金鉱株について~お宝ザクザクビーチ~

サブタイトルはバンカズのステージ名。最近は金融緩和だの、米中貿易摩擦だので安全資産である金に注目が集まっている。金価格の上昇が強い。有事の際の金である。この記事は個別ブログで書いた記事の移植版である(少し加筆と訂正をした)。
今回は金と金を採掘する企業についての記事を書く。銘柄紹介も行う。金鉱株を調べていたが、まとめた記事はあまり無かったので自分でまとめた。
金鉱株ETFのGDXかGDXJを買えという結論になりがちだが、今回の金上昇で金鉱株ETFはいまいち騰がってなかった。個別銘柄だとETFとは違うパフォーマンスを出せる。GDXが1ヶ月で約20%の上昇(これでも十分高いんだけど)だったのに対して、南アフリカの金鉱株であるハーモニーゴールド(HMY)は約92%の上昇だった。
ハイリスクハイリターンとローリスクローリターンのどちらを選ぶかは人次第。

金はなぜ高価なのか?
「数が少なくて希少だから」だ。金は埋蔵量が少なく、これまで掘ってきた量とまだ埋蔵されている量を合わせても競技用プール約5杯分程度しかないと言われている。金は単体で産出しやすく、鋳造も比較的簡単だから昔からザクザク掘られていた。

「昔から硬貨に使われていたから」というのもある。金は単体で出土しやすく、精製の手間が少ない。更に酸化しにくいから物質の形状を保つことが容易で通貨になりやすかった。キラキラ光ってゴージャスなのも受けが良かったのだと思う。どこの地域に行っても金は権力の象徴だった。今でも中国人とインド人は特に金が好きだ。バンコクのチャイナタウンでは金の取引所が大量にあったし、インドでは花嫁に金を持たせる習慣がある。
工業用途の需要もあるが、金は宝飾としての需要の方が多い珍しい貴金属。同じ貴金属であるプラチナやパラジウムは工業用途の需要の方が多い。

金融緩和とは?
お金のばら撒きのこと。もう少し正確に言うと通貨の供給量を増やすこと。デフレになると景気が悪くなるので軽めのインフレを発生させて景気を良くしようという寸法。金利を下げてお金を借りやすくすると言っても、限界があるので市場の通貨の供給量を増やしてしまえ!というわけだ。
やりすぎるとリヤカーに札束を積んでパンを買うようなインフレになる。ドイツのレンテンマルクやジンバブエドルのことである。金融緩和は昔から困った時のカンフル剤のような役割があった。詳しくは以下の書籍でどうぞ。

インフレは債務が相対的に減るので現金の価値が下がる(借金した方が得)。債券も金利が低すぎて旨味がない。元々金余りの相場。だから今の株高やコモディティ高になっていると思う。レジャーや娯楽も自粛で金の余った富裕層は相場に投資している。庶民ですらやることがなくて投資している。バブルと言うほど酷くはないが(泡沫会社バブルの足元にも及ばない)、現時点では強気相場だ。

金鉱株って何?
その名の通り、金を掘っている企業の株のこと。アメリカ、カナダ、オーストラリア、南アフリカの企業が多い。どこの国も金が採れる国ばかりである。
企業の所在地で採掘しているところもあれば、アフリカや南米の奥地で採掘している企業もある。企業の公式サイトを見ればどこの鉱山で操業しているかがわかる。詳しくは各企業のホームページをチェック。英語の勉強にもなる。
ほとんどは大企業である。これは大企業が小さい金鉱会社を買収してどんどん大きくなるからである。規模が大きい方がスケールメリットを生かしやすいし、金の採掘は小さくて小回りが利く必要性は薄い。
金鉱企業は「会社の製品の値段がころころ変わる」という珍しい性質を持つ。例えばこれが普通の機械メーカーで銅の価格が高騰したから機械の小売り価格を上げますとはならない。金は金相場の値段が上がればそのまま製品である金の価格も上げる。つまり、金価格が高騰していれば、採掘コストは据え置きなのに高騰した分だけ利益が出る。逆に金価格が下落して採掘コストを割ってしまうと、企業は金を市場に放出するのをやめたり、採算が取れない鉱山を閉鎖したりする。

銘柄の値動きは金が上げ相場なら一緒に上がって、金より値動きが荒くなることが多い。どの程度相関するかは銘柄による。企業のゴタゴタがある場合は「金価格が騰がっているのに、個別銘柄は微妙…」みたいなことになる。

値動きの荒さは
南アフリカの金鉱株 > アメリカやカナダの金鉱株 > 金価格
これは南アフリカの方が金の採掘コストが高いため、金価格上昇の恩恵を受けやすいから。投資家もこのことを知っているので金の上昇局面では南アフリカの金鉱株に投資するようになる。

