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ウイバナ考 番外編3 サキマル節

つい先程までGREATEST DiVA - sing.15 -にサキマルさんが出演していたので見に行ってきた。
特典会で「失礼かもしれないけど、とてもかわいかった」と言ったら「まるで普段かわいくないみたじゃない」と怒られてしまったので、急遽、言い訳を書いている。

サキマルさんが女性的魅力は言うまでもない。ただ、このライブは"DiVA"と銘打たれているように、歌唱力をかわれた面々がアコースティックソロで出演している。そのような場であれば、まずはパフォーマンスの善し悪しを感想として述べるべきだと思った。しかし、今日のサキマルさんのステージで一番印象的だったのは2曲目の1Aメロでサキマル節が切れたあとの「あ」の発音だった。それを聞いたときにまるで心臓の裏側をくすぐられるような幸福感を受けた。そしてそれにわき上がる感情が「かわいい」だったのだ。それが歌唱力や技術の問題ではなかったのでちょっと論点がずれるな、と思って「失礼かもしれないけれど」と前置きしたのだ。決して普段はかわいくないということではない。

「音フェチ」のわけのわからない感想はこれくらいにして、多少説明しうる、ド素人の個人的感想を。

このライブで注目していたのは、歌唱力の長けたアーティストたちが普段ユニットで歌っている楽曲を離れて、どのような表現をするか、自分に最適の音楽はなんだと考えているのかを知ることができるかもしれない、ということだ。
以前から知っていたCANDY GO! GO!のなぎさりんさんも今回参加していた。彼女の歌唱力のすばらしさは言うまでもない。しかし、CANDY GO! GO! で歌っているロックが、彼女をもっとも表現している音楽なのか?彼女の歌唱力ではロックナンバーも独特の疾走感で表現している。しかし、ロックだけを歌うにはもったいないくらい彼女の声はきれいなのだ。ロックチューンに最適化していると言えば、かつての大坂春夏秋冬のMAINAのようなシンガーだが、なぎささんはどちらかというとプリンセス・プリンセスの岸谷香のような声質で、おそらくそのような楽曲も得意であろうと推測される。

一方、ウイバナの楽曲はかなりサキマルさんに最適化されていると思う。ロックチューンもサキマル節の得意分野だし、ミディアムチューンでエモーショナルな曲も。だから注目したのは”なにを歌う曲か?”ということ。「青春」を歌うウイバナの曲はサキマルさんの思いものっているとは思うが、どうしても「男の青春」、以前書いたように又吉直樹の小説「劇場」のような世界を連想してしまう。サキマルさんというアーティストを最適に表現する世界はどんなものなのだろう。他の出演者が歌っていた「好きだと言わずにはいられない」という恋愛の世界なのか。
サキマルさんが実際に歌った歌は全部知らない曲だったので、これについてはこれから原曲を吟味したいと思う。

さて、繰り返しになるが、”GREATIST DiVA"と言うだけあって、どのシンガーもすばらしいパフォーマンスだった。そんな中でもやはりサキマル節は圧倒的な強みを見せつけたと思う。
みんな歌唱力に長けているのは確かにわかる。でも、それだけだと「Adoみたいだね」、「幾田りらみたいだね」と、ただのカラオケがうまい人になってします。だからサキマル節のような独自の声を持っているというのは圧倒的個性である。技術だけではない、毎回微妙に違うビブラートのかかり方、複雑な倍音の重なり、唯一無二、天賦のものである。まったく同じように本人も歌えないのではないだろうか?その瞬間を共有した者だけが享受できるステージだと思う。

そして、その声の希少性だけでなく、サキマルさんはどんな障害をねじ伏せてでもステージを成立させる爆発力がある。コンディションが悪くて倍音の数が少なくても、燦然とオーラを放ち観衆を感動に導く。サキマル節に頼らなくても魂でパフォーマンスを完遂することができる完成されたアーティストだと思う。

「もしかして泣いてる?」と思うくらい緊張したMCだったが、歌い始めたらそんなに怯えなくて大丈夫なのに、と安心して聞いていられた。そんなアウェー感を出さないで、トリの二人のように、このイベントがもう一つのホームのように楽しんでいいような、そんな素晴らしい出来だったことを伝えたい。


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