生誕250周年「1か月でベートーヴェンの32曲のピアノ・ソナタと16曲の弦楽四重奏曲と9曲の交響曲をぜんぶ聴く!」⑤

5日目「作品18の弦楽四重奏曲の前半3曲(第1番ヘ長調、第2番ト長調、第3番ニ長調)を聴く!」

1日目から4日目までずっとピアノ・ソナタだけを聴いてきましたが、やっと弦楽四重奏曲です(笑)。ベートーヴェンにとって最初に出版された6曲・半ダースの弦楽四重奏曲は1798年ごろから取り組み始めて、1800年に完成。1801年に出版されるまで、じっくりと準備されたと言われています。6曲は順番に「ヘ長調」、「ト長調」、「ニ長調」、「ハ短調」、「イ長調」、「変ロ長調」とすべて調性がちがうことからも、弦楽四重奏曲という初めてのジャンルを手がけるにあたっていろいろ工夫していることがわかります。5日目はこのうち第1番ヘ長調から第3番ニ長調の3曲を聴きます。実際に作曲された順番は第3番ニ長調→第1番ヘ長調→第2番ト長調ということです。

1.弦楽四重奏曲第1番ヘ長調作品18-1

第1楽章が軽快で親しみやすいメロディーで始まりますが、第2楽章が深刻で沈鬱なアダージョ(Adagio)なのが印象的な1曲です。弦楽四重奏曲というジャンルは、ハイドンの68曲、モーツァルトの23曲が先行していてベートーヴェンもこの2人の作品を研究したと言われています。そのハイドンやモーツァルトのスタイルを踏襲するようなリズミカルな3楽章と流れるようなフレーズの第4楽章がつづきます。


2.弦楽四重奏曲第2番ト長調作品18-2

この曲は、第1楽章最初のメロディーから「あいさつ」または「あいさつする」というあだ名があったといいます。たしかに、かぶっていたシルクハットを手にとって「やぁ、よろしくお願いします」と言っているようなおだやかなフレーズで始まります。第2楽章はアダージョにカンタビーレ(cantabile)とついているように“歌うように”美しいメロディーが展開されていきます。コミカルな第3楽章、早いパッセージが展開されていく第4楽章と全体的に優雅な印象の1曲です。


3.弦楽四重奏曲第3番ニ長調作品18-3

最初に書かれた弦楽四重奏曲と言われていますが、ヴァイオリン2人とヴィオラ、チェロが1人ずつという4人の調和とバランスが楽しめる完成度の高い1曲です。プレスト(Presto)と書かれた第4楽章は、4つの楽器が競いあうようにたたみかけていくスピード感が印象的です。

最初に出版された6曲・半ダースの弦楽四重奏曲のうち3曲を聴きましたが、この6曲が完成した1800年には最初の交響曲第1番ハ長調作品21も作曲されています。ベートーヴェンといえば9曲の交響曲がもっともよく知られていますが、“交響曲作曲家”としてのベートーヴェンのキャリアの最初にあったのが弦楽四重奏曲といえそうです。





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