生誕250周年「1か月でベートーヴェンの32曲のピアノ・ソナタと16曲の弦楽四重奏曲と9曲の交響曲をぜんぶ聴く!」⑬

13日目「交響曲の大傑作『第5番ハ短調“運命”』と『第6番ヘ長調“田園”』を聴く!」

13日目は、もはや説明不要(笑)の2曲を聴きます。ベートーヴェンの傑作というだけでなく、クラシック音楽のなかでもとくに有名な2曲です。対照的な内容ながら、この2曲がほぼ同時に書かれたというからおどろきです。

1.交響曲第5番ハ短調『運命』(通称)作品67

「ジャジャジャジャーン!」という冒頭部分は、子どもからおとなまでおそらく知らない人はいないでしょう。このメロディーと劇的な展開だけでなく、ピッコロ、コントラファゴット、トロンボーンが採用された史上最初の交響曲です。しかも、それぞれの楽器にきちんと重要な役割を与えていることが画期的です。第1楽章は、印象的な主題をいきなり示して、それを押して押して押しまくる展開と構造でドラマティックです。静かに始まる第2楽章も、巨人が歩みを進めるような迫力ある表現へと姿を変えます。ホルンの激しい響きと不気味なフレーズでやはり劇的な第3楽章から第4楽章へ突入していく部分はいつ聴いても圧倒されます。交響曲のなかに初めて採用されたピッコロ、コントラファゴット、トロンボーンが登場して厚みと迫力のあるオーケストレーションが堪能できます。暗く、くぐもった音色が一転、明るいものへと変化していきながら次第に迫力を増していく劇的な内容はいつ聴いても心おどります。

2.交響曲第6番ヘ長調『田園』作品68

『田園』という標題はベートーヴェン自身がつけたと言われていて、クラシック音楽史上最初の「標題音楽」とされています。全体が5楽章で、しかも第3~第5楽章がつづけて演奏されるというスタイルも独特です。それにしても、先ほど聴いた第5番ハ短調『運命』といっしょに書かれたのが信じられないほどおだやかで美しい交響曲です。第1楽章はそのまま歌えそうな美しいフレーズで始まります。しかも、それが最後までよどむことなく展開されていきます。第2楽章はさらに美しくおだやかな自然の情景を描写しています。最後の部分で、フルート、オーボエ、クラリネットがそれぞれ鳥の鳴き声を再現するのも印象的です。リズミカルで踊るような第3楽章が不穏な雰囲気へと変化していくと、激しいティンパニの打ちこみと叫ぶような金管楽器が「雷雨、嵐」を描写する第4楽章に。それが静かにおさまっていって、おだやかで美しい第5楽章になります。

これもYouTubeで公開されている動画のリンクを貼っておきます。アメリカのフィラデルフィア管弦楽団が3月15日(現地)にアップしたもので、すでに新型コロナウイルスの影響で無観客で演奏されています。2曲の前に、Imam Habibiという作曲家の「Jeder Baum spricht」という曲が演奏されています。指揮は音楽監督のヤニック・ネゼ=セガン(Yannick Nézet-Séguin)です。


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