見出し画像

どうせ、生きていくんだけど無銭

のどの不調から恢復したサキマルさんがすごい。
そして今夜の【7月無銭】「どうせ、生きていくんだけど無銭」は、私にとって、ウイバナさんのベストライブになった。昨年のTIFの野外ステージでの空に響いたライブを超えた。

セットリストも、日頃の熱さをものともしないアップテンポのナンバーをオープニングに並べ、復活したサキマル節がスリリングに加速していった。

爆発力
私の勝手な思い込みかもしれないが、ライブでの観客を圧倒するようなボーカルの力が炸裂するポテンシャルをそう呼んでいる。それが体感できるかどうかで、「今日はすごかったなぁ!」という興奮を抱いて帰路につけるかどうかが決まる。

それを期待してアイドルの現場にむかっているはずなのだが、なぜかサキマルさんにはその爆発力を求めていなかった。普段のサキマル節があまりにもエモーショナルで心を揺さぶるので、その体感にひたるだけで考えが及ばなかったのだと思う。

ところが、その不意を突いて、今日はサキマルさんが爆発力を見せつけた。いつも以上に複雑なビブラート、倍音構成のサキマル節が響き渡り、私の胸の内側を揺さぶってくるのはわかったが、そのような技術やテクニックではなく、歌声にのせられた魂、ダンスから放たれるオーラが今までのそれを凌駕していた。

ライブでは、アイドルのキュートさに「射抜かれる」という感覚を覚えることがあるが、これは歌声の力に「持っていかれる」というすさまじい衝撃である。本当にすごいパフォーマンスだった。

そんなステージをみるとよく
「(アーティストに)ステージの神様が降りてきた」
と表現する。憑依して神の啓示を知らしめる、ステージ芸術の原初をなぞらえているかのような、ステージが神事となる。そんな感覚を覚える。

だが、ここでもサキマルさんはさらに上手をいっていた。
神様が降りてきたのではなく、神様を降ろしてきていた。
いつもの悪びれる風もなく、ジツカワさんさんやメンバーをいじったりするガキ大将キャラのイタズラっぽい表情でステージの神様を引きずり降ろしているかのようだった。
「神がかりなパフォーマンスだけど、憑依はさせない。わたちはわたち」
と言っているかのように。
でも、神様の力には敬虔で清廉となり、聖女のように美しかった。
まさに最高の歌姫(DIVA)であった。
サキマルさんはアイドルのナンバーワンボーカリストだ。

こんなにすごいライブを平日に無銭でやるなんて、なんと気前のいい……。

ウイバナのライブの帰りはセンター街
渋谷の窮屈な空からライブで流した汗のように
湿り気が雨を絞り出していた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?