コロナの影響で新規の鉱山の開拓ができないので金の供給量が減る。これによって更に金の価格が上昇しそうである(無論ここが天井の可能性もある)。

銘柄紹介
日本の企業はほとんどは金の採掘をしていないので今回はパス。銘柄を選ぶのがめんどくさいという方は金鉱株ETFのGDXや中小金鉱株ETFのGDXJを買うと良い。GDXとGDXJは構成銘柄が結構かぶっているので(例えばキンロス・ゴールドとゴールド・フィールズは両方のETFに入っている)、どっちか片方で問題ない。中小金鉱株と言ってはいるものの、規模そのものは大きい。相対的に小さいだけ。例えば、ゴールド・フィールズは南アフリカ金御三家に入るくらい程度には大きい。

ニューモント・マイニング(NEM)
仮想通貨であるNEMと証券コードが同じだが、全くの別物。共通点はマイニングしていることくらい。世界1位の金採掘企業。2019年時点の金の採掘割合は北米37%、南米30%、オーストラリア21%、アフリカ12%といった具合。
金以外にも銀、銅、亜鉛、鉛も採掘している。
金の鉱山はアメリカ、メキシコ、ドミニカ共和国、チリ、スリナム、オーストラリア、ガーナで操業。
自己資本比率が約55%と財務は比較的健全。一方で営業CF - 投資CF <0 の時期が直近であるのでキャッシュフロー的には不安要素がある。
配当は四半期に一度1.5%程度出しているが、金鉱株にしては高めなのが引っかかる。金鉱株の配当は平均で1%切る程度。配当はオマケみたいなもんである。

バリック・ゴールド(GOLD)
本社はカナダにある世界最大級の金採掘企業。世界2位の規模を誇る。鉱山はアメリカ、カナダ、チリ、ドミニカ共和国、パプアニューギニア、サウジアラビア、マリ、コンゴ民主共和国、タンザニアと幅広く所有。
自己資本比率は約50%と財務的には安全。キャッシュフローも営業CF - 投資CF >0なので優良企業。年度によって営業利益のばらつきが大きいのは金鉱株の特徴。金の価格 =  会社の利益みたいな部分はある。

パン・アメリカン・シルバー(PAAS)
金鉱株扱いだが、銀が46%、金が32%(2019年時点)なので銀の採掘の方が有名な企業。名前の通り、主に新大陸での操業がメイン。鉱山はメキシコ、ペルー、ボリビア、アルゼンチン、カナダに所有。
自己資本比率は約70%と高め。配当利回りは1%を切っているが、四半期に一度出ているので年単位で見れば思ったより低くはない。金鉱株というよりは銀鉱株として買うといい。 

アングロゴールド・アシャンティ(AU)
南アフリカの金鉱企業御三家で南アフリカ最大手。鉱山は南アフリカ、マリ、ギニア、ガーナ、コンゴ民主共和国、タンザニア、オーストラリア、ブラジル、アルゼンチンで操業。新興国にある故、通貨安/高の影響をモロに受けやすい。鉱山の半分はアフリカ大陸にあると考えていい(正確には同社の金の約半分がアフリカ大陸で生産している)。
自己資本比率は約32%と他の金鉱株と比較すると低い。鉱山のある地域がバリック・ゴールドとかぶっているので安定性を求めるならバリック・ゴールド推奨。バリック・ゴールドの値上がりが直近1ヶ月で10%程度だったのに対して、ここは20%だった。下がる速度もその分早いけど。少しポートフォリオに加える程度なら思わぬリターンがあるかもしれない。
余談だが、アシャンティはガーナの州の名前で金の鉱床があることでも有名。イギリスが来る前はアシャンティ王国という名前だった。イギリスが来てからは「イギリス領ゴールドコースト」になった。名前が直球過ぎる。

ゴールドフィールズ(GFI)
南アフリカの金鉱企業御三家の一つ。鉱山はペルー、チリ、オーストラリア、フィリピン、南アフリカ、ガーナで操業。アングロゴールド・アシャンティと同様、新興国の企業なので値動きは荒い。
自己資本比率は約42%と普通。キャッシュフローも特に問題はない。一株あたり12.5ドル程度で買えるので他の金鉱株と比較すると安い。

ハーモニーゴールド(HMY)
南アフリカの金鉱企業御三家。鉱山は南アフリカとパプアニューギニアだけなので、他の企業と比較するとあまり分散されていない。値動きはかなり荒く、直近1ヶ月で株価は92%上昇した。テスラなんて目じゃない。株価もまだ7ドル代なので買いやすい。宝くじよりは期待値が高い。

まとめ
金鉱株はETFを使わなくても上記で紹介した銘柄を組み合わせて買っても十分に分散投資ができる。Amazonのように高くて買えないということもない。構成比率を自分で調整して自分だけの金鉱株ポートフォリオを組むと楽しい。株価がそんなに高くないので手数料を払ってETFを買わなくてもいいかなと思っている。信託報酬払いたくないし。ただ、ETFの方が広く分散投資ができるのでここは好みの問題である。分散投資を推奨する風潮はあるが、短期で利益を出そうとすると集中投資の方がリターンは良い。

財務情報はInvesting.com、操業している鉱山の所在地は企業の公式サイトを参考にしたので気になる方は各自ググって欲しい。
各企業の金の生産量を知りたい時は
Investor → Annual reports → Mineral resources
でページをたどるとデータが載っている。

金鉱株はロマンの塊。

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