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秋になれば彼女は、

「ひさしぶり!電話番号で検索しちゃった」とLINEでメッセージが届いたのは、今年の春。メッセージの主は、10年近く疎遠になっていた友達からの連絡だった。

ちょっと昔話をしてもいいだろうか。

90年代の終わり、まだテレホーダイという言葉があった頃。
当時は掲示板や日記文化が隆盛で、SNSやブログなんて当然なくて、見知らぬ誰かの掲示板に書き込んで交流することが当たり前だった。
私はその頃トライセラトップスが大好きで、トライセラのファンが集まる掲示板で知り合った仲間とライブに行ったり、飲んだり、別のバンドのライブに行ったりしていた。

連絡の主である彼女と私はそんな頃に出会った友達だった。

ライブ仲間のひとりからメールで「君と趣味が合うと思うよ」と彼女を紹介されたのが知り合うきっかけだった。そしてお互いメールで何度かやり取りをし、嘘みたいな本当の話なんだけど、私は実家から上京して初めて会う彼女の家で2,000年を迎える年末年始を過ごした。真心ブラザーズのカウントダウンライブを見るために。

今でも覚えてる。
彼女の住む横浜の駅に降り立った時の寒さ。
彼女と彼女の旦那さんと囲んだ食卓の脇に飾ってあった、
ビニールカーテンみたいなヤツに入ってたカート・コバーンの切り抜き。
年越しに聞こえた横浜港の船の汽笛。
サンプルでもらったカセットでサザンの「tsunami」を「名曲だ!」って二人で聞いた事。

「久しぶりにね、真心のライブに行きたくなったの。チケット取れたら一緒にいこう」「うん、絶対いく。ってかチケット取れるよ 笑」なんて話をした。

秋には彼女に会えるだろう。彼女はたぶん何もかもが変わってて、だけどたぶん芯は変わってないに違いない。そして私も。

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