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川の字で眠る幸せー今日も私服がネコの毛まみれ②ー

私は2匹の猫と暮らしている。白地に黒柄がトム、茶柄がジェリー。
似たような柄の色違いもそのはず、ふたりは兄弟猫である。

転職を機に実家を出たあと、縁あって彼ら2匹と出会うこととなった。はじめは1匹のつもりで、たまたま目にとまったトムの写真に一目惚れをし、里親さんに連絡をとると、

「実はこの子、すごく仲のいい兄弟がいて、…できれば離さないであげたいので、よければ一緒に引き取ってもらえませんか?」

という話になり、
(うーん、2匹も世話できるかなあ…。まだ実家でニボシ(前回参照)を1年世話したくらいの猫経験値しかないのに…)
と思ったけれど、実際に2匹と会うと本当に仲が良くぴったりくっついて、もうどうしようという程かわいい。

なんとかなる。ふたりを大事に育てていこうと決意した瞬間だった。

さて、実際2匹というのは大変だろうか?
まわりにも猫と暮らしている知人は沢山いるが、家族でというのではなく、一人暮らしで複数猫がいるのは私だけなので、たまに聞かれることがある。
「思ったほど大変じゃなかった。」と、私はたいてい答える。

確かにお金は2倍かかる。ご飯やトイレ用品、年に1回打っているワクチン。けれど他は特にない。むしろ、2匹で良かったなあと思う瞬間の方が日々のなかで圧倒的に多い。

最大の利点は、2匹いるが故に私との距離感がちょうどいいバランスになったことじゃないかと思う。実家でのニボシの様子を聞いていると、猫は、環境や個性にも左右されるだろうが、想像以上に淋しがり屋だ。一緒に暮らしていると猫とよく目が合うが、それはこちらも猫をしょっちゅう見ていると同時に、彼らもニンゲンの存在を常に意識して過ごしている証拠ではないかと思う。
時々、依存症になってしまうほど一緒に暮らす人にべったりになってしまう猫もいると聞くが、その点うちの場合は、トムもジェリーも私よりよっぽど強固な絆で結ばれたお互いの存在があるから、私にも甘えはするが、過剰にはならない。また、私も仕事などで日中どうしても不在時間が多いけれど、留守番もふたりなら淋しくないので安心だ。

淋しさの逆パターンもある。
私は仔猫の頃からついつい彼らを触りたくてスキンシップがうざいと思われていないか心配だが、2匹いると、触られたくないほうは私から離れた場所にふっと行くし、甘えたい気分のほうは私がご飯をたべていようが新聞を読んでいようが構わず膝にぴょーんと乗っかってくるので、私自身も淋しくならずに済んでいる。

とはいえ、困ったことが全くないわけではない。体調が悪いなど、「ふだんと違うとき」は2匹だと、大変だ。

たとえば家に帰宅して、毛玉とは違うものを吐いた跡があったとする。しかし、猫は基本的に自分の体調不良を隠すので、
「どっちが吐いたの?」
と尋ねても、もちろん答えるわけもなくきょとん。食欲がないなど、あきらかな変化を見せるまで体調不良を見つけられない場合がある。

こんなこともあった。
以前、ジェリーの脇腹に脂肪腫というしこりができて病院で手術をしてもらった時のことだが、エリザベスカラーをつけられた姿でジェリーが帰宅すると、トムが異様な興奮状態に陥りジェリーをやたら追いかけまわした。
たぶん病院や薬の匂いなどに反応してしまったのだと思うが、カラーのせいで思い通りに逃げられないうえに、手術の縫合跡も生々しい状態だったジェリーに噛みつこうとするトムを必死で引き離し、なだめた。

本当なら大変な経験をしたジェリーを労ってやりたいところだけれど、2匹いると本人だけをケアするわけにいかないのが辛いところである。

ふたりももう8歳。人間に換算すると48歳だそうで、私の年齢をすでに超えている。今のところ毎日元気に暮らしており、これといった不調もないように見えるが、それももちろん永遠ではない。

夜、私が布団に入ると、どこからともなくぴょんと飛び乗り、枕元にジェリーが丸くなる。「トム」と呼んで布団をぽん、と軽くたたくと、トトトッと小さな足音を立てて暗闇にシルエットが動き、ボテッ!と無防備なみぞおちの上に、トムの巨漢がダイブ。ゴロゴロと喉を大きく鳴らして私とジェリーの間に割り込む。

真上から見たらちょうど川の字。

すうすうと寝息をたてるトムとジェリーの体温をたしかめたくて、時々、やわらかな腹の下に手をさしこむ。そうされてもぜんぜん構わず、ふたりはポカポカとした体で眠り続ける。

この部屋は居心地がいいけれど、トムとジェリーがこれからも長生きしてくれるように、もう少し運動できる広さの部屋にいつか頑張って引っ越そう。

それが私の仕事に対するモチベーションのひとつになっている。



今週もお読みいただきありがとうございました。全然猫とは関係ない話ですが、前回、美大受験の話に登場した愛知県芸の1次試験の話を、先日、私が勤めている美術館の学芸部職員としました。同年代だったので、そういえば…と思いきいてみると、あの難問「手と水」を突破して、彼女は愛知に合格していたのです!!すごい…!!!
実はこの春、別の美術館へ転職されてしまうため、そうした懐かしい話もできなくなってしまうなあと残念ですが、新天地でもきっとご活躍されることと思います。私は来年度も引き続き岐阜県美でお世話になりますが、新しい目標を定めて、たゆまず、濁らずに進んでいきたいと思います。

ああ、散る前に桜をもういちどゆっくり見たいなあ…。
来週は三重の日帰り旅レポートです。

それではまた、次の月曜に。


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