生誕250周年「1か月でベートーヴェンの32曲のピアノ・ソナタと16曲の弦楽四重奏曲と9曲の交響曲をぜんぶ聴く!」

はじめに

今年、2020年はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン〔1770―1827〕の生誕250周年にあたります。このため欧米(とくにヨーロッパ)では2年ほど前から今年へ向けて新しいCDのリリースやコンサート実施がアナウンスされてきました。

ところが新型コロナウイルスの感染拡大からCDはともかく、コンサートの多くが延期または中止になってしまいました。日本では7都府県で、5月6日(水)までの外出自粛が要請されています。思いがけず時間ができたという方へ、この機会にベートーヴェンがとくに力を入れた(と思われる)ピアノ・ソナタと弦楽四重奏曲、そして交響曲を年代に沿って聴こうというのがこの投稿での提案です。

ぜんぶで57曲。1日あたり2曲ずつ聴いていけばクリア可能(笑)です。CDだと23~25枚分になります。この57曲を完聴きしたからといってなにかが変わるわけではないですが、とりあえず次のようなメリットがあるかなとは思います。

ベートーヴェンの主要57曲を完聴きして得られる(と思われる)メリット

1.ちょっとドヤれる(笑)

普段あまりクラシック音楽を聴かない人にとって「ベートーヴェン」といえば、年末にテレビ番組やCMでやたらに流れる『歓喜の歌』(交響曲第9番ニ短調“合唱”の第4楽章)や“運命”“田園”“英雄”といった交響曲(それぞれ交響曲第5番ハ短調、第6番ヘ長調、第3番変ホ長調)、“悲愴”“月光”“熱情”のいわゆる“3大ピアノ・ソナタ”(それぞれピアノ・ソナタ第8番ハ短調、第14番嬰ハ短調、第23番ヘ短調)のどこかのフレーズを知っているという感じでしょう。でも、これらの有名な曲をいつかしっかり聴きたい、ベートーヴェンのほかの曲も聴いてみたいと思っている人は多いはず(断言)。そこでこのさいですから、ベートーヴェンがとくに力を入れて創作した3つのジャンルを極めてしまおうというワケです。


2.作曲家としてのベートーヴェンの進化と飛躍の生涯が(ほぼ)たどれる

ベートーヴェンが最初のピアノ・ソナタを作曲したのが1793年ごろなので23歳、最後の弦楽四重奏曲を作曲したのが1826年と言われていますので56歳で世を去る前年のことです。約22年にわたった作曲家としてのベートーヴェンがどのように進化して、後世に残る傑作を生みだしていったのかをたどることができます。

1か月かけて57曲を完聴きするというのはあくまで提案です。ノルマのようになってしまうとクリアするのがつらくなってしまいますし、特別なクリア報酬がもらえるわけではありません。ゆっくり2~3か月かけてという人もいるでしょうし、ピアノ・ソナタだけ、弦楽四重奏曲だけを集中的にという人もいるでしょう。ちなみに9曲の交響曲を1日かけてぜんぶ聴くというのはすでに多くのクラシック・ファンがチャレンジしていることなので、自粛期間でなくても1日時間がとれればいつでも可能です。

おすすめのCDについて

クラシック音楽を聴くうえでよく話題になるのが、どの演奏を聴けばいいのか問題。とりあえず、契約している音楽配信サービスやYouTubeで聴くという方は「Beethoven」と入力したあとスペースを入れて「Piano Sonata」、「String Quartet」、「Symphony」で検索して出てきたものを選んで聴いていただきたいと思います。

ここでは、新しくCDを買ってていねいに聴いていきたいという方のためにおすすめのものを挙げておきます。

1.ピアノ・ソナタ全集のおすすめCD

スティーヴン・コワセヴィチ(9CD)※輸入盤

クラシック音楽のCD販売大手のHMV、タワーレコード両方のリンクを貼りましたが、これを書いている時点(2020年4月)でHMVでの会員価格が9CDで2,066円(税込)と激安です(笑)。おすすめする理由は安いだけではなくて、全曲がほぼ作品番号順に入っていることと演奏・録音ともにすぐれているから。ひとことで表現するなら、端正で美しいスタイルでピアノ・ソナタが楽しめます。

2.弦楽四重奏曲全集のおすすめCD

アルバン・ベルク四重奏団

こちらもコワセヴィチと同じ理由で、7CDでさらにリーズナブルな会員価格1,946円(税込)。発売された当時から現在まで、4人全員のテクニックとアンサンブルがすぐれていることで高く評価されている演奏です。

3.交響曲全集のおすすめCD

サイモン・ラトル指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

もう1組

ダニエル・バレンボイム指揮シュターツカペレ・ベルリン(ベルリン国立歌劇場管弦楽団)

2つの演奏をとりあげたのには理由があります。クラシック音楽シーンでは1980年前後から作曲された当時のスタイルで演奏する「ピリオド・アプローチ」または「ピリオド奏法」のCDが主流になってきています。サイモン・ラトルはそのスタイルを積極的にとり入れてきたアーティストで、紹介したCDでも軽くリズミカルな演奏です。ベートーヴェンといえば、激しく重々しく荘厳というイメージをもつ人も多いと思います。印象的なフレーズや盛り上がる個所ではテンポを落として強調してしっかり聴かせるというスタイルが主流だったのにくらべて、ピリオド・アプローチではサクサクと前へ前へ進んでいく爽快さが大きな特徴です。その代表格といえるのがラトル&ウィーン・フィルの演奏です。いっぽうバレンボイムは、こうしたスタイルから背を向けるかのように、じっくりと大地を踏みしめるようなテンポで演奏しています。ぜひ、両方の解釈のちがいを聴いてほしいという思いから2つのCDを挙げました。

ちなみにラトル&ウィーン・フィルはHMVの会員価格で2,145円(税込)、バレンボイム&シュターツカペレ・ベルリンはさらにリーズナブルで1,418円(税込)と激安です(笑)。

以上、ピアノ・ソナタ、弦楽四重奏曲、交響曲のすべてを聴く準備ができたらさっそくベートーヴェンの生涯に沿って全57曲を楽しんでいきましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?