生誕250周年「1か月でベートーヴェンの32曲のピアノ・ソナタと16曲の弦楽四重奏曲と9曲の交響曲をぜんぶ聴く!」⑨

9日目「作品31のピアノ・ソナタ3曲(第16番ト長調、第17番ニ短調、第18番変ホ長調)と作品49のピアノ・ソナタ2曲(第19番ト短調、第20番ト長調)を聴く!」

ベートーヴェンの作品は、創作された時期とその内容から「初期」、「中期」、「後期」に分類されています。8日目までに聴いてきた第15番ニ長調作品28までのピアノ・ソナタ15曲と最初に出版された6曲・半ダースの弦楽四重奏曲、交響曲第1番ハ長調作品21と交響曲第2番ニ長調作品36の2曲の合計23曲が「初期」にふくまれます。きょう9日目からは「中期」の作品を聴いていきます。

1.ピアノ・ソナタ第16番ト長調作品31-1

作品31の3曲のピアノ・ソナタは、1802年に完成したと言われています。ベートーヴェンが32歳になる年です。第16番ト長調はリズミカルで親しみやすいフレーズで始まります。3楽章形式で、アダージョ(Adagio)のあとにグラティオーソ(grazioso/優美な、優雅な)と指定されている2楽章がもっとも長いが特徴です。その第2楽章は三部形式で、おだやかに始まって即興的に展開されていくのが印象的。3連符が多用されて、両手を駆使して奏でられる快活な第3楽章をふくめてピアノで“歌っている”ような1曲です。


2.ピアノ・ソナタ第17番ニ短調作品31-1『テンペスト』(通称)

三大ピアノ・ソナタと言われる第8番ハ短調作品13『悲愴』と第14番嬰ハ短調作品27-1『月光』(通称)、第23番ヘ短調作品57『熱情』(通称)にこの曲と第21番ハ長調作品53『ワルトシュタイン』(通称)、第26番変ホ長調作品81a『告別』の3曲をプラスしてベートーヴェンの「六大ピアノ・ソナタ」と呼ばれる傑作です。第1楽章はおごそかな和音で始まって、早いテンポでたたみかけるように展開されていきます。激しい部分とおだやかな部分とが交錯するドラマティックさが印象的です。アダージョ(Adagio)の第2楽章は美しいフレーズが歌われながら、ギターの演奏法として知られるアルペッジョが多用されています。第3楽章は一度聴いたら忘れられないメロディーです。切なさと情熱とが交錯しながら展開していくようで、思わず身を乗り出してしまうような緊張感があります。

この曲もYouTubeで公開されているヴァレンティーナ・リシッツァ(Valentina Lisitsa)の演奏のリンクを貼っておきます。


3.ピアノ・ソナタ第18番変ホ長調作品31-3

作品31のピアノ・ソナタ3曲のなかでこの曲だけが4楽章で書かれています。第1楽章は静かにはじまってリズミカルに展開。草原を駆けぬけていくような第2主題が印象的です。スケルツォ(Scherzo)の第2楽章もコミカルで早いパッセージが楽しい構成で、メヌエット(Menuetto)の第3楽章とのコントラストが見事です。第4楽章は軽快なフレーズが早いテンポで展開していく構造で前へ前へと疾走していくような構造です。


4.ピアノ・ソナタ第19番ト短調作品49-1

作品49として出版された2曲のピアノ・ソナタの初版譜に「2つのやさしいソナタ(Deux Sonates Faciles)」という題名があることからピアノを学ぶ人のために書かれたとされる作品です。子どものころ、ピアノを習っていた方なら弾いたことがあるかもしれません。といってもそこはベートーヴェン。第1楽章はどこか憂鬱なかげを思わせるような主題がシンプルに展開されていきます。2楽章形式で、つづく第2楽章はスタッカートの多いリズミカルな内容です。


5.ピアノ・ソナタ第20番ト長調作品49-2

第1楽章の冒頭から宣言するような主和音で始まって、3連符とアクセントが印象的な展開で第19番のピアノ・ソナタよりも明るく聴いていてさわやかな気持ちになります。ややさびしげなフレーズで始まる第2楽章は途中から軽やかにおだやかに展開していきます。

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