ヘルドッグスを観てきた


松岡茉優に「ヤバいよ」って言いたい人生でした。

最近観た中で一番面白かったというか、好きだったかも。

良かったとこと気になったことをいつも通りネタバレありで書いていきます。









ヤクザ映画に多いかなと思うんだけど、人が多すぎるのよ。誰が誰だかわかんなくなったり、どことどこが仲間で敵かわからなくなる。だけど、人間関係のごたごたを、この映画では全部セリフで伝えてくる。そのせいで、聴覚と言語野が発達した人間しか、相関図の全体を掴めない。(僕はたぶん7割強くらい。)

しかも、主役の岡田君はぼそぼそとしかしゃべらないし、坂口君は活舌悪いから、マジで何言ってるかわからんシーンが多かった。

けどそれでもおもろかった。

3分に一回ずつくらいのペースで何らかの展開が生じるか、画面のどこかに本筋とはズレた何か気になる存在(配信者おじさんとか)が置かれていて、しかも不快だったり感情が揺り動かされるようなシーンを長々とやらないので、共感疲れしないのが良かった。137分もあるようには少なくとも感じなかった。TikTok的。

共感させなさみたいなものを一番を感じたのはクマさんが死ぬとこ。「カシラぁー!生きてるかー!」って血まみれで這いずりながら叫んだ次のカットでもう椅子で死んでる。ほんとなら「くまさん!死ぬな!」とかやって感動するシーンとか来そうなのに、そういう共感とか感動のためのシーンをダラダラやらない。それどころか数分後に葬式のシーンが始まって事務用ロッカーからお坊さんが飛び出してきて、謝る奥さんに「俺も昔は極道だったから」ってお前。笑ってマスクの下で鼻出たわ。くまさんあんなにいい人だったのに。歌めっちゃうまいのに。泣かせろよ笑わせんなよってなる。でも、そのくらいのテンポの良さが良かった。大竹しのぶが8年越しのかたき討ちを果たすとこもそう。あっさりなのよね。感動したい人(俺とか)は勝手に想像して感動するからね。

ここから、くまさん以外の心に残ったキャラクターたちの良いところダラダラ書きます。

まず兼高さん。JKとデートの約束ってお前。ちょっと引く。あと、殺した数を自分で自分の腕に掘るってお前。「K」って「KILL」のK? だいぶ引く。でもいいの、アクションかっこよすぎるから。銃向けられてもぶちのめして黙らすくらい強いのめっちゃ良い。ああこの人は死なねえんだなっていう安心感。ニッポンのジョン・ウィック。途中で出てくるヒットマン姉さんの女優さんのアクション指導も岡田君がやったとか、師範さすがすぎるよね。

つぎ、はんにゃの金田さん。めっちゃ良かった。舐められる先輩という得意技を適度に醸しつつ、腕っぷしじゃない仕事で成り上がったインテリヤクザ感が、視線や身のこなしから出ていたのがすごくよかった。転ばされて立ち上がる時とか、普通「や、やんのかこらあ」的なダサさ出るはずなんだけど、そこをうまく封印してちょいダサくらいの立ち方になってたり。「切れ者だけど小物」って役、かなりバランスが難しいはずなのに、それができていた。誰でもできることではないと思う。すごくよかった。

松岡茉優さん。象が好きなエッチなお姉さん。男の夢。根が童貞なので胸の谷間に目を奪われて飛びつきそうになるが、実は一番イイところはラストシーンで銃口を抑え込むように頭を撫でる手。あの手こそすべての男が一番求める手だと思う。「いいんだよ、甘えちゃいなよ」っていうささやきを込めた手。撫でられたいわけ。最高だった。バカ女のショボいセリフをめちゃくちゃいい女に言わすと、狂った夢が出来上がるんだな。

MIYAVIさん。ぽそぽそしゃべるんじゃねえよって笑ってしまうセリフ回しだったはずなのに、最後好きになってる。クセになるぽそぽそ。造形の美しさですべてを圧倒してた。何なら、本物のカリスマってこういう、迫力無いのが逆に迫力みたいなタイプなんじゃね?って肩を持ちたくなってくる。進撃の巨人の序盤、絵が下手なのが逆に迫力になってる、みたいなあの種類の迫力。睨む怖さよりも笑う怖さを出した方が迫力は出たのかもとか思ったけど、かっこいいから別に正解になっちゃってた。

野花ちゃん?の人。個人的に一番気になったのに調べても名前が出てこなくてもやもやする人。親殺された人の演技うますぎた。笑ってんだけど目が笑ってない感じ。美人なのに付き合ったらヤバそうな雰囲気の。すごいよね。この女の人だけでなく、あのサークルのメンバーだけセリフ回しとか間の取り方が学生演劇みたいなのも良かった。わざとらしくて。わざとらしくしか生きられない人たちという感じが逆に出ていて。

坂口くんは、CMやら本編やらでサイコボーイって言うほどなんですよ。少なくともこのメンツの中だとサイコさでは埋もれてしまっていた。でも、すごくかわいかった。かわいい狂気って、出そうとするとうすら寒い感じになるんだけど、それがなんかちゃんと出ていて、本当にかわいい。だから、雨のシーンで二人とも何言ってるか全然聞き取れないんだけど、坂口君が泣いてて、その坂口君を岡田君がまっすぐ見て撫でてやってるってだけで泣ける映画になってた。ラストの一言の時もね、最後まで武器を岡田君に向けないのが泣けちゃうのよ。かわいい。



というあたりですかね。なんでしょうねこの部活引退するときのブログみたいな文章は。みんな今までありがとう大好きだったよ的な。でも今回はマジでみんな大好きだったよ。もっかい映画館まで会いに来るね。

個人的に、最後の回想の使い方もすごくうまかった。観ている人たちをあの瞬間という永遠の中に閉じ込める回想。この映画にはまる人が出るとしたら、あの回想に閉じ込められたからだと思う。俺たちオタクはそういう、いずれ失われるとしても確かにその瞬間に存在した尊さや永遠を愛しているからな。監督にやられた。

続編作られるのかな。原作もあるらしいな。でも、どちらも観るのが怖いな、って思うくらい、この映画が好きになった。


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