見出し画像

人の心がわからない人間は医師になれないのか? #グッドドクター

ドラマ「グッド・ドクター」を見ました。山崎賢人くんの演技がほんとうにすばらしいです。先日 映画「羊と鋼の森」を見たのですが、そのときの外村くんと全然違う。本当に同一人物なのか、と疑いました。ちなみに彼の初見は連続テレビ小説「まれ」の圭太役で、これは全然個人的にぱっとしなかった(圭太が自己中心的に思えて嫌だった)のですが、その理由がわかった気がします。徹底的に役になりきることで、見事に山崎賢人らしさを逸脱する。それが山崎賢人という俳優の魅力なのかな、と。騙されたと思って冒頭の2分だけでも見て欲しい。あっ、と惹きつけられるものがあります。

以下、気になったシーンについて少し考えたことを書きました。
「人の心がわからない人間は、医師になれないのでしょうか?」
ネタバレがあるのでご留意ください。(本編はTVerで視聴できるのでぜひ)

山崎くん演じる小児外科医の新堂湊は "驚異的な暗記力を持つ一方、"コミュニケーション能力に障害がある" 青年として描かれています。

湊は、長期入院しているマサキくんに「僕の退院いつ?」と尋ねられます。指導医の瀬戸は数日後に再手術を控えていることを知っているため言葉を濁しますが、事情を知らない湊は「しばらくは退院できません。再発があったため手術が必要です。」と事実を答えます。保護者からは猛抗議。

瀬戸「患者さんやご家族には、カルテには書かれていないそれぞれの事情があるの。マサキくんは4歳の時に横紋筋肉腫を患って、手術をして…(中略)…やっと元気になって退院の兆しが見えたってときに再発がわかったの。このことはまだマサキくんには黙っててほしい、っていうのがご両親の希望だったの。」

湊「なんで言ったらいけないんですか」

瀬戸「なんでって…ご両親の気持ちがわからないの? 心の準備ができてないのにマサキくんが知ったらかわいそうだって…」

湊「わかりません」

瀬戸「…いくら記憶力が優れていても、人の心がわからない人間に医者は務まらない」

この小児外科に入院している子どもたちは、病院で長い期間過ごしています。マサキくんの場合も、病気になってから少なくとも3年以上のかかわりを持っているのでしょう。長く勤めている瀬戸は、我が子に再手術を伝えられない保護者の葛藤や苦しみをよく理解していました。

働きやすいシステムを構築する

そうであるならば、なぜ申し送りができなかったのでしょう。湊が隅から隅まで読み込んだカルテに一言付け加えることもできたはず。若しくは、入退院や手術に関する事情は話してはいけない、と一言伝えられなかったのでしょうか。

彼はASDというパーソナリティの前に、組織に飛び込んだばかりの新人です。新しく入ったメンバーにいかに業務を円滑に進めてもらうかという視点から、業界内の暗黙の了解を明文化する必要がありました。失言があったのがたまたま湊だっただけで、もしかしたら情報共有していないスタッフがうっかり…というのはじゅうぶん考えられるはず。

「コミュニケーションの障害がある」って何?

そして、湊が保護者の気持ちが理解できないのは「人の心がわからないから」ではないでしょう。「すべての子どもが大人になれますように」という温かくも切実な願いを持つ湊だからこそ、患者に対して必要な情報や客観的な事実を伝えるべきだという、スタンスの違いのように思われます。
(そもそも、人の心は理解できるのか?という疑問もあります。これはまた、別の記事になるかな…)

こうすると「コミュニケーション能力に障害がある」という前提にもハテナが浮かびます。根底に通ずるものは同じでもスタンスが異なっていて、言動として表出される際に不和が生じることがある。これが「コミュニケーションの不調」だとするならば、これは障害のあるなしに関わらず、いろいろな場面で、いろいろな人に起こりうることです。


不調を包括する社会へ

私たちができるのは「コミュニケーションの不調」とはなにか、ということを丁寧に解きほぐして、不調が起こらないようなシステムを構築すること、もしくは不調をやわらかに包括できるし許容する態度を身につけること、この二つだと考えます。
作中に描かれたマサトくんの出来事に対し、私は「システム構築」での解決を呼びかけましたが、本当はそうでないほうがいい、と思います。書いておいてなんですが、この提案をした自分に少しがっかりもしています。許容するということの割合を少しずつ、自分の中でも増やしていきたい…と再認識したところで、これから作中でも、湊の周囲の人間がどのように変容するのか楽しみに見守りたいと思います。

おまけ:

サヴァン症候群で思い出したのが、TBSドラマ「ATARU」です。中居くん演じるアタルがかわいくて、愛らしくて、周囲の人たちも彼の特性を理解しながら共に生きているのが心地よかったです。(ドラマ自体もかなりポップで観やすかった)

それに比べると「グッド・ドクター」は序盤ということもあり、かなり湊へのアタリが強くて、見るのがしんどい場面もあります…。これがどのように融和していくのか、期待しています。ハマケンは可愛い。

湊に対する他の医師の態度については、野口晃菜さんのnoteが詳しいです。「寛容さ」というキーワードで紐解いておられます。素敵。




読んでくださってありがとうございます。嬉しいです!お気持ちをお花やお菓子に変えて少しいい気持ちになりたいと思います。