劇場版ツルネーはじまりの一射ー を観てきた

ハイローの感想をためてたせいで連投になってしまう。

なんでそんな頻度で映画を見てるのか、聞かれてもいないのに答えるとすると、仕事がだるいからですね。


なんだか疲れた日に、帰り道にあるデカい映画館によって映画を観るということをしてみている。そのストレス解消法を貧乏くさくリメイクしようとしてこういう文章を書いてみている感じです。


それで、アニメシリーズを観ていたわけでもないのに、いきなり観に行ってみました。ツルネ。

なんでこの映画にしたのかっていうと、時間的にちょうどよかったっていうのもそうなんですけど、実は前々から気になっていたんですよね。高校時代に弓道をやっていたのもあって、でも、アニメシリーズを観ていく体力は無いなと思って。

結果から言うと、冒頭の数分と、最後の数分、僕はずっと泣いてましたね。

以下、いつも通り観た人しかわかんないような書き方のネタバレ込み感想をば。





まずね、ツルネを観る前に、ひと月半くらい前に、「バクテン!」の映画もアニメ全然観ないで観に行ってて。その映画観た時も思ったんだけど、男の子ばっかりのアニメ、絵がきれいすぎるとなんで腐向け感が強くなるんですかね。

僕の感性が歪んでしまってるのかもしれないんだけど、もうポスターとか、パッケージとかで損をしてる感じがしてる。腐ってなくてもおもろいとこいっぱいあると思うのだけど、「腐向け感」みたいなものが滲みすぎて、それだけで若干忌避感が出るのが。まあ、そんなものを抱くようなレベルの人間は射程の範囲外なのかもしれないけれども(弓だけに)。そんなゴミみたいなおせっかいな気持ちを抱きつつ楽しんだ。

ストーリーがおもろかったかっていうと、個人的にはそれほど楽しめてはいなかった。そりゃアニメ見てないんだからそうだよね。みんな癖強くてダリいな、高校生ってでもこんな感じかもな、みたいなことを考えたり。ちょっと痛々しかったり、嫉妬心や独占欲みたいな感情を極端に描写してあるところは、たぶん僕が直感していた腐った層に向けたメッセージではあるのだと思う。

で、じゃあなんで泣いたのかというと、もうね、試合シーンですね。ツルネってタイトルつけるくらいで、まずすごく音にこだわってるのが伝わってくる。そして、いわゆる弓道警察の人が目くじらを立てやすくなる射形についても、美しくゆがみ少なく描かれている。

で、矢が放たれて、的に飛んでいく一瞬が、スローモーションになる演出。よくある演出ではあるんだけど、これが、弓道経験者にとっては割と実体験に近いところだったりする。少なくとも僕はそう感じた。

矢が自分の手元から離れて、一秒もしないで的に突き刺さる、そのほんの一瞬。上下左右に尾を振って生き物みたいに踊る矢が、的か安土かに到達して突然びたっと無機質な物体に戻るまでの、その一瞬。手放すまでは絶対に当たる気がしていた矢が、突然、的のほんの少し隣に逸れたり。一度浮き上がって外れていくように思われた矢が、もう一度吸い込まれるように的に中ったり。なぜかはわからないけど、そういう一瞬一瞬が、えらく引き伸ばされたゆったりした時間の中の体験として、どの射手の記憶にも残ることになる。格好つけた表現でいえば、永遠みたいなものを体験する瞬間が、3年くらい部活を続けて、運が良ければ一度か二度くらいは来る。

そういう瞬間を、ぞわっと思い出させるような映像、音、演出。弓を引いたことのない人たちは映画を観るけれど、自分が一度でも弓を引いて矢を射たことのある人であれば、その映画の向こうに自分の体験を透かし観ることになると思う。

それで、冒頭のシーンだけで、僕は泣いてしまった。なんでかわからないうちに物語が始まって、ストーリーはストーリーとして進んで、そして最後の試合のシーンでまた泣いた。

冒頭のシーンはおそらく矢渡し、審査会、個人戦か何かの様子だったのに対して、最後の試合シーンは団体戦。この団体戦の緊張感を本当にリアルに描いているように感じた。

二つの学校の団体メンバーが第一射場と第二射場、お互いにお互いの的中が見える位置関係で試合を始める。的に集中しなければいけないとわかっていても、どうしても気になって引っ張られてしまう。

連続的中を止めてしまったときに観客席から聞こえる「あぁ」という残念そうな声。

射のペースが速い学校の選手が先に中ててしまった時の、遅い方の射手のプレッシャー。

先に外してしまった後に聞こえてくる、相手校の的中音。

緊張で濡れる手のひら。

見慣れたはずなのに大きく見えたり、小さく見えたりする仲間の背中。

呼び覚まされていく記憶の中で、主人公の声で現実に引き戻されてしまう。「もう揺らがない」と主人公は言う。でも、そんなに確かな感覚を抱いた記憶だけが、僕の中にはない。そして、その記憶がない青春を送った事実の取り返しのつかなさで、叶わない恋をしてしまったような感情になる。そうです、なんと僕は青春に叶わない恋をして涙していたのです、と気づく。


そういう映画でしたね。帰ってきて、なんかもやもやしたまま寝たら、なんと弓道部だった頃の夢を観たくらいに、何かを掴まれてしまった。思い出に殺されながら生きていく大人の一人に、とうとう自分もなったのかと。夢の中で本当にきれいにまっすぐ飛んだ矢の一筋、手ごたえ、的を貫く音、光る床板、白い上衣。

笑顔。

そういう映画でした。最高にきつくて、最高でした。






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