自分が馬鹿にされるより他人が馬鹿にされているほうが憤りを覚えるという不可解な現象。

 子供の頃。
 よくクラスの子に罵倒されていた。

 お前は馬鹿だなぁ、アホだなぁ。死ねよ。

 そんな風な罵詈雑言を学校で浴びせられても。
 私の場合は不思議と怒りが湧いてこなかった。
 なぜか。その答えは簡単で、当時の私は自分自身に自信が無かったからだ。他の誰よりも無能であり、罵られて当然の存在で。そういうことをされても仕方の無いポンコツ無能だと思い疑わなかったから。自分自身もそれは理解していたし、もし仮に私が相手の立場になってみたら怒るのは当たり前だと共感してなおのこと怒る気にならなかった。

 しかし一方で。他人が叱られている場面に出くわすと怒りが湧いてくるのだ。自分より有能で価値のあるあの子が、私の耳を通して聞いてみても意味不明の理屈で怒られている事実に顔が赤くなるほど憤りを覚えた。決して声には出さなかったけれど。

 自分自身を守らず、赤の他人に対しての攻撃に関心を持つ私は、やはりどこか変だと思うのです。

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