銃剣は要るのか要らんのか。

 X(旧Twitter)ミリタリー界隈を定期的に騒がす話題である「銃剣不要論vs銃剣必要論」。前者は自衛隊を含む兵役未経験者に多く、後者は兵役経験者、特に地上戦闘職種に多い気がする。
 先ず筆者は銃剣は「必要」であると考える側である。
 筆者は銃剣は詳しくない。銃剣の歴史に関しては各位で調べて欲しい。奥が深すぎるので、ここでは書ききれないのだ。その上、筆者は64式小銃用銃剣しか触ったことが無い。一応銃剣格闘の経験はあり、定期的に実銃及び銃剣を使用した練習はやってはいたものの、語れる程詳しくない。あくまでも個人的意見が大半を占めてしまうので、お目汚しご容赦戴きたい次第である。

★重い! 嵩張る!!★

 銃剣不要論で度々言われているのが「銃弾相手に役に立つわけない」「ナイフで良いだろ」「重いし嵩張る」である。正直わかると言えばわかるのだ。64式小銃銃剣は非常に長い。威圧感は大いにある。筆者も男の子なので、長くて威圧感ある刃物は大好きである。とはいえ、教育隊でコイツを弾帯に提げつ動き回るのは正直邪魔であった。


 89式小銃の小銃や、米軍のM16、M4に装着するM9銃剣などはオーソドックスなコンバットナイフの様な長さ、形状となっており、前者のモノは鉄線鋏と呼ばれる鉄線を切断するための刃まで着いているらしい(使い方は知らない)。他国の物だと栓抜きまで着いている物もあるそうだ。
 そう考えると、第二次世界大戦期の銃剣とデザインが殆ど変わらない64式小銃用銃剣は純粋(?)な銃剣であると言える。
 もし機会があれば現職の航空、海上自衛官は銃剣を持って刺突、斬撃をやってみると良い。それをやった上で、タクティカルナイフでも包丁でも良いから同じことをやるのだ。重いと思うから。
 着剣して斬撃、刺突、打撃、下突、長突、ガンハンドリングなど一連の動作もやってみるが良い。筋トレの重要さが身に沁みてくるハズだ。
 筆者も未だにブラックガン(鉄心が入ったゴム製模擬銃)の被筒部前端付近に1.5kg分のウェイトを着けて銃剣格闘のトレーニングを体幹トレーニング兼ねて行っている。教官から教わった錬成法だ。
 着剣小銃は重い。非常に重い。元々64式小銃自体が重心が銃口側にあるため(銃口方向が上方であれば長時間耐えられるが、水平より下に来るとかなり辛い)、ガンハンドリングにもかなり慣れを要するが、銃剣など着けてしまったら大変な事になる。そう、とにかく大変なのだ。
 しかし「ナイフで良いだろ」という意見に対しては「ならナイフも持てば良いだろ」と返したい。銃剣には銃剣の、ナイフにはナイフの役割がある。89式の様にどちらもこなせる器用貧乏(失礼)な物も悪くはないが、結局ナイフとして使いたいなら、ちゃんとしたナイフを使ったほうが良い。スミスアンドウェッソンにせよ、ノンブランドの中華製ナイフにせよ、コメリみたいなショップの物にせよ、フルタングのナイフもしくはある程度頑丈な折畳みナイフにしておいた方が色々無難だ(ナイフに関しても語りすぎると書ききれない)。
 さて、威圧感の面でも記しておこう。筆者はある課程で訓練とは言え、着剣小銃を同期に向けたし、向けられた。その時の嫌な威圧感はなかなか忘れない。小銃に長い剣が着いており、それが自分に指向されている。なかなか嫌な感覚である。どの派遣かは忘れたが(自衛隊初海外派遣のカンボジアだったかな?)、ある海外派遣前、自衛官の武器携行で国会で物議を醸し、持ち出す武器に大幅に制約が掛けられた。現地で丸腰に近い状態で自衛官が放り出されたのだ。にも関わらず、現地民にはかなり威圧効果があったそうだ。その理由は着剣した64式小銃である。何度も書くが、着剣した小銃の威圧感は凄まじい。小銃に弾が装填されているか否かは目では解らないが、銃剣が着いていれば別だ。その時点で武器となる。考えてみて欲しい。30cm弱の刃物が1m程度の金属の棒(しかも弾丸発射機能を有する)に着いているのだ。最早槍である。そんなものを携える相手に悪さしたいと思うだろうか。筆者ならご免である。 
 そして最後に「銃弾相手に役に立つわけない」という意見に対して。コレは距離と技量の問題もある。着剣小銃のリーチを遥かに超える距離ならそうだろう。しかし、着剣小銃が届く間合いなら?敵が我に対する射撃が出来ないもしくは、我に気付いていないのであれば?などなど、そして、弾が尽きた小銃はただの鈍器であるが、銃剣さえあれば1m30cm弱の長さの槍となる64式小銃。銃剣が無ければ100%生き残れないとしても、銃剣によって一か八かの勝利もしくは相討ちにより、自分の生命が尽きるとしても、敵の戦力を1人マイナスにすることが出来るかも知れない。
 使う局面は限られているものの、最終手段となる存在がいるだけで、可能性と未来を切り拓くかもしれない物として、筆者は「銃剣など不要」と言う事は出来ないのである。

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