蔵のものも多いので、コレクターのことも好きになってもらえると嬉しいです。コレクターの皆さんのおかげで我々も展示して、みなさんにご紹介できるので」

と…。

これほど「コレクターの眼」を感じた展示を私は初めて体験しましたが、「これからは誰のコレクションかを意識して展覧会に出かけるのも楽しいかも~!!」と、またひとつ新たな美術館の魅力に開眼したのでした。





今回ご紹介した展覧会について、詳しくはこちらをご参考にどうぞ


※休憩の写真は国立国際美術館のレストランにて。






今週もお読みいただきありがとうございました。早く夜型をもとに戻さねば……。



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今年も素敵な美術・博物館、展覧会との出会いが皆様にありますように。



◆次回予告◆
8年前に読んだきり、読む気になれなかった本を久しぶりに開いた。読書歴約20年。思いもよらない初体験をする。

それではまた、次の月曜に。
(…の前に、たぶん梅田ラテラルのれぽを出します~)













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