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#37 煉瓦の積み方

 先々月、京都市内を歩いた際、同志社大学室町キャンパスの建物の煉瓦(レンガ)積みが特徴的であることに気づき、写真を撮っておいたが、それが「アメリカ積み」という積み方(組積法)であることを知った。我が国における近代建築に西洋式の煉瓦積みが普及していることは知っていたが、実際には「イギリス積み」以外は実見したことがなかった。
 煉瓦の歴史を語るつもりはないが、我が国古代には仏教建築とともに塼が大陸から招来され、おおむね基礎や床構造として使われ、建物本体の構造物として利用されることはほとんどなかったとされている。これは地震大国である日本列島の地理的条件によるものであり、いまだに日干し煉瓦を使う中東地域でまれに起こる大地震の際の甚大な被害状況を見れば、日本列島で煉瓦建築が普及しなかったのは当然であろう。
 唯一の例外が明治時代、我が国に林立した洋式建築としての煉瓦建物である。これも大正12年(1923)の関東大震災以降はほとんど造られることがなくなった。煉瓦には多くの積み方があるが、直方体である煉瓦は長辺側を長手といい、短辺側を小口という。長手を外面に連ねる積み方が「長手積み」、小口を外面に連ねる積み方が「小口積み(ドイツ積み)」である。強度的には小口積みが強く、現代の煉瓦建築は外面装飾としてのみ煉瓦積みを使っているため、長手積みがほとんどとなっている。

長手積み
小口積み(ドイツ積み)


 明治期の煉瓦建築では長手積みの段と小口積みの段を交互に積む「イギリス積み」が圧倒的に多く、その強度から採用された。角の処理の違いから「オランダ積み」と呼ばれる積み方もあるが、イギリス積みの亜種に過ぎない。冒頭の「アメリカ積み」は、長手積みを数段積んでから小口積みを挟む積み方であり、強度は弱いが建設期間を短縮できるため、同志社大学では伝統的に使われている。しかし、あまり一般的ではない。

イギリス積み(東京大学懐徳門)


 なお、煉瓦建築の本場であるヨーロッパでは、同じ段の中で長手積みと小口積みを交互に積む「フランス(フランドル)積み」も多いらしいが、日本ではあまり見ることが少ない。

フランス(フランドル)積み

